人骨を見つけた俺はその牢屋に入り亜人の骨を見つめた。
恐らくこの骨はリファナという子の骨だろう、ジキル博士に持ち帰れば、リファナのクローンが造れるな。
「龍二、骨がどうかしたのか?」
「え?いや、この骨を持って帰ろうかなと思って」
「王よ、ここに確か、亜人の子供がここにいたはずです」
「知ってるよ?、そこで寝てる(気絶)キールってガキもな」
「なら勇者の仲間なのであろう?殺すか?」
「いや、たいして強くねぇから放っておけ」
「そうか……分かった」
リファナはグラマー形態を解いてロリ形態に戻った、そしてリファナの遺骨を少し回収して地下牢から出ると、外が何やら騒がしかった。
「やれやれ、久しぶり牢から出れたかと思えば……」
「そう言うなよドラグリア、俺はお前の力を見てみたいんだけど良いか?」
「良いでしょう。ならば、『ファミリア・バット』」
ドラグリアは右手を夜空に掲げると指先から数百の蝙蝠型の使い魔が現れた、蝙蝠達は蜘蛛の子を散らすように空に飛んで行った。
「おいおい、蝙蝠を飛ばしてどうするんだ?」
「脱出路を見つける為に町中の偵察に行かせました」
「へぇ〜ら管狐といい、蝙蝠の使い魔といい上級魔物は便利なスキルを使うなぁ、あー羨ましい」
「お主の不死身には敵わんよ」
「はぁ!?
「直ぐに治るではないか!」
トゥリナと俺が喋っていると、ドラグリアの使い魔が数匹戻って来てドラグリアの指先に再び吸収された。
「ふむ、なるほど」
「ドラグリア、どうだ?なにか分かったか?」
「どうやら勇者が乗り込んで来てるようです」
「尚文だな。そういやキールやメルティを助けに来るんだったな」
「王よ、如何致します?」
「盾の勇者は後回しだ、まずタイラントドラゴンレックスが優先だ」
「御意、タイラントドラゴンレックスの封印されている場所はこちらです」
俺、トゥリナ、ドラグリアは石碑に向かって行くとそこには既に封印を解かれたタイラントドラゴンレックスが尚文達を追いかけて行く所だった。
GYAAAAAA!!
「ちっ、遅かったか!!」
「妾が行って呼び戻そう、待っておれ!」
トゥリナはグラマー形態になり、タイラントドラゴンレックスを追い掛けた。
「ドラゴンレックスよ!妾じゃ!トゥリナじゃ!」
トゥリナが呼び掛けるとタイラントドラゴンレックスは尚文達を追い掛けるのをやめて、トゥリナを見つめた。
何やら様子がおかしい……。
「グルルルル……」
「レックスよ、妾が分かるかえ?」
「おい!お前!」
「ん?なんじゃ話してる途中だと言うのに」
トゥリナが下を見ると、フィーロに乗った尚文とラフタリアが大通りから見上げてトゥリナに声を掛けてきた。
「なんじゃ?妾に用か?」
「こんな所でそいつを止めるな!また暴れるだろうが!」
「やれやれ、お主が盾の勇者かえ?」
「だからなんだ? 邪魔を するな!ラフタリア!フィーロ!」
「はい!」
「うん!」
盾の勇者達はトゥリナに攻撃を仕掛けようとしたその時、ドラグリアの使い魔達がラフタリアとフィーロの行く手を阻んだ。その間に俺とドラグリアはトゥリナと合流した。
「龍二よ、どうする?ここで盾の勇者と戦うか?」
「ちっ、めんどくせぇ野郎だな。仕方ない、戦うか」
俺がストームブリンガーを抜くと、尚文は盾を構え出しながら叫んだ。
「またお前か、化け物!!」
尚文は龍二を見つけるや否や俺を化け物と呼び捨てた。完全に敵意丸出しだと言うのが直ぐに分かった。
「俺が化け物?いい響きだなぁ……そう、俺は化け物さっ!」
「今度は負けません!」
「フィーロだって!」
「上等だよ、3対1だろうが負ける気が」
「我が王よ、ここは私が……」
ラフタリアとフィーロは俺に仕掛けようとして応戦しようとしたら、ドラグリアが引き止め、俺の目の前に立った。
ドラグリアの力を見るのには相応しい相手だ、ドラグリアに任せよう。
「盾の勇者、僭越ながらこの吸血鬼ドラグリアがお相手致す」
「なんだアイツは!?ラフタリア!フィーロ!来るぞ!」
「はい!」
「トゥリナ、ここは私がやる。タイラントドラゴンレックスを頼むぞ?」
「任せておくのじゃ」
「え〜?んじゃ、お手並み拝見と行きますかね」
俺はどっしりと建物の屋根に座って高みの見物を始め、トゥリナは暴走しているタイラントドラゴンレックスを食い止めに行った。尚文はドラグリアに攻撃を指示する。
「ラフタリア!フィーロ!あの蝙蝠男に気を付けろ!」
「はい! はぁっ!」
「はーい やぁー!」
「我らの邪魔はさせん!『ファミリア・バット』!!」
ラフタリアとフィーロのコンビネーションと同時にドラグリアは使い魔を放った。
「『ヘイトリアクション』!!」
尚文のスキルにより使い魔は何故か尚文に一斉に向かっていった。
何回か見た事のあるスキルだな。まったく、勇者ってのは味方にすると便利だけど、敵に回すとめんどくせぇスキルを使うな。
ファミリア・バットを封じられたドラグリアは何が起こったのか理解出来ていなかった。
「なに!?私の『ファミリア・バット』が効かぬだと!?」
「ラフタリア、今だ!!」
「はぁっ!」
ガキン!
ドラグリアは右ハイキックでラフタリアの剣を受け止めた。
「美女を蹴り殺すのは、赤子の血を飲む程容易いのだが?構わないな?」
「ならやってみなさい!フィーロ!今よ!」
「分かった!お姉ちゃん!『はいくいっく』!」
「それは卑怯だろ。『ファスト・ダークネス・ヘルファイア』!!」
「きゃぁ!」
フィーロは俺の横槍であるファスト・ダークネス・ヘルファイアにより吹き飛ばされた。
まったく、理不尽なもんだな。寄って集って1人を3人で攻め立てるとは、そんな世の中間違ってるよ。何?勇者なら何してもいいのか?信念を持つ魔物は黙って殺されるべきなのか?それは違くないか?
距離を取ったドラグリアは俺に頭を下げる。
「王自らお手間を掛けさせてしまい、申し訳ございません」
「良いってことよ」
「使い魔が通用しないならば、なら接近戦と参ろう、『ブラッドシェイドキック』!!」
ドラグリアの右足がボコボコと血が滴り落ちて纏い始め、ラフタリアの顔を目掛けて仕掛けた。ラフタリアは蹴りをかわしたが、ドラグリアの蹴りの遠心力で飛び散った血がラフタリアの目に入った。
「うっ!!」
「隙あり!!」
ドスッ!!
「ぐっ……目がっ!?」
「ラフタリア!!」
「盾の勇者、お命と血を頂く!!覚悟!!」
「ちっ……!!」
尚文が盾を構えると突然、辺りに霧が立ち込め始めた。
これはまずいな、”奴が来る”。
「待てドラグリア、ここは引くぞ!!」
「王よ、何故止めるのです!?」
「この霧を見て何も感じないか?」
俺に促されたドラグリアは辺りの霧に気付いた。
「この霧、いつの間に……承知しました」
「トゥリナと合流して帰るぞ」
「ならば、タイラントドラゴンレックスはいかが致します?」
「悔しいが諦めよう。今フィロリアルクイーンに出会ったら不味い」
「承知しました……では、『ファミリア・バット』!!」
ドラグリアは使い魔を再び出して目くらましにする為に放った。
「待て!化け物!!」
「また決着はおわずけだな。んじゃ、またな尚文?」
最後に尚文に声をかけて俺とドラグリア、トゥリナはファミリア・バットに紛れて姿を消した。