その後、俺、ベルゼブブ、モロクと共に12人の精鋭を集める為に、【七つの大罪】【ソロモン72柱】の魔王達と1人ずつ会い始めた。着いた先は同じ俺達の独房ではなく、女性囚人の監房へやって来た。
まず100年近くいるのに、この監獄に女も居たのにびっくりなんだけど。
慣れない場所で最初に声を掛けたのは……人魚の様に足がなくて魚のような尾びれが付いていた。
「えーっと、【嫉妬】を司る魔王……『レヴィアタン』さんですか?」
【七つの大罪・嫉妬の罪レヴィアタンとは、旧約聖書に登場する海中の怪物。悪魔と見られることもある。 「ねじれた」「渦を巻いた」という意味のヘブライ語が語源。原義から転じて、単に大きな怪物や生き物を意味する言葉でもある。キリスト教の七つの大罪では、嫉妬を司る悪魔とされている。また、嫉妬は動物で表された場合は蛇となり、レヴィアタンが海蛇として描かれる場合の外観と一致する】
檻の前でレヴィアタンと呼ばれた魔王に声を掛けると、レヴィアタンはベットに横たわりながら答えた。
「何よ?」
上半身を下着姿で横たわりながら答える。そんな中、ベルゼブブとモロクは俺の2歩後ろに立ちながら事の事情を説明し始めた。
「実は、天使と殺り合う形になりまして、貴女の力をお貸して欲しいのですが?」
「黙って従え、で無ければ俺達は消滅の危機だぞ?」
「…………乱暴な人達ね」
「あの、七つの大罪は今現在レヴィアタンさんを含め、暴食、色欲、強欲、怠惰、傲慢。そして八つ目とされた正義しか居ません。出来れば、レヴィアタンも協力して下さい」
俺が頭を下げると……。
「じゃあ……好きって言って」
「えっ?」
レヴィアタンに聞き返すと突然………。
「好きじゃあないんだ!?好きでもないのにこんな部屋に閉じ込めて飼い殺しにしちゃうんだ!?わからない!!男の人のそーゆーとこ私には理解出来ない!!」
突然ヒステリーな感じになったんだけど、え、待って。七つの大罪・嫉妬の罪ってこんな感じなの?
どうしたらいいか分からない俺はベルゼブブに顔を向ける。すると、ベルゼブブは俺に耳打ちをした。
「ここは適当にふっかけてやって下さい。後はどーとでもなりますから」
「えぇ!?うっうん……。好きだよ?レヴィアタン」
俺がそう答えると、レヴィアタンは涙を流しながら振り向いた。
「ほんとう!?信じていいのね!?」
「うんうん。すきすき、お願いレヴィアタン。天使と戦ってくれる?ストーカーに困ってるの」
「なんですって!?私がいると言うのに付き纏われてるのね!?いいわ!!私も参加してそのビッチ殺してやるわ!!」
「ありがとう。んじゃ、また1週間後に迎えに来るね?いい子に出来る?」
俺の演技を見てベルゼブブとモロクが必死に笑いを堪える中、レヴィアタンはうんうんと頷く。
「うん!出来るわ!任せといて!」
「んじゃまた後でね?」
「はーい♡」
そう言い残し、レヴィアタンを後にし、候補者リストに目を通し始めた。すると、モロクが指を指して助言してきた。
「次はコイツだな。コイツは厄介な奴だが、お前と同じ”神を嫌っている”。コイツも連れて行こう」
「えーっと、【ヴァラク】?」
【ヴァラクとは。頭を二つもったドラゴンにまたがった、天使の翼をもつ姿で現れる。召喚者に財宝のありかを教えるとされる。また爬虫類を統率する事ができ、蛇の現れる場所を教え、召喚者に害を与えずに財宝をもたらすともいわれる。ソロモン72柱の1人で30の軍団を率いる序列62番の地獄の大総裁と呼ばれている。天界監獄の中では、【統率を司る魔王】と呼ばれている。】
「起こした罪は……『エンフィールド事件』『修道女殺害』えげつないな、民間人を襲ったのか」
「ああ、今もその修道女の姿を乗っ取ったままだ」
って事は女って事になるのか……?
「奴ならこの先にいる。行くぞ」
「うん」
「あまり女性の名前を出さない様に。レヴィアタンさんが暴れますよ?」
《リュウジ様、不味いです。レヴィアタン様がこっちを見ています!!》
魔竜とベルゼブブはしーっと指を立てながら注意して来た。俺とモロクは慌てて口を塞いだ。そして、ヴァラクの監房に辿り着いた。中を覗くと、修道女が後ろを向いて立っており、俺はノック代わりに牢をコンコンと音を出しながら声を掛けた。
「あの〜、統率を司る魔王・ヴァラクさんですか?」
俺が声をかけると、ヴァラクは振り向いた。ヴァラクの顔は青白くゲッソリと痩せ細っており、ギラギラとした爬虫類の様な目をさせていた。
「なんだい?おや?確かあんた、熾天使を殴った魔王だね?」
「ええ、そうです。俺も貴女と同じく神を嫌っています。どーか、天使との抗争に協力をしてくれませんか?」
そう尋ねた瞬間、いつの間にかヴァラクは足元から黒い蛇を出しており、俺の首元を狙わせていた。
「っ!?」
ベルゼブブとモロクは咄嗟に構えようとすると……。
「おっと、モロクとベルゼブブ。動くんじゃないよ?ちょっとでも動いたらこの魔王に猛毒を流すよ?」
「バカな事はお止めなさい。ヴァラクさん」
「ったく、なんてイカれた野郎だ。ヴァラク、お前も天使を殺したいだろ?」
「アタシも神は大嫌いさね、けど、あんた達の命令には聞くつもりは無いよ?」
「おい、ババア。よく見て見ろ」
ヴァラクの首元と腹部には、魔竜の翼脚が突き付けられていた。
《貴女こそ動かない方が懸命ですよ?あまり我が魔王を舐めると痛い目に逢いますからね?》
「これが噂の魔王の能力かい?やるじゃないか……」
「で?どうする?協力してくれんのか?」
ヴァラクは観念したかのように……。
「分かったよ、アタシの負けさ……けど、勝負の時は好きにさせてもらうよ?」
「ありがとよ、また呼びに来るからな。魔竜、戻せ」
《かしこまりました》
魔竜が翼脚を戻すと、ヴァラクも黒い蛇を戻して行った。
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その後、俺達は着々とメンバーを集め、11人の魔王を選んだ。だが、あと一人に悩み始めており、食堂で最後の1人に関してベルゼブブとモロクと討論していた。
「予想通り【怠惰の罪・ベルフェゴール】が「俺はいいや。面倒臭いもん」って言って辞退してんだ。ここはやっぱりコイツだろ!!」
「いーえ、彼よりこの方の方がよろしいでしょう」
「ふざけんな。こんな奴らより、コイツの方が使える」
今、俺達が争っているのは、【色欲を司る魔王・アスモデウス】。【豊穣を司る魔王・バエル】【自然を司る魔王・ストラス】この3名のどれかにするかを揉めていた。
俺達が言い争っていると……。
「お困りの様やな……」
「「「???」」」
食堂の入口をチラッと見てみると、扉に体を預け、いかにも「話は聞いていたぜ」と言わんばかりにカッコつけていたアザゼルがいた。
「最後の1人……ワシに預けて見ん」
「絶対アスモデウスが良いって!!」
「いーえ、模範囚でもあるバエルさんが1番です」
「模範囚なんか関係ねぇ。ストラスの方が実戦向けだ」
アザゼルをチラッと見た後、魔王の候補者リストを見ながら俺達は何事もなかったかのように食堂を出て行った。