元太刀の勇者は立ち直れない   作:ボトルキャプテン

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番外編ー14 暴食の力

ラファエルと対峙したベルゼブブは構えもせずに合図を待っていた。

 

「審判さん。早く合図を」

 

《それでは、3回戦!試合開始!!ブオオオオオッ!!》

 

試合開始の合図の笛が鳴り響くと、ラファエルは杖をベルゼブブに向けた。

 

「神の裁きを食らうがいいっ!!」

 

ラファエルが青い炎の玉を創り出し、ベルゼブブに放った。火の玉の弾幕はベルゼブブに直撃したが、土煙から現れたベルゼブブは無傷だった。

 

「どうしました?」

「なっ、何!?なぜ効かない!?」

「やれやれ、三大天使の実力もこの程度ですか?」

「舐めるなっ!!『ホーリーフレイム』!!」

 

ラファエルは巨大な青白い炎を創り出し、そのままベルゼブブに投げ付けた。ベルゼブブは微動だにせずに言い放つ。

 

「愚か者め、その様な炎は攻撃ではない」

 

ベルゼブブは口を開けて、

 

バクンッ!!

 

「食すものだ」

 

ベルゼブブは一瞬でホーリーフレイムを喰らい、口元をハンカチで拭き始めた。ラファエルはゾッと青ざめた。

 

「食べる?食べるだと!?バカな!?」

「今度はこちらの番ですね?」

 

そう言ってベルゼブブは右手をかざすと、黒い煙の様な物が集まりだした。俺やモロクは目を凝らして黒い塊を見つめた。

 

「なんだあれ?」

「まさか……ありゃ……」

《龍二様、アレは蝿です!!蝿が集まってるんですよ!!》

「えぇっ!?」

 

ベルゼブブはボソッと呟いて、ラファエルに投げ付けた。

 

「『蝿玉(フライボール)』!!」

 

蝿玉はラファエルに直撃すると、

 

ブブブブブブ。

 

蝿達はラファエルにまとわりついた。

 

「なっ!?蝿!?くそっ、離れろ!!」

「無駄ですよ。私の蝿玉は生半可な力では引き剥がせません」

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

ラファエルは蝿に集られ黒い人形の様になると、突然青白い炎が燃え盛る様に飛び出した。

 

「っ!?」

「おのれ……このラファエルに汚らわしい物を付けよって!!」

「私の蝿玉を消し去りましたか」

 

ベルゼブブはため息を吐き、そのままフワッと空中に浮かび上がって両手を広げた。すると、闘技場の空が段々とドス黒い雲に覆われて行った。俺達は空を見上げて、

 

「すげぇ、ベルゼブブは気候も操れるのか?」

「いや……アレは違うな」

「モロク?どういう事?」

「へっ、ベルゼブブめ。何だかんだ言ってブチ切れてるじゃねぇか」

「え?」

 

《龍二様!見てください!!》

 

魔竜に言われた俺は再び見上げると、雲がウゾウソと動いているのに気付いた。

 

アレはまさか……。

 

ベルゼブブは黒い煙の様な物を纏わせながら、

 

「『蠅嵐(フライストーム)』!!」

「なっ!?蝿だと!?アレが全て蝿だと言うのか!?」

「さぁ、喰らいなさいっ!」

 

ベルゼブブが両手を振り下ろすと、蝿の大軍は闘技場になだれ込んで来た。俺は咄嗟に魔竜に言い放つ。

 

「うげぇっ!!全部蝿かよあれ!!気持ち悪っ!!」

「とんでもねぇ大軍だ。俺達も喰われるぞ!?」

「魔竜!!皆を守れ!!」

《はいっ!龍二様!!》

 

魔竜は翼脚を巨大化させて悪魔陣営を覆うように蝿から守った。天使側も数人の結界を張り巡らせて身を守り始める。

 

「このっ!くそっ!はぁぁっ!!」

 

ラファエルは光の結界を張り巡らせる。だが、蝿が次々と結界を破ろうと攻撃を繰り返し、ビシビシと結界にヒビを入れ始めた。

 

「そんなっ!?私の結界が!?」

「フハハハハッ!ハーッハッハッハッ!!」

「嫌だ!喰われたくないっ!嫌だぁぁぁっ!!」

 

遂に結界が破られ、ラファエルは黒い渦に飲み込まれて行った。そして、一斉に蝿が飛び去るとラファエルは白骨化しており、骨と蛆虫だけが取り残されていた。

 

「ご馳走様でした」

 

ヘイムダルが結界から出て来てラファエルの生死を確認した。

 

《しょっ、勝負ありっ!!第3回戦の勝者は……ベルゼブブゥゥッ!!悪魔陣営の初勝利だぁぁぁっ!!》

 

勝利を告げられた俺達は全員立ち上がり、

 

「「「よっしゃぁぁぁぁ!!」」」

 

ベルゼブブが戻って来ると、俺達はベルゼブブを胴上げをして喜びを分かちあった。

 

────────────────────────

 

その後。様々な悪魔達が健闘し、11戦6勝までになった。最後の1人に運命が決まる一戦とされる事になった。

 

無論、最後に残ったのは。

 

「龍二さん、これで最後です頑張って下さいね?」

「これで勝てば俺達は生き残れるんだ!頑張れよっ!?」

「負けたら承知しないよ!!」

 

悪魔側の門には、出場した悪魔達や監獄から応援にやって来た悪魔達が見送りの為に来てくれていた。俺は一人一人とハイタッチをしながら闘技場に向かった。

 

「行くぞ!魔竜!最後の戦いだっ!」

《はいっ!龍二様。参りましょう!!》

 

門を潜り、闘技場の中に入るとヘイムダルが実況に熱を入れていた。

 

《さぁ!ガチンコ対決の最終決戦!この一戦で運命が決まります!。処刑かっ!?はたまた処刑免除か!?両者登場!!》

 

わぁぁぁぁっ!!

 

今までないくらいの声援で闘技場が揺れ始める。

 

《まずは天使側!今回のガチンコ対決の立案者でもあり、熾天使の頂点に君臨する大天使。今宵は聖剣アロンダイトを片手に悪を罰する!!セラフィムゥゥゥゥ!!》

 

セラフィムは純白の鎧に身を包み背中には神々しい剣を背負いながら現れた。

 

《対するは、七つの大罪八つ目【正義】とソロモン72柱の一人として数えられた異質の魔王!!殺した人間は星の数!その中で一番の犯罪は【神聖世界軸】を歪めた罪とされている!!処刑はこの男にかかっている!!正義を司る魔王・アンドロマリウスゥゥゥゥ!!》

 

俺もオセに復元してもらった四凶武器の一つである魔剣ストームブリンガーを肩に背負いながらセラフィムの前にたった。

 

《最終決戦!!開始っ!ブオオオオオッ!!》

 

運命の一戦が始まった。

 

 


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