元太刀の勇者は立ち直れない   作:ボトルキャプテン

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第32話 同盟

俺は図書館を出てキョウと合流し、キョウと共に刀の勇者が治めている国、レイブルに向かった。キョウが本の勇者になって転送魔法が可能になったのが幸い助かって簡単に到着した。レイブル国の見た目は……簡単に言えば日光江戸村っぽい感じに近い感じで国民達の服装は江戸時代より発展した幕末の時代の着物を着ていた。

 

「勇者の趣味で国の造りが違うのか?向こうは洋風だったぞ?」

「そうですね、勇者次第で国が変わる様です」

「龍二の世界の人間は変わってんだな」

「なんだろ……懐かしい感じがする」

 

しみじみ味わっている酒呑童子をスルーしてキョウから色々情報交換をして様々な事を聞き出すことが出来た。

 

「そういえば、こっちにも災厄の波はあるんだろ?」

「ええ、あります、3日前ですかね?その時は悟空さん達は絆や他の四聖勇者と戦って多くの仲間を犠牲にしたはずです」

「ああ、猪八戒と沙悟浄が殺られて、最近だと他の波でガーゴイルと女郎蜘蛛が殺られた」

「俺の世界でもあちこち災厄の波が起こってるんだな。俺の世界でも知らない間に何匹の仲間達が殺されたんだろう」

「そうなのですか、そちらの四聖勇者を倒してないのが吉でしたね、波の間隔が狭まりますから、こちらの世界では四聖勇者は絆と【シルディナ】という【札の勇者】のみですね」

 

やっぱりな、波で強制参加させれる魔物達は生き残った奴はほぼいないだろう、悟空と酒呑童子はボスに選ばれなかっただけでも運が良かったな。

 

話しに夢中になっているとあっという間に大きな屋敷にたどり着いた。

 

ここに刀の勇者がいるんだろうか?

 

キョウが扉を開けて奥に進むとそこには 見覚えのある顔をした男が上座に座って酒を飲んでいた。

 

「おお、キョウじゃないか、どうだ?お目当ての本の勇者になれたか?」

「ええ、彼らのお陰で、【アクセル】……また昼から酒ですか?天才術師とも呼ばれた男が」

「良いんだよ、ここは俺の国だからな!そいつらは?」

 

男が俺、悟空、酒呑童子を舐めるように見ると悟ったかのように酒を飲み続けた。

 

見た目は少し若くしたオルトクレイに似てるな。こんな飲んだくれが刀の勇者なのか?ここは聞いてみるか……。

 

「あんたが刀の勇者なのか?」

「あーいや、”自称”刀の勇者だな」

「は?」

「は?」

 

悟空と酒呑童子はポカーンとしてアクセルと呼ばれる男を見つめた。

 

自称?どういう事だ?

 

「いや、言ってる意味が分からないんだか?」

「アクセル、そんな言い方では通じませんよ?」

「あーそうだな、眷属器の刀は持ってはいるんだけどな、選ばれなかったんだよ」

「何!?」

 

え?眷属器の刀は持ってるのに勇者じゃない?どういう事なんだ?

 

「精霊が俺を選んでくれねぇんだ、頭に来たから無理矢理保管してる」

「無理矢理って勇者の武器は保管出来んのか?」

「まぁな!俺はこう見えても魔法は得意なんでね」

 

そう言い放つとぐびぐび酒を飲むアクセルだった。

 

クズいやオルトクレイよりクズ野郎だなコイツは。

 

「今後は龍二さん達と同盟を組んで風山絆を倒す事にしたんですよ。少しは協力する姿勢を見せたらどうです?」

 

キョウはやれやれというか呆れた顔をしてアクセルに言い放った。アクセルは酒瓶をドンと置いて真剣な顔をしてニヤリと笑って答えた。

 

「わーったよ、最初に魔竜か?それとも絆か?どっちを殺す?」

「龍二さんはどうお考えですか?」

 

キョウは俺に向かって尋ねた。

 

出来れば魔物のスペシャリストであり、俺の唯一の天敵の絆を倒したい所だな。

 

「魔竜はなんとでもなる、最初に絆を倒したい」

「なら絆を倒そう、札の勇者は後回しだな」

「何かいい案はあるか?」

 

俺はアクセルに尋ねると、アクセルは不気味に笑い答えた。

 

「ならよ、魔竜と絆を戦わせたらどうだ?元々アイツは魔竜を倒す為に召喚された女だからな」

「うーん、それ良いかもな」

「流石は天才術士と言われただけありますね」

「けどどうする?魔竜は城から動かないぞ?」

「そこはな……俺とキョウが絆と同盟を組むフリをするんだ、それで魔竜の城を攻め込むってのはどうだ?」

「なるほど」

「そこへ悟空と酒呑童子、俺が魔竜の加勢をするフリをすると言う策だな?」

「なら氷の女王も呼んだ方が良いな、大勢の方が警戒されないだろう」

 

酒呑童子は提案すると全員が頷き、話がまとまった。

 

「なら一度俺たちは氷の女王の元に戻る、作戦結構は次の波の終わってからだ」

「次の波は……2日後ですね、私とアクセルは波には参加しませんのでお好きになさって下さい」

「分かった」

 

密会が終わり、俺達は氷の城まで戻って来た。着いた途端、俺達は驚いた。そこには氷の女王自らがリファナに剣術を教えている風景だった。俺達はこっそり覗いて様子を伺った。

 

「リファナ!突きが甘いわよ!」

「はい!」

「もう一度!」

タンペート・ド・ネージュ・ボンナバン(前に飛ぶ猛吹雪)!!」

 

リファナがレイピアでどうやら突き技の練習をしている所だった、俺が見るからにすると壁があれば突き抜けそうな突き技なのだが氷の女王は納得がいかない様で馬用の鞭でリファナの手足を叩いていた。

 

「うわぁ……嫌な所で帰って来ちまったな」

「うわ〜出たよ、女王のスパルタ教育……」

「え?そうなのか?」

「女王は自分が気に入った奴はあーやって鍛えるんだ、無理矢理メスの獣人やダークエルフを連れて来ては鍛えて連れて来ては鍛えて、ほとんどが逃げ出しちまったけどな、今回の場合はいつもより激しいな……」

 

どの世界にもスパルタ教育はあるんだな、俺が学生の頃にもあんな教師がいたもんだ。

 

さらに氷の女王の激が飛び交った。

 

「もっと鋭く華麗に動きなさい!このノロマ!もう一度!」

「はい! コンジュラシオン・クー・ドロア(真っ直ぐ突く氷花)!!」

 

リファナのレイピアは一点集中の突き技でカカシを貫いた。リファナは息切れを起こしながらも女王のスパルタ教育に付き合っていた。それでも氷の女王は褒める事を一切せずリファナを叱り続けた。

 

「この出来損ない! そんなの勇者に届かないわ! こうよ!」

 

リファナの出来が悪いのかは分からないが女王が手本を見せてくれた、女王の動きはまったくブレずいつ突いたのかも分からないスピードでカカシを貫いた。氷の女王の魔法なのか、カカシは氷漬けになって砕け散った。

 

「これ以上はヤボだな、俺は他の魔物達に例の件を話してくる」

「あっなら俺も行く」

「俺も」

 

俺達は生き残っている魔物達に向かって歩いて行った。




リファナが使ってた技の名前はフランス語を散りばめたスキル名です、フランス単語を調べて繋ぎ合わせた感じなので違和感があるかもしれませんがご了承ください。

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