元太刀の勇者は立ち直れない   作:ボトルキャプテン

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第35話 異世界の厄災の波 (下)

リファナが氷を一面に広げていき雪景色が見渡せるようになった、絆は寒いせいかカタカタと震え始めていた。

 

「どうしました?震えていますよ?勇者とあろう者が?」

「だま……れ!! 食らえ!『飛燕』!!」

 

絆が飛ぶ斬撃を放った瞬間リファナの目の前には氷柱が現れて飛ぶ斬撃からリファナを守った。

 

「届かねぇだと!?」

「残念でしたね、今度はこちらから行きます!『 クリスタル ドゥ グラス(雪の結晶)』!!」

 

リファナが氷のレイピアをヒュンと振り払うと雪の結晶で形成された斬撃が放たれた、絆は紙一重で回避したが髪の毛の毛先が凍り付いた。それを見た途端ゾッとしたような顔をして青ざめていた。

 

「当たってたら氷漬けだった……」

「そうでしょうね。まったく、すばしっこい人ですね」

「へっ言ってくれるね、あんた魔物じゃないだろ?なんで魔物になんか手を貸すんだ?あんた程の実力者ならいい仲間になれただろうに」

 

絆はリファナに武器をスリングに変化させて悲しそうな顔をしながら構えた、絆は口は悪いが根っからの悪者ではないようだった。

リファナはクスクスと笑って答えた。

 

「ふふふ、貴方の仲間?バカバカしい。私は亜人、私の世界の方では酷い差別がありました。人間は亜人を奴隷にして快楽を得る生き物なのだと思ってましたよ、今度は忌々しい人間達が奴隷になればいいんです!」

「人間を奴隷にだと?そんな事許される訳ねぇだろ!」

「なら何故あなた達勇者は奴隷制度を撤廃させるように動かないのですか!?貴方方が動けば済む話ですよ!?頼りにならないからこうして私達は足掻いてるんです!魔王……いえ、龍二様はあの人なりに”色々”考えて動いてくれています!」

「なら魔竜を倒すまで待ってくれ!必ず果たして見せる!」

「恩師を目の前で殺しておいて何を言ってるんですか!?そんなの信用できる訳ありません!」

 

リファナはレイピアを絆に向けて心の叫びを絆に全てをぶつけた、絆は何も言い返せなくなり顔を曇らせていた。

 

「勇者がいなくてもこの世界はなんとかなります、いえ、龍二様と共にさせてみせます!私達の邪魔をしないで下さい!」

「へっ……悪にも悪なりの正義があるって訳か……なら勇者としてそれは見逃せねぇな、あの男は今生かしておくととんでもない魔物になる!この世界にいる内に倒させてもらう!」

「あの方はこの世を統べる魔王になるお方……邪魔はさせません!」

「なら……お前を倒す!」

 

そう言い放った絆は魔力を最大に上げて青いオーラの様なものを浮かび上がらせた、リファナも対抗して雪の結晶と冷気を浮かび上がらせレイピアを構えた。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

2人は激しくぶつかり合い物凄い衝撃波を生み出した、2人の周りにはクレーターが出来上がりその中で激しく攻防戦を繰り広げた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

リファナのレイピアと絆の包丁が激しく金属音を立てて頬や腕や足にかすり傷を作りながらも攻撃を止めずにいた。

リファナの突きをかわした絆はリファナの腹を殴った、リファナも負けじと絆に顔面に膝蹴りを繰り出した。

ここまで来ると女同士の戦いとは思えない程の戦い方だった。

 

「『虎挟み!一式!二式』!『狩猟技・血花線』!」

「『『ネージュ・アタックコンポゼ!』(雪の複合攻撃)』!!」

 

絆の虎挟みを足に挟みながらもリファナは5連続の突き技を繰り出して絆を追い詰め始めた。

 

2人はゼーゼーと息を切らしながらも武器を離さず睨み合っていた。

 

「はぁ……はぁ……他の……魔物達より……つえーな……はぁ」

「はぁ……はぁ……はぁ……あなたも……」

「そろそろ……決着……付けようぜ」

「はぁ……はぁ……そう……ですね」

「次で……最後だ」

「ええ……私も……はぁ……はぁ……」

 

2人はよろよろと武器を構えて最後の力を振り絞った。

お互い最後の技を繰り出しす様だ。

 

「泣いても笑っても……最後だ……あんた……名前は?」

「はぁ……はぁ……ふぅ……魔法剣士・リファナです」

「そうか、俺は狩猟具の勇者、風山絆だ」

「勝つのは……」

 

「「私だ!俺だ!」」

 

絆とリファナはお互いに走りながら最後のスキルを放った。

 

「『解体技・鱗落とし』!!」

「『コンジェラシオン・クー・ドロア(氷結を真っ直ぐ突き刺す)』!!」

 

互いに強力なスキルを放ち合いすれ違った……最初に動いたのは絆だった、絆は右手で持っていた包丁を地面に落とした。絆は左肩に大きな風穴を空けられていた。リファナは頬を少し切り付けられただけで済んだ。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

「私の……勝ちです……!」

「傷口が……凍り付いた!!」

「氷の女王様から受け継いだ最強の技の1つです!」

「くっそがぁぁぁぁ!こんな所で……死んでたまる……か!」

 

絆はポケットから薬を取り出して飲み、スキルを再び繰り出そうとしていた。

 

「リファナ……次は……必ず倒す!」

「負け惜しみですね、次は貴方を必ず殺します」

 

そう言い放つと絆は時間切れを起こして転送されて行き空もワインレッドから普通の青空に戻って行った。リファナも戻されて俺達と合流した。

 

「リファナ!無事か!?」

「龍二……様……!?」

 

バタリと倒れたリファナは俺に抱き抱えられた。

 

「誰にやられた!?」

「狩猟具の勇者と……戦闘して……なんとか撃退しました……」

「氷の女王は?氷の女王はどこだ!?」

「リファナちゃん!何か知ってるんだろ!?」

 

酒呑童子と悟空に尋ねられたリファナは氷のレイピアを見せた。

 

「氷の女王様なら……ここに……」

「レイピア……まさか!?」

「はい……狩猟具の勇者によって殺されました……。ですが、私が氷の剣に変化させました」

「そうだったのか……助けてやれなくてごめん……」

「大丈夫……です……女王様は魔具なっても……私を……守って……」

 

話してる途中でリファナは気を失った。

 

恐らく全ての魔力とSPを使い果たしたのだろう。

 

俺はリファナをおんぶして拘束されたメアリーを連れて氷の城に戻って行った。


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