ハイスクールD×D 黒龍伝説   作:ユキアン

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11話

急に探知圏内に現れたそれに、オレは恐怖からカップを落とした。全身の震えが止まらない。

 

「匙!?どうしたのですか」

 

「お、恐ろしいまでに強い存在が駒王に現れました。魔王様たちなんか目じゃないぐらいに、デカすぎる。ドライグとアルビオンが子供以下に感じる。まさか、これがオーフィス!?」

 

「オーフィスですって!?」

 

「アザゼル先生にも報告してきます。会長はグレモリー先輩たちに」

 

「その必要はねえよ」

 

アザゼル先生がグレモリー先輩たちを連れて生徒会室に入ってくる。

 

「どういうことですか?」

 

「ヴァーリの馬鹿野郎からオーフィスを連れてくるって連絡があったんだよ。はぁ~、何でも匙、お前に興味を示したそうだ」

 

「オレですか?」

 

「お前、暴れすぎ。ヴリトラ自体も成長しているだろう?それに興味を示したそうだ」

 

「成長?」

 

一体どれが原因だ?あれか、それともアレか?いや、こっちかな?

 

「何百面相してんだよ。全部合わせてに決まってるだろうが」

 

「声に出してましたか?」

 

「考え込んだ時点でだいたい予想はつくわ。何が成長の原因か悩んだんだろうが」

 

「最近、自分でも分からないような変化が起きていてもおかしくないので。なんか悪魔の体からかけ離れているような」

 

「体の中に色々取り込むからだろうが!!全く、お前また精密検査な。それはともかく、これからオーフィスと会え。敵対はしないだろうが、機嫌は損ねるな」

 

「難しいですけどやってみます。というより、これと敵対するのっているんですか?」

 

「稀にいる。何処ぞの白い馬鹿とかな」

 

「あいつ、強くなりたいとか言ってるくせに相手の力量も見分けられないのかよ」

 

「街に入った時点で感知しているお前がおかしいんだよ」

 

「小動物ってのは危険に敏感なんですよ。ちくしょう、雲隠れしてぇ」

 

「お前の何処が小動物なんだよ!!」

 

「オーフィスから比べれば小動物でしょうが!!」

 

「ちくしょう否定できねぇ」

 

オーフィスが近づいてくるにつれて益々気分が悪くなるのを軽口で誤魔化す。対峙した時にまともでいられるかな?

 

 

 

 

 

 

 

「まさか完全にダウンするなんてな。単純に考えて誰よりも強くなってるか」

 

「なぜそう思うアザゼル?」

 

「分かんねえのか、ヴァーリ?」

 

「力に圧倒的な差があるとそれを精神が拒否して何も感じなくなることがあるのは知ってるだろう?匙はギリギリ認識できるだけの強さを持っていて、お前は持っていない。まあ、多少の慣れはあるんだろうけどな」

 

「ん、ヴリトラ、かなり変わった。ドライグとアルビオンより強くなってる。どうやったか知りたい」

 

「アザゼル先生、お待たせしました」

 

グレイプニルで簀巻きにされ首輪とリードでソーナたちに引きずられて匙が戻ってくる。匙の奴、半分以上目が死んでるぞ。

 

「それ、大丈夫なのか?」

 

ヴァーリの奴もさすがに気遣っているな。

 

「受け答えは大丈夫でしたが、逃げ出そうとしたので確保しました。その後に自分で何か薬物を摂取して感覚を鈍らせたみたいですね」

 

「そんな薬を常備してやがるのかよ」

 

「常備しといて損はないので」

 

簀巻きにされた状態にもかかわらず器用に立ち上がる匙。死んでいた目がある程度戻ってきている。

 

「とりあえず、彼女がオーフィスで間違いないですか?」

 

「ん、我、オーフィス。ヴリトラ、お前、どうやって強くなった?」

 

「それを知ってどうするんですか?」

 

「我、強くなる。そして次元の狭間からグレートレッド追い出す。我、次元の狭間で永遠の静寂を得る」

 

「グレートレッド?」

 

「オーフィスよりも強いドラゴンだと認識すればいい。オレの目標の一つでもある」

 

「もう少し詳しい説明を頼む」

 

ヴァーリがさらに追加の情報を伝え、オレも少しだけ追加する。これを聞いてこいつはどんな回答を出す?

 

「ふむ、ヴァーリ、オーフィス。お前たち、惑わされてるな」

 

「ん?」

 

惑わされているとはまた気になる言葉だな。

 

「直接観察したわけではないから確証はないが、グレートレッドに実体はない。おそらくだが、意思の集合体がドラゴンを形取った物だろうな」

 

「なんだと!?」

 

「わかりやすく言えばオーフィスの力はこの世界最強だ。世界が許容できる限界だと言ってもいい。それを上回る?しかもダメージが与えられない?その時点で奴はオレ達とは別の理に存在する者だ。ある意味でチートだな。こちらからの干渉は難しいが、向こうからの干渉は容易い。いや、待てよ。ということは何かしらのラインが繋がっていると見るべきか。オレたちに共通する何かを通じてグレートレッドとラインが繋がっていると見るべきか。要研究といったところだろうな。そのラインから逆に利用する、もしくはラインを断てば多少の差は埋められるか?あるいは意思集合体であることを利用して呪詛で滅するか」

 

「ヴリトラ、グレートレッドに勝てる?」

 

「実際に見て研究する必要があるが、オーフィスを相手にするよりは楽だろうな。同じ土俵に立てば負ける気はしない。まあ、オーフィスには無理だろうがな」

 

「我、勝てない?」

 

「そうだな。今のままじゃあ絶対に無理だ。もっと変わらないとな」

 

「変わる?強くなるとは違う?」

 

「さあ、どうだろうな?弱くなるかもしれないし、強くなるかもしれないし、変になるかもしれない?」

 

「ん?ヴリトラの言うこと、難しい」

 

「ああ、難しいことだ。答えなんてない問題だからな」

 

「ん?ん?」

 

「匙、遊ぶな」

 

「遊んでなんかいませんよ。必要かもしれないし、余計なお節介かもしれませんが」

 

「答えが出たら、我、グレートレッドに勝てる?」

 

「どうだろうな?勝てるかもしれないし、勝てないかもしれない。ただ、今よりも上手くなれる」

 

「ん?強くなるんじゃなくて、上手くなる?」

 

「悩め悩め。それが新たな力になる」

 

いつもの態度と全然違う。匙の奴、オーフィスに何を見た。オレたちとは全く違う何かに匙は気づいてやがる。

 

「傍に居れば分かる?」

 

「元の場所に戻って考えるよりはな」

 

「ん。なら、我、ヴリトラの傍にいる」

 

って、ちょっと待てエエエエエェェ!?薬を使わないと気絶するような奴の傍にいるとかただの拷問じゃねえか!?

 

「ヴァーリたちも一緒に来るならいいですよ」

 

「って、許可するのかよ!?それにヴァーリたちも?」

 

「護衛ですよ。常に薬で感覚を鈍らせるので非常時にはオレごと守ってもらいます」

 

どんだけ鈍らせてるんだよ。ってそうじゃなくてだな。

 

「そんな簡単にテロリストの親玉を置いておけるわけがないだろうが」

 

そう言うと匙の奴がオーフィスに何かを吹き込む。

 

「ん、許可くれないなら、我、ここで暴れる」

 

こいつ、堂々と脅してきやがった!!いや、落ち着け。匙の考えからして危険は少ないと判断したんだ。オレ達が気づかなかった何かにこいつは気づいた。だから、安全だと考えているんだろう。ヴァーリ達を傍に置いておくのもオーフィスに干渉してくるであろう存在を排除するためだ。

 

「……任せていいんだな?」

 

「ええ。ただ、オーフィスにかかりきりになるので学業と通常の悪魔稼業位しか出来そうにないんですけど」

 

「それぐらいなら、問題ないよな?」

 

「ええ、お姉さまに話を通しておけば大丈夫なはずです。裏でこそこそと、こそこそと?」

 

「S級以上はほとんど狩りつくしましたからここ一月はハンティング業は開店休業中です」

 

「聞・い・て・ま・せ・ん・け・ど!!」

 

「へらふぉりゅーしゃまからにゃいみちゅにと」

 

両頬を思いっきり引っ張られながらも生真面目に返事を返す匙を見て調教は続いているのを認識する。ちょっとずつは改善されてるみたいだな。まあ、主人が二人いるせいで微妙に加減がずれているみたいだが問題ないだろう。というか、S級以上をハンティングって、いや、考えるだけ無駄か。匙だからでスルーしたほうが胃のダメージを減らせるからな。

 

「とりあえず、任せていいんだな」

 

「お任せを。よっと」

 

そう言って立ち上がると同時にグレイプニルが外れる!?

 

「何をした!?」

 

「えっ、普通に縄抜けですが?」

 

「何普通にグレイプニルの拘束から抜け出してんだよ!?」

 

「だから、グレイプニル自体には干渉してないじゃないですか。あくまで結びを緩めていっただけなんですから。見ての通り首輪はまだ付いてるでしょう」

 

とか言いながら首輪も2秒足らずで外してやがる。こいつ、どんどん器用になってやがるな。

 

「もう慣れてしまいましたか。今度からは手錠に足枷もセットですね。あとは両手の指同士を拘束する器具に、結び方自体も勉強しないといけませんね」

 

こっちもこっちで慣れた対応だしよ。やっぱり匙の矯正というか調教は難しいみたいだな。

 

「さてと、とりあえずは買い出しか。ヴァーリ、お前らの人数は?」

 

「常に護衛をつけるのは3人と1匹だ。最大で5人と1匹だ。男3人に女2人、それとは別にオーフィスとフェンリルだ」

 

「意外といるな。ほれ、ここが住所だ。あと、同居人が1人いるがあまり干渉するな。顔を知っているかは知らんが禍の団の英雄派だった子供だ。今はオレが保護している。とりあえず、明日のこのぐらいの時間にオーフィスと一緒に来い。それまでには色々と準備しておく」

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦士にとって体は一番の資本なのに偏った食生活とか巫山戯るな!!」

 

回鍋肉を作りながらラインに包丁を持たせて追加の野菜を切っていく。

 

「一番年下の女の子に家事を押し付けやがって。お前ら、ここにいる間に最低限の家事を叩き込んでやる!!」

 

「いや、私はできるし」

 

「やらなきゃ意味がないだろうが!!ほれ、とりあえずテーブルを拭いて回鍋肉を運べ。それぐらいはできるだろうが」

 

ラインで布巾を投げ渡してヴァーリにテーブルを拭かせながら美猴に大皿に乗せた回鍋肉を運ばせる。その間に追加で酢豚と麻婆豆腐を作り始める。切った野菜とひき肉を混ぜ合わせてオーフィスとレオ、付き添いに黒歌を呼び寄せる。

 

「ほれ、二人に餃子の包み方を教えてやってくれ。オレは手が離せない」

 

「オーフィスにも?」

 

「オーフィスにもだ。ほれ、強くなった秘密が知りたいんだろう?レオもやってみな」

 

「ん、分かった」

 

「うん」

 

「というわけで任せたぞ。男共も手伝わせればいいから」

 

餃子の皮を渡して後を任せる。

 

「ほいほ~い。それじゃあ、黒歌お姉さんが教えてあげましょうか」

 

「美猴、フェンリルの食物はスコルたちと同じでいいのか?」

 

「基本的には何でも食ってるけど、肉がいいってよ」

 

「なら廊下を出て左の突き当たりに地下への階段がある。地下室に入って左奥にある熊肉をブロックで3つ取ってきてくれ。ちょうど食べ頃のはずだ」

 

「なんで熊肉なんてものが常備されてんだよ」

 

「狩猟期だからな。鹿とか猪とか兎に狸もあるぞ。逆に鶏、豚、牛は常備してないな」

 

「普通逆だろう。まあいいさ。そいじゃあ、行ってくるさ」

 

「つまみ食いをしたら殺すぞ」

 

包丁ではなくエクスカリバーを持って脅しておく。熟成中の燻製なんかもあるからな。オレの楽しみを取られてたまるか。しばらくして餃子以外は出来上がったのでオレとレオとオーフィス、それにヴァーリチームで食卓を囲む。餃子はラインで焼いている途中だ。

 

「さて、堅苦しいことはあまり言わん。どれだけになる付き合いかは分からないが、まあ互いに世話になる身だ。仲良くやっていきたいと思う。それじゃあ、いただきます」

 

『『『いただきます』』』

 

思い思いに食べ始め、黒歌がなんか落ち込んでいるが触ると面倒になりそうなのでスルーする。5分ほどで餃子が焼きあがったので取りに向かい、食卓に並べる。

 

「オーフィス、お前の作った餃子だ」

 

オーフィスが作った餃子を小皿に取り分けて目の前においてやる。

 

「我が作った物?」

 

「そうだ。こっちが黒歌のでそっちはレオが作った物だな」

 

不格好でもそれぞれの個性が出ている餃子を指をさして教えてやる。オーフィスはそれらをじっと見つめてから全員の分を一つずつ食べる。

 

「どうだ、オーフィス?」

 

「分からない。けど、何かを感じる」

 

「それを感じれるようになっただけで、オーフィスは変わったぞ」

 

「我、変わった?」

 

「ああ、変わった。これからも変わり続けるんだ」

 

そう言って、頭を撫でてやる。あの人がオレ達にしてくれたように。一歩ずつ、確実に今までとは違う姿に変えていく。

 

「ん、なぜ撫でる?」

 

「嫌か?」

 

「分からない。でも、もっとしてほしい」

 

「くくっ、かまわんよ」

 

食事を終えた後は女性陣から先に風呂に入ってもらい、レオを部屋に返してから男どもで打ち合わせを始める。

 

「目下のところオーフィスを狙って動くと思われる奴らは」

 

「一番は禍の団では旧魔王派の連中だな。だいぶ減ったが、まだまだ勢いがある。魔術師派は静観、ただし蛇だけは欲しがるだろうな。それから英雄派立て直しに数年はかかるだろう。離脱して完全に地下に潜った」

 

「三大勢力に関しては表沙汰には動かんだろう。暗部が動く可能性があるが、脳筋連中が多いからな。最精鋭がオレ自身だ」

 

「となると警戒するのは無名の奴らと旧魔王派か。旧魔王派はこちらからある程度叩いておいたほうがよさそうだな」

 

「オレのお抱えの情報屋をそっちに回す。徹底的に叩いておいてくれ。こっちを狙われると後手に回る。感覚を抑える薬で索敵範囲が10mを切っている。正直ガキの頃以来でかなり不安だ。反応速度も2割は落ちてる。ある程度の実力者が相手なら守りきれん」

 

「本来の索敵範囲は?」

 

「周囲の環境にもよるが、素で半径2~3kmってところだな」

 

「えっ、仙術無しで?」

 

「野生の動物ならこれぐらいは普通だろう?」

 

「変体にも程があるぜ!?」

 

「ふむ、一回魔力も仙術も道具も無しで子供の姿で山に篭ってみろ。これぐらい普通に身につくぞ」

 

「なんだそれは?」

 

「実体験だが?ちなみに一月ほどで狩猟期と重なって誤射を受けた。10年ほど前だ」

 

「7歳の体で銃弾を受けて生きているだと!?」

 

「誕生日らしきものはまだ先だから6歳だな。ラインをそこそこ使えるようになっていて良かった。でなければ死んでたな」

 

「お前、一体何回死にかけてんだよ」

 

「え~っと、虐待、クマ、誤射、初陣、レーティングゲーム、英雄派で6回死にかけて、1回ヴァーリに殺されてるな」

 

「時系列順に並んでいるとして誤射の前にクマと遭遇してるのかよ」

 

「違う違う、クマと殺し合いだ。最終的にオレが押し負けて寝床を奪われる結果になった」

 

「なんでそんな斜め上の答えが返ってくるかなぁ」

 

「知るか。オレが聞きたいわ。ここぞというときに関してハズレをよく引いている気がするがな」

 

「話を戻すぞ。とりあえず、気をつけておくのは旧魔王派でいいな」

 

「そうだな。一応、他にも目をつけておいたほうがいいが優先度は下げてもいいだろう」

 

「ならオレたちは明日から拠点という拠点を潰して回る」

 

「そっちは任せた。オレはオーフィスの面倒だな」

 

「元士郎、お前はオーフィスに何を見た」

 

「何、というよりはオーフィスに似たような奴を何人か見たことがある」

 

「似たような奴?」

 

「たまにな、見るんだよ。生きるってことを知らない奴が」

 

「生きることを知らない?」

 

「世界が親だけで完結していて、その親を失った子供だ。心が死んでただそこに生きているだけの存在って奴がな。オーフィスの場合は、本当に知らないんだろうな。ただそこに居ただけ。だから強大な力があるのに何を考えているのかが周りの奴らが分からない。なにせ、考えてなんかないんだからな。何も知らないからその状態を維持しようと、住んでいた次元の狭間に戻ろうとしていて、それ以外のことを考えていない。何も知らないから。成長過程ってものがオーフィスにはないんだよ」

 

「それは」

 

「今日1日で、オーフィスは大分変わった。傍に似たような境遇のレオが居る。自分と比較することでその成長は促進される。あとは、力加減と善悪さえはっきりと教え込んでやれば、ひとりぼっちの龍神はいなくなる。少なくともオレたちが付いていてやれる」

 

「......そうだな。お前の言う通りだな」

 

「な~んにも考えてないんじゃなくて考えられなかったとは。俺っち達も気づかなかったな」

 

「暇があればお前達も色々と教えてやれ。ただ、怒りや憎しみだけはまだ教えるな。誰も止められないぞ」

 

「分かっている。気をつけるさ」

 

「戦闘狂もまずいよな。オーフィスの前では抑えるか」

 

「あとは黒歌が変なことを覚えさせないように見張っておけば大丈夫か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抜かった!!まさか身内の手引きがあったとは。それにサマエル本体ではなく毒だけで弱らせてから本体を呼び出すか。曹操達はすでにこの場から離れたか。できれば、仕留めておきたかった。近づいてくる気配、こいつは、敵か!!気力を振り絞ってエクスカリバーで近づいてきた気配を切り捨てる。悪魔で、銀髪の男?知らない男だな。くっ、意識が霞んできた。

 

「元士郎?ヴァーリ?一誠?どうした?なんで、動かない?」

 

オーフィスの不安そうな声が聞こえる。そして倒れたオレたちの体を揺する。だが、誰も動けない。

 

「みんな、死ぬ?曹操達が殺す?我、また一人?嫌だ、させない!!」

 

まずい!?オーフィスが怒りと憎しみの感情に目覚めた。このままでは、ダメなんだ!!このまま力を振るえば、それが他の者の恐怖を生み出す。あとは、悪循環が続く。ここが、オレの命の使い所だ。オレが止めなければ、会長や、セラフォルー様、生徒会のみんなが死ぬ。オーフィスがひとりぼっちになる。それだけは止める!!ヴリトラ、すまんがオレと一緒に命をかけてくれ!!

 

『ああ、できる限り耐えてやる。ラインの全てを破棄してドライグとアルビオンとオーフィスから毒を受け持つ準備をする。我が半身こそ、持てよ』

 

『耐えてやるさ。そんでもって最後まで足掻く。頼むぞ!!』

 

ヴリトラと打ち合わせを終わらせて命を燃やし尽くす覚悟で起き上がってオーフィスの腕を掴む。

 

「元士郎?」

 

「ああ、ちょっと意識を飛ばしただけだ。それよりもオーフィス、ヴァーリと兵藤が危ない。一度、引き上げだ。二人を集めてくれ」

 

「うん」

 

すぐにヴァーリと兵藤を抱えて戻ってくる間に気休めでフェニックスの涙をストックしてある3つを全て服用する。これで少しだけ余裕ができた。

 

「それからこれを持っていてくれ」

 

ラインの倉庫から一冊のノートを取り出してそれをオーフィスに持たせる。

 

「これは?」

 

「オレの宝物の在り処が書いてある。みんなに治療の迷惑をかけるからな。そのお礼だ。向こうに戻ったら会長にでも渡してくれ。向こうに着いたらまた寝るから」

 

「分かった」

 

すまんな、騙すような真似をして。影の転移のゲートを開いて完全に入りきった所でラインを伸ばして毒を全て抜き取る。途端に、さらに意識が遠くなるのをエクスカリバーを足に突き刺して痛みで意識をつなげる。

 

「があっ!?ああああああああああっ!!」

 

気合いで耐え抜き、絶霧の向こう側に三人を送り込めた所で影の転移を止める。

 

『ヴリトラ、生きているか?』

 

『は、ははは、なんとかな。だが、もう限界に近いな』

 

『こっちもだ。だが、サマエルが追撃できないぐらいにダメージを与える必要がある。あと一撃に全てを賭ける』

 

『それでいいのか?』

 

『オレは、導く側には立てない。オレは露払いが精一杯だ。オレの犠牲で先に進む道が切り開かれるなら、この命、惜しくはない』

 

『ここにはオレしかいない。格好つけるな。まだ、生きたいのだろう』

 

「……生きてえよ」

 

涙が溢れる。ここにはもう、オレとヴリトラとサマエルしかいない。だから、我慢することなく涙を流す。

 

「生きてえよ。ようやく、ようやく生きていると実感できるようになって、会長やセラフォルー様のようなオレにオレという存在を理解させてくれた人たちが傍にいて、留流子たちみたいに慕ってくれている人たちがいて、兵藤やヴァーリたちみたいに友と呼べるような奴らがいて、周りが落ち着いたら木ノ本先生のことをお母さんと呼ぼうと思ってて、オレなんかを題材にした特撮を見てオレみたいになりたいって子供達まで出来て、レオやオーフィス、スコルやハティみたいな家族のようなものまで出来て。まだ、生きてえよ。こんな所で死にたくなんてねぇ。だけど、ここで退いたらそんな人たちが危険にさらされる。そんなのオレには耐えられねぇ!!」

 

涙を拭い、エクスカリバーとアロンダイトを杖代わりに立ち上がり覚悟を決める。

 

「オレには、退けない理由が、いや、退かない理由が有る!!」

 

『ダメだな。その程度では無駄死にだ。今すぐ退け。まだ間に合う。予測よりも遥かにオレたちの体は頑丈になっていた。今退けば、死なずに済む』

 

だが、ここにきてヴリトラが俺を否定する言葉ばかりを吐く。

 

「ヴリトラ、どうしてそんなことばかり言う」

 

『言うさ。今の半身はいつもと違う。そんな奴に力は貸せん』

 

「いつもと違う?」

 

『ああ、そうだ。オーフィスを逃がす時までなら手を貸していたさ。だが、今はダメだ。我が半身、いや、匙元士郎、今のお前は生きることを諦めている』

 

「え?」

 

『オレが見てきたお前はどんな時でも生きることに貪欲だった。死から逃れるために、あらゆるものを取り込んで前に進んできた。それなのに、今のお前はここで命を捨てることしか考えていない。そんなお前には力を貸せない』

 

「オレが、生きることを諦めている」

 

『それは、ある意味では良いことだ。お前はもう、完全に妹の呪縛から解かれているからだ。だが、戦いにおいて生きることを諦めたものに、生き残る道は開かれん!!匙元士郎!!貴様はどうする!!』

 

「……すまん、弱気になっていた。以前のシュミレートでサマエルには勝てないって結論を出していたせいだ。だが、勝てないだけだ。追撃させないぐらいに負傷させた後に逃げることなら、出来る!!」

 

『いつもの調子に戻ったな。それでこそだ。破棄せずに済んだ8倍の倍加が4本ある。うまく使え』

 

「ありがとう、ヴリトラ」

 

1本を自分の魔力へ、8倍にした魔力をアロンダイトとエクスカリバーに転移分を残して等分に注ぎ込む。そして1本ずつ聖魔剣を倍加させ、放つ瞬間に

 

「がはっ」

 

胸から黄昏の聖槍が生える。

 

「させんぞ!!ここでサマエルを消耗させるわけにはいかないのでな!!」

 

さらに両腕が斬り飛ばされる。もう痛みも感じない。だが、まだ終わらん!!腕など、オレにとっちゃあ飾りなんだよーー!!

 

「ラインよ!!」

 

残っている最後の力で斬り飛ばされた両腕にラインを伸ばし、全ての力をサマエルに放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らが見るのをやめた観測班の記録の続きだ。黄昏の聖槍に貫かれて、両腕を斬り飛ばされて、それでもサマエルにエクスカリバーとアロンダイトの魔力砲を叩き込んで重傷を負わせた。だが、その後に、サマエルに食わ「やめてください!!」……はっきり言っておく!!匙はサマエルに食われた!!食われる前から致命傷だ!!生存は不可能だ!!匙の最も苦手とする聖属性と竜殺しの中でも最高峰の2つだ!!奇跡でも起きない限り匙は死んだ!!オーフィスとヴァーリとイッセーを、いや!!ここにいる全員を、大切な奴らを救うために!!」

 

「そんなことわかっています!!でも、あんなに、あんなに生きたがっていた匙を、匙を、あっ、ああ、ああああああああああああああーーーーー!!」

 

泣き崩れるソーナを見て、ここまで匙に入れ込んでいやがったとは思いもよらなかった。いや、あいつの影響力を考えればそばにいる分当然か。全員が自分たちを責めている。あのオーフィスですら落ち込んで、匙の奴が残した宝物がなければ、各個人に当てられた、週1ペースで増えている大量の遺書がなければ暴れていてもおかしくなかった。

 

 オレ宛には事務処理的なことが8割ほどだったが、残りは私信のような物で、苦労をかけたことへの謝罪や感謝の言葉でいっぱいだった。面と向かって話すのが苦手な分、その量は莫大な物だった。あいつにとって、オレたちと出会い、作り上げた物全てが宝物だったんだろうな。

 

ヴァーリたちは自分たちが警護をするからと無理を聞いてもらったのに失態を犯したことで自分たちを鍛え直すと何処かへと行ってしまった。

 

イッセーは何もできなかった後悔から自分を苛め抜いている。リアスたちも魔獣創造で生み出された魔獣相手に手こずりどうすることもできなかったことを悔やんでいる。

 

ソーナたちはボロボロだ。心が完全に折られた。復帰は今後も絶望的だ。長い時間が必要となる。

 

セラフォルーの奴は手当たり次第に魔獣どもを殲滅している。そうしていないと何をするかわからないからと。

 

サーゼクスの奴はサマエルを貸し出したハデスのところに殴り込みに行く準備を始めている。ミカエルの奴もジョーカーを派遣すると言っていたか。

 

ファルビウム達は保管庫から黄昏の聖槍を持ち出す手引きをした奴の調査と捕縛を進めている。

 

レオナルドはずっと泣いている。スコルとハティは傍についている。

 

オーフィスは昔みたいに戻っちまった。匙との生活で少しだが感情を見せていたが、今は怒りと憎しみを抑え込むために昔の心に戻している。軽い物から慣らしていくつもりだったらしいが、こんなことになるとはな。

 

オレは割り切っている。感情を殺すなんてことはあの大戦期で慣らした。惜しい奴を亡くした。あいつが守りたかった物ぐらいは守ってやろう。それぐらいは思っている。感情で動けないのがトップだ。その分だけ色々と権限がある。そうじゃないとトップなんてやってられるか。大型の魔獣、豪獣鬼共が動きを止めているすきになんとか対策を打たねえと。

 


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