リムル=テンペストと激しい攻防戦を繰り広げた俺はクレーターをいくつも作り、戦っていた。リムル=テンペストの拳と魔竜の拳がぶつかり合って巨大な衝撃波が生まれた。衝撃波を浴びながらも実況を続けるアザゼルとベルゼブブは。
「なんっちゅー衝撃波や!」
「えぇ、そろそろ3分ですね。さぁ、お二人共、次が最後の攻撃になりますよ?」
「だそうだ、アンドロマリウス、リムル」
一旦距離を置いた俺とリムル=テンペストは構えながら会話を始める。
「では、悟さん。俺も全力の攻撃であなたを倒します!」
「よしっ!なら俺もちょっと前に使った技で迎え撃ってやる!」
「魔竜!やるぞ!」
《はいっ!龍二様!!》
俺は高く飛び上がり、魔力を全開に解放して唱えた。
「魔竜よ我の願いを聞き届けたまえ、力の根源たる魔王が願う!!真理を今一度読み解き、我の害なる者共と大地を焼き払う力を!!竜魔法!! 『暗黒流星群』!!」
そう唱えると、巨大な魔法陣が空に描かれると、幾千の隕石が魔法陣から飛び出して来た。監獄目掛けて降り注ぐ隕石を見たアザゼルは……。
「なんやアレ!?あんな隕石反則やろっ!?退避や!退避ぃぃぃ!!」
「狼狽えてはいけませんよアザゼルくん。我々は魔王、ここで退いたら一生の恥と言うものですよ?」
防災ヘルメットを被って逃げ惑うアザゼルを除いた他の魔王達は、どっしりと身構えて構える中、リムル=テンペストだけはただ黙って隕石を見上げていた。
「すっごいなぁ、んじゃ……俺もやるか……」
リムル=テンペストは右手を挙げて魔法陣を形成すると、水滴の様な水玉が監獄中に現れた。その水玉を見た途端、他の魔王達は何を感じ取ったのか、慌てふためき始めた。
「おっおい!この技はやべぇぞ!逃げろぉぉぉぉ!!」
「ほら見てみぃや!!退避や!退避ぃぃぃ!」
「やれやれ、リムルさんも、アンドロマリウス君も少々やり過ぎでしょうに。貞夫君、私と下がりましょう」
「マジ!?蹴っ飛ばしてやろうと思ったのに!」
「何を馬鹿な事言ってるんです。そんな事したら貴方まで巻き添えになりますよ?」
ベルゼブブと真奥も防災ヘルメットをかぶり、他の魔王が作った塹壕に入り、避難した。そして、リムル=テンペストは……呟いた。
「『神之怒』!!」
リムル=テンペストが呟いた途端ピカっと光り、次々と隕石が破壊され始めた。隕石は塵一つ残らず破壊され、俺の技はあっという間に無効化されてしまった。
嘘だろ……俺の暗黒流星群が……花火大会になっちゃった……。
「たーまーやー!」
互いの技を出したと同時に、3分経ってしまった。真奥とベルゼブブは慌ててゴングを激しく鳴らした。
カンカンカンカン!!
「ほらほら、そこまでだっ!」
「勝者はご覧の通り、リムル=テンペストさんですね」
「えっへん!」
スライム体でドヤ顔をするリムル=テンペストを見た俺は膝から崩れ落ち、完全敗北を認めざるを得なかった。
「アンドロマリウス!インタビューなんやけど、今どんな気持ちや!?わしにだけ言うてみ?誰にも言わないから!なっ!?」
「うるせぇっ!!」
ゴンッ!
俺は新聞記者の様なカッコをしたアザゼルを地面にめり込ませて黙らし、リムル=テンペストに近付き、握手を求めた。
「悟さん、完敗です……」
「いや、あの隕石は俺も参考になった!またやろうな!」
「はいっ!」
《リムル=テンペスト様、手合わせしただきありがとうございました!》
「さて、じゃ、このグランド直さねぇとな!」
「はいっ!」
────────────────────────
その後、俺達はグランドを整地してドッチボールをしている時……。
「おいリュウジ!お前今当ったろ!さっさとコートから出ろよ!」
「あぁん!?いつ何時何分何秒地球が何回回ったときに当たったかいつまで見ろや!」
「子供かっ!わし見とったで!」
ピピーッ!
他の魔王達と揉めていると、看守の天使達がやって来た。
「コラーッ!何やっとるんだ貴様らーっ!」
「やべぇ!看守だっ!逃げろっ!」
「おいっ!リュウジ!賭けてた冷凍みかん置いていけやっ!」
アザゼルに追いかけられていると、声が聞こえて来た。
頼もー!頼もー!
声を聞いていると、他の看守がやって来た。
「おい、魔王ども。今日も挑戦者が来たぞ、相手をしてやれ」
「えぇ〜?またぁ?どんだけ来んだよ」
「しゃーないのぉ〜。べーやんもリムルはんも真奥やん達は今日は給食当番やさかい、わしらだけで行こか〜?」
「しょーがないなぁ……」
《暇な英雄ですねぇ、さっさと転生して他所の異世界でも行けばいいのに……》
言えてる。
駆り出された俺達は門の前に行くと、まさかりを担ぎ、金という前掛けを身に付け、頭は大童のヘアスタイルの男が立っていた。
まさか……金太郎!?
金太郎は熊から降りると、突然俺達に言い放つ。
「相撲しようぜ!」
何を言い出すんだコイツは……。
突然相撲のお誘いをされた俺達はある意味ざわついてる。すると、巨大な体格で牛頭の魔王、『暴虐を司る魔王・モロク』が前に出た。
「よぉし!俺が相手をしてやる!」
「モッさん!?モッさんがやるんでっか!?」
「モロク頑張れ〜!」
モロクが手をゴキゴキ鳴らしながら構えると、金太郎は四股を踏み始めた。そして……
「はっけよいっ!」
「うおおおおぉっ!」
モロクと金太郎はぶつかり合って互いに掴み合う、両者は一歩も動かず力比べになって行った。力自慢のモロクが止められたのを目の当たりにしたアザゼルは……。
「あのモッさんを止めたやと!?なんやねんアイツ!?」
「マジ!?モッさんって力はすげぇじゃん!!」
そのモロクと互角とは、流石は金太郎だな……。
そして、スタミナが切れたモロクが隙を見せた瞬間。
「そぉいやぁぁぁ!」
「ぬううっ!?しまった!!」
金太郎はモロクを投げ飛ばし、モロクは地面に倒れてしまった。アザゼルはガタガタ震えながら俺に言い放つ。
「モッさんが!モッさんが負けよった!?」
「あらま、モッさん負けちゃったね」
《あのモロク様が!?龍二様、ここは我々が行くべきかと》
ふむ……待てよ?
俺はガタガタ震えるアザゼルにボソッと囁いた。
「ねぇ、アザゼル?お前って『淫奔』を司るんだよな?」
「えっ!?あーいや、まぁそやけど!?」
「能力は確か”ホルモン”を操作出来るんだよね?」
「せやけどなんやねん!わしにやらせる気かいなっ!?モッさんがやられたんやで!?」
「大丈夫大丈夫!お前なら勝てるって!耳貸してみゴニョニョ……」
「ふむふむ……なるほどのぉ……」
俺はアザゼルにアドバイスをすると、アザゼルは自信が付いたのか、やる気を出し始めた。モロクを倒した金太郎は。
「さあっ!次は誰だっ!?まだまだやり足りねぇぜ!」
「わしが相手や……」
アザゼルはいつになく真剣な顔をして前に出た。アザゼルが出た途端、他の魔王達は……。
うわっ、アザゼルが出たぞ。
はい乙ー。
約立たずが何する気だよ。
すんごい言われてる……。
アザゼルの耳にも入ったのか、最早アザゼルは泣きそうになっている。アザゼルは半べそをかきながらも構えた。そして……。
「はっけよいっ!」
「よっしやぁぁっ!」
ガシッと掴み合った瞬間、俺はアザゼルに声を掛けた。
「アザゼル!今だっ!」
「くらえや金太郎!これがわしの能力やっ!!」
「なっなんだっ!?体がっ!?」
アザゼルが金太郎に触れた途端、金太郎の体に異変が起きた。金太郎はアザゼルから離れると、みるみるうちに金太郎の体は筋肉質からヒョロりとした体になり、胸も大きくなって行き、髪も伸び始めた。そして遂には……。
「きゃっ……あたし、なんで!?”女”になってるの!?」
突然、金太郎が女性に変わった。何が起こったのか理解出来ない魔王達は驚きを隠せず、ざわつき始めた。
「なっなんだ!?急に女になったぞ!?」
「アザゼルのやつ、一体何をした!?」
「セクハラだけがアイツの能力じゃなかったのか!?」
騒いでいる中、アザゼルはドヤ顔をしながら金太郎に言い放った。
「見晒せ!これがわしの『淫奔』の能力やっ!男性ホルモンと女性ホルモンを操作し、金太郎を金子にしてやったんや!!」
あまりにも恥ずかしいカッコをしている金子は両手で必死に体を隠そうとしながら。
「いっいや……恥ずかしいぃぃぃっ!!」
金太郎は熊に隠れながら逃げていった。勝利を確信したアザゼルはブイサインをした。
「番外編5話にして、ようやくわしの活躍回やっ!」