インフィニット・ストラトス 黒龍伝説   作:ユキアン

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導く蛇

 

やっぱり自前の宇宙船が欲しいなぁと思い、最終期型波動エンジンを作らせながら設計図を引いている。ベースは宇宙海賊王時代にしつこく追いかけ続けてきた改ヤマト級8番艦韋駄天をベースに選択。武装類はオレの船、改デスシャドウ級4番艦ヴリトラの物と交換する。韋駄天は武装が少なかったからな。その分、波動防壁の硬さと足の速さはやばかった。逆にヴリトラは武装とステルスに全部をつぎ込んでたからな。後、魔術炉心のでかさだな。防御と機動力は全部オレの魔力頼みの船だったからなぁ。

 

「船の設計図?」

 

「宇宙海賊王時代のライバルみたいな船がベースだな。分厚いバリアと高機動力で敵艦に接舷して白兵戦を仕掛けてくる銀河連邦最凶部隊”薩摩”の母艦。武装が航路を塞ぐ小隕石を破壊するためのもの以外一切付いていない船だ。中には陸戦隊が半数を占める変態部隊だ」

 

「薩摩って時点で分かってた」

 

「接舷されたら終わりのチキンレースだったからな。最終的には何で沈んだったか。どっかの恒星のフレアに巻かれて沈んだったかな?ハーロックのラムで沈んだったか?マイクロブラックホールの直撃だったか?」

 

「結局は沈むんだ」

 

「まあな。ヴリトラだって50年ほどで老朽艦として廃艦したしな。ああ、ちなみに後継艦なんかは存在しない。この後は宇宙のすべてが衰退していき、大戦争時代に突入。緩やかに宇宙が死を迎える。オレの最後の晴れ舞台さ」

 

そこから2000年程で宇宙が滅んだ。そしてオレはこの世界に生まれ落ちた。

 

「不老だからな。住み難くなったら宇宙に出て、ある程度したら帰ってきてもいいし、帰ってこなくてもいい。完全な異世界があることも分かった。色々と世界を旅をしてもいいな。退屈することはないだろう」

 

「旅か、いいね。楽しそう」

 

「前世じゃあ、あまりそういうゆっくりとした時間を一緒に過ごせなかったからな」

 

「そうだね。結婚してからしばらくと、子供を産んでからしばらく位だったかな。後は、最後だね」

 

それ位だな。オレは平行世界に飛ばされたこともあったけど。

 

 

 

 

 

 

 

シャルル・デュノアねぇ。どこからどう見ても女だな。面倒ごとは速攻で摘み取らないとな。ええっと、あった、この便だな。到着はまだ先か。なら先にお義姉さんに下呂らせるか。簪にも協力してもらってお義姉さんを生徒会室の椅子に拘束する。

 

「ちょっ、何でこんなに手慣れて、と言うかガムテープはともかく手錠なんて何で持ってるの!?」

 

「プレイの一環」

 

「ぷ、プレイ!?」

 

簪の言葉に顔を赤らめるお義姉さん。意外と初心だな。簪は最近拘束してのプレイがお気に入りだからな。あと、その手錠は未使用品だ。この前、壊したからな。

 

「まあ、そんなことはどうでもいい。シャルル・デュノアについてだ」

 

「ど、どうしてその名前を?」

 

「面倒ごとは大嫌いだからだ。それで、シャルル・デュノアが女だというのを知った上で受け入れているのか、学園としてはどう考えているのか、とっとと下呂った方がいいぞ。簪が暴走する前に」

 

簪がお義姉さんにカバンの中身を見せてSっ気の笑顔を見せている。中身はプレイに使う小道具だったと思うが、確かこれはないなと除外したものばかりだった気がする。案の定、お義姉さんの顔が引きつる。

 

「さらにこれ」

 

ビデオカメラを取り出してお義姉さんの全身が映るようにセットする。

 

「じょ、冗談よね、簪ちゃん?」

 

「冗談で済むといいね」

 

そう言いながら、ゲームで出てくるような殺傷能力が高そうな鞭を取り出す。

 

「ちょっ、ストップストップ!!話す、話すから!!」

 

そうしてお義姉さんは全てを下呂った。この件に関与しているのはIS学園の学園長、女性権利団体、フランス政府、そしてデュノア社。

 

シャルル・デュノア、本名シャルロット・デュノアはデュノア社の社長の愛人の子供で母親は死去。その後父親に引き取られるも腫れもの扱い。本妻に不当な扱いを受ける。デュノア社は経営が傾きつつあり、早ければ今年中にISの製造権を取り上げられる予定となっている。

 

女性権利団体はオレと織斑の奴のスキャンダルを欲していて、ハニートラップを強要しているのか。女性の権利を主張しておいて少女を生贄にしようとする真性のクズの集まりのババア共か。まとめて沈めてやろう。

 

フランス政府はデュノア社と女性権利団体に便宜を図り、戸籍を改竄。見返りに金銭と国内の女性権利団体の過激派を抑えさせるように要請。IS学園の学園長は金を受け取り、無理矢理捻じ込んできたと。なるほどなるほど。お義姉さんを解放して部屋に戻って簪と会議を始める。

 

「全部沈めるか」

 

「沈めよう。特にデュノア社と女性権利団体は。フランス政府は女性権利団体を潰せば大人しくなるね。いくらかトカゲの尻尾切りをする必要があるけど。IS学園の学園長も小悪党だけど、裏口入学なんて探せばいくらでもいるよ。まあ、見逃すのは今回だけだけどね」

 

「まずはシャルロット・デュノアを拉致するか。その後は悲劇のヒロインを演じてもらって、役目が済んだら希望通りの未来を歩ませてあげればいいだろう」

 

「まあ、それもすべて説得がちゃんと済めばの話だけどね」

 

「じゃあ、空港まで拉致しに行きますか」

 

簪と共に姿を変化させる。オレはレオの20代頃の姿に、簪はソーナの姿に変化してから影のゲートを開き、空港まで飛ぶ。遠目から様子を伺うが、歩きからして女性らしさが出ている。あと、トイレを間違えかけた。

 

「あの程度で騙せると本気で思ってるのか?」

 

「酷過ぎるよね。口に出しちゃってるし、僕は男って」

 

「こんなんでどうにかなると思ってるのかデュノア社。本気で頭が腐ってるぞ、女性権利団体。フランス政府はご愁傷様」

 

「とっとと拉致ろう。これ以上はこっちの頭と胃が心配」

 

トイレに局所的な結界を張ってシャルロット・デュノア以外誰も居ない状況を作り出し、個室から出て来た所で気絶させてから記憶を漁り予約してあるホテルに連れ込む。ISを回収し、椅子に拘束する。それから気付けを行う。

 

「目が覚めたかね、シャルル・デュノア君。いや、シャルロット・デュノア君と呼んだほうがいいかね」

 

「なっ、何を言っているんだい?」

 

「まずは君を連れ去ったことと君の事情は全て調べさせてもらったことを詫びておこう。そして我々は女性権利団体が邪魔な者達とだけ言っておこう。あの矛盾した老害どもは排除する必要がある。そのためには君に悲劇のヒロインを演じてもらう必要がある。その下手な演技は徹底的に指導することになるだろうが」

 

「……そんなに下手だった?」

 

「まだ子供の方がマシだな」

 

落ち込むが放置だ。

 

「それにこの件を蹴ってハニートラップを仕掛けると君の命の保証はない」

 

「命の保証!?」

 

「まずはこの映像を見たまえ」

 

デュノアに見せるのは先日のオレと簪の試合だ。映像を見始めると最初は驚いた顔をするだけだったが、徐々に顔が引きつり始めた。

 

「ちなみにこの二人は結婚を前提に付き合っている。何が言いたいか分かるな」

 

「十分に分かったよ」

 

「そして織斑の方だが、奴は今孤立している」

 

「孤立?」

 

「織斑に懸想している、意味はわかるか?」

 

「ええっと、微妙です」

 

「織斑のことが好きな奴らが非常識な行為を繰り返して、それに対して有耶無耶な対応しかできていないことで孤立しているのだ。比較対象の匙元士郎はちょっと好みや趣味が変わっているが優等生で社交性もあるからな。だが、孤立していることすら気づいていない。その上で聞くが、心が耐えられるか?」

 

「そんなに酷い?」

 

「報告書を読む限りでは酷いな」

 

本当は傍で見ていてなんだけどな。あれは、酷いな。イッセーより酷い。

 

「無理そうです」

 

「だろうな。そこで君にはデュノア社と女性権利団体の非道を世界に知らしめる役目を負って欲しいのだよ。無論、それが済み次第、君の希望通りになれる道を用意しよう。そのまま学園に通ってもらっても構わないし、戸籍の改竄、亡命だろうと何でも請け負おう。無論生活に必要な金も用意する。働きたいというのなら職を紹介しよう」

 

少しだけ考えさせて欲しいというので仮の住居をD×Dに移し、世間では行方不明となってもらうことにした。どういう答えを出すかはわからないが、是非とも協力してもらいたいものだ。

 

 

 

 

 

数日後、シャルロットとは別に転校生が現れた。こっちもすでに調査済みだ。ラウラ・ボーデヴィッヒ。よくこの技術力で作れたよなと思うデザインベビー。つまりは遺伝子操作で生まれた子供だ。軍で育ったために一般常識に欠け、扱いにくいという評価だ。また、織斑先生を神聖視している。ただ単に努力が実っただけなのにな。そんなことよりもっと人間性を教育してやれよ。

 

そんなことを考えているとラウラ・ボーデヴィッヒがオレの方にやってきて、頬を叩いてきた。オレはつい癖で魔力をヒットする面に集めてしまい、いい音が鳴ると同時にラウラ・ボーデヴィッヒが叩いた手を抱え込んで蹲る。

 

「いきなりのビンタは横に置いておいて、大丈夫か?」

 

「わ、私は貴様が教官の弟だと認めないからな!!」

 

涙目でそんなことを言うが、哀れだ。

 

「オレ、匙元士郎って名前でな、織斑はそっち」

 

ラウラ・ボーデヴィッヒはオレと織斑の顔を交互に見てから織斑先生の顔を見てから、顔を赤くする。

 

「あ、う、その、すまん」

 

「くくっ、構わんよ。改めて、匙元士郎だ。クラス代表を務めている。男ゆえにフォロー出来ることと出来ないこととあるが、困りごとがあれば相談に乗ろう。とりあえずは空いている席に座るといい。一度冷静に、頭を冷やした方がいい。こういう場合は一度仕切り直した方が被害は少ない」

 

「あ、ああ、そうだな。そうしよう」

 

空いている席に座ると恥ずかしそうに顔を伏せている。くくっ、なんだ、感性は普通だ。ただの子供だ。可愛らしいものだ。クラスのみんなも微笑ましそうに見ている。慣れていない環境にテンパっているだけだな。これぐらいなら十分フォローしてやれる。一限目が終わって休み時間に入ると同時にこちらから話しかけに行く。

 

「ボーデヴィッヒさん、少し良いかな?」

 

「むっ、何か用か?」

 

「なんとなくだが、こういう学園の雰囲気に慣れていないと感じてな。朝のような失敗を他にも犯さないで済むように軽くレクチャーした方が良いと思うのだが、どうかな?」

 

「どれ位の時間がかかる?」

 

「とりあえずは、昼休みと放課後を使うつもりだ。取り返しのつかないような失態を犯す前に聞いておいた方が良いと思うんだが」

 

「それは、そうだな。だが、私はやらねばならないことがあってだな」

 

「そうか。なら、そのやらねばならないことを先にこの時間で失態になるかどうかを、次の休み時間に修正案を説明しよう。ここはドイツとは全く違う法律や決まりで運用されているからな。オレは男だからか、その辺を詳しく説明されているからな」

 

「なるほど。確かに任せた方がいいだろうな。よろしく頼む。だが、ここではな」

 

「ああ、任された。話しにくいのなら筆談で、それもドイツ語で構わん。『ドイツ語で話してもいい』」

 

「『ほう、中々流暢な話し方だな。予想外だったよ』」

 

「『なあに、いずれは世界を旅したいと思っているからな。話せない言語の方が少ないさ。それで、何がやりたいんだ?』」

 

「『うむ、教官を我がドイツへと戻って来て頂きたいのだ。こんな場所は教官にはふさわしくない』」

 

「『あ~、正直に言って厳しいな。というより色々と危険だな』」

 

「『なんだと!?』」

 

「『まず、IS学園は他国の干渉を受け付けない一種の独立国だ。これは理解できるな?で、国が職員を引き抜く、つまり勧誘は勧誘と受け取られる。これがただの一般人ならそこまで過剰に反応することはないだろうが、ボーデヴィッヒさんは軍人で代表候補生でもある。つまりはドイツそのものが勧誘を行ったと取られてもおかしくない。これは非常に危ない。理解できるな』」

 

「『くっ、そんなことになるのか』」

 

「『でだ、どう危ないかを説明すると、まずはドイツがIS学園の創立に関わっているすべての国から批難されるだろう。それに対して何らかの決着をつけるためにボーデヴィッヒさんが生贄、まあ、責任を取らされる。それだけならいいのだが、過去に織斑先生から指導を受けていたんだろう?その縁を利用したとか言われれば織斑先生にも迷惑がかかる』」

 

「『何だと!?』」

 

「『かなりデリケートな問題だ。簡単にどうこうすることはできないな』」

 

「『くっ、だが、私は諦めるつもりはないぞ!!』」

 

「『だから厳しいと言っている。まあ、方法がないわけでもない。ただし、時間が掛かる』」

 

「『時間が掛かるのか』」

 

どこか残念そうにしているが、真の目的を見抜いているから問題ない。

 

「『心配ない。時間はたっぷりあるんだ』」

 

「『時間がある?』」

 

「『分からないのなら、次の休み時間までの宿題だな』」

 

休み時間が終わる1分前になったので席に戻る。ボーデヴィッヒさんが悩んでいるが、自分で考えて自分なりの答えを出すことが成長の第一歩だ。親離れができていない子供だな。留流子との間に生まれた娘に似てるなぁ。成人してもオレにべったりだったなぁ。

 

 

 




やったねシャルちゃん、生き残れるよ。寝ぼけて書いたおかげだね。

ラウラは最初から生き残る予定でした。簪と一緒に一人前のレディーへと教育し直しです。何処ぞの大尉の影響でポンコツになんてなりません。それにしても仕事はまともにできるのに微妙にズレてて微妙に意志が固いのって何処かで見たことがあるような。


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