走行していたジェットコースターが乗り場に帰ってきた。
安全レバーが解除された瞬間、乗車していた人たちは慌てて出口に走っていく。
「おい、待ちやがれ。誰か銃を寄越せ」
乗車していた人たちに、瞬は声をかけた。
しかし、呼びかけには誰も反応せず、乗車していた人たちは姿を消していった。
瞬は追いかけようとするが、力が抜けて膝をつく。
落ちないように掴まって、必死に耐えていたせいだろう。
「クソ、あの野郎……確かシルベスターって言ってたな」
瞬は握っている銃を見た。
今まで、様々な修羅場をこの銃でくぐり抜けてきた。
だが、それでもジルベールに圧されていた。銃の数の違いだけで。
もし、あのときもう一つの銃を加佐登に渡さなければ、窮地に陥ることなくジルベールを射殺していただろう。
しかし、過去には戻れない。
舌打ちをし、瞬は弾倉を交換する。そして出口から出ていった。
慎重に隠れながら進んで行くと、観覧車乗り場に辿り着く。
観覧車やその周辺を観察にして、先に進む。
しばらくすると、瞬は円形の入り口を見つけた。
中に入ると、騒がしい電子音が聞こえてきてくる。
瞬はエスカレーターを降りると、ゲームセンターが見つけた。
そのとき、瞬は目を見開く。
少し先にあるクレーンゲームの筐体の後ろから、布がはみ出でいた。
それはあのジルベールが羽織っていたマントの色と同じ。
(罠か? だが、有利なアイツがそんなことするか? ………駄目だ、わからない)
これが罠だとしたら、抵抗し間違いなく瞬は負けるだろう。先ほどみたいに、退避することはできない。
しかし、これが罠じゃなければ逆転のチャンス。不意をつけば勝利を収めることができる。
攻めるか逃げるかは瞬次第。
(……行くか)
瞬は音を立てないように歩き出した。
筐体に隠れながら迂回し、目的のクレーンゲームにたどり着く。
布はフラフラと動いていた。
これだけ近くに来ても罠なのかはわからない。
ここからは命を賭けた賭博。普通なら恐怖に支配して動けないのに。
しかし、瞬は恐怖を感じていない。
罠なら足掻いて死ぬ。もし、好機だったら逃さない。
だから、恐れない。
勢いよく飛び出して、瞬は銃を構える。
縞模様の服と腰に巻かれた濃紺色のパーカー。丸い眼鏡をかけた青年が視界に映った。
「え、銃!?」
青年は驚き尻餅をついた。
罠や好機ではない。疑惑の答えはただの無関係だった。
「悪い悪い丸眼鏡君。てっきり、銃で襲ってくる悪い人だと思ったんだ」
銃を下ろして、瞬は言った。
「にしてもよ。何でこんなところにいん―― あ、クレーンゲームやってたんだ」
瞬はぼんやりと眺めた。
「……ポチッとな」
操作ボタンを押して、瞬はクレーンを操る。だが、失敗した。
「あ、悪い。しくじった。やっぱりコツを使わないとできないか。まあいいか、それじゃあな」
青年に背を向け、左手を上げて瞬は歩き出す。
その瞬間、
瞬は驚愕し、すぐに体を下げた。弾丸が背中に掠った。
痛覚を堪えて、瞬は後方に飛ぶ。
床に着地すると、右足に何かが当たる。
視線を下ろすと、そこにはリュックサックがあった。
そのリュックサックは青年が置いていたものだった。
瞬はリュックサックスを拾う。そしてジッパーを開き、ジルベールに向けて中身をばらまいた。
ペットボトルや携帯ゲーム機のケースや撥などがジルベールに当たって落ちる。
すぐにジルベールは左手の銃を引き金を引いた。
瞬は銃弾を避けて、リュックサックを捨てて全速力で走る。
ジルベールは銃を撃ちまくる。
他のゲームの筐体に隠れながら、瞬は銃弾を回避する。
その光景に青年は戦慄して、叫びます声を上げた。
「うるさいぞ! というか、誰だ、貴様?」
ジルベールは片方の銃を青年に向けた。
「ぼ、僕はクレーンゲームをしていたんです。そしたらあの男の人が――」
「わかった。今すぐに消えろ」
ジルベールは低い声で言った。
「は、はい! 今すぐばらまかれたものを回収して――」
「そんなの後にしろ! ここはもう戦場だ! 殺すぞ!」
「す、すみません!」
ビシッと立ち上がって、青年は去っていく。
「……さて、隠れても無駄だ。おとなしく、姿を現して戦え、瞬!」
「断る」
瞬は飛び出し銃を撃つ。しかし、ジルベールは身を引いて躱された。
そこから、瞬は駆け出して銃を撃ち続ける。
「やっとその気になったか」
銃弾を避けて射撃するを繰り返して、ジルベールは瞬を追う。
弾切れをしたら、隠れて弾倉を交換。そして、また撃ち合い続ける。
だが、それは僅かな時間だけだった。
気づけば、先ほどのクレーンゲームのところに瞬は戻ってきていた。
「これでチェックメイトだな、天道」
ジルベールは二つの銃を構えた。
「……ああ、そうだな。弾倉はなくなったし残りの弾は一発しか残ってない。逆転はもう無理だ」
「そうだな。では、さらばだ。天道」
ジルベールは引き金を引こうとしたとき、瞬はニヤリと笑った。
「今頃、あんたの
そのとき、ジルベールの人指し指がピタリと止まる。
「……なんだと?」
「聞こえなかったのか? 今頃、あんたの――」
「何故お前が俺の家族のことを知っているんだ!!」
ジルベールは凄まじい怒声を瞬にぶつけた。
「そんなのどうでもいいだろ。さあ、早く殺しておくれ」
「答えろ!!」
「……ある人から教えてもらったんだよ。罪もない一般人を殺害した
ジルベールは大きく見開いた。
「……どうした? 早くしろよ。一般人を殺害した――」
「ヤツは一般人なんかじゃない!! 俺の妻と……まだ……幼かった息子を……殺した死んで当然のグズ人間だ!!」
鼓膜が破れるくらいの怒鳴り声で、ジルベールは言った。
「……なんだと? どういうことだ」
目を大きく開いて、瞬は尋ねる。
「聞きたいか、私の過去を?」
「……ああ、聞きたい」
瞬は真剣な表情で言った。
★ ★ ★
ジルベールは軍人だった。
祖国と大義のため、彼は働いた。
また、ジルベールは家庭を守る男でもあった。
妻やまだ七歳になったばかりの息子がいる大切な家族を持っていた。
息子は父親に憧れて、自分も軍人を目指していたそうだ。
そんなある日、隣の家の住人が強盗に襲われていた。
偶然目撃したジルベールは銃を握り、助けに行く。
強盗は簡単に無力化することはできたが、強盗には協力者がいたせいで車で逃走される。
隣の住民に感謝され、家族にも称賛された。
ジルベールは誇らしく思った。
だが数週間後、ジルベールの妻と息子は殺害される。
ジルベールは絶望するが、その殺人犯を知りたくて仕方なかった。
だから、警察からの報告を待った。
しかし、警察は捜査を中止した。
当然、納得できないジルベールは一人で殺人犯を探す。
そして犯人に辿り着いた。犯人はあのときの強盗だった。
強盗は犯罪組織の一人らしく、恐喝か賄賂で捜査を中止にしたのだろう。
裁きを下されるべき人物に裁かれないことに、ジルベールは耐えられなかった。
ジルベールは自分の誇りを捨て、家族を壊した強盗に裁きを下した。
爪を剥がし、顔の原形がわからないくらい変形されるなどをして。
しかし、それでもジルベールは満足できなかった。
だが、強盗を殺したとき、快感を感じた。
強盗みたいな悪人を殺害すれば、いつかは満足することができるのではないか。
そうジルベールは考えた。
こうして、下衆な人を殺して快感を得る戦闘狂に、ジルベールはなってしまった。
★ ★ ★
「気づいたら私は犯罪組織に所属して同僚や敵を殺していた。まあ、こんな話お前に言っても無意味だがな」
「……いや、無意味じゃないぜ」
「なに?」
ジルベールはきょとんとする。
「俺もお前と同じように、壊れてしまっ人間だからよく分かるぜ」
「なんだと!? どういうことだ、天道?」
「言った通りさ。俺も悪人を殺すことに快楽を感じる人間だということだよ」
「そうか……そうだったのか。どうやら私とお前は似ているな。……なら、ここで私の快楽のため死んでくれ」
ジルベールの顔が重々しい表情に変わる。
「……シルベ……ジルベール。お前は一つだけ言っておく」
「なにをだ?」
「それはな、お前と俺は似てないぜ!」
瞬は足元に転がっている撥を蹴り上げた。
この撥は先ほど青年のリュックからばら撒いたものの一つだ
飛んできた撥をジルベールを左腕で防ぐ。
その瞬間に、瞬は銃を撃った。
ジルベールは避けるが頬に掠めてしまう。
掠めたところから、血がだらっと流れる。
すぐ、ジルベールは瞬に銃を向ける。
瞬はクレーンゲームの筐体の後ろに逃げ込む。
「最後の一発を無駄にしたな天道!」
ジルベールは筐体に銃撃した。
「こんなものに隠れても弾丸は普通に貫通できるぞ。最後の最後に逃げるとはな……」
銃を下ろして歩き、クレーンゲームの筐体の後ろ側にくるとジルベールは立ち止まる。
そしてジルベールは笑みを浮かべた。
ジルベールの視線の先には、瞬が仰向けに倒れている。その瞬の額には
どうも、英語を勉強しようとしたら返り討ちにされたヤザヤザです。
久しぶりに、ガチャで星五を当てて愉悦状態です。
そんなことより、やっとここまで来ました。まだ、あのシーンにはちょっと距離がありますが、引き続き頑張っていきます。
それでは。