やはり俺の青春ラブコメの相手が魔王だなんて間違っている。   作:黒霧Rose

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第22話 魔王とは、万人が手放した理想を追求する者である

 

「というわけで、どうやったらプロムが実行出来るかを話そう」

 

全てを告白した翌日、俺は奉仕部の部室にやって来ていた。

 

「そうね・・・現状、相手が私の母さんと姉さんだものね・・・身内が迷惑をかけるわ」

 

「いや、構わん。片方に至ってはいつもの事だし」

 

「そうなのよね・・・」

 

雪ノ下はいつものアタマイターポーズをする。久し振りに見たけど様になってんなーホント。

 

「比企谷くんとしては何か考えはあるの?」

 

「一応あるにはある」

 

「それはどういう?」

 

「二者択一」

 

「・・・はぁ。あなたの考えそうな事ね」

 

「実際のところ現実的なのがこれしかない」

 

「ん?ん?どゆこと?」

 

何やら話についてこれない様子の由比ヶ浜。どうしてあなたはこういう時は元の頭の少し弱い人に戻ってしまうんですかね。

 

「要するに、彼は当て馬を作って無理にでも納得させようとしてるのよ」

 

「・・・それって、どっちも無理って言われたらどうするの?」

 

ほら、こういう所は鋭い。やだガハマさんったら痛いとこ突いてくる〜。

 

「ま、そんときは無理にでも押し通すしかない。『だったらやってやるよ!』みたいな感じで強行されるよりかは幾らかマシな方を管轄下で行った方が安全だからな」

 

「最早ただの脅しでしかないあたりタチが悪いのよねこの案」

 

相互確証破壊みたいなもんだ。そっちがそのつもりならこっちもそのつもりだというアレ。体育祭の時にも言ったな。

 

「・・・それをやるに当たって、あなた、ちゃんと自分の立場を分かっているのかしら?」

 

「分かってる」

 

「生徒会の人間が生徒会のプロムに対するアンチテーゼで対応するって正気の沙汰ではないわよ」

 

へっ、と俺は得意気に笑って見せる。

 

「何かしらその気味の悪い笑み。とても嫌な予感しかしないのだけれど」

 

それは体験談ですかそうですか。ごめんなさいねこんな気色悪い笑みしか出来なくて。

 

「問題無い」

 

「その心は?」

 

「俺は生徒会と奉仕部を兼部しているという形式をとっているからだ」

 

「・・・・・驚いた。あなたもまともなことが言えるのね」

 

「え」

 

え、そこなの?

 

とまぁ、それは置いておいて。

 

そう、俺は何かの手札になるように兼部という形式をとっている。まさかここでそれが役に立つとは思いもしなかった。手札は増やしておくものだと痛感させられる。

 

「奉仕部としての比企谷八幡のプロムと、比企谷八幡が所属する生徒会のプロムとをぶつける」

 

「・・・そうね。それでいきましょう」

 

「よ、よし!あたしも頑張るよ!」

 

新生奉仕部、出陣である。

 

 

 

 

 

「これからこっちに顔出す事が少なくなると思うが、構わずにプロムを進めてくれ。プロムは必ず開催する」

 

「・・・ま、先輩がそう言うのならやりましょうか。ていうか、元々そのつもりですし」

 

生徒会室に入った俺は、生徒会メンバーにそう告げる。勿論、奉仕部が当て馬を作るのは伏せた上でだ。それを伝えてこっちのプロムがおざなりな物のままだったら意味が無い。

 

とは言え、俺も俺で可能な限りはこちらのプロムにも参加する。流石にそれは収まりがつかない。

 

「思ったんですけど、そもそもなんでプロムが反対されてるんですかー?」

 

「ま、向こうの言い分的には高校生らしくないってやつだな」

 

後はOBやOGなどからの多少のやっかみもあるのだろう。私達の時はこんなの無かったのにーとかいうアレ。ハッキリ言って超めんどいしどうでもいいよな。だからなんだって話だ。『俺達の頃はな』って言ってくる上司くらいウザイ。ハハッ、働きたくねぇなマジで。

 

「はぁ、それは聞きましたけどー・・・高校生らしくってなんなんだって話ですよね」

 

ウンウン、と役員の皆様が頷く。

 

「それに、あのおばさ・・・雪ノ下さんの態度もなーんか気に食わないんですよねー。『私は正しいのよ』みたいなあの感じ」

 

ちょっとー?それ完全に愚痴に切り替わってるから。ていうか、今おばさんって言いかけたよね?むしろ殆ど言ってたよね?どんだけ怖いもの知らずなんだこの生徒会長様は。

 

「・・・せめて、はるさん先輩だけでもこっち側だったらな〜」

 

「・・・」

 

なるほど。そういう考え方もありか。

 

確かに、言われてみればそうかもしれない。

 

仮に保護者会が相手だとしたら、何故あの人まであちら側に居るのかは多少の疑問が残る。雪ノ下の母の意向だったり、従わなければいけない何かがあるのだろうということまでは分かるが、あの感じ・・・と言うか、彼女の性格上そこまで向こうに入れ込んでいるというのもあまり考えられない。

 

 

・・・一応視野に入れておくか。

 

 

 

 

「生徒会が手出し出来なかったアプローチをやる方が当て馬として現実性があるというのが私の意見ね」

 

同感だ。生徒会だからこそ出来ることがある反面、生徒会だからこそ出来ない事がある。

 

「・・・つまり、外部との連携をとる。なんてのはどうかしら」

 

「賛成だ」

 

例えば、雪ノ下が今言ったようなことだ。謝恩会という総武高が独自でやるイベントは外部との連携をとることを前提とされておらず、あくまで関係者のみで行われる。無論、生徒会は学校における生徒の代表という立場なのでその枠組みを壊すことが出来ない。

 

故に、その生徒会が出来ない事を可能とした全く違うプロムを作ることが俺達には出来る。

 

「・・・海浜総合とかは?」

 

「なるほど、盲点だったわ。確かに、二度も合同イベントを行った高校なら前歴がある以上現実性があるわね」

 

由比ヶ浜の発言に雪ノ下が頷く。

 

海浜総合か・・・またあの横文字を聞かなきゃ行けない時が来るんですね。

 

「あとは・・・」

 

「交渉次第、だな」

 

「そうなるわね」

 

海浜総合然り、保護者会然り・・・結局のところ、全ては交渉次第という事になる。どれだけ中身があれど、交渉を間違えれば全てが水の泡だ。

 

「何か策はあるの?」

 

「・・・・・・一応、お前の母親に対する方なら考えはある」

 

「意外ね。そっちの方が難しいのに」

 

「まぁな。流石に俺や生徒会、無論奉仕部だけだと手に余る」

 

でしょうね、と言わんばかりに雪ノ下は頷く。流石は身内、あの2人の強さや厄介さはここに居る誰よりも分かっているようだ。

 

「つまり、最強の助っ人を用意する・・・それも2人。しかも片方は迷惑かけても俺の心が全く痛まないというオプション付き」

 

「凡そあるプレゼンの中でも最低最悪とも言える代物ね。それで、その人は?」

 

「葉山隼人って知ってるか?」

 

「・・・呆れた」

 

「ヒッキー、隼人くんのこと嫌い過ぎでしょ」

 

お互い様だ。俺もあいつもお互いを嫌っている・・・なんなら、面と向かって言い合ったまである。

 

「でも、どうやって隼人くんに協力してもらうようにするの?」

 

由比ヶ浜は首を傾げながら俺にそう質問する。

 

「部長会ってやつがうちの学校にはある。要するに、生徒会と同種・・・部活動の代表者達の集まりみたいなもんだ」

 

これは生徒会に入ってから知ったことだが、部長会もそれなりの権限を持つ。例えば、学校や生徒会に対して予算の要求や意見をしたりなどだ。そして、今回のプロムにはこの部長会の面々も協力するという形で話がまとまっている。

 

「なるほど。肩書きを通しての協力を要請するのね」

 

「そっか。あたし達のプロムになっても、生徒会のプロムになっても、どっちをやるにしてもゆきのんのお母さんと陽乃さんを納得させなきゃいけないもんね」

 

「そういう事だ。そのためには切れるカードを切る。それが例え、嫌な相手だろうがな」

 

そう俺が言い切ると、雪ノ下と由比ヶ浜は目を見開いた様子で俺の顔を見る。

 

「・・・なんだよ」

 

「・・・いえ、頑なに1人でやろうとしていたあなたがそうするとはね・・・それも、まさか葉山くんを出して」

 

「うんうん」

 

「・・・意地を張るのは辞めたんだよ」

 

目を逸らし、そう答える。あれは結局のところ奉仕部に対する『比企谷八幡』で居続けるためのものだ。それは昨日の時点で終了したのだ。

 

「んっんん・・・それで、あなたの言うもう1人の最強の助っ人って?」

 

咳払いをした雪ノ下は、まるで俺を試すように笑いながら俺を見る。

 

 

 

 

 

 

「裏ボスを倒す最凶のメソッドは、ラスボスを味方にすることだ」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、当て馬か」

 

「話が早くて助かるよ」

 

夜、由比ヶ浜に頼んで葉山との時間を作ってもらった俺は公園に居た。葉山はブラックコーヒーを、俺はマッ缶を、なんだか対照的だと心の中で苦笑してしまう。

 

「しかも、生徒会としてのプロムに参加している以上はどの道君に協力せざるを得ない・・・最悪だよ」

 

「そういう事だ。観念して少し力貸せ」

 

「それが人にものを頼む態度かい」

 

「生憎と頼る事には慣れてないんだ」

 

ふっ、とお互い少し笑い手に持っているそれを飲む。

 

「・・・正直なところ、俺は君のその変化に追いつけていない」

 

「何の話だ」

 

「短い付き合いだが、間違いなく君は変わった。今までの君なら俺にそんな頼みはしてこない・・・先を越されたような気分だ」

 

葉山隼人もまた、『葉山隼人』を自分に押し付けている。

 

その予感はあった。

 

こいつのその誰かさんに似た仮面のような何かは、俺達のそれと大差ない。

 

「聞いておきたい事が2つある」

 

「答えるかどうかは別問題だぞ」

 

「俺が君に・・・いや、奉仕部のプロムの方に協力するための対価だと割り切ってくれ」

 

「・・・・・・分かった」

 

そう言われると弱い。

 

「今、比企谷はどうしてプロムを開催させようとしている?」

 

「・・・」

 

昨日より前の俺だったら、間違いなくその答えはあった。それは偏に、『俺』を終わらせるためであり、雪ノ下や奉仕部との関係を完全に断つためだ。実際問題として、『比企谷八幡』を理解してくれるだろうという押し付けをあの2人にしていたのも事実・・・ともすれば、あの人の言っていた共依存は始まっていた。それを終わらせるためと、俺はそう答えていただろう。

 

 

なら、どうして俺はその理由を失ってもプロムを開催させようとしている?

 

一度始めた手前、収まりがつかないからか?

 

どこかで責任を感じているからか?

 

 

 

 

否、どれも否である。

 

 

 

 

「あの人に対する責任と、感謝を込めてだ」

 

 

 

 

「あの人・・・・・・ああ、そういう事か」

 

葉山も納得したらしい。

 

「そういう事なら、尚更聞かなきゃいけない」

 

「・・・」

 

 

 

 

「比企谷にとって、陽乃さんはいったいなんだ?」

 

 

 

 

色々ある。

 

魔王だとか、怪しいとか、怖いとか、綺麗だとか、シスコンだとか、面倒だとか、あとは、共犯者だったりな。それこそ、挙げればキリがない。

 

 

それでも、今の俺が・・・比企谷八幡が思う雪ノ下陽乃とは何か。

 

 

そんなの、決まっている。

 

 

「寂しそうな人だ」

 

 

「・・・比企谷、答えになってないぞ。俺は印象を聞いてるんじゃない、比企谷にとって陽乃さんはどういう存在かを」

 

「分かってる」

 

分かってる。これが答えになっていないことくらい。

 

「俺は多分・・・求めてるんだ。どうしようもない『それ』を、あの人に求めてるんだ」

 

「・・・・・・なら、今の君のやり方は間違っている。君がすべきなのは、そんなことじゃないはずだ」

 

お前だけだ、お前だけがそれを言ってくれる。面と向かって、真っ向から俺を徹底的に否定してくれる。生徒会も、奉仕部も、あの人でさえやってくれなかったことをお前はしてくれる。

 

お前が葉山隼人でよかった。

 

お前を嫌いな理由が、それで良かった。

 

「それも分かってる。だから、俺は証明するんだ」

 

「何を証明するんだ?」

 

「あの人が寂しそうで、今、俺が手を伸ばしていい理由はきちんとあるって証明する」

 

葉山は驚いたような顔で俺を見続ける。その後、少しだけ悔しそうに目を伏せるとコーヒーを煽った。

 

「あの人は、興味のないものには構わない。構いすぎて壊してしまうことはあるが」

 

「こわ」

 

「・・・そして、雪ノ下さん以外の特定の人物に肩入れすることはもっと無かった・・・この意味が分かるだろ?」

 

「・・・」

 

「比企谷・・・君が陽乃さんを想うその感情はきっと」

 

「知ってるよ」

 

それ以上は言わせる訳にはいかない。

 

それだけは、他人に言わせてはいけないことだ。それくらいは分かる。

 

 

 

だから、今はこれで納得してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

「希うって言うんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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