「なぁ!サッカー、やろうぜ!」
「はぁ……。あのさぁ、円堂くん。僕はサッカーやらないって何回も言ってるよね?」
目の前にいる
「えぇ~!だってお前、リフティングあんなに上手いのに勿体ないぞ!」
断る度に、同じ理由で駄々をこねる円堂。
ちょうど1週間前、足の怪我が完治していることを医者から伝えられて嬉しくなった僕は、つい河川敷でリフティングをしてしまったのだ。
そこをタイミング悪く円堂に見られ、それから毎日勧誘をしてくるようになった。
僕がサッカーをやらない理由は、そんなに難しいものじゃない。
小学生の時に足の怪我をして、完治するまで激しい運動を禁止されていたから体力が落ちたのだ。
完治した今は、遊び程度のものならやれるだろうけど、ガチの部活動にはついていける自信が無い。頑張って45分はプレー出来るかもしれないけど、90分もピッチに立ち続けるのは無理だ。
だから誘いを断っているのだ。
「とにかく僕は嫌だ」
「ちぇ~、頑固なヤツだな~」
「いや、君には言われたくないよ」
「まぁいいや。明日もまた誘うからな!」
そう言うと、手をブンブンとこちらに振って去っていった。
「他を当たってくれると嬉しいんだけどね…。それにしても、そんなにサッカー部はピンチなのかな?」
円堂の誘いは鬱陶しいけど、サッカー部の状況は少し気になる。
タイミングを見計らって、明日にでも様子を見に行こうかな。
いや、クラスメイトの木野さんがマネージャーをやってたはずだから彼女に聞こう。
「え?サッカー部の状況?」
「うん。円堂が僕のことをしつこく勧誘してくるから、そんなにマズい状況なのかなぁって気になって」
「あはは、迷惑かけてるみたいでごめんね。えーっと、今の状況は──」
木野さんが教えてくれたことを簡潔にまとめると、
・部員は木野さんを含めて8人。
・一週間後に帝国学園との練習試合
・帝国戦に負けたら廃部
との事だ。
「それはまた、マズいね」
「うん…。だから、円堂くんが"絶対に廃部にはさせない!"って部員を集めてるとこなんだ」
「そうだったんだ…。やっぱり、僕も入った方がいいのかな」
「入ってくれるの!?」
小声で言ったつもりが、聞こえていたらしい。
そんなにキラキラした目で見つめないで…!
自分で言うのもアレだけど、僕は可愛い女の子に弱い。
"弱い"とは少し違うかもしれない。
可愛い女の子に目がないのだ。
つまり、可愛ければ良し。そして好き。
要するに、僕は女好きなのだ。
だから、木野さんにそんな期待のこもった目で見られると「入部する気は無い」なんて言えなくなってしまう……。
「んー、どうしよっかなぁ」
「灰崎くんって小学生の頃はサッカーしてたんだよね?」
「え?うん。よく知ってるね」
「なら、入ってくれたら心強いよ!だから、お願い!」
前のめりにお願いしてくる木野さん。
ちゃっかり、手を握られてしまった。
「んー、じゃあ1つ条件がある」
「条件?」
「そう。条件。僕がサッカー部に入部したら、僕と1回だけデートしてくれないかな?」
「え?………デート!?」
「そう。デート。嫌かな?」
「デデデデデ、デートするくらいなんともないよ!」
もしかして、デートに誘われたことは今まで無いのかな?
"デート"というワードを聞いて顔は真っ赤だ。
そしてテンパっている。
そんな木野さんも可愛いなぁ。
「じゃあ決まりだね。よし、入部するよ」
「えっ!?いいの!?」
「うん。だって、木野さんデートしてくれるんでしょ?」
「う、うん……」
テンパっていたさっきとは違い、今度は顔を赤くして俯く木野さん。
そんなに恥ずかしいんだろうか?
まぁ、そんな木野さんも可愛いけど。
「そういうことで。さっそく今日から練習に参加するね」
そう伝えて、僕は自分の席へ戻った。