転生魔女さんの日常   作:やーなん

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今回は前々から試してみたかった掲示板テンプレートを試してみました!!


迫害について

 副長の警視庁脱走未遂事件は、その日の夕方には全国で知らない者は殆どいないほどの騒ぎとなった。

 夜には記者会見を開き、警察は発生した被害等などを世間に公表。

 協力者やケロべロスの活躍もあって、無事鎮圧したとだけ説明した。

 

 詳しく報告を求める報道陣に対して、詳しくは犯人の取り調べの後にと言ってはぐらかすように記者会見を終える警察サイド。

 数多の思惑や憶測が飛び交う中で、その日は終わりを告げることとなる。

 

 

 その数々の思惑の一つが、とある教会にて静かに始まろうとしていた。

 その日の夕方にカタリナは自室で学校から出された宿題をしていた。

 

 そんな彼女の元に、一本の電話が入った。

 

「もしもし、カタリナです。何か用ですか?」

 携帯電話の着信音が鳴り、通話ボタンを押して耳に当て、相手を確認することもなく彼女は言った。

 

『私よ、ニュースは見た?』

「ニュースですか、なぜです?」

 相手は魔女だった。

 

『その様子じゃあ、まだのようね。

 なら落ち着いたまま、テレビでも何でもいいからニュースを見なさい。電話は繋げたままにしておいて』

 カタリナは少し困惑したまま、自室を出た。

 この教会にテレビなんてものは無かった。

 神父の部屋に、業務用の古いパソコンがあるくらいだ。

 

 カタリナは彼に言ってそれを借りて、ウェブニュースのページを開いた。

 そしてその日の速報を見て、目を見開く。

 記事の見出しは、こうだった。

 

『連続ツァーラアト事件の犯人、警視庁内にて逃走劇を敢行!?』

 

 カタリナは即座にその記事を読んで、とりあえず犯人が鎮圧されたことに安堵した。

 

「知らせてくれて、ありがとうございます」

『用件はそれだけじゃないわ。この後掛かってくる電話に出てちょうだい』

 魔女は言いたいことだけを言って、通話を切った。

 それに対して何か言うよりも早く、再びカタリナの携帯電話に着信音が鳴る。

 

 今度は画面の通話相手を確認した。

 登録していない番号だったが、魔女に言われるがままに電話に出た。

 

「はい、もしもし」

『私です。魔術師です』

 

 

 

 §§§

 

 

 副長に対する取り調べは、警察病院の病室にて行われることとなった。

 彼が脱走を試みて重体になり、その手術が終わった翌日という異例の早さだった。

 

 そんな性急な取り調べを行うこととなった理由は、彼の回復を待つのはあまりにも危険だという上層部の判断だった。

 その上、今は世論やマスコミにせっつかれ、事件の全容の解明を求む声も大きかった。

 なにせ警視庁内で起こった前代未聞の大事件なのだ。

 お偉いさんの首がいくつもすげ変わりが起きていて、その引継ぎに誰もが苦労している。

 

 結局、彼の取り調べを行うのは伊藤刑事に押し付けられる形になった。

 調停人である魔術師の助言を受けて、警察関係者は彼一人のみ。

 その周囲を魔術師や化粧屋やティフォンで固めるべきという普通ならありえない状況も、この混乱の中では警察側は頷かざるを得なかった。

 

「それでは、取り調べを始める。

 そちらの名前は──」

「刑事さん、この場では彼を副長、と」

「ああ、そうだな」

 調停者たる魔術師が遮り、本人の前で名前を呼ぶのは呪術的な理由と思い至り伊藤刑事は頷く。

 

「ふん、昨日も言ったが、いったい何を聞き出そうって言うんだ」

 副長の姿は、傍から見れば痛々しい。

 ベットに横たわった彼は、全身に包帯が撒かれたミイラ男さながらだった。

 骨折した足は吊り下げられ、露出しているのは口元と目元だけという有様だ。

 その上で、手足をベルトで拘束されている徹底ぶりだった。

 

「まず、ツァーラアト事件ついて。

 容疑者十一名に対し、呪術を教えて犯行を促したのは間違いないんだな?」

「そうさ。そんなこと確認して何になるんだと言っている」

「確認は大事だ。取り調べとはそういうものだ」

 副長の舐めた態度に伊藤刑事も慣れたようにそう答えた。

 

「次は動機だ。なぜそのようなことを行ったんだ?」

「ではどんな理由なら納得するんだ。理不尽な動機なんてこの世にありふれている。

 俺が呪いを教えた連中もそうだったさ。逆恨みの奴も居たし、的外れな恨みを抱いているのも居た。それはもう知っているはずだ」

 まるで煙に巻くようなその物言いに、伊藤刑事も眉一つ動かさない。

 

「どんな理由であろうとも、だ。それとも、理由もなくあんな犯行に及んだと言うのか?」

「確かに、理由はある。だがそれを言ったところでどうなる。

 私の犯した罪が軽くなるとでも? そもそも、私が大人しく刑に服するとでも?」

 鼻で笑う副長は、すっと片手を上げた。

 ベルトで拘束されているはずの彼の動きに、伊藤刑事も目を見開く。

 

「アレクサンドリアのカタリナの逸話には、車輪で拷問されそうになった彼女がそれに触れた時、独りでにそれが壊れたという話がある。

 そいつを拘束するのは事実上不可能ってところだろうな」

 病室の端で、化粧屋がそう説明した。

 彼女はティフォンの手に持たれていた。体の修復が間に合わず、首だけの状態だったが。

 

「今の私がこうであるのも、一時的なものに過ぎない。

 それとも私を処刑するか? 日本の処刑方法は絞首だったな。つまりは首の拘束だ。それで私を殺せると良いな」

 小馬鹿にしたように副長は煽る。

 そこに強がりや虚勢は無かった。自分が強者である自負がそこにあった。

 

「こいつ、ふざけやがって」

 どこまでも非協力的な態度に、伊藤刑事も頭に来ていた。

 だがその時、彼の持つ携帯電話に着信音が鳴る。

 

「病院ですよ。それに取り調べのための時間は十五分だけと医者に言われているんです。電源を切ってください」

「ああ」

 やけに強い口調で魔術師に促され、伊藤刑事も違和感を覚えながらも頷いた。

 

「切り口を変えようぜ、伊藤ちゃん。

 おい、ツァーラアトには触媒としてハンセン病の病原体が必要なはずだ。

 それをどこで調達したんだ?」

 化粧屋が専門家らしい切り口で尋ねた。

 

「ふッ、ここだよ」

 副長は笑った。そして自分の頭を指差す。

 

「どういうことだ?」

「伊藤ちゃん、こいつが触媒もなしにどうして暴れられたかわかるか?」

「いや」

「我々は一つの魔術を極めると、触媒や呪文などを必要としなくなるのだ。勿論限りはあるがな」

「おいおい初耳だぞ、それ」

 ティフォンの補足情報に、伊藤刑事も驚愕を隠し切れない様子だった。

 だが同時に納得もしていた。魔術とはもっと面倒でコストが掛かるのに、化粧屋を始めとした面々は息をするように魔術を行使する。

 

「説明は難しいんだが、魔術を行使する感覚ってのが分かると、自分の魔力だけである程度の過程を省略できるんだなこれが」

「自転車で走れるようになる工程のようなものですよ。

 最初は一人で走れなくても、補助具をつけて徐々に走れるようになっていき、やがて一人で走れるようになる。

 最終的に補助具は必要なくなるのです」

 化粧屋と魔術師の説明は、まるで魔術が術者の体の一部として定着していくかのような物言いであった。

 或いは、魔術そのものが人間の機能として拡張されると表現すべきか。

 

「そうだ、ツァーラアトは私のかつての記憶から引き出した呪いだ。

 それを呪符として道具に移すことなど、容易いことだ」

 それが、副長の犯行の手段だった。

 

「今生はそうなのかもな。じゃあ、前世ではどうだったんだ?」

「なに?」

「前世でその呪いを習熟する過程で、病原体は必要だったはずだ。

 それはどこで手に入れたんだ?」

「おい、それは今関係のない話だろう」

「いえ、大事なことです。動機が知りたいんでしょう?」

 化粧屋の問いの内容に伊藤刑事を咎めたが、魔術師はそのように口を出した。

 

「どうなんだ? ええ?」

「かつて、同じ時代を生きた貴様が問うのか、化粧屋」

「教えてくれよ」

「ふん、ハンセン病の病原などあの時代、幾らでも手に入っただろう」

「そうだったな。特にお前みたいなユダヤ系の人間には有り触れたモノだったのかもな」

 化粧屋がその言葉を言った直後だった。

 大怪我しているにもかかわらず、副長が急に体を起こした。

 

「それ以上言ってみろ、後悔することになるぞ」

 それは、明確な殺意にあふれた言葉だった。

 

「あなたの前世の知り合いから聞きましたよ。

 あなたはユダヤ人の隔離施設(ゲットー)出身だと」

 彼の殺意に満ちた視線が、化粧屋から言葉を引き継いだ魔術師に向けられる。

 

「総長から、あの人から聞いたのか!!」

「ええ、あなたは彼が任務で焼いたゲットーの生き残りであり、才能を見込んで弟子にしたのだと。

 一つ聞かせてください、あなたは彼を恨まなかったのですか?」

「恨む? 馬鹿なことを!! 

 あの人はあの掃き溜めから私を救ってくれたのだ!!」

 意外なことに、副長の言葉には嘘は無かった。

 彼はかつての上司に対して、尊敬と畏敬の念を抱いているのは間違いなかった。

 

「私が居たのは、ゲットーの中でも特にハンセン病患者の隔離地域だった。

 同じ被差別人種の中でさえ、差別される立場の人たちが暮らしていた掃き溜めの中の掃き溜めだったよ。

 なぜあの人が我々の住処を焼いたかわかるか? ペストが蔓延したから、などと尤もらしい理由で領主が処分したかったからだ!! 

 ただの弾圧だよ。体のいい見せしめだ。どうせ殺すなら、一番下から切り捨てる。当然の話だ」

 副長は笑っていた。せいせいしたと言わんばかりに。

 

「弱い立場の人間は、そうやって徹底的に迫害される。

 私は総長に拾われてようやく迫害される側ではなく、迫害する側に回ったのだ」

「なるほど、それが動機か」

 そんな彼の言葉を受けて、ティフォンが納得したように頷いた。

 

「どういうことだ?」

「単純な話だろ。もういいだろ、教えろよ」

 それだけで動機に思い当たる点が見当たらなかった伊藤刑事を尻目に、化粧屋が自白を促した。

 

「お前たちだってわかっているだろう? 

 どうせ、この国も我々のような異能者を差別するようになる。

 あれは禁止、これも禁止、あれこれはここでは禁止、ここは異能者お断りです……時間が経つに連れて、この国は我々にも住みにくくなっていくだろうさ」

 くつくつ、と副長は笑いながら言う。

 その場にいる異能者三人はそれを否定しなかった。

 

「私は思ったよ。なら私は、どうせ差別されるのなら、侮蔑ではなく畏怖の方が良いとね」

 それは、ある種の狂気だった。

 もう二度と、絶対に、弱者の側に回らないという、執念だった。

 

「だから、だからお前はもっと別の弱者を増やそうとしたのか!!」

「それの何が悪い。弱い立場の人間から、更に弱い立場の人間を作る。

 この国でもかつては行っていたことだろうが。お前は自分たちの歴史を否定するのか?」

 全てを理解し、伊藤刑事が激高する。

 それを、副長は馬鹿馬鹿しいと嘲笑っていた。

 

「私の目的は、既に達成されている。

 ああ喜んで投獄されようとも。だがそれは、私に対する畏怖と恐怖にて行われるものだ。

 決して、ゴミのように侮蔑され、蔑まれ、追いやられるわけではない!!」

 狂ったような哄笑が、副長の口から漏れ始める。

 

「馬鹿が。仮に私たちが差別されるとして、その切っ掛けや遺恨を残そうとし始めたのはお前じゃないか。

 ──恥を知りやがれ。お前が侮蔑され、差別されるのだとしたら、それはその救いようのない性根のせいだろうよ」

 副長はそんな化粧屋の侮蔑の視線に気づかずに笑い続けた。

 そうしなければ、また差別される側に回る恐怖から逃れられないとでも言うように。

 

 

 

 §§§

 

 

「先輩!!」

 副長に対する取り調べは面会時間が終わってしまい、それで終了になったのだが。

 

「どうした、妻鳥。そんなに慌てて」

 ここは病院だぞ、と続けようとした伊藤刑事だったのだが。

 

「は、配信されてます!!」

「はぁ?」

「今、先輩が行った取り調べの様子が、ネットで中継されて配信されていたんです!!」

「んなッ!?」

 彼の言葉に、今日何度目かわからない驚愕で目を見開く伊藤刑事。

 

「いったいどうなってる、いったい誰が!?」

 彼のその疑問は、すぐに解消された。

 

「レプ、反応はどうだ」

「はぁいマスター。くひひ、それはもう賛否両論!! 

 警視庁にも問い合わせが殺到してるみたい。マスコミも大騒ぎ!!」

 魔術師が虚空に視線を向けると、そこにはスマホを持ったレプが可笑しそうに笑っていた。

 

「魔術師殿、いったいどういうことだ!!」

「この一件は、取り扱いを間違えればこの国でも我々の排斥運動さえも始まるだろうと懸念しました」

 我々の、と言う言葉で伊藤刑事は気づいた。

 化粧屋も、ティフォンも、妻鳥の言葉に全く動揺していないということに。

 二人もグルだったのだ。

 

「事前の調査から、犯人の動機は推察できていたので。

 彼の言葉から、その動機を世間に話してもらう必要がありました」

 それが、まさしく一般人と異能者の間を取り持つ調停者としての判断だった。

 

「警察やマスコミを通じては、彼への攻撃材料を世間に与えるだけに終わる。

 ただの悪者として、ただの犯罪者として忘れ去られるでしょう。

 それではバランスが悪い。それに一石を投じる必要があった」

「悪いな伊藤ちゃん、あんたのお仲間にはちゃんとお前は知らされてなかったって説明してやるからよ」

 体が有れば手を合わせて謝っていそうな雰囲気の化粧屋に、伊藤刑事はへなへなと病院の廊下に崩れ落ちる。

 

 これから彼に一つ分かることがあるとすれば、警視庁に戻った時にいったいどんなことを言われるかわからないということだけだった。

 

 

 

 ……

 …………

 …………

 

 

『魔術師さん考察ファンスレ part208』

 

402:名も無き弟子たち ID:UxT6E9rGC

 レプちゃん、遂にやりおった

 

403:名も無き弟子たち ID:hdAP3d3R8

 やらかしてるのはいつも通りな気が

 

404:名も無き弟子たち ID:eGWYRlqLN

 今回ばかりは許されんのじゃね? 魔術師さんはどうしたのよ

 

405:名も無き弟子たち ID:FVq+G+5X7

 レプちゃん今回ばかりは魔術師さんの指示で動いてたっぽいゾ

 

406:名も無き弟子たち ID:ZH143QOzq

 やっぱり取り調べの可視化は必要だな(白目)

 

407:名も無き弟子たち ID:7unmMkzpB

 てか、魔術を極めた連中が思ったよりヤバい件について

 

408:名も無き弟子たち ID:fUCcslzbp

 道具も何も無しにあれだけ暴れられたんだろ? 怖いよ

 

409:名も無き弟子たち ID:cOzIL4ory

 犯人にも同情できるが、やり方間違ってるよな

 

410:名も無き弟子たち ID:+nj+/lIPZ

 同情する必要あるかあんなクソ野郎? 

 

411:名も無き弟子たち ID:Ym10vtdsn

 一理はあるっしょ、手段がすべて台無しにしてるが

 

412:名も無き弟子たち ID:EBfFKL2Fh

 ユダヤ系人たちの迫害の歴史はガチだからなぁ

 

413:名も無き弟子たち ID:bNmuPcvUv

 というか女の声、この間出てた化粧屋じゃね? 

 画面に映らなかったけど声オタの俺に分かる

 

414:名も無き弟子たち ID:QyYzZ662p

 これ、魔術師さん警察敵に回さない? 

 

415:名も無き弟子たち ID:cP5pQEFL5

 >>413

 なぜわかるしww

 でも魔術師さんも警察に協力してるから化粧屋もそうじゃねって考察は前にあったな

 

416:名も無き弟子たち ID:FOeXC7c9n

 >>413

 てか、犯人が化粧屋言うてたぞ

 拡散されてる動画の一つ見返したし確実

 

417:名も無き弟子たち ID:eeLtQFr/E

 ってか、よく生放送中にBANされなかったな

 普通警察の圧力とか報道規制とか掛かるもんじゃないの? 

 

418:名も無き弟子たち ID:0uqeb+xjT

 報道規制は記者に対してな気ガス

 

419:名も無き弟子たち ID:9XH2r7Iv6

 レプちゃんの呟き見てみ、運営に何回も配信停止されかけたけど弾いたって言ってる

 一番やべーのレプちゃんじゃね? 

 

420:名も無き弟子たち ID:4cfhfZ/4N

 画面越しにリアルダイレクトアタックできるからな、あの妖精(震え声

 

421:名も無き弟子たち ID:iWs5/aclb

 >>420

 あれ以来、露骨にアンチが減ったよな

 相手が実害を与えてこれるってわかると何も言ってこなくなるとか、だっせーのww

 

422:名も無き弟子たち ID:eIJ10gUpQ

 ま、確かにアンチはウザかった。レプちゃんはああいうキャラでいいし

 アンチはアンチスレだけにしてほしいわ

 でもレプちゃんショック事件はマジ許さねー!! 通院費返せ!! 

 

423:名も無き弟子たち ID:p4vX272Yf

 犯人も言ってたけど、最近は魔術を試したって動画を上げただけで運営に消されるしな

 何でもかんでも禁止ってなるのは時間の問題では

 

424:名も無き弟子たち ID:A4VIzwsBs

 いやいや、どう考えてもなんて魔術は公序良俗反するやん

 馬鹿な事やってる連中もごまんといるし

 

425:名も無き弟子たち ID:s1V4kBLdX

 今のところ、魔術師さんのチャンネルも無事だ

 そのうち何らかの配信があるだろうから、それを待とうぜ

 

426:名も無き弟子たち ID:E7sFcCNWi

 魔術関連の動画が消される中、今や魔術師さんのチャンネルは聖域だもんな

 BANしたらどうなるか、運営もわかってるんだろう

 

 

 

 

 掲示板の反応を見て、魔術師は自身の思惑が上手くいったことを悟った。

 彼は調停者。世論が自分たちに攻撃的になりすぎても、擁護しすぎるのもよくないと考えていた。

 逆に異能者が一般人たちを害ししすぎるのも、肩入れしすぎるのもよくないとしている。

 

 今回の配信騒動は警察との関係悪化を考えれば、出来る限りやりたくない手であった。

 それでも、彼はやらなければならなかった。

 

 ──調停者として公平であれ。

 そのゲッシュを遵守するために。彼は自分が思う限りをするのだ。

 たとえそれが、ケルトの英雄たちが辿ったような破滅の道でも。

 

 

「私の行動は思惑通りでしたか? ──イヴ」

 彼が警察病院の駐車場の日陰に視線を向けると、そこには日焼けとは無縁そうな人形めいたアルビノの女が居た。

 

「安心しなさい、警察の方には手を回しておくわ。

 あの刑事も、悪いようにはさせない。あなたに対しては、ふふ、私が何もしなくても連中はどうにもできないわ」

 白い日傘の持ち手をくるくると回して弄びながら、それは言った。

 

「……やはりどうしても、あなたは協力してくれないのね。

 あの副長が言った言葉は避けられない未来よ。私たちへの理解が深まれば深まるほど、国家という群体は私たちを束縛しようとするでしょうね。

 私は、私たちは、その未来やその先の破滅を変えることができる。

 それでも、あなたは協力をしないのでしょうね」

 女の言葉は、説得をしようという意思を感じられなかった。

 彼女がどう言葉を尽くそうとも、無駄だと分かりきっているのだ。

 

「あなた方に肩入れすれば、それはそれで公平さを欠きます。

 私はあなた方がやろうとすることの先でも、同じように調停者で居るだけです」

「自分から何も変えようとしないくせに、偉そうに」

 ふん、と不愉快そうに女は鼻を鳴らした。

 その言葉は彼の本質を突いていたので、魔術師も何も言い返さなかった。

 

「……“預言者”を訪ねなさい。

 それであなたの考えが変わらなければ、私も何も言わないわ」

 白い女が頭上から日傘を振り下ろすと、その姿が一瞬隠れた合間にそれの姿は消えていた。

 

「“預言者”?」

 残された日傘だけが、物言わず熱したコンクリートの上を静かに転がっていった。

 

 

 

 

 

 




最近気づいたのですが、ハーメルンに読み上げ機能なるものが追加されているようですね。
これ、脱字や変な文章になっていたら一発でわかるので便利です。
それでも誤字などを取り切れないのが辛いところです。誤字を発見の際にはお手数ですが報告お願いします。

そしてようやく、副長の話を終えることができました。
それてそしてようやく、一部の最後のキーパーソンである預言者について言及できました。
それがいったいどういう存在なのか、こうご期待!!

次回はまた魔女さんたちのターン!!
の、予定です。

では、また!!
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