Dirty city   作:ヤザヤザ

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第4話 仕事と趣味

ジョットコースターが走り、後を追うかのように絶叫が聞こえてくる遊園地。

 

カップルなどが愉快に会話している中で、加佐登は辺りを見回して少年を探していた。

 

 

「いないな……本当にここなの?」

 

「ああ、そうだ」

 

遊園地のパンフレットで瞬はこう鼻して言った。

 

パンフレットを丸め、瞬は近くのゴミ箱に投げる。

 

丸められたパンフレットは縁に当たり、内側に入らず地面に落ちた。

 

 

「ちくしょう」

 

「投げないでちゃんと捨てなさいよ!」

 

「へいへい。分かりましたよ……うるさいやつだな」

 

「うるさくない。人として当たり前のことを言ったまでよ」

 

「そうですか。ところで、何でポケットに血の付いたナイフ入れてんの? まさか、殺人鬼? うわっ、怖いな」

 

 

瞬の発言に、加佐登は歯を噛み締める。

 

先ほど、加佐登は男の腕に刺したナイフをハンカチで包み、ポケットにしまっていた。

 

 

「これは仕方なくよ! それにあなたも銃なんて物騒なもの持ってるじゃない」

 

「ああ、そうだな。だが、その物騒なものを使って自分の身を守ってるんだぜ。しかも、この町に住むほとんど人が」

 

「なら、ナイフだっておかしくないでしょ」

 

「あのな、ナイフなんかより銃のほうが強いんだぜ。接近しないとナイフは使えないからな。それに比べて銃は接近しなくても攻撃ができる。だから、ナイフなんて使うやつはバカだけ。つまり、お前はバカってことになる」

 

「……」

 

加佐登は怒りで歯を食いしばる。

 

怒気を紛らわすため、瞬を見ないように荒々しく探す。だが、少年どころか子供すら見つからない。

 

 

「そんな探し方しても見つからないぞ」

 

「うるさい! ほっとけ」

 

「了解…………おい」

 

「しつこいな。私はほっといてって言ったでしょ。なのに――」

 

「いたぞ」

 

 

加佐登を見ずに真剣な表情で、瞬は言った。

 

先ほどの瞬と同一人物には見えないほどの様子に、加佐登は少し驚いた。

 

 

(すごい表情してるな……)

 

 

瞬が見つめているところに、加佐登は視線を向ける。

 

木材でできた床にいくつもの金属でできたテーブルと椅子が置かれている飲食スペース。

 

そこから柵で囲まれているプールみたいな人口の池。その中央には穴があり、そこにピンク色のレールが敷かれていた。

 

丁度、ジェットコースターが穴に入っている。すると、穴の縁から水が噴出した。

 

その光景を楽しそうに少年は眺めていた。

 

 

「やった! これで問題解決」

 

 

怒りを忘れ艶やかな顔で、加佐登は少年の所に近づく。

 

そんなときだった。

 

 

「見つけたぞ。少年」

 

 

少年の隣に濃紺(のうこん)色のマントを羽織った男が立ち止まった。

 

フードを被っているせいで、顔は見えない。

 

少年が振り向いた瞬間、フードの男は少年を蹴った。

 

ボールのように転がり、悲痛な声を上げて少年は腹を手で覆う。

 

 

「あ、あんた何してんの!!」

 

 

背を向けているフードの男に、激昂しながら加佐登は話しかけた。

 

 

「何のようだ女? ……まさか、この少年の母親か!」

 

 

加佐登にフードの男は凄まじい殺意を放つ。

 

 

「違う。ただ、この子に用があるだけよ!」

 

「そうか。ではその少年に何の用があるというんだ?」

 

「その子を両親のところに帰す」

 

 

加佐登はきっぱりと答える。

 

加佐登の答えに脇腹を抱えて、フードの男は笑い出す。

 

放たれていた殺意はパッと消えた。

 

 

「まさかこの町にこんないいバカがいたとは。おっと失礼した」

 

 

フードの男は笑うのを止めた。

 

 

「……だが、悪い。死んでもらう」

 

 

一瞬かのように腰から銃を出して、フードの男は加佐登に向け引き金を引く。

 

遊園地に銃声が鳴り響き、周りの人たちは悲鳴を上げて逃げ始めた。

 

そのせいで、辺りは騒がしくなる。

 

 

「……発射された銃弾を撃ち、彼女に当たらないように防ぐとはな……。さすがだ。天道」

 

フードの男は言った。

 

加佐登はバッと後ろを振り向くと、瞬がニヤリと笑って銃を構えていた。

 

「何で俺の名前知ってんの? もしかしてストーカー? それなら、その銃で自分の頭を撃ち抜いてくれたら、俺いい笑顔を見せちゃうんだけど」

 

「これまた失礼した」

 

 

フードの男は右手でフードを外す。

 

精悍な顔立ちに逆立った白髪。何度も修羅場をくぐり抜けたような鋭い目つきをしていた。

 

「私の名はジルベール・ダンジェ。仕事柄お前の名前を知ってるんだけでストーカーではない。ただお前には興味はある」

「そうか。それじゃあ、死ね」

 

 

瞬はジルベールの頭部に撃つ。だが、ジルベールは首を傾けて躱した。

 

 

「待ちたまえ。私の質問に答えてくれ、天道。なぜ貴君はこの少年を――っていない!?」

 

ジルベールはチラッと少年を見るが、そこにはもう少年はいなかった。

 

この状況を利用して逃げたのだろう。

 

加佐登は残念と思うが良かったとも思った。

 

 

「まあいいか。探す方法はある。それより、答えろ。天道瞬。何故お前がここにいる?」

 

「……わかった、話してやるよ。このバカと一緒で、さっきまでいたあのガキを両親に帰すという仕事でいる。それより、質問したい。何であのガキを探す?」

 

「いいだろ、答えてやろう。私の方も仕事で探している。()()()()というクソ仕事のせいで、あの少年を捕まえようとしている」

 

 

「はあ!?」

 

 

加佐登は驚愕した。

 

 

「自分でもクソって言ってるくらいなら分かってるでしょ? それがどれだけ最低なのか……」

 

「ああ、分かってるさ。だがな、人は仕事して稼がないと生きていけない。だから、仕方なく行うんだ」

 

 

ジルベールは加佐登に言うと、銃を瞬に向けた。

 

 

「だが、私は仕事より戦闘という趣味を優勢する。実は私の趣味は戦闘なんだ。だから、こんな強敵はほっとけない。仕事の方はロボットに任せる。人類がAIによく頼るようにな」

 

ジルベールはパチンと指を鳴らすと、近くからスキール音が聞こえてくる。

 

スキール音は急速に近づき、ジルベールの後ろにある階段から黒いロボットが現れた。

 

その黒いロボットは加佐登を襲わせたサコとほとんど同じ姿をしている。

 

違うところは色と両手がチェーンソーのような刃をしているところだけ。

 

黒いロボットは階段を降り、ジルベールを通り過ぎていく。

 

 

「あのロボットには、あらかじめ少年を見つけて捕まえるように命令しておいた。さあ、私と戦え天道!」

 

満面な笑みを見せて、ジルベールは言った。

 

 

「おい、か……えーと、傘!」

 

「加佐登よ! なに!」

 

「これ持ってあのガキを見つけて逃げろ」

 

 

もう一つの銃をホルスターから取り出して、瞬は加佐登に差し出した。

 

 

「は!? 私、銃なんか撃ったことないから――」

 

「うるせえ! いいから持ってけ!」

 

 

険しい表情で瞬は言う。

 

その顔に加佐登はビクッと驚き、銃を手にして少年を探しに走る。

 

 

「……さて、待たせたな。お前銃を握るということはわかっているよな」

 

「ああ、殺されてもいい覚悟だろ?」

 

「……」

 

 

しばらくの間、二人は黙った。辺りは絶叫しか聞こえない。

 

そのとき、爆発音がした。

 

それが合図だったのか、銃を向けながら瞬は接近する。

 

ジルベールは銃を撃つが、首を傾けて躱して今度は瞬が撃つ。

 

 

右側に飛び上がってジルベールは銃弾を回避し、空中で腰からもう一丁の拳銃を取り出して銃火を閃かせた。

 

すぐに瞬は前のめりに走り出す。スーツの裾に穴が開く。

 

ジルベールは木製のテーブルに着地し、銃口を向けて飛び上がって瞬も近づく。

 

まだ銃を構えていないジルベールは後方に飛躍(ひやく)する。そして宙返りをして両手の銃で一発ずつ撃つ。

 

瞬は前方に飛び込むように体を投げ出す。ついさっきまで瞬のいた場所に、二発の銃弾が通った。

 

地面を転がって、瞬は膝立ち状態でジルベールに応射する。

 

すでに着地していたジルベールはジグザグに動いて後ろに下がって銃弾を回避。すぐに二丁の銃を構えて引き金を引く。

 

近くのテーブルに瞬は隠れようと移動する。だが、その途中に一発だけ肩に銃弾を掠めてしまった。

 

鋭い痛みを感じて、瞬は唸り声を上げる。

ジルベールはしゃがんで、瞬に銃を向けた。

 

しかし、弾道にはいくつものテーブルや椅子の脚があった。

 

撃ったとしても瞬に弾着しない可能性のほうが大きい。

 

ジルベールは舌打ちをした。

 

 

「確かシルベスターって言ったけ? お前手強いな」

 

 

瞬はジルベールに声をかけた。

 

 

「ジルベールだ。それより、天道。分かっていると思うが、お前は追い詰められているんだぞ?」

 

「ああそうだな。銃がもう一丁あれば、勝てるのにな……あのとき、貸すんじゃなかった」

 

「そうだな。俺は二丁で貴様は一丁。圧倒的不利だ。だが、降参は認めないぞ。装填された銃を握っているからには死んでもらう」

 

「分かってるよ。とは言ってもこのままだと俺は死ぬな。ただ――」

 

「ただ?」

 

「銃撃戦ならな」

 

 

テーブルに隠れたまま、瞬はある物を投げた。

 

 

「なっ!?」

 

 

ジルベールは驚き、後半に飛んで距離を作る。

 

ある物は地面に落ちて転がって止まると、真っ白な煙を排出する。

 

 

「こ、これは!?」

 

 

ある物。それはあのとき、加佐登に間違えて取り出して見せたスモークグレネードだった。

 

ジルベールがそれに気づいたときには、視界は煙しか見えない。

 

そのとき、ジェットコースターの走行音が聞こえた。

 

 

「しまった!」

 

 

ジルベールは二丁の銃を撃ちまくる。ガキンという甲高い音が何度も響く。

 

やがて煙は消え、視界には弾痕だらけの椅子とテーブルが映った。

 

 

ジルベールは歩き、先ほどまで瞬が隠れていたテーブルを通る。そこに瞬はいない。

 

そのまま歩いていき、人工の池を囲んでいる柵に止まる。

 

 

「深さは足首程度か。だが、柵に足跡がある。なるほど。柵を踏み台にし丁度やってきたジェットコースターに飛び移って逃げるとは……」

 

 

ジルベールはうっすらと笑い出す。そしてその笑いは徐々に大きくなる。

 

しばらく笑うと、止んでいき真剣な表情になった。

 

 

「……次は逃がさん」

 

 




どうもヤザヤザです。

まさか、4話がこんな早く投稿できるなんて思ってもいませんでした。

この調子で5話も早く執筆できたらな……

それはさておき、dirty cityも徐々に終わりが見えてきました。ぶっちゃけ、早く終わんねえかなーとは思っています。

しかし、まだあのシーンを書くまで終われません。あのシーンとは何か。それはお楽しみに。

それでは。

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