元太刀の勇者は立ち直れない   作:ボトルキャプテン

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第28話 鬼と猿

俺は魔物を倒すエキスパートであり、俺の唯一の天敵である狩猟具の勇者絆は俺にトドメを刺そうとした瞬間、巨大な斬撃が俺と絆の間に入って来た。だが、絆はギリギリに斬撃をかわした。

 

「なっなんだ!?」

「斬撃……?」

「龍二様!ご無事ですか!?」

「ああ、これ外してくれ!!」

「はい!」

 

リファナはトラバサミを外して俺を解放してくれた。

 

誰かは知らんが助かったな。

 

絆はスリングで斬撃の発せられた場所を狙った。

 

「誰だ!」

「よぉ……狩猟具の勇者、会いたかったぜ」

「てめぇは俺らが相手だ。猪八戒、沙悟浄の仇は取らせてもらうぜ」

「お前らは!?」

 

絆の先には、侍の鎧を纏って角を2本生やした鬼の魔物と黄色い道着、赤い帯に金色の冠と鎧に背中に赤と金色の旗を4本背負った猿の魔物がいた。

 

「あんた、ちょっと離れてな」

「ここは俺たちに譲ってくれ」

「あっああ……分かった」

「龍二様、ここはあの方達に任せましょう!」

 

俺とリファナは絆から離れて猿と鬼の魔物の様子を伺った。絆は驚いた様に魔物達の名前を叫んだ。

 

「【酒呑童子】!そして、【孫悟空】!?お前ら生きていたのか!?」

「残念だったな」

「俺たちは辛うじて生き残ったぜ?」

「くっ、あの【落とし穴】で倒したと思ったのに!!」

「鬼の首領と斉天大聖を舐めんじゃねぇぞ?そんなもんで殺られるかよ」

 

酒呑童子と悟空はそれぞれの武器を取り出して絆と睨み合いを始めた。

 

酒呑童子の武器は……太刀とは違って刀の柄がとても長く刃はさほど長くなかった、おそらく”長巻”と呼ばれる武器だろう。悟空は絵本やテレビなどで見た事がある”如意棒”を肩でトントンしていた。孫悟空は元々凶悪な妖怪だったと聞いた事があるな……。

 

「龍二様、あの方達は一体……?」

「ああ、あの2匹の妖怪は、鬼の首領と呼ばれた酒呑童子と斉天大聖の孫悟空だ。あんな強力な魔物までいるのか……。リファナ、あの2匹の邪魔するんじゃねぇぞ?」

「はい……。あの方々からはとてつもない魔力と力を感じます……」

 

リファナは酒呑童子と悟空の覇気に怖気付きブルブルと震えていた、そして、凶暴な魔物と狩猟具の勇者との戦いが始まった。

 

「行くぞオラァァァ!」

「豚と魚の仇じゃゴラァ!!」

「上等だぁぁぁぁ!!」

 

酒呑童子の長巻と絆の包丁が激しくぶつかり合って鍔迫り合いを始めた、その隙に悟空は如意棒で絆の顔面をフルスイングして吹き飛ばした。

 

女の子相手に容赦なく攻撃する2匹には感服するな、仲間にしたい……。

 

瓦礫の中から絆は顔から血を流しながら立ち上がった。

 

さすがは勇者だな丈夫な体をしている。

 

「年頃の女の顔に傷つけやがったな……」

「知るかボケ」

「てめぇの顔を歪ませて街に捨ててやんよ」

「やって見ろや魔物共!!」

 

絆は包丁から弓に変化させて距離を取りつつ矢を放って来た、だが悟空の如意棒で全て撃ち落とされた。

 

「酒呑童子、アレ使ってくれ」

「おうよ、『鬼火』!!」

 

酒呑童子は左手に巨大な青い火球を作り、悟空にトスした。

 

何をする気なのだろうか?

 

「行くぞ、酒呑童子!!」

「よっしゃ、オラァァァ!」

 

悟空はトスバッティングの要領で如意棒で火球をフルスイングして弾丸ライナーの様に絆に向けて打ち付けた。青い大爆発を起こして絆はガードをしてやり過ごしたが、手に火傷を負った。

 

「このっ……クソがァァァァァァァァァ!!」

「ちっ、外したか。顔面狙ったんだけどな」

「外すんじゃねぇよ、酒呑童子!!」

「ちっ、次は必ず殺してやる!!覚えてろ!」

 

手を負傷した絆は、勇者の転送魔法で姿を消していった。

 

なんとか勇者の撃退に成功したな、助かった……。

 

「ちっ、逃がしたか」

「まぁ良いじゃねぇか」

「そうだな!」

 

酒呑童子と悟空はハイタッチをして勝利を分かち合っていた。

 

なんともナイスコンビな感じがする。

 

俺とリファナは唖然としていた。

 

「すげぇ、強ぇなおい」

「こんな強力な方達もいるんですね……。勉強になりました」

「おっと、あんたら無事か?」

「見ない顔だな、どっから来たんだ?」

「話すと複雑なんだ。実はな────」

 

俺とリファナは酒呑童子と悟空に自分が魔物である事と異世界から来た事を説明した。

 

彼等なら四凶武器の在処を知っているかもしれない。

 

檮杌(とうこつ)の棘鉄球?ああ、知ってるよ」

「あんないわくつきの武器が欲しいのか?」

「ああ、その四凶武器の1つをもう持っている」

 

俺は魔剣ストームブリンガーを酒呑童子と悟空に見せた、すると2匹は驚いていた。

 

「お前すげぇな、こんなすげぇ呪いにかかってんのにピンピンしてるのか」

「凄まじい魔力の剣だな。そっちの嬢ちゃんは普通なんだがな?」

「えっ!?あ、あのなんかすいません……」

 

リファナは格の違いを思い知らされシュンとしていた。

 

これから強くなればいいだけの話しだろう。

 

すると悟空からとある提案を持ち出した。

 

「行くとこないんだろ?、だったら俺達のアジトに来ねぇか?」

「他にも仲間がいるしな、【氷の女王】に嬢ちゃん鍛えて貰おうぜ?」

「そうなのか!?頼む!俺達を連れてってくれ!」

「氷の女王?それはどんな方なんでしょうか?」

「まぁ行けば分かるさ」

 

俺達は街を離れ人里離れ、荒れた大地に案内されたそこには氷で造られた城がありそこの中には様々な魔物達が蔓延っていた。

 

「見た事のある魔物ばっかりだなぁ」

「わ、私ちょっと怖いです……」

「氷の女王はこの先だ。あんたらを先に紹介しておく」

「ああ、頼むよ」

 

悟空と酒呑童子は氷の扉を開けた、そこには白いドレスに身を包んだ女性が玉座に座っていた。

 

物凄く冷たい目線を感じる……。

 

俺とリファナは膝を着いて頭を下げた。

 

「酒呑童子、悟空、この者達はなんですか?」

「狩猟具の勇者と戦闘をしていた者たちだ」

「強い魔力を感じたから助けた」

「ふむ……なるほど……あなた名前は?」

「福山龍二と申します」

「ふーん……。それでそっちのあなたは?」

「リファナと申します、女王様」

「ふむ…………」

 

氷の女王はリファナをまじまじと見つめていた。

 

この重苦しい雰囲気はなんなのだろうか?

 

「酒呑童子、悟空、龍二にこの城を案内させてあげなさい。魔竜様には私が報告して置きます」

 

「あいよ。んじゃ、龍二はこっちだ」

「あっ龍二様!?」

「あなたは私の傍にいなさい」

「えっ……?」

 

俺はリファナを置いて謁見の間を後にした。俺はリファナが心配になり、後ろを振り返った。

 

「なぁ、大丈夫だよな?」

「嬢ちゃんか?まぁ、心配すんな」

「また、アレ思い出しちまったのかもな」

 

アレ?

 

「”アレ”か……そうかもな」

「アレ?アレってなんだよ」

「そのうち話す、とりあえずここの城を案内する四凶武器の事はその後だ」

「ああ、分かった」

 

俺とリファナは異世界の魔物達のアジトである氷の城に身を潜めた。


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