元太刀の勇者は立ち直れない   作:ボトルキャプテン

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第4話 Rebellion

ギルドで大暴れをした俺はなんとか【冒険者】になる事が出来た、現在は最も報酬が少ない仕事をして、日銭を稼ぎ、今日の仕事内容は地下の巨大ゴキブリや巨大ネズミの討伐をしていた。

 

「くっせぇ……」

「カサカサカサカサカサ」

 

巨大ゴキブリは繁殖力が異常なのかあちこちに数十匹いる。金棒1振りで5〜6匹倒せるからまだ楽な方だった。こんな重労働が最安値のクエストとは思えないほどだった。数時間後、俺はクエストを終えてギルドから報酬を貰ったその後街の様子が騒がしいのに気が付いた。

 

「なんだ?随分騒がしいなぁ……何事だ?」

「おい聞いたか?槍の勇者様が【海賊】を捕まえたらしいぞ?」

「聞いた聞いた。なんでも広場で公開処刑をするらしいぜ?」

 

聞き耳を立てていた俺は立ち止まった。

 

「海賊……!?ティーチ!?」

 

俺は慌てて広場に向かって行った。駆け付けた広場の絞首刑台の上に縛られたかつての仲間だったティーチ、バージル、スラッシュ、サニーがいた。俺は人並みをかき分けながら近付く。

 

「ティーチ!!バージル!!スラッシュ!!サニー!!」

 

「「「「「………………」」」」」

 

4人とも俺の声が聞こえてないのか、死んだ様な目をしていた。

 

サニーはともかくあの3人が元康ごときにやられたのか?ありえないだろ!?

 

すると国王オルトクレイが現れ4人の罪状を言い放った。

 

「海賊ティーチ、並びにその仲間2名、そして海賊の奴隷1名をこれより絞首刑に処す!!」

 

「「「「「わぁぁぁぁぁぁー!」」」」」

 

「槍の勇者様バンザーーーイ!」

「海賊を殺せぇー!」

「海賊の奴隷も殺せぇー!」

 

大歓声の中元康は手を挙げて歓声に答えていた、その隣には槍の勇者元康とマインもいた。再会を約束した以前の仲間が目の前で殺されそうになっており、龍二はいても立ってもいられなくなり俺はティーチ達を助けようとした。

 

「みんな!!待ってろ、今助けるからな!!」

 

俺は処刑台目前までたどり着くと、兵士達に行く手を阻まれた。

 

「なんだ貴様は!?止まれっ!!」

「邪魔だ、どけぇ!!」

 

ガンッ!

 

金棒を振り回し兵士達を薙ぎ払うが俺は応援に駆け付けた兵士達に取り押さえられた。取り押さえられた俺は元康に声をかける。

 

「元康!!辞めさせてくれ!!頼む!!」

 

元康は俺を初めて見る様な顔をしながら首を傾げた。

 

「俺とは初対面だと思うけど、誰だアンタ?」

 

元康の言葉に俺は声を失った。

 

そんな、元康まで!?

 

「元康!俺だよ!龍二だよ!頼む!!ティーチ達を助けてくれ!コイツらは俺の仲間なんだ!!」

「元康様!そんな愚民の言葉なんて聞かなくて良いですわ!」

「マインの言う通りだよね?アンタが誰だか知らないけどさ、あいつは海賊なんだよ?この世界では海賊は重罪なんだよ?分かるか?」

「モトヤス様、こんな奴放っておいて行きましょ?」

「そうだな」

 

元康は俺の言葉に耳を貸さずに女達と下がって行った。

 

「待ってくれぇぇ!!」

 

「処刑!!」

「やめてくぇぇぇ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ガシャーーーン!!

 

ティーチ達は同時に首を吊らされてしまった、4人の処刑を真正面で見る事になった。そして……俺は仲間を助ける事も出来なかった。

 

「ティーチ……バージル……スラッシュ……サニー……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

国王オルトクレイは泣き叫ぶ俺をゴミの様に見つめてこう言い放った。

 

 

「えぇい騒がしい……。あの汚らしい者を広場から追い出せ」

「はっ!」

「おいお前!こっちに来い!」

「おい!離せ!!」

「国王様からの命令だ!いいから来るんだ!」

 

俺が泣き叫んでいる所に兵士達が俺を連れて広場から追い出された。

 

「なんで追い出すんだよ!離せてめぇ!」

「そんなに罪人が見たいなら【罪人の墓場】に行くがいい」

「罪人……だと?」

「海賊行為は重罪だからな、当然だ」

 

ブチッ

 

俺の頭の中で何かがキレた、いや……何かが壊れた感じがした。俺は立ち上がって金棒を抜いた。

 

「おい……てめぇ……」

「なんだ?」

「皆の仇だ……死ね」

 

ゴッ!グシャ!

 

俺は無表情で兵士の頭を砕いた。何度も何度も叩いてクソ野郎の頭をミンチにした……兵士の潰れた頭が赤い花のように散って行った。その後、俺は罪人の墓場に辿り着いた。

 

 

「ここが、【罪人の墓場】……か」

 

俺は返り血で真っ赤に染った金棒を引きずりながら墓場中に進んで行った。そこには無残にも4人は埋葬されずに捨てられていた。

 

「はは……埋葬すらされねぇのかよ……人ですらねぇってか?」

 

俺は4人分の穴を掘りティーチ達を埋葬した。働いて貯めていた無けなしの金で花を買い4人にお供えした。落ち着いた頃には周りは真っ暗になっていた。俺は4人の墓の前で頭を付けて謝った。

 

「助けてやれなくてごめん………ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……うっうっうっ」

 

無情にも雨が降り注いだ。

 

「ちくしょぉぉぉぉぉ!!殺してやる!!元康!!錬!!樹!!尚文!!クズ国王!!マイン!!どいつもこいつもぶっ殺してやる!!こんな世界……ぶっ壊してやる!!何が勇者だ!何が厄災の波だ!」

 

 

すると、どこからか声が聞こえて来た。

 

どこからだ?見渡しても誰もいないのに大勢の声が聞こえてくる……。

 

スベテガニクイカ……スベテヲコワシタイカ……?。

 

「誰だよ……誰だって構わない。ああ、憎いよ奴らが殺したいよ!」

 

ナラワレラノニクシミヲカテニスルガヨイ…………。

 

突然、周辺の墓石から魂の様な物が俺の体に何千も入って行った。

 

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁ!!」

 

攻撃とは違う感覚の痛みが次々と起こり俺はまた死んでしまった。そして今度は前回とは違うアイコンが写し出された。

 

『悪霊によって呪い殺されました』

『人間から魔物に退化しました』

『Rebellionの称号を獲得しました』

 

Rebellion?なんだろう?

 

アイコンはさらに続いた。

 

『Rebellionの称号により『超高速回復』を解放しました』

『Rebellionの称号により『超高速再生』が解放されました』

『Rebellionの称号によりLv上限が『???』になりました』

『カースシリーズ・【正義】が解放されました』

 

『不死身の呪いにより再起動します』

 

 

俺は目を開けると変な感情が込み上げて来た。

 

なんだろうとてつもなくハイになった気分になって来た。

 

「は……ははははははひゃははははははははは!!」

 

だんだん雲が暗くなってきて遂には雷まで鳴り始めた。

 

※BGMマキシマムザホルモンの「F」をイメージして下さい※

 

「どーでもいいや。こんなつまらねぇ世界なんかぶっ壊してやるよ!!どーせ俺は不死身なんだいくら痛くても死にはしねぇんだよなぁ!?、なら俺が【魔王】になって世界を征服してやる!!覚悟しろよ……四聖勇者どもぉぉぉぉ!!」

 

 

涙を流しながら俺は、再び立ち直ること無く【魔物】に成り下がる事をになった。


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