議題はみんな大好き「秋刀魚漁」です。
ちなみに私は秋刀魚料理はダントツで『塩焼き~大根おろしを添えて』が好きです。まあ、それ以外の秋刀魚料理なんて食ったことないんですが。
神風「えー、それでは定刻となりましたので会議を始めたいと思うのですが・・・」
秋月「・・・・・・」
松「あの・・・秋月先輩?」
吹雪「あの娘、もしかして・・・」
夕雲「落ち着きなさい秋月さん。今日は新人の娘もいることですから穏便に」
秋月「そうですよね。少し取り乱しかけていました」
松「あの、何があったのですか?」
綾波「もうすぐ
暁「恒例行事だから仕方ないのだけれどね」
松「?」
秋月「どうやら松さんは何もわかっていないようですね・・・」
睦月「あ、これヤバいやつにゃし」
松「え?え??え???」
秋月「諸君、わたしはさんまが好きだ。諸君、ワタシはサンマが好きだ。諸君、私は秋刀魚が大好きだ」
初春「始まってしもうたな・・・」
神風「長くなるからカットね」
陽炎「何がそこまでこの娘を秋刀魚に駆り立てるのか」
白露「でもまあいいじゃん。美味しいし」
朝潮「それはそうなのですが、何名か本気で釣りを楽しもうとしている方たちが見受けられるのですが」
睦月「うーちゃんが今年も秋刀魚隊長をやるつもりにゃし」
綾波「曙ちゃんも年々腕を上げてきましたね」
白露「それを言うならウチの村雨もガンガン釣りまくる気でいるよ?」
陽炎「そしてみんなが釣ったサンマをうちの磯風が黒炭に帰すと」
吹雪「焼くのを止めさせたらどう?」
陽炎「あの娘がそんな話まじめに聞くと思う?」
夕雲「ムリね」
初春「誰の目も届かぬところで焼くじゃろうな」
秋月「本当にあれだけはどうにかしてくれませんかね、陽炎さん?」
陽炎「年々上手くはなっているのよ。上手くは」
白露「亀が歩くぐらいのスピードでだけれどね」
暁「あと何匹犠牲になれば上手に焼けるようになるのかしら」
吹雪「自分で処理するわけでもなく海防艦の娘にあげるのはどう思っているのか聞いてみたいところ」
陽炎「あれに関しては本当にごめんなさい!まさか偶然通りがかった松輪ちゃんにあげるなんて思わなかったのよ!」
綾波「まあ救急搬送されなかっただけでも良かったと」
初春「生焼けで食中毒にという事態だけは避けられたわけじゃしな」
松「それで今年もやるのでしょうか」
睦月「当たり前にゃし」
神風「秋刀魚がダメなら鰯を獲ってこいっていうところよ?」
松「わたしはどうすればいいのでしょうか・・・」
夕雲「そうね。さすがに中部海域はまだ危険でしょうから」
秋月「松さんには鎮守府近海にて捜索してもらいましょう」
朝潮「そうですね。北方には誰が向かいますか?」
白露「あ、ウチは今年もbgm担当するからあまり出撃できないよ?」
松「え、歌うんですか?」
白露「うん。時雨たちと」
松「漁・・・ですよね?」
睦月「そうだね」
松「要りますか?」
吹雪「これがいるんだなー」
陽炎「士気の関係といっておけばいいかな?」
綾波「そうですね。まあそれで獲れるかどうかはまた別の話ですけど」
白露「ところでさ、この前時雨たちと倉庫を片付けていたらとんでもないものが出てきたんだけれど」
朝潮「何ですか?」
白露「秋刀魚の缶詰」
陽炎「缶詰なんてどこにで・・・も・・・・・・え?」
睦月「どうかしたの?」
陽炎「見間違いかと思ったんだけれど製造年月日が・・・」
暁「製造日が?」
白露「これ15年の十月物なんだよね」
秋月「それがどうかしましたか?」
吹雪「それってもしかしてうちが初めて秋刀魚漁をした年の物?」
神風「五年前の秋刀魚・・・か」
秋月「それがどうかしましたか?」
初春「さすがに食えぬな・・・」
夕雲「確か一般的には海産物の缶詰の賞味期限は長くても3年程のはず・・・」
神風「捨てましょう」
秋月「そんな!捨てるなんてもったいないじゃないですか!」
陽炎「いくら秋月でもお腹壊すわよ!?」
秋月「本望です!!」
吹雪「ダメだって!」
秋月「捨ててしまったらこの秋刀魚がかわいそうじゃないですか!」
綾波「そこまで情が移っているんですね・・・」
松「・・・あの一つ提案があるのですが」
朝潮「松さん、どうかしましたか?」
松「そのサンマは撒き餌に使えませんか?」
白露「撒き餌?」
松「どうせ捨てるなら有効活用したいじゃないですか。秋刀魚漁に使えないかな~て。・・・・・・・・・ダメ・・・ですか?」
睦月「いいんじゃない?」
暁「それで秋刀魚が獲れるならむしろ良い提案だと思うわ」
松「そ、そうですか?」
秋月「残念ながら、松さん。その案はうけかねるといいますか」
陽炎「サンマがなんで腸まで食べることができるか知ってる?」
松「いえ・・・」
夕雲「サンマは基本的に早朝に獲るんだけれど、この時間に獲らないとサンマが餌を食べちゃうのよ」
初春「サンマの腸は短いからの。朝餉を食べ始める前に水揚げせぬと腸を食すことができん」
綾波「ウチは腸が好きな人が多いですからね。下手に撒き餌を使っちゃうと腸が食べられなくなっちゃうんですよ」
松「それじゃあこれどうするんですか?」
神風「サンマには使えなくてもイワシには使えるでしょ?」
秋月「しかし昨年のこともありますからね」
松「去年に何かあったのですか?」
暁「サンマが獲れずにイワシばっかり獲れたのよ」
白露「提督一人で発狂していたもんね」
陽炎「『サンマは何処だー!』って真夜中に川内さんよりうるさかったもんね」
綾波「
初春「よいよい。あれ以上騒げば
吹雪「まあなんとかして期限内に集めきることには成功したんだよね」
睦月「最後の三日間に怒涛の追い込みしたんだっけ」
朝潮「なんであの時は不漁だったのでしょうか」
陽炎「やっぱり温暖化とかが影響したんじゃない?」
白露「そうなの?」
陽炎「知らないけど」
吹雪「やっぱり爆雷を投げ込み過ぎたのが原因なんじゃない?」
初春「潜水艦が相手ならまだしもサンマの群れのど真ん中に投げ込みおった阿呆がいたものな?」
吹雪「・・・・・・ソンナヒトイタッケ?」
暁「あなたよ、あなた」
吹雪「綾波ちゃん、呼ばれているよ?」
綾波「責任を他人に押し付ける悪い人はここですかー?」
松「ひぃっ!!?」
神風「落ち着いて綾波さん。あの時のことは既に制裁は済んでいます」
松「せ・・・制裁?」
睦月「あ、詳しくは聞かない方がいいよ?」
夕雲「入渠
暁「ギリギリ致命傷で済んでよかったわよね」
吹雪「あの時は本当に死んだと思ったね!」
陽炎「あれを笑ってすませるようになれば松も一人前よ」
松「それなら松は一生半人前でかまいません」
白露「うん。たぶんそれが正しい反応だと思う」
神風「さて、そろそろ時間だから最後に議長にしめてもらいましょうか」
秋月「諸君、私は秋刀魚が好きだ」
神風「それはもういいから」
秋月「私が言うべきことはただ一つ。今年も提督室に旗を掲げろ。以上」
提督「さて、今年は豊漁になってくれるか」
秋月「なります!絶対に豊漁です!そうに決まっています!」
提督「気合が入っているのはいいけれど、何かしたの?」
秋月「神頼みです!!」
提督「うん。結局最後はそこに落ち着くんだよね」
~ある日の会議室~
「諸君、私は秋刀魚が好きだ。
諸君、私は秋刀魚が好きだ。
諸君、私は秋刀魚が大好きだ。
刺身が好きだ。塩焼きが好きだ。蒲焼きが好きだ。なめろうが好きだ。竜田揚げが好きだ。みそ煮が好きだ。炊き込みご飯が好きだ。アクアパッツアが好きだ。カルトッチョが好きだ。
花咲で、八戸で、大船渡で、気仙沼で、小名浜で、那珂湊で、銚子で、魚津で、西伊豆で、尾鷲で、平戸で。
この日本で揚がるありとあらゆる秋刀魚が大好きだ。
船列を並べた漁船が秋刀魚を水揚げする様が好きだ。空高く吊るされた秋刀魚たちが港に揚陸される時は心がおどる。
職人の操る七輪で秋刀魚が焼かれるのが好きだ。白煙を上げて燃えさかる炭火へ落ちる秋刀魚の脂が蒸発した時など腹がすくような気持だった。
剣先をそろえた演者が大根をすりおろすのが好きだ。デビューしたての新人に何度も何度も大根をすらせる様など感動すら覚える。
丁寧に身を洗った秋刀魚が浜に吊し上げられる様などはもうたまらない。泣き叫ぶ空母達が私の振り下ろした醤油とともに一心不乱に食い倒されるのも最高だ。
哀れな駆逐艦が雑多な探照灯で照らすのを戦艦達の96式150cm探照灯で区画ごと照らし一網打尽にした時など絶頂すら覚える。
秋刀魚一匹の値段に無茶苦茶にされるが好きだ。大衆魚なのに年々高騰し真鯛よりも値が張るのはとてもとても悲しいものだ。
米帝の物量に押されて殲滅されるのが好きだ。
諸君。私は秋刀魚を。極楽のような秋刀魚を望んでいる。
諸君。私に付き従う中隊戦友諸君。
君達は一体何を望んでいる?
更なる秋刀魚を望むか?
情け容赦のない糞のような漁場を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の秋刀魚を殺す嵐の様な漁場を望むか?
「秋刀魚!サンマ!さんま!」
よろしい。ならば解禁だ。
我々は満身の力を籠めて今まさに振り下ろさんとする釣り竿だ。
だがこの暗い闇の底で一年もの間耐え続けてきた我々にただの漁ではもはや足りない!
大漁を!一心不乱の大漁を!
我らはわずかに一個中隊249人に満たぬ艦娘でしかない。だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している。ならば我らは諸君と私で総兵力24万9千と1人の軍集団となる。
獲物を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている
尻尾を捕まえて引きずり上げ
連中に腸の味を思い出させてやる。
連中に秋刀魚の焼ける匂いを思い出させてやる。
天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらないことがある事を思い出させてやる。
249人の艦娘の大船団で世界を獲り尽くしてやる。
第六次サンマ漁作戦。状況を開始せよ。
獲るぞ、諸君」
提督「何やってんの鳳翔さん」
鳳翔「演説です♪」