インフィニット・ストラトス 黒龍伝説   作:ユキアン

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遊ぶ蛇

目覚ましを止めて、隣で寝ているお姫様を起こす。

 

「う~ん、抱っこ」

 

「はいはい、仰せのままにお姫様」

 

横抱きにして風呂場にまで連れて行き、全身を綺麗に洗いあげる。洗いながらもイチャイチャしないと機嫌が悪くなるお姫様にリップサービスに加えて延長戦にまで縺れ込み、落ち着いた頃には既に昼過ぎとなっていた。

 

「いやぁ~、ご無沙汰すぎて堪能し過ぎちゃいましたね」

 

「全くだ。まあ、簪、ソーナの時も似たようなものだったからな。改めて、またあえて嬉しいよ、セラ」

 

「うん、また出会えて、本当に嬉しい」

 

そう言ってセラフォルー、クラリッサ・ハルフォーフがオレに抱きつく。

 

「はいはい、そろそろ仕事に戻るぞ」

 

「そうだった。とはいっても、隊長の新しい機体の確認はする必要もない気がするのだが」

 

「仕事をしましたって対外的に知らせないといけないだろうが。報告書も上げる必要があるんだろう」

 

「それで、機体の名前は?」

 

「自分のネーミングセンスが致命的なのは分かってるからな。前世の機動兵器のデルタ系列機を参考にしているからデルタの名で登録してある第三世代機だ。魔術炉心は積んでないが、装甲なんかは簪の物と変わらない。現行の機体では相手にならんだろうな。ちょっと特殊な装置も積んでるが問題はないはずだ」

 

「特殊な装置?」

 

「なんと説明すればいいかな。こう、感受性を高めて敵意に敏感になるというか、最終的な答えが出なかった人種に改造するというか」

 

「危険なのでは?」

 

「最初期の頃はヤバかったな。システムに適合していないと性格がドンドン凶暴的になっていくし、別にそういう機能があるわけでもないのに機体の関節部分から青白い炎が上がったりしてな。技術者を皮肉って、本来の人格を燃料に燃え上がってるなんて揶揄されていた。デルタに搭載しているのはそれの最終期型で特に副作用がないタイプだ。システムを起動している時だけ感受性を高めてくれる事もできるものだ。イギリスが開発したBT兵器よりも使いやすいBT兵器を使うのにその能力が必要なんでな」

 

「どこがそのBT兵器なんだ?」

 

「4対8枚の翼。そこが分離してビーム砲台と、何機かでビームを連結させてバリアを張れる。本当は斬撃機能も付けたかったんだけど、エネルギー不足でな。機動の方にエネルギーを回しすぎた。とりあえずは試乗するんだろう?上に報告するために」

 

「いいので?」

 

「知られても痛くも痒くもないからな。武装の説明だが、まずはBT兵器、それから携行武器としてオーソドックスにビームライフルとビームサーベルにマシンガンと腕にグレネードを仕込んである。それからちょっと変わりどころでシールドが2種類だな」

 

「シールドが?」

 

「片方は裏側にマイクロミサイルを4発仕込んである。もう片方はシールドとは名ばかりのハイメガランチャーの外側にシールドっぽい装甲が追加されているだけだな。シールドが破損すると高確率で発射できなくなる」

 

「明らかに欠陥ですね」

 

「仕方ないだろうが。本来は20mの可変機体をこのサイズにまで落としたんだから。シールドは戦闘機形態の際に必須だったんだよ。変形機構はオミットしたが使えないこともないから通常のシールドと一緒にランチャーも作った。威力は折り紙つきだ」

 

「なるほど。シンプルな作りですね」

 

「BT兵器が使いやすいからな。まあ、乗ってみろ」

 

クラリッサがデルタに乗り込み起動させて簡単に手足を動かす。

 

「反応が過敏だな。それになんだろう、感覚がいつもより鋭くなっているような?これが特殊な装置の力か?えっと、ナイトロVer4.87か。Verは消しておいたほうがいいな。隊長が疑問に思うかもしれない」

 

「了解」

 

「ターゲットを出してもらえるか」

 

「数は?」

 

「とりあえず10で」

 

「分かった」

 

ターゲットドローンを10機投入し、クラリッサがビームライフルの速射で次々落としていく。

 

「FCSも問題なし。命中性に連射力に減衰率も問題なし。追加で10、機動性を高めて」

 

指示通りに前世での平均的な能力のBT兵器と同じぐらいの機動性でドローンを飛ばす。それらをグレネードとシールド裏のマイクロミサイルで誘導してビームライフルの速射で撃ち落とす。

 

「お見事。次はBT兵器の方を頼む、深く考える必要はない。ただドローンを敵だと認識して、敵を撃つと考えるだけでいい。あとは、ナイトロによって思念が増幅されてBT兵器、フィン・ファンネルが反応して自動で攻撃してくれる」

 

「そんなに楽なのか?」

 

「AIが自動で最適なパターンを選択してくれるからな。軌道イメージを想像すればそのとおりにも動いてくれるが、あまり意味は無いな。死角に隠しておくとかそういうの以外は。まあ、使ってみれば分かるさ」

 

「わかった、試してみよう」

 

「ターゲットは30出すぞ」

 

先ほどと同じ移動するターゲットを30飛ばす。それがある程度広がったところでウィングバインダーからフィン・ファンネルが飛び立つ。

 

「行け、フィン・ファンネル!!」

 

8機のフィン・ファンネルが縦横無尽に飛び回り、ビームを放って次々とターゲットを撃ち落とす。その様子を見ながら、クラリッサの死角から魔力弾を放つ。

 

「っ!?」

 

クラリッサがそれに気づくのと同時に2機のフィン・ファンネルが面状のバリアを張って魔力弾を防ぐ。その後、エネルギー切れなのかウィングバインダーに戻っていく。

 

「バリアの方も問題なく作動を確認した。中々使えるだろう?」

 

「だからと言って不意打ちですか」

 

「それは悪かったとは思う。だが、性能をはっきりと理解できただろう?」

 

「それは、まあ」

 

「このために悪魔に転生させていないんだ。不意打ちのためにな」

 

「むぅ~、じゃあこれが終わったということは」

 

「ああ、悪魔に転生させよう。体が慣れた頃に無限の力も与えるさ。宇宙が終わるその時まで、オレの隣にいてくれ」

 

「ムードがないけど、それでもストレートに求めてくれたから及第点」

 

「ムードが出るまでお預けの方が良かったか?卒業まで待ってもらうことになるぞ」

 

「それはそれでちょっとなぁ」

 

拗ねたクラリッサがデルタから降りて傍にやってくるので抱きしめて頭をなでて軽いキスをしてと、本番にまで行かない程度にご機嫌取りをする。この後は簪とラウラに合流して買い物に行かないといけないからな。

 

「続きは夜に」

 

「仕方ありませんね。着替えてきます」

 

「おう、こっちはデルタを待機形態にする作業をやっておく。あんな訳のわからないものじゃなくてドッグタグ状にしておく」

 

 

 

 

 

 

 

「隊長、次はこちらの服を」

 

「こっちも良いと思うよ、ラウラ」

 

「敢えてこういうのはどうだ?」

 

「ま、待て待て!!」

 

ラウラの訴えを無視して色々と服を試着させていく。ラウラの私服が問題だったのだ。軍服と学園の制服や体操服しか持っていなかったのだ。そんなイジメの対象になるような格好をさせる訳にはいかない。幸い簪とサイズが似ていたのでそれを着せて買い物に連れ出してきてもらった。あとはオレと簪とクラリッサでラウラを着せ替え人形にしながらとりあえず夏物と秋物を揃えていく。

 

「とりあえずはこんな物でしょう。隊長、これからはちゃんとおしゃれにも気を使ってくださいね」

 

「眼帯も元士郎がいろいろ用意してくれたから、毎日変えてみようね。あと、カラコンも2種類用意してくれてるから」

 

「う、うむ。だが、大変そうだな」

 

「おしゃれが面倒に感じると女としての終わりです。注意してください、隊長」

 

「いつまでも綺麗でいたいと思うのは女の子として当然だよ、ラウラ」

 

年をとっても若く見えると他人に言われると嬉しそうだったよな。オレはずっと綺麗だと思ってたんだけど。ソーナは女として終わるより先に体に限界が来てたし、セラも病気で女を捨てざるを得なかったっけ。

 

「ちょっとだけホームセンターに寄らせてもらうぞ」

 

「何か、ああ、スモークチップ」

 

「家から送ってもらった分を切らしたからな。ハーブ類のストックは山ほどあるんだけどな。数少ない趣味が出来ないのは意外とストレスが溜まって体に悪いからな」

 

極端に暑からず寒からず飢えず乾かず多少の娯楽があれば人は生きていける。実体験済みだ。嫁三人が逝ってから表舞台から完全に降りたからな。未開地の奥でただ生きているだけの生活をそこそこ長い年数過ごしたから。

 

「さてと、時間も余ってるし次はどうする?」

 

「遊びに行きましょう。そして初めてのことに困惑する隊長を眺めるのが楽しいので」

 

「ならゲーセンだな。格ゲーで混乱するだろう」

 

ゲーセンまで皆で行ってみると、格ゲーコーナーの端っこに超次元世紀末バスケを発見した。ちょうどいいな。この世の理不尽を思い知るが良い。

 

ジョインジョイントキィ 

デデデデザタイムオブレトビューションバトーワンデッサイダデステニー 

ナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォゲキリュウデハカテヌナギッナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーンテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーンホクトウジョウダンジンケンK.O.イノチハナゲステルモノ 

 

「はぁ?いや、まてまてまて!!」

 

バトートゥーデッサイダデステニー 

セッカッコーハアアアアキィーンテーレッテーホクトウジョーハガンケンハァーンFATALK.O.セメテイタミヲシラズニヤスラカニシヌガヨイ 

ウィーントキィ(パーフェクト) 

 

「唖然としている隊長も慌てている隊長もかわいいですね~」

 

「いやいや、まてまて、一体何だ!?」

 

「何って、基本コンボ?」

 

「何処がだ!?10割丸々持って行かれたぞ!!」

 

「大丈夫だ。全キャラに10割コンボが存在しているから。ワンチャンあれば勝てるから」

 

「明らかに設計ミスだろう!?」

 

「ああ、開発者が設定ミスった結果に生み出された10割コンボだからな。これが特定キャラにしか使えないならクソゲーだったが、修羅共によって基本的な10割コンボが全キャラで発見されてしまったからな。評価が一周して神ゲーになった」

 

「それを初めてやる私にやらせたのか!?」

 

「何事もチャレンジだな。さて、ラウラでも簡単にできそうなのは、おっ、クライシスが空いてるな」

 

ガンシューティングなら最初の説明を受ければ問題ないだろう。普通ならな。今度は簪とラウラが二人プレイで始めるのだが、1-2終了時点でのスコア差がひどい。なにせラウラが銃弾を叩き込めたのは耐久力がそこそこある中ボスとボスだけでそれ以外は簪が全てヘッドショットで撃ち抜いている。しかもハンドガン縛りでだ。

 

1-2終了後にラウラが落ちこんで銃を置いてしまったのでオレが代わりにプレイする。銃の扱いはオレの方が上なので7割ほどの敵を撃ち抜いて最後まで突き進む。

 

「ハイスコア更新っと。G・Sでいいか」

 

「私はK・Sっと」

 

クライシスを終わらせてからラウラとクラリッサを探すと若干ヤサグレ気味のラウラがスロットをやっていた。スロット特有の滑りに苦戦しながらも目押しでそこそこ増やしているようだ。たまに演出に見入って手が止まっていることがあるが、あれ?あの作品ってこっちの世界にもあったんだな。前世じゃ映像化は無理だった漫画のはず。演出が控えめになっているが、内容は同じ臭いな。高田さんの変身に目が死んだようになったな。アニキィ・ベルは初見ではきついよな。あっ、ダブルバイセップスが決まった。続いてエリちゃんと極左の担任の先生との討論会が始まったな。さすがロジカル魔法少女。ラウラが完全に圧倒されてるな。

 

クラリッサはその後ろでパチンコをやってる。げっ、ループ物の魔法少女が魔女と戦ってるやつじゃないか。まさかのお供が元凶とかいう最悪の作品じゃないか。お菓子の魔女は帰れ。

 

「ラウラ、大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃない。なんなのだ、この作品は」

 

「見ての通りだ。アニキィ・ベルだから仕方ない。基本的にキャラが濃い奴しかいないぞ。モブも基本的にキャラが濃い。大人が多い作品の所為か、ガチの時の気迫は中々の物だ」

 

「いや、あの格好とか」

 

「お笑い芸人みたいなものでいずれ慣れる。女装や男装なんて本人が意識しなければ恥ずかしくもなんともない」

 

「ほう、ではしてもらいましょうか」

 

いつの間にかクラリッサがパチンコをやめて話を聞いていたようだ。

 

「別に構わんぞ。なんなら夏のイベントにでも参加するか?」

 

「衣装はこっちで指定するから、それでお願いね。ラウラも何かコスプレしよっか」

 

「わ、私がか!?」

 

「ラウラなら可愛く着飾れるよ。なんなら今やってるプリベルのコスプレでもしてみる?」

 

「じゃあオレ、桜の全力モード」

 

「「却下」」

 

「ええ~、じゃあ何よ?」

 

「そりゃあ、プリベルでしょう」

 

クラリッサが即答する。

 

「中途半端に似合って失笑物だろうな」

 

「そこはお化粧とか詰め物でなんとかなるって」

 

簪がフォローなのかどうか分からない発言をする。別に女装のコスプレぐらい構わないけどな。

 

「まあ、なんとかするけどよ。2代目でいいよな」

 

「仕方ないね」

 

「いや、私もやるのか?」

 

「大丈夫、私もクラリッサも一緒だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お行きなさい、ブルー・ティアーズ!!』

 

『行け、フィン・ファンネル!!』

 

6機のブルー・ティアーズと8機のフィン・ファンネルが空を飛び、ブルー・ティアーズが一方的に叩き落され、オルコット自身もビームライフルの連射を受けて落ちる。そのまま凰へと向かい見えないはずの弾丸を事前に察知して1発も当たらず、すれ違いざまのビームサーベルとグレネードを受けて終わる。そして織斑はハイメガランチャーの直撃を食らってアリーナのシールドに叩きつけられて気絶した。篠ノ之は訓練機ということで手加減したのか武器は使わずに格闘だけで倒した。全員が落ちたところを簪が拘束してオレがいるピットとは逆のピットに投げ捨てている。

 

「ラウラ、お疲れ様。こっちで見る限り問題はないみたいだけど、何か問題はあったか?」

 

『いや、特に問題は見当たらない』

 

「それじゃあ、本来行う予定だった航続距離のテストだ。一度補給に戻ってくれ」

 

補給に戻ってくるラウラとデルタを眺めながらどうしてこうなったのかと頭を痛める。

 

ことの始まりは寮の屋上で燻製の準備をしていた所にクラスメイトの吉野さんがやってきたことから始まる。アリーナで織斑一行が痴話喧嘩で暴れていて同じアリーナで訓練中の春野さんが流れ弾で落ちて気を失っていると連絡が入ったのだ。春野さんはすぐに回収されて保健室に運ばれたそうだが、一度織斑たちにはお灸をすえる必要があると思い現場に向かった。

 

そこではデルタの航続距離のテストのために準備していたラウラが他の生徒をかばいながら避難させているところだった。簪も同じようにクラスメイトに聞いたのかアリーナへとやってきた。オレと簪は状況を確認してラウラに織斑たちを無力化するように指示を出した。結果、4対1にも関わらず速攻で片がついた。向こう側の被害は胸部周りの装甲と武装が中破程度だろうな。まあ、それぐらいは許容範囲だ。

 

「こっち、終わったよ。全員先生に預けておいた」

 

簪が作業を終わらせて傍にやってくる。

 

「全員反省文の提出みたいだけど、絶対に懲りてない。同じことを繰り返し続けるようなら」

 

「ほっとけ。勝手に孤立していくだろう。排斥はその後で良い」

 

あれはもう手遅れだ。イッセーよりも物事を考えていない。あいつは性欲が全面に押し出ていたが、時と場合をわきまえるし、周りに被害が出そうなら自分に向けてどうにかしていたからな。

 

補給が終わったラウラと簪で航続距離のテストに入る。学園から南東方向に飛べるだけ飛ぶ。出来る限り手を施してあるとは言え、ISでは2000kmに届かず1800kmでエネルギーが切れる。その後は簪と二人で抱えながら更に200km程飛び、海に浮かぶ1隻の船に着艦する。

 

「万能航行艦オーフィスへようこそ。案内役のシャルロット・エアです」

 

「隊長、お疲れ様です」

 

オレ達を出迎えてくれたのはクラリッサと、元シャルル・デュノア、現シャルロット・エアだ。シャルロットは先日、フランス政府と調整が済んだために大暴露会見を行い、デュノア社及び、女性権利保護団体とそれに関わっていた者たちへ致命的なダメージを与えた。フランス政府は他に脅されていたと言う形に持っていったためにそこまで批難は行っていないが多少のダメージを受けている。その分の補填としてジェガンタイプの装備一式の設計図とガンダリウムγ、プラスシャルロットがD×Dで働きたいというからインコムを追加で裏から回してある。これで世界で唯一の量産型の第3世代機保有国になれるだろう。そんなことがありシャルロットには雑用と秘書業を任せることになっている。

 

「大山さん、整備と補給をお願いします」

 

「お~う、任せておけ。もう少ししたら航宙テストに移るから艦橋に上がってるといいぞ~」

 

大山敏郎の姿に化けている分体にISの整備を任せてロッカールームに向かう。

 

「オレは何回か来ているから案内はいらない。先に艦橋に上がっておくからな」

 

女性陣と分かれて男性用のロッカールームでISスーツの上にジャケットとズボンを履いてからロッカールームを出て艦橋に上がる。

 

「う~っす、調子はどうだ?」

 

「前世のヴリトラと違って小さいから軽いな。それでもさすがは改大和級。硬いにも程がある」

 

航海長を務めるのは宇宙海賊時代の友人だったブレス・アーカディアンの姿に化けている分体だ。良い年したおっさんだったが、家族思いの男だった。息子を救うために盾になって散ったと噂で聞いたが、その時は隣の銀河に居たために何もしてやれなかった。

 

「大気圏離脱位は問題ないだろうが、チェックだけは確実にな。この世界じゃ初めての万能航行艦だからな」

 

「戦艦の間違いだろう?武装は隠してあるだけで」

 

「うるさい奴らが多いだろうからな。隠しておけばいい」

 

「まっ、そうだな。気軽に宇宙にまで上がれる船だからな」

 

「万能航行艦位、ISが宇宙開発方面で使われればすぐにでも作られていたはずなんだけどな。コアを使ってPICを発生させて外部供給で出力を上げれば浮かばせるぐらいなら簡単だ。その後に別に推進機関を取り付けるだけだ。しかも、ジャンボジェットのエンジンだけで大気圏離脱ぐらい簡単にできる。で、宇宙にまで行けば、あとはPICだけで十分だ」

 

「あとは気密や装備なんかの問題もあるが、それだけだな」

 

「大気圏突破なんてシールドで簡単にできるしな」

 

そこまで話したところでシャルロットが他の三人を連れて艦橋に上がってきた。それと同時に艦長室から椅子ごとサコミズ・シンゴの姿に化けている分体が降りてくる。

 

「ようこそ、万能航行艦オーフィスへ。私が艦長のサコミズだ。早速だけど、これより航宙テストに入る。空いている席に座ってもらえるかな?」

 

「航宙テスト?」

 

「ボーデヴィッヒさんだったか?君はオレの左の席に座ると良い。一番眺めがいいからな。何をやるのかすぐに分かる。簪は念のためにレーダー席に、元士郎は機関制御席、クラリッサは艦内制御席、シャルロットは通信制御席でいいだろう」

 

ブレスの指示通りに席に座る。久しぶりに発進シークエンスをちゃんと踏んでみるか。

 

「錨をあげろ」

 

「錨をあげます」

 

「補助エンジン、動力接続」

 

「補助エンジン、動力接続。補助エンジン低速回転1600、両舷バランス正常」

 

「微速前進0.5」

 

「微速前進0.5」

 

「波動エンジン内、エネルギー注入」

 

「補助エンジン第2戦速へ」

 

「波動エンジン内圧力上昇、エネルギー充填90%」

 

「補助エンジン最大戦速へ」

 

「エネルギー充填100%」

 

「現在補助エンジン最大戦速」

 

「エネルギー充填120%フライホイール始動」

 

「第1から第4フライホイール始動」

 

「波動エンジン点火まで5、4、3、2、1」

 

「接続」

 

「点火」

 

「オーフィス、発進」

 

波動エンジン点火と同時に艦首が上がり、徐々に高度を上げていく。

 

「船が空を飛ぶのか!?」

 

「万能航行艦の名は伊達じゃないんでね。上げ舵45、大気圏内飛行用主翼展開」

 

そして30秒ほどで大気圏を離脱して宇宙にまで上がる。

 

「大気圏の離脱を確認。主翼収容」

 

「補助エンジン、メインエンジン共に異常なし」

 

「艦内及び艦外に異常ありません」

 

「短距離レーダーに登録されていない人工衛星を確認」

 

「スクリーンに投影して」

 

スクリーンに投影された人工衛星を見て失笑する。なんだよあのデザインは?

 

「人参?」

 

ラウラの疑問にサコミズ艦長が答える。

 

「十中八九、篠ノ之博士の物だろうね。宇宙に関する法律は曖昧なことが多いし、確認も難しいから勝手においてるんだろうね。マーキングだけはしておいて、テストを進めよう」

 

「了解」

 

「頼むね。それじゃあ、当初の予定通りこのまま月軌道まで向かおう。第2戦速」

 

「了解、第2戦速。月軌道到着まで30分ってところでしょうな」

 

「そうか。さて、それじゃあ皆、今のうちに船外服に着替えておいで」

 

「「船外服?」」

 

ラウラとシャルロットが首を傾げている。まあ、わからんだろうな。

 

「宇宙服のことだ。折角来たんだ、宇宙遊泳を楽しむと良い。オレ達大人は色々と点検があるからな」

 

サコミズ艦長とブレスに勧められたこともあり、全員が船外服に着替えに再びロッカールームに向かう。着替え終われば空間汎用輸送機輸送機コスモシーガルが格納されている左舷格納庫で待機する。他の皆が来る前に先に月軌道に到着したとアナウンスが流れる。

 

「お待たせ」

 

月軌道に到着してから5分ほどで皆がやってきてシーガルに乗り込む。操縦するのはクラリッサだ。

 

「いつの間に操縦なんて覚えたんだ」

 

「隊長が学園にいる間は基本的に暇なのでD×D所属の機体の操縦を習っているんですよ。これでよしっと。こちらシーガル、発進準備完了」

 

『サコミズだ。何かあってもすぐに動けるように短距離レーダーの範囲から離れないようにね。それじゃあ、楽しんでくると良いよ』

 

ハッチが開き、格納庫内のクレーンがシーガルを宇宙へと出す。

 

「シーガル、発艦します」

 

クレーンのロックが外れ、シーガルがゆっくりとオーフィスから離れる。何か事故があっても大丈夫なように艦橋からも肉眼で見える位置に移動してシーガルが止まる。

 

「それじゃあ最終確認だ。メットとかの不調、接触不良は?」

 

「問題なし」

 

「メーターの見方なんかは」

 

「大丈夫」

 

「最後に安全帯の装着」

 

「準備よし」

 

「ハッチを開けるぞ。心の準備は良いな?」

 

と確認を取りながらハッチを開ける。

 

「ちょっ、心の準備が!?」

 

「呼吸が苦しいやつ挙手。よし問題なし」

 

そのまま全員を引っ張るように宇宙へと飛び出す。

 

「ようこそ宇宙へ。楽しんでいけよ」

 

「これが、宇宙なのか。なんだろうな、とても、そう、寂しい場所に感じる。どこまでも大きいのに、受け入れようという感じがしない。海とは全く別だ」

 

ラウラの感性はなかなか良いな。宇宙は優しい存在じゃない。生物が生きられないからじゃない。宇宙は何も産み出していないからだ。ただそこにあるだけの空間。それが宇宙。暫くの間宇宙遊泳を楽しんだ後に月に降りることになる。そこでもラウラは何かを感じ取ったみたいだ。子供の感受性ってやつはすごいものだな。ラウラのニュータイプへの覚醒は近いだろうな。

 

 


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