ハイスクールD×D 黒龍伝説   作:ユキアン

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6話

リアスとのレーティングゲームの後、匙は意識を失い、高熱を発したまま目を覚まさない。アザゼル様とアジュカ・ベルゼブブ様が匙の禁手化の際に言った言葉から何らかの変化が起こっていると予想され、アザゼル様のラボに運び出されてから三日。ようやく一通り調べ終わったと言う事で私達に結果を伝えるためにアザゼル様のラボに招待されました。

 

「それで、匙の診断結果はどうなりましたか?」

 

「あ〜、アジュカと共に調べてどうなっているのかは分かったが、どうすればいいのかはさっぱりだな。熱は下がったからとりあえず命に別状は無い。と思いたい」

 

「どういうことですか?」

 

「一つずつ話す必要があるな。調べていった過程と結論、どっちから聞きたい?」

 

「結論からでお願いします」

 

「了解だ。結論から言えば匙は悪魔から別の物へと転生している途中だということだ」

 

「悪魔から?それは別の種族へということですか?」

 

「そうだと言いたいんだが、重要なのは転生する物はおそらく新たな種族としてだ。判明した情報を元にオレとアジュカで器人と名付けた種族へな」

 

「器人、ですか?」

 

「禁手化した際に背中に悪魔以外に龍の翼があるのは、龍系統の神器の禁手化で発生するパターンがあったからおかしな事ではないんだけどな。そこに追加で堕天使の翼が生えたのは異常だ」

 

「それはそうですが」

 

「その後の一誠の赤龍帝の鎧を粉々に砕いた剣は聖魔剣になったエクスカリバー、腕を切り落としたのは聖魔剣になったアロンダイトだ。だが、禁手化が解けた後、それらの姿は無くなった。そして一瞬で距離を詰めた強化は劣化しているが赤龍帝の倍化で、更に言えば劣化している白龍皇の半減も確認された。負っていたはずのダメージもある程度回復していた。そして無限に進化し続ける神器だと本人が言っていた。これらから、あの禁手化の能力は吸収出来る物が更に増えた、それこそ相手の神器や種族特性までも取り込み、自らの物にしてしまう神滅具に認定される代物だ。取り込んだ能力を溜め込む人の形をした器。だから器人だ」

 

「特性などを取り込むのは分かりましたが、それだけでその器人と言うのは早計なのでは?」

 

「まあ続きを聞け。器人だと決定付けなければならない理由はこれだ」

 

アザゼル様が取り出したカルテらしき物は専門用語が多過ぎて何が書かれているのかがよく分からない。何かが埋め込まれているのだけは分かったが。

 

「さっきも言ったが、禁手化が解けた後にエクスカリバーとアロンダイトが消えた。現場にもほんの少しの破片が残っていただけだ。じゃあ、何処に消えたのかだが、それが答えだ」

 

「まさか」

 

「一誠の攻撃で砕け散った聖剣の破片が匙を襲い、そのまま核になる部分までもが身体に埋まった。幾ら聖剣が認めていたとしても聖なる力の塊を埋め込まれて悪魔が助かる訳が無い。おそらく黒い龍脈が使えなかった間は少しずつ身体が変容していたんだろうな。それが禁手化で強制的に進んで、今は落ち着くまで休眠していると思われる。目覚めれば、これからも新たな力を取り込んで己の物にするための人の形をした器が完成しているだろうな。ああ、別に意思が無くなったりする事は無いはずだ。指向性の無い力を取り込んだ所で強靭な意思の力を消す事は出来ないだろうし、混じる事も無い。そこら辺は少しだけ起きたヴリトラに確認してある」

 

途中まで匙は匙として生きられるのかを心配しましたが、ヴリトラからもそう言われて肩の力が抜けた気がします。

 

「それから確認しておきたいんだが、匙に入れた悪魔の駒って兵士が4個に他の奴の変異の騎士が1個か?」

 

「ええ、そうですが。まさかそちらにも変化が?」

 

「確認されたのは変異の騎士が1個、そして変異の兵士が1個、残りは変異し続ける謎の3個だ。確認して仮称を付けたのが全部で6種。城塞、重兵士、弓兵、騎兵、重騎兵、そして暗殺者だな。アジュカは今はそっちを調べてる。現在分かっているのは、城塞と重兵士は戦車と兵士を強化した様な物で、騎兵と重騎兵は騎士と戦車を足して割った様なもんだ。それが速度に振られたか力に振られたかで騎兵と重騎兵に分かれる。弓兵と暗殺者なんだが、こいつは完全な新種らしいから詳しい事は分かっていない。正確に言えばこの6種全部だがな。細かいことは本人が目覚めるまでは分からないだろうな。予測だが更に言えばこいつらもこの先種類が増えていくだろうな」

 

そこまで話した所で背の小さい金髪の堕天使が資料を持ってやってくる。

 

「アザゼル様、調べ物が終わったっす。予想通りヴリトラ系統の神器所有者達が倒れてるみたいっすね。偶々死刑囚の所有者が居たんで摘出してみたっすけど、所有者は死ななかったっすね。それと同時に何人かが回復したんっすけど、たぶん同じ神器の所有者だと思われるっす」

 

「回収したのはなんだ?」

 

「たぶん龍の牢獄っす。アザゼル様に貰った資料とちょっと違うっすけど、抜き取った後に変化し始めたんで、たぶん、あの匙ってのしか受け入れられないと思うっす。他のも抜いてきます?」

 

「出来るだけ人間社会に問題が無い奴からな。死刑囚か、後戻りが出来ない奴に最大限の便宜を図った上でだ。予算は渡してある中から使え、足りないようなら追加でも出すから早急に集めろ」

 

「了解っす」

 

退出していく前に金髪の堕天使はアザゼル様に何かを渡していく。おそらく先程の会話に出ていた龍の牢獄だろう。

 

「確かに変化しているな。より深い物になったとでも言うべきか。五大龍王の一角すらも変容、いや、進化させる程の強大な才能と意思の力。とんでもない奴だよ。今はまだオレ達の手に負える程度だが、この先どうなることやら。正直に言っておくぞ、ソーナ・シトリー。匙の存在を危険視する奴がこの先必ず現れる。眷属から外す事も一つの選択に「入れませんよ」……分かって言っているのか?」

 

「ええ。匙だけでなく私や眷属の命を狙われる事も、私の夢の障害が増えるかもしれない事も、今以上に厄介事や陰口が増える事も。でも、匙を眷属から外せば私の夢を私自身が否定する事になる。そして匙自身も。だから、選択肢には入れれませんし、例え入れる事が出来たとしても入れません。私は匙の『王』ですから」

 

「……若いっていいねぇ。オレも後200歳程若かったらなぁ。ああ、そうだ。忘れる所だった。お前達を呼んだのは匙の事だけじゃない。サーゼクスの奴に約束させられた人工神器の譲渡。試作段階の物ばかりだからな、調整も必要になって来るはずだから此所に直接来れば良い。質問でも何でも構わないぞ。あと、月1で構わないからレポートの提出も頼む」

 

これはたぶん、アザゼル様からの気遣いですね。そこまで細かい調整は必要無いでしょうから、匙の事を見舞いに来やすい様にしてくれたのでしょうね。皆もそれが分かっているのか嬉しそうにしていますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼル先生のラボから退院とでも言えば良いのか分からないが、とりあえず出撃許可が降りた。そしてアザゼル先生からの指令を受け、会長に上申した結果、禁手と新しい身体の慣らしも兼ねて神との殺し合いに向かう。

 

翌日、北欧の神オーディン様と日本神話との会合のホテルの屋上に会長やグレモリー先輩達とは別に透明の聖剣の力でこっそりと隠れていたのだ。そのまま転移にも巻き込まれても隠れたまま待機する。

 

オレの役割はイレギュラー時の対応だ。だから出番はまだ先だろうと思っていた。予定通り白龍皇とフェンリルが別の場所に転移し、ロキが更に二頭のフェンリルを呼び出した事で出番が早くなる。二頭のフェンリルの間に風上から移動して立ち、体内からエクスカリバーを引き抜き、擬態と破壊と祝福の力で一薙ぎで二頭の両手足の健と頸動脈を斬る。

 

「所詮は野生を忘れた飼い犬か。神殺しの看板はオレが貰ってやるよ」

 

倒れ伏す二頭にラインを繋げてその血を取り込む。しかし、神殺しと呼ばれる様な力が宿っていない事に気付く。どうやら牙に神殺しが宿っているようだ。牙にラインを繋いで神殺しの力を貰おうと思ったのだが、牙に触れた途端千切れる。なるほど、神殺しとは名ばかりで神に特化しているのではなく神をも殺せる力を持っているだけか。特性でない以上、吸収する事は出来ないか。

 

神殺しは諦めて会長の方に合流しようと思っていたら、ロキから何かが放たれた。狙いはオレの横に居る二頭の頭。すぐさま邪龍の黒炎で焼き払う。

 

「何のつもりだ、ロキ」

 

「役に立てないようだから捨てるだけだ」

 

その言葉に二頭が暴れだす。当然だろう。巣立ちならともかく、親に切り捨てられるのは言葉で表す事は出来ない。それを平然とやるロキは最低なゴミクズ野郎だ。

 

二頭の頸動脈に付けた傷をラインで治療してエクスカリバーを体内に戻してから力を完全に解放する。そしてなんとかしようとする二頭の前に腕を差し出し、食いちぎらせる。

 

「「「「なっ!?」」」」

 

「……」

 

この戦場に居る会長を除く全員が驚く中、ラインで両腕の止血だけを済ませ、ロキ達から距離を取る。

 

「これでこいつらは最低限の仕事はこなしたはずだ。下げろ」

 

「まさか死に損ないの為に両腕を差し出すとは笑えるわ。まあ、少しは役に立ったか」

 

その言葉に二頭が喜びを表そうとして、ロキの魔力弾に身体を貫かれる。

 

「役には立った。だから楽にしてやる。健の再生は面倒だからな。代わりも居る以上、捨てるのが一番だ」

 

命が失われていく二頭にオレは歩み寄り、ラインで二頭が寄り添える様に移動させる。二頭は残る全ての力を使って互いの毛繕いを行い、それを邪魔する様にロキが再び魔力弾を放とうとする。ここまでで十分だ。ロキには一切の慈悲を与える必要は無い。世界に罅が入り、砕け散る。

 

「何が、起こった!?」

 

ロキの言葉がこの場に居る全員の思いをまとめている。

 

「夢幻の聖剣、それの真の力だ」

 

体内の聖剣の力を抑えながら呼吸と思考を整える。

 

「基点となったのはオレがこいつらの頸動脈を塞いだ後、そこからこの場に居る全員を全く同じ夢の中に引きずり込んだ。誰もが夢だと気付かなければそれは現実となる。一種のタイムスリップと言っても良い。アレは(現実)に起こった事だ。ゆえに、オレは貴様を絶対に許さんぞ、ロキ!!絶望を貴様に与えよう、禁手化!!」

 

混沌龍の騎士鎧を身に纏い、聖魔剣の代わりに作り出した聖魔剣と同じ力を持ったハンドガンを抜いてロキに発砲する。弾丸に破壊、バレルに天閃と透明、マガジンに祝福の術式を展開し、弾丸自体も聖魔剣の欠片を用いてある。それの威力を倍化の力で16倍にして全弾を叩き込む。神の特性に気付いたオレが出した神殺しへと至る為の手段だ。

 

神は恐ろしく頑丈であり、強大な力を持っている。だが、それだけだ。人外の壁を越えた先、それが神である。それだけの事なのだ。何か特別な力が必要な訳では無い。だからこそ赤龍帝と白龍皇は恐れられた。

 

元から強靭な肉体を持つ龍の力が倍化で強化される、龍以下の力にまで落とされる。それも簡単にだ。オレもいずれは簡単に神殺しを為したいが、小細工を色々してようやくか。

 

10発の弾丸に撃ち抜かれて地面に落ちたロキに素早く近づき、ロキの全身を覆う様にラインで覆い尽くす。そして、神を理解する。オレの予想は半分以上当たっていた。

 

神は恐ろしく頑丈であり、強大な力を持っている。そして、それとは別に普通の人外の力も存在している。とはいえ、こちらの力は精々が下級程度の力だ。おそらく、神という力の塊に属性を加える為だけの物なのだろう。神の証である力の塊を全て取り込み、両手足の関節を外してラインから解放して二頭のフェンリルの前に投げ捨てる。力を抜き取った時点でロキは意識を失っているので楽な作業だ。

 

「お前達の好きにしろ。言葉は分かっているのだろう?もうそいつに神と呼ばれる資格も力も無い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、二頭のフェンリルはロキに捨てられた。このままではロキ共々処分される事になると言うので使い魔として引き取った。一番の戦功を上げていたので殆ど問題無く、躾だけはちゃんとする様にと言われただけだった。名前はスコルとハティだそうだ。とりあえず山をまとめて幾つか購入して野生を思い出させる事から始めよう。

 

深夜から明け方にかけて夜通しで鬼ごっこを行う。時間区切りで追う側と追われる側を交代する。捕まれば食事を一部献上する事になるので全員が本気だ。月明かりの中を五感をフルに活用して疾走する。時に痕跡を残す事で逆に誘導したり、簡単な罠を仕掛ける。

 

本日3回目の鬼ごっこの最中にデカイ魔力とその魔力とのラインを感じ取る。何の用かは分からないが周りにはオレしか居ない以上、オレに用があるはずだ。犬笛を使ってスコルとハティに鬼ごっこの中止と集合を伝えてセラフォルー様の元へと向かう。

 

「このような格好で申し訳ありません」

 

ほぼ同じタイミングでスコルとハティも到着する。威嚇しようとするのでハンドサインで止める様に指示する。

 

「ほぇ〜、一週間でよくそこまで」

 

「こちらの言葉を理解出来ているおかげです。それにまだ子供のおかげで飲み込みも早いですから」

 

「大きさは元ちゃんが制限したの?」

 

「いえ、スコルとハティが自分で考えた結果です。見ての通り大型犬より少し小さい程度が山では動きやすいですから。銀毛も泥で汚して森に溶け込みやすくしていますし。まあ、オレもなんですが」

 

ギニースーツに枝や葉を大量につけて、顔に泥を塗りたくってある。無論、泥は綺麗な土と水を混ぜて作った物だし、数時間毎に洗い流しているので衛生上は問題無い。ちょっと山奥まで入れば滝もあるし、魔術を使えば湯も沸かせるからスコルとハティを洗ってもやれる。綺麗に乾かした後のあのふかふか感が最近癖になっている。それはともかく顔の泥だけは落としておこう。失礼だからな。

 

「それでどうしたんですか、こんな時間に?」

 

「様子見♡アザゼルちゃんの所から戻ってから見てなかったから、大丈夫かなって☆」

 

「心配をおかけしました。身体の方は、報告が上がっていると思いますがアザゼル先生とアジュカ様の検査の結果、悪魔とは別の身体に、器になってしまったみたいです。容量がどんな物なのかは、この先、自分で判断するしかないみたいです。今の所は問題在りません」

 

「心の方は?」

 

随分ストレートに聞かれるな。まあ、大丈夫だと分かっているんだろうな、この方は。

 

「殆どは、整理が尽きました。あとは、あの男女の事だけです。匙元士郎としては恨んでますし、憎んでます。だけど、■■■■■としてはどう思っているのか曖昧なんです。ほとんど怖いとしか思ってないのに、肉親の情が、ほんの少しだけあって、その所為で決着を付けれない状態です」

 

オレの何とも言えない雰囲気にスコルとハティが身体をすり寄せて慰めてくれる。

 

「ありがとう、スコル、ハティ」

 

「……ちゃんと笑えるみたいだし、時間が解決するかな」

 

セラフォルー様が小声で呟いた言葉を拾う。見た目と趣味に騙されやすいけど、セラフォルー様は優しくてしっかりしていて、会長に似ている。二人を分けているのは経験の差だな。

 

「大丈夫そうだから、私はソーナちゃんの所に行ってくるね♪」

 

「ああ、セラフォルー様、少しだけ良いですか?」

 

次に何時会えるか分からない以上伝えておかなければならないことがある。

 

「何かな?」

 

「オレを、オレ達を救ってくださり、本当にありがとうございます!!」

 

地面に額を着けて感謝の言葉を伝える。

 

「あの時、セラフォルー様が居られなければ、心の整理も着かないままで、会長とも本音で話し合う事もできずに、■■■■■を殺し続けたままでした。たぶん、一生まともに笑う事も出来ずに、生きる事に疲れて無茶をして命を散らしていたはずです。今此所でこうして笑えるようになったのも、セラフォルー様のおかげです。この御恩は絶対に返してみせます」

 

「なら、もっと力と、男も磨かないとね♪実戦では必要無いんだけど、政治云々が関わってくるとやっぱり華がないとね☆」

 

「その辺りは何となく分かります。今まではどうしようもありませんでしたが、混沌龍の騎士鎧が使える様になった今なら華も持てるでしょう」

 

「それなんだけどねぇ〜、ほら、アロンダイトを渡したときの事を覚えてるでしょう?」

 

「『話術も詐術も立派な武器』、グレモリー家主催のパーティーの時にも色々とそれで縁が出来ました。オレは、ようは、使い分けだと思っています」

 

「それは分かるし、サーゼクスちゃんとかアザゼルちゃんとかも賛成してくれるだろうけどねぇ。何か個人的に気に入っている帽子とか顔周りの装飾具とかトレードマークになる物とか愛用してない?」

 

「顔周りの装飾具やトレードマークですか?一応、顔がばれると不味い時に使ってるゴーグルとマフラーなら。後は黒いフード付きのコートも」

 

収納の魔法陣からその3点を取り出してみせる。

 

「へぇ〜、少しの間借りていっても大丈夫かな?」

 

「最近は使う機会もありませんし、予備もありますので。今後ゲームの際はスタイルに合わせます」

 

「うんうん、話が早くて助かるわね♪ソーナちゃんの方には私の方から話しておくからそっちでも頑張ってね☆」

 

「ご期待に応えて見せます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は千客万来だな。山に転移して来た者の魔力で目が覚める。スコルとハティを引き連れて山頂付近の小屋から山を下っていく。そこに居たのは切り落としたはずの腕があるヴァーリと知らない男とスコルとハティよりも一回り大きいフェンリルだった。

 

「ヴァーリか、良い顔をする様になったな」

 

「そういうお前もだろう、混沌龍王」

 

「否定はしねえよ。それで、何のようだ」

 

ヴァーリに尋ねながら敵意は無い様なのでハンドサインでスコルとハティを自由にさせる。先程からヴァーリが連れているフェンリルを気にしていたからな。たぶん、親だろう。

 

「ほう、そこまでフェンリルの子を操れるか」

 

「訂正してもらおうか、スコルとハティはオレの家族だ」

 

「そうか、操ると言うのは悪かった」

 

「分かってもらえたなら良い。話は戻るが、何のようだ」

 

「まずは礼を言おうと思ってな。お前のおかげで、オレは強くなれたし素直にもなれた。思ったよりも気が楽になったし、余裕もできた。その礼と言う訳ではないが、オレ達が求めた目的を達成した以上、お前が持っていた方が良いと思ってな。アーサー」

 

「アーサー・ペンドラゴンと申します。以後、お見知りおきを。こちらは行方知れずだった最後のエクスカリバー、支配の聖剣です」

 

アーサーから支配の聖剣を受け取り、体内のエクスカリバーの核に混ぜ込む。そしてある事に気付いた。7本の聖剣を束ねても、伝説には絶対に届かない事に。お前は既に死んでいたのだな、エクスカリバー。

 

7つの核を一つにしてみて分かったのだが、それだけでは綺麗な核にならないのだ。もう一つか二つ位核があったはずなのだが、回収し損ねたのか、あるいは完全に消滅してしまったのだろう。伝説のエクスカリバーは死んでしまったのだ。エクスカリバーの自己主張が激しいのも、足りない物を埋めようと必死だったのだろう。

 

オレにはその足りない物を埋める事は出来ない。出来るとすればエクスカリバーを作った者、伝承なら湖の精霊から貰ったのだったっけ。そいつの元に戻して今の姿を材料に打ち直してもらうしかない。情報屋に金を積んで調べさせるか。

 

「わざわざすまなかったな」

 

「かまわん、お前には色々と借りがあるからな」

 

「借り、ね。ヴァーリ、お前の夢ははっきりとしたのか?」

 

「ああ、オレの夢は二つある。同じ方向にそれらがあるが、どっちが近いのか分からないからな。糞爺を殺す、そしてグレートレッドを倒して真なる白龍神皇になることがオレの夢だ!!」

 

「あんまり変わってねえな。だけど、以前よりも強くなったな、心が」

 

「そういうお前はどうなんだ?」

 

「オレか?オレも夢が二つあるな。方向性も、まあ似た様な方向だな。オレは会長の夢を手伝いたい。オレ達の様な弱者に手を差し伸べようとする会長の夢をな。それを達成する為には力が要る。天に居る赤と白を地に引きずり降ろして混沌が天を制してやる」

 

「赤龍帝と白龍皇を地に引きずり落とすか。おもしろい、いずれ決着を着ける時が来るか」

 

「ああ、だが、それは今じゃない。邪魔する敵はよりどりみどり。メインディッシュはまだまだ先だ」

 

「ふっ、違いないな。それに赤龍帝はまだ店に入荷していないからな。あれはまだ育てた方が良い。無論、オレ達もだがな」

 

「分からないでもない。あいつの成長具合には嫉妬するな。まだ半年も経っていないって言うのに。オレとは方向性が違うとは言え、あそこに辿り着くのにどれだけ時間がかかったことやら。無い無い尽くしで小技で生き残って来たオレには羨ましい」

 

「ふっ、確かに才能も力も持っていないな。だが、お前は強い。そして強くなり続けるのだろう?」

 

「当然だ。オレの成長の向きはお前達とは違うからな。大量の手札を組み合わせて戦うのが基本だったしな。禁手で正面からの殴り合いも出来る様になったが、今までのスタイルは捨てられない。オレの手札に強力な札が加わっただけだ。これをどう使っていくかでオレの強さは変わってくる」

 

「ならばオレも、お前に負けないように手札を増やすとしよう。お前達とは違って才能はあるらしいからな」

 

「言ってろ。才能が無くても、努力次第でどうにでもなる事を示してやる」

 


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