元太刀の勇者は立ち直れない   作:ボトルキャプテン

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番外編ー6 熾天使

金太郎を撃退してあれから300年経過した。天界監獄で魔王達が大人しくしているある日。憤怒を司るサタンこと貞夫と、新星を司るリムルこと、悟さんが仮出所する事になった。俺達は見送る為に集まっていた。

 

「悟さん、お世話になりました」

「ああ、俺は元の世界に戻るけど、お前らも頑張れよ!」

「はいっ!貞夫も別世界の日本を頼んだぞ?」

「任せとけ、マグ〇ナルドで出世して必ず世界を征服して見せる!」

 

2人と固い握手をしていると、アザゼルが泣きながらリムルと貞夫に言い放つ。

 

「行かんといて!リムルはんも、サダはんワイらを置いて行かんといて!」

「ワガママを言ってはいけませんよ。アザゼル君。お2人共お元気で」

「ああ、ベルゼブブもアンドロマリウスとアザゼルを頼んだぞ?」

「ええ、任せといて下さい」

 

ベルゼブブにそう言い放った貞夫とリムルは魔法陣の中に入り、そのまま消えて行った。

 

「行ってもうたなぁ、七つの大罪の一角と監獄最強が行ってもうたわ」

「そうだなぁ、今後は俺達だけでこの監獄を守って行かなきゃなぁ」

「ほらお2人共。見送りも済みましたし、刑務作業に行きますよ?」

 

俺達はそのまま今日の刑務作業を行う為に、監獄の中へと入って行った。

 

────────────────────────

 

その頃。天界では、創造神を含め、様々な天使達と複数名の女神が議事堂である議題で大騒ぎしていた。掟を司る女神・ネメシスが頭議題の内容で頭を悩ませていた。

 

「はぁ……今になってなんでこんな議題が上がるのよ……」

 

ネメシスの手元には【魔王撲滅計画】という書類が1枚置かれており、紅茶を片手に項垂れていた。創造神には、純白の甲冑で身を纏った天使が意義を唱えていた。

 

「創造神様。一体いつまであの悪魔共を監獄に収監しているおつもりですか?」

「【熾天使】のセラフィムよ。彼らは自分の罪を償っておるのだ、何を今になってこのような議題を持ち出したのだ?」

 

【熾天使とは、天使の最上位の位階に属する天使のグループ。神に最も近い存在として記されている】

 

そのリーダーでもある【セラフィム】が、天使達を従えて創造神に意義を申し立てに来ていたのだ。

 

「そうかも知れませんが、彼らは勇者と呼ばれた方々を悉く蹴散らしていると言うではありませんか。刑に服しているならありえませんよ?」

「それは勇者達が勝手に魔王達の元へ挑戦しに行ってるだけであり、神々が命令を下している訳ではないぞ?」

「ですが、処刑する訳でもない悪魔達を監獄に閉じ込めて置くだけという処遇が納得行きません。死刑制度はどうなっているのですか?あそこにいる悪魔達は処刑された事はあるのですか!?」

 

ガシャガシャと鎧の音を立てながらバンと机を叩いた。

 

「そっ、それは……」

「掟を司る女神・ネメシス様。天界の死刑制度についてお教え下さい」

 

セラフィムの視線はネメシスに移った。ネメシスは分厚い本を魔法で取り出して読み始めた。

 

「えーっと、死刑制度……死刑制度……あった。『悪魔、又は魔王が処刑される条件は天界の天使、又は男神、女神に重症を負わせた場合に発令される。魔王達が以前いた異世界は該当されない』と記されています」

「そうですか……分かりました。この計画は却下させてもらいます」

 

セラフィムは提示した書類を自ら破き捨て、天使達を引き連れて議事堂から出て行った。取り残されたネメシスと創造神はため息を吐いた。

 

「はぁ……熾天使のセラフィムは頭が硬くて敵わん……」

「そうですねぇ……何事も起こらなければいいんですけど……」

 

ネメシスの言葉を聞いた途端、創造神は机をドンと叩いた。

 

「滅多な事を言うもんじゃないよ!!これ以上ワシの頭を悩ませんでくれっ!あちこちの異世界を管理していてワシも忙しいんだからっ!」

「私だってそうですよ!?悪男神ロキと悪女神メディアの後始末私がやってるんですからね!?他の女神や男神は自分の担当している異世界や眷属の面倒を見てて忙しいんですから!」

「君は掟を司る女神だろ?公安職だろ?天界の秩序も守ってくれなきゃ困るよ」

 

紅茶を啜ったネメシスは吹き出しながら口元を拭った。

 

「はあっ!?何でもかんでも私に押し付けないで下さいよっ!だから創造神も、『大女神』様に怒られるんですよ!?」

「てなわけで、後は頼んだよ?」

 

そう言い放ち、創造神は魔法陣を展開させてその場を後にした。

 

「あっ!ちょっと創造神様!?もうっ!」

ネメシスはため息を吐きながら懐から1枚の写真を取り出した。その写真には、銀髪の女神、ツインテールの女神、紫色の髪をした女神、白いドレスを纏った金髪の女神とネメシスが写っていた。

 

「はぁ……皆はいいよねぇ……自分の担当があって……」

 

ネメシスは写真を見つめながら呟いた。

 

────────────────────────

 

その頃。監獄には白いスーツを着込んだ1人の天使が門の前にやって来ていた。天使は門番の天使に声を掛けた。

 

「熾天使のセラフィムだ。天界監獄の視察に来た」

「セッセラフィム様!?はっ!直ちに門を開けます!」

 

門が開かれると、セラフィムは中に入って行くと、あちこちに魔王達が蔓延っており、刑務作業に勤しんでいた。ただならぬ気配を察知した魔王達は、セラフィムを睨み付け始めた。案内を買って出た監獄の所長が魔王達に声をかける。

 

「コラ、貴様ら!熾天使のセラフィム様を睨み付け始めるなっ!」

「大丈夫ですよ、所長殿。私は気にしません」

「ですがっ!?」

「所詮は魔族、ゴミですからね」

 

セラフィムがゴミを見るような目で魔王達を見つめると、豹の顔をした魔王が場所を離れてどこかへ走っていった。その場所は、俺が担当していた刑務作業をしている場所だった。

 

「アンドロマリウスさん!大変です!」

「あれ?【模倣を司る魔王オセ】じゃん。どうしたの?」

「なんやねん、オセ。今刑務作業中やろ?」

 

【オセとは。豹のような顔をしているソロモン72柱の1人。物体のコピーを作る能力だが、契約者の記憶を元に模造するため、契約者が模造する物の性質や構造を理解していれば本物と同等のものを作れる使い手でもある】

 

オセはゼーゼーと息を切らせながら俺達に言い放った。

 

「なんか、ちょっとヤバそうな天使が来たんですよ!」

「天使?なんで天使がここに来るんだよ」

「せやせや、ワイらの天敵の天使がこんな監獄に来るわけないやろ!」

「本当なんですって!今まで来た勇者達とは比べもんにならないんです」

オセがこんなに慌てるなんて珍しいな、どんな奴なんだろう?

 

そう考えているうちに、刑務作業終了のチャイムが鳴り響いた。

 

「おっ、終わったな。その天使はどこにいるの?」

「こっちです!」

「アザゼル、ベルゼブブを連れて来てくれ」

「よっしゃ、任せとけや」

 

アザゼルと別れて俺はオセの案内で天使を探し始めた。すると、一際目立つ真っ白のスーツを着こなした天使が目に入った。

 

確かに監獄の看守(天使)とは比べもんにならないくらい強そうだな……。

 

すると、俺の視線に気付いたのか、天使は俺に向かって来た。俺はとりあえず、頭を下げる事にした。

 

「こんにちは〜。視察ご苦労さまでーす」

「貴方は……しばらく前に収監された魔王だそうですね?、ソロモン72柱と七つの大罪の8つ目の大罪・正義と呼ばれる”異質の魔王”『正義を司る魔王アンドロマリウス』さんですね?」

「ええ、まぁ、はい。そうですけど?」

「なるほど、噂通りの真面目そうな方だ」

「ええっと、貴方は?」

 

俺が天使に尋ねると、天使は名乗り始めた。

 

「これは失礼、私は熾天使のセラフィムと申します」

「熾天使?熾天使ってなんですか?」

「熾天使と言うのは、言わば、天使の総大将と言うべきですかね?」

 

総大将!?

 

俺はセラフィムに視察の件を尋ねてみた。

 

「その熾天使様がここへ何のようです?」

「それはですね?生きてる意味が分からない貴方方を見に来たのですよ。所詮は悪魔。ここに居てもなんの意味もないというのが分かりました」

 

俺はカチン来て、セラフィムに顔をギリギリまで近付けた。

 

「何?生きてる意味が分からない?」

「だってそうでしょう?刑務作業?バカバカしい。魔族はとっとと処刑かれるべきなんですよ」

「あぁん?テメェケンカ売ってんのか?」

「ダメですよ!アンドロマリウスさん!熾天使に手を出しては!!」

 

オセは慌てて俺に掴んで止めようとした。すると、魔竜が翼脚を肩から飛び出させ爪をセラフィムに突き付ける。

 

《天使如きが調子に乗るんじゃないわよ?》

 

「おや?貴方の中には別の魂が入ってるようですね?」

「お前……魔竜の声が聞こえてんのか?」

「ええ、熾天使は神に近い存在ですからね、この程度なら容易いです」

 

《龍二様、コイツ殺っちゃいませんか?めちゃくちゃ腹立つんですけど》

 

「やめろ魔竜、翼脚をしまえ」

 

《はっ、はい……》

 

魔竜が大人しくなると、ベルゼブブを呼びに行ったアザゼルがやって来た。セラフィムはアザゼルを見た途端、アザゼルに声をかけた。

 

「おや?そこにいるのは……堕天した魔王、アザゼル君じゃないですか」

「お前……セラフィムやな?」

「アザゼル、知り合いか?」

「せや、コイツは天使の中でもエリート中のエリートや」

「久しぶりじゃないですか。堕天した落ちこぼれのアザゼル君」

「な、なんの用や、お前……何しに来たんやっ!」

 

アザゼルはベルゼブブの影に隠れながらセラフィムに言い放つ。ベルゼブブはセラフィムに声をかけた。

 

「アザゼル君は確かにクズですが、随分な言い方をしますね?堕天したなら貴方とは関わりは終わってるのでは?」

「そこにいるのは……暴食を司る魔王ベルゼブブさんですね?虫けらが何を偉そうに意見してるんです?」

 

セラフィムはベルゼブブを挑発するが、ベルゼブブは淡々と答えた。

 

「その言い方だと、法を盾に我々を煽りに来たんですか?」

 

普段は冷静沈着のベルゼブブが珍しくも頭に血管を浮き上がらせる。

 

ベルゼブブがカレー以外でキレるなんて珍しい……。

 

「ってか法を盾にってベルゼブブ、どういう事?」

「龍二さんは知らないと思いますが、我々魔王はこの天界の天使に危害を加えると、処刑させる法律があります」

「はぁ?なにそのクソみてぇな法律」

 

ベルゼブブの言葉を聞いた途端、セラフィムは嘲笑うかのようにクスクスと笑い始めた。

 

「ふふっ、魔王にも頭のいい方がいるんですね」

「ならお前、わざわざケンカ吹っかけに来たのか?俺達魔王を処刑させる為に」

「ええ、まぁそうですね。ですが、興醒めしました。貴方クズを処刑しても意味が無いということがね?」

 

セラフィムの言葉を聞いた俺達はギリッと拳を握り、セラフィムの挑発に耐えていた。セラフィムは更に挑発を続ける。

 

「この監獄の資金は我々天使の税金で賄われているんですよ?我々天使は貴方の為に働い出る訳では無いんですから。ゴミはゴミらしく、我々の残飯を食って汚れ仕事をやってれば良いんですよ」

 

遂に我慢出来なくなったのか、アザゼルが殴り掛かろうとした。

 

「何調子に乗っとんのやワレェッ!今すぐぶっ殺したるわ!」

「止めなさいアザゼル君。安い挑発に乗ってはいけませんよ」

「そうですよ!手を出したら他の魔王達も処刑されちゃいますよ!」

「なんです?殴ればいいじゃないですか?ほらほら?」

 

セラフィムが頬をツンツンとつついた瞬間、俺はセラフィムを殴り飛ばした。

 

「これだから神が嫌いなんだ。自分が上だからと見下して舐め腐る」

 

殴り飛ばされたセラフィムは鼻血を流しながら怒鳴り散らす。

 

「鼻血が出たじゃないかっ!処刑!貴様は処刑だっ!」

「うるせぇよボケが、血を流す覚悟もねぇ癖にケンカ吹っかけてくんじゃねぇよ。俺達魔王はここに居るのは罪を償ってるが、それだけじゃねぇ。世界を滅ぼしてしまう恐れがあるからここにいるんだよ。なんなら今から俺達魔王全員でこの監獄や外の天界をぶっ壊してやろうか?」

 

そう言い放った俺は翼脚を広げながら右手をかざし、魔力を溜め込み始めた。すると、看守達と所長が慌てて駆けつけ、警笛を鳴らし始める。

 

「ピピーッ!何をしてるんだ0072番!?」

「売られたケンカを買っただけだ、邪魔するならお前らから消すぞ?」

「貴様!!反乱を起こす気か!?」

「セラフィム様、お気を確かに!!」

 

所長の手を借りて立ち上がったセラフィムはニヤリと笑って立ち去って行った。ベルゼブブとオセは冷や汗をかきながら話し始めた。

 

「ベルゼブブさん。不味いですね……」

「ええ、困った事になりましたね。天使達と戦争が起きますよ」

「ざまぁみろや!ボケッ!」

 

セラフィムに中指を立てながらイキるアザゼルを放って置いて、オセとベルゼブブは俺に声をかける。

 

「龍二さん、これから大変な事になりますよ?」

「熾天使を殴るなんて……!!」

「あはは……やっちゃった……」

「まぁ、貴方がやらなければ私が殴っていましたけどね?。こうしては居られません。全魔王を集めて対策を取らなければなりません」

 

ん?遺書でも書くのかな?

 

「どういう事?」

 

ベルゼブブはニヤリと笑って言った。

 

「天使と悪魔の全面戦争ですよ」

 

 




オセの情報は、『呼んでますよアザゼルさん』とソロモン72柱の情報を混ぜ合わせてます。
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