魔力を解放した俺は禍々しいオーラを放出しながら尚文、錬、元康、樹と睨み合いをしていた。
尚文は盾を構えて号令を出した。
「『リベレイション・オーラX』! 最初から全力で行くぞ!!」
「「「おう!」」」
先陣切って向かって来たのは剣の勇者である錬だった、錬は俺の脇腹を狙って来た、俺は即座に反応して篭手で払い反撃しようとした瞬間元康と樹が動いた。
「『流星弓X』!!」
「くっ!!」
左手は錬の剣を払いに使っていた為右手で流星弓を受け止めた、その隙に元康が突進して来た。
「うおおおおお!ブリューナクX!!」
「このぉぉぉぉ!」
胴体がガラ空きの所を元康は狙いブリューナクを繰り出して来た、俺は体を捻って左回し蹴りで元康を蹴り飛ばした。
だが休む暇なく尚文は3人に指示を出す。
「攻撃を止めるな!必ず隙が出て来るぞ!」
「『重力槍X』!!」
「『重力剣X』!!」
「『重力弓X』!!」
俺に3人の攻撃が当たり、体がスキルの効果で動きを封じられた。
「ぐうっ!!……なんだこの重さは!?」
こいつらいつの間にか霊亀の死体を回収していたのか!?
「動きが止まったぞ! 錬!元康!」
「まかせろ!尚文!『鳳凰烈風槍X』!!」
「元康!合わせろ!『鳳凰烈風剣』X!!」
「樹!援護射撃を頼んだぞ!」
「任せて下さい!尚文さん! 『フルバスターX』!!」
元康と錬は鳳凰から編み出した火属性のスキルを発動させ樹は銃器に変化させて俺に向けて集中砲火を浴びせた。俺はクロス状に斬られ巨大なレーザーを直撃してしまった。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鳳凰まで!?……くそっ……骨の髄まで回収しとけば良かったぜ。
焼き焦げた俺は大の字になって倒れた。だが、俺は直ぐに体を再生させて目を見開き立ち上がるのを見つめていた尚文は顔を青ざめて盾を構えた。
「再生……するのか……!?」
「ここに来てチート相手か、流石は魔王だな」
「だが俺達は負ける訳には行かないんだ!」
「皆さん!再生が追いつかない程攻撃すればいいんです!」
4人の勇者は再生途中の俺に攻撃を仕掛けようとしたが、俺は右手を突き出して魔法を発動させた。
「『ドライファ……ダークネス・ヘルファイア』!!」
俺は黒い火球を作り出し、4人の勇者達に投げつけた。
「みんな!下がってろ! 『流星盾X』!!」
尚文は巨大な青い壁を何枚も形成してダークネス・ヘルファイアを防ぎ切った。
これほど強力な防御スキルは初めて見たな……。
「へぇ〜、流石は盾の勇者だな。やるじゃねぇか……」
「魔王だけあるな、他の魔物達なんかより遥かに強い」
「褒めてくれて嬉しいねぇ……んじゃ、そろそろ本気で攻撃するか」
俺は背中から混沌の魔剣であるストームブリンガーを抜いた。魔剣ストームブリンガーを見た途端錬は歯をギリリと食いしばって警戒し始めた。
「あの黒い剣……忘れもしないぞ」
「今度は確実に殺してやる! さぁ……第2ラウンドだ!!」
魔剣を構えて錬に向かって行き、暗黒剣を繰り出した。 だが、尚文が急に前に現れて激しい金属音を立てながら俺の攻撃を防いだ。
「なんだと!?俺の暗黒剣が……!?」
「錬!今だ!」
「『雷鳴剣X』!!」
「ぐっ うおおおおおお!」
無理矢理体を捻って雷鳴剣をかわしたが、錬の後ろから元康が待ち構えていた。
「まだだ!『紅蓮槍X』!!」
「ウェポンチェンジ! モルドレッド!! 『風伯大竜巻』!!」
俺は体を横に回転させて紅蓮槍をいなしてそのまま竜巻を作り出し、大竜巻は壁や天井を全て破壊してしまった。
「はぁはぁはぁ……まったく、新居が台無しだ」
魔竜の鎧は各耐性が付いてるのにこの威力……コイツら……ホントに強くなったな。
「よそ見をすると怪我しますよ! 『サンダーアローX』!!」
「ぐっ……!!」
反応が遅れた俺は樹が放った矢が肩を貫通させた。
「はぁ……はぁ……魔竜……そろそろ手伝ってくれねぇか?」
《ようやく出番ですね、参りましょう!》
魔竜が翼脚を広げて行くのを見た尚文は俺の手が4本あるように見えた尚文は樹に指示を出した。
「空を飛ばれると厄介だぞ!樹!、翼を狙うんだ!」
「分かりました! 『フルバスターX』!!」
「魔竜!」
魔竜は翼脚で防ぎ、その隙にスターブレイカーに変化させて樹に反撃した。
「『アースクエイク』!!」
棘鉄球は地を這う大蛇の様にうねうねと動きながら向かって行くと地震を起こし、身動きの取れなくなった樹を狙ってスターブレイカーを腹部に当てた。
「ぐうぇ!!」
「射撃系が止まって撃ち込むんじゃねぇ!寝てろ!」
「樹! 『パラライズランスX』!!」
元康が背中の後ろから攻撃を仕掛けて来たが魔竜が翼脚で槍を受け止めたが、俺の体に異変が起きた。
「なっ……な……んだ?……から……だが!?」
《龍二……様!!……申し訳……ござ……いま……せん!麻痺……効果のあるスキル……です!》
「くっ……そがぁ……!!」
元康はガッツポーズをして他の3人に合図をした。
どうやら俺は4人の作戦にどっぷりハマってしまった様だ……。
「よしっ!!麻痺が効いたぞ!!」
「尚文!今だ!」
俺が尚文を目で探していると錬の後ろでカースシリーズを発動させており、呪文を唱えていた。
『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は神の生贄たる絶叫! 我が血肉を糧に生み出されし虎挟みにより激痛に絶命しながら生贄と化せ!』
「『ブラッド・サクリファイス』!」
痺れている俺の足元から黒く巨大なトラバサミが現れた。
そう……かつて教皇と共に戦った時に使ったカースシリーズのスキルだ、尚文の必殺技と言えるな……こりゃもう無理だな。レベルは遥かに俺の上だが……勇者の力は……すげぇや……悪役冥利に尽きる。
俺は少し微笑みながらトラバサミに呑まれて行き、血溜りに引きずり込まれて言った。
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4人はバタリと倒れ込み、ゼーゼー言いながら血溜まりを見つめていた。
「勝った……尚文!、勝ったぞ!」
「はぁ……はぁ……魔王だけあるな……強敵だった」
「尚文さん、大丈夫ですか!?」
「あ……ああ、大丈夫だ……」
急にワイン色の空がヒビ割れし、その中から神々しい光を出し始めた。その光の柱から人影が現れた。その姿は………神々しい服装の男が現れた、その神の見た目は三勇教の教皇の様な法衣を身に着けていた。尚文達は唖然として見つめていた。
「四聖勇者の方々、良くぞ魔王龍二を倒してくれましたね」
「あの人が神様なのか?ってことは……」
「俺達は……」
「魔王を倒したのですね!」
「やったのか……ホントに俺達は……!!」
すると神様と名乗る男は喋り出した。
「この魔王は……元々は人間だったのはお分かりですね?」
「ああ、知ってるよ!」
「そうでしたか。この魔王はかつては貴方達と共に戦っていたのですよ……そう太刀の勇者、鞭の勇者としてね?。ですが、彼は天界の掟を破り勇者の資格を剥奪され再び一からやり直す羽目になりました。」
樹は何を言ってるのだと言わんばかり不思議そうに首を傾げた。
「太刀の勇者?鞭の勇者? なら魔王は2度もこの世界を生きていたと言うのですか!?」
「そうです、彼には……ロクな説明もせずにこの世界に送り込み貴方達4人と出会いました、バカな男ですよね?最初からなのに貴方達と面識があると勘違いして接近して声を掛けましたよね?」
「そう言えば……尚文、お前も知ってるよな!?」
元康は海賊の時を思い出し、尚文がさらし者にされた時の事を思い出した。
「あっ……だから俺の名前を知っていたのか……ん?……ちょっとまて、ならお前があの男をこの異世界に送ったのか?」
尚文は回復薬を飲み、神と名乗る男に尋ねた。すると、神と名乗る男はクスクスと笑い始めた。
「そうです、いやはや調子に乗って彼にチート能力を与えたり、異世界のモンスターをアドバイザーになってもらうように走り回り、私が味方と思わせ、チート武器が強力過ぎて焦った私は別の異世界に渡り、彼より強い転生者に協力を求め、下げたくない頭を下げて彼と戦ってもらい、彼の思考を変えたりしたのですがね?そのおかげで彼は思惑通り、鞭の勇者に生まれ変わりましたが、予想外に彼はチート武器を無くしたのにも関わらずに更に強くなってしまった。私の野望の危険分子と判断した私は、神の権力を使い、彼の世界をこの手で抹消しました。そして、2週目に突入し、絶望に追い込まれた彼は、魔王と生まれ変わりました」
元康と錬は悟ったのか顔を青ざめた。
「という事はまさか……あんたが……あんたが、あの人を魔王になる様に仕立てあげたのか!?」
「強くなり過ぎたってどういう事だ!?この異世界は厄災の波を乗り越えなければいけないのだろ!?なぜ消したんだ!!消したってメリットは無いだろ!?」
「ええ、確かにメリットなんてありません。それはですね?最終的には私が戦うのですよ、厄災の波を操る女神メディアを倒した後ですがね?」
「マインと戦った後で……だと?」
「ええ……女神との戦いで弱りに弱った貴方達を完膚なきまでね?」
尚文は全て理解したようだ。
要するに……以前俺達4人はあの魔王と共に戦っていたが、あの神とかいう奴の気まぐれで消されてあの人は絶望のどん底に陥れ、魔王に生まれ変わらせた。
「さぁ……貴方達勇者4人に更なる絶望と言うなの祝福を与えましょう……我が名は『災いの神』ロキ!私の腕の中で恐怖と絶望を味わいなさいフハハハハハハ!!」
最悪の状況だ……魔王との戦いでSPもMPも使い果たしてしまった。
尚文達はガクガクと震え出し、目を閉じた。
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突然、血溜まりから飛ぶ斬撃が飛んで来て、ロキの肩を切り裂いた。ロキは肩を抑えながら睨み付ける。
「ぐぅぅ!!なんだ!?……まさかっ!?」
血溜まりからブクブクと気泡が浮かび現れた、尚文達は驚いて見ていた。
「まさか……まだ生きているのか……?」
「そんな……」
「尚文のあの技を喰らってもまだ生きているのか!?」
「万事休すですね……」
ザバッと飛び上がったて出て来たのは体を再生させた魔王だった。だが、魔王は尚文達にではなく、ロキに刃を向けた。
「やっぱりあんただったんだな、おっさん」