元太刀の勇者は立ち直れない   作:ボトルキャプテン

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番外編ー10 傲慢と神の腕

初戦を秒殺の敗北で幕を上げた魔王陣営はアザゼルとアスモデウスを取り囲み、正座をさせ事情を尋ねた。

 

「で?なんでアスモデウスはアザゼルと代わった訳?」

「そ、それは……」

「今更言い逃れ出来ませんよ?何をなさっていたんです?」

 

【色欲を司る魔王アスモデウスとは、アザゼルと似た姿をした悪魔だが、キリスト教の七つの大罪では色欲を司る。悪魔になる前は智天使だったとされる。引き起こした罪は『ルーダンの悪魔憑き事件』で修道院長ジャンヌ・デ・ザンジュに取り憑いたとされている】

 

アスモデウスを問い詰めていると、バカ(アザゼル)が。

 

「アスモデウス兄貴を責めんといて!悪いんはワイやっ!煮るなり焼くなりしたらええやん!!」

「喋んな秒負け犬」

「はい」

「あっ、言い忘れてたけど、負けたヤツはそこにある木箱に入って貰うからな?」

 

俺が指さした先には、木箱に【負け組】と書かれた木箱が幾つか置かれており、我先にアザゼルは風呂に入る様に木箱に入った。

 

「で?話戻すけど、アスモデウス。本当は何してたわけ?」

「どの道アスモデウスさんには逃げる事は出来ませんからね?」

 

1人残されたアスモデウスは重い口を開いた。

 

「すいません!可愛い天使ナンパしてました!」

「でしょうね、あんた色欲だもんね」

「やれやれ、困った方です……。まさかとは思いますが、我々のスターティングメンバーを漏らしたりしてませんよね?」

 

ベルゼブブがアスモデウスに尋ねると、アスモデウスは目を泳がせた。

 

「い、いや、流してないっすよ!?まさか、俺が?仲間を売る訳ないでしょ〜?」

「本当は?」

「すいません!『情報教えたらいい事しましょ』って言われたんでスターティングメンバーを話しました!それで、へへっ、いい事して来ました」

 

有罪(ギルティ)!!

 

「箱に入ってろ馬鹿野郎がっ!!」

「まぁ、漏らした所で問題はありませんがね?」

「だな、2回戦はアイツだったな?」

「そろそろ出てくるぜ?」

 

モロクが闘技場を見てみると、ヘイムダルが騒いでいた。

 

《さぁっ!続いてガチンコ対決第2回戦は、このお方だっ!》

 

反対側の門に光が灯されると、門が開かれた。

 

《第2回戦の天使側代表は…… ユダヤ教またはキリスト教神秘主義の伝承に登場する天使の一体。別名『神の腕』または力・戦を司る大天使、ゼ、ル、エ、ルゥゥゥゥ!!》

 

門の奥から現れたのは、巨漢を重装甲の鎧を全身に身に纏い巨大なハンマーを片手にして天使の特徴ともされる白い翼を広げて現れた。

 

ワァァァァァッ!!

 

天使側の応援席の男神や天使達は雄叫びを上げるように騒ぎ立てた。

 

《そして!!この屈強な天使に処刑される哀れな対戦者は……七つの大罪【傲慢を司る魔王】とされ、神々に謀反を起こした最強の悪魔!誰がなんと言おうが俺が1番!俺が最強!何故なら俺だから!初勝利を飾れるか!?『傲慢の罪・ルシファー』!!》

 

魔王側の門が開かれると余裕綽々な顔をした悪魔が現れた。色黒の美青年の姿をしており、右腕には蛇の刺青が巻き付くように入っていた。ルシファーはエレキギターを片手に堂々としている。それを目の当たりにした俺たちは不安を隠しきれなかった。

 

「大丈夫かなぁ?」

「心配ありませんよ、ルシファーくんですからね」

 

【傲慢を司る魔王ルシファーとは、【七つの大罪】でも最も重い【傲慢】の悪魔であり、 嘗て、父たる“神”が人間を自分の姿に似せて創り、それを天使達にも崇拝するように命じたのに反発。 付き従った天使の軍勢を率いて“神”に挑むも破れ、地に投げ落とされたという】

 

「ルシファー!!頼むぞー!!」

「負けたら承知しねぇぞ!!」

「おいおい、オーディエンスがやかましいなぁ俺を誰だと思ってんだ?」

 

ルシファーは突然、エレキギターをギャイイと響かせて叫び出した。

 

「オレだよオレ!!!ルシファーという名のオレ様だよ!!!おいおい、オレ様の相手は誰かと思えば、ゼルエルちゃんじゃねぇか?え?あの臆病者ゼルエルがオレ様に適うと思ってんのか!?」

 

挑発されたゼルエルはハンマーをギリリと握りしめる。

 

「謀反を起こした者なんぞ、知らんな」

 

ゼルエルがそう言うと……。

 

「おいおい、正気かよお前……オレだぜ!?神々にケンカ吹っかけたオレが相手をしてやるっつってんだぜ?秒刻みのスケジュールの中お前を倒す為に来てやってるんだぜ!?あのルシファー様がだ!!オレなぁ、オレなんだよ!!」

 

喋り続けるルシファーを他所に、ゼルエルはヘイムダルに視線を向けて「早く合図しろ」とアイコンタクトを送った。

 

《そっ、それでは第2回戦!始めっ!!ブオォォォ!!》

 

ヘイムダルが開始の笛を吹くと、ゼルエルはハンマーを両手で持ち、どっしりと腰を低く構えた。

 

「貴様だけは、生かして帰さん。必ずここで処刑してやる!!」

 

やる気満々のゼルエルを見た途端、ルシファーは。

 

「フ……シカトかよ……クソ漏らしのゼルエルちゃん?おい、聞いてんのか?ヒョロ腕、使徒、力自慢のゼルエル君!!」

「ぶっ殺してやる!!うぉぉぉぉっ!!」

 

ゼルエルは余程頭に来たのか、地面を抉りながらドスドスと走り出した。

 

「いいぜ、遊んでやるよぉ!!」

「うぉぉぉぉっ!!」

 

ルシファーのエレキギターとゼルエルのハンマーがぶつかり合い、巨大な衝撃波が生まれた。鍔迫り合いになった途端、ルシファーはギンと目を光らせた……。

 

するといつの間にか、ゼルエルが地面に倒れていた。


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