俺とセラフィムが睨み合うと、ヘイムダルが角笛を構えた。
《泣いても笑っても最後の勝負!天使と悪魔のガチンコ対決最終戦!試合、開始いいっ!!ブオオオオオオオオオ!!》
ガキィン!!
角笛が鳴り響いた瞬間、俺とセラフィムは鍔迫り合いを始めた。聖剣アロンダイトと魔剣ストームブリンガーがぶつかり合い、2人の周辺は巨大な衝撃波が生まれた。
「はぁぁぁぁぁっ!」
「うおおおおおお!」
幾度も刃がぶつかり合って火花が舞い散るが、どちらも刃が当たらなかった。
これじゃラチがあかねぇっ!!
そう思った瞬間、セラフィムも同じことを考えていたのか、左手をかざした。
「『ホーリーインパルス』!!」
セラフィムは白く輝く衝撃波を放った。俺も応戦する為に右手をかざした。
「『ドライファ・ダークネス』!!」
白く輝く衝撃波と禍々しい渦の衝撃波はぶつかり合い相殺した。
白く輝く衝撃波、俺のドライファ・ダークネスに似てる魔法を使いやがった。遊んでる場合じゃねぇな。
「なら、これはどうだ!」
俺は右手を自分の足元に向けて再びドライファ・ダークネスを放って土煙を上げた。土煙はセラフィムを囲うと、
「そんな子供騙し、私には───」
ガキィン!!
土煙に紛れて俺はセラフィムの背後から斬ろうとしたが、セラフィムは聖剣アロンダイトで難なく防いだ。
「ちっ」
「噂の魔王の実力はこんな物なのか?ガッカリだな」
俺はバックステップでセラフィムから離れると、魔竜が話しかけてきた。
《あの熾天使、なかなかやりますね》
「ああ、まぁロキに比べれるとそうでも無いけどな」
《ええ、そうですね。そろそろ本気で戦いましょう、楽しみたいお気持ちは分かりますが他の魔王様達の運命がかかってます》
「お前の言う通りだな……遊んでる場合じゃない」
魔竜は翼脚を広げ、禍々しいオーラを放ながら俺は魔剣ストームブリンガーを構えた。セラフィムはクスリと笑った。
「さぁ、第2ラウンドだ!」
「ふっ、今まで手を抜いていたと言うのか?面白いならかかって──」
ズバッ!!
俺は一瞬でセラフィムの間合いに入り、白銀の鎧を斬り裂いた。切り裂かれた鎧からは、セラフィムの鮮血が飛び散った。
「なっ!?」
「悪いが遊びはここまでだ。本気で行かせてもらうぞ!」
「くっ……」
セラフィムは回復魔法を唱え、胸元の傷を癒し始めた。すると、したたる血はやがて止まった。
回復魔法……厄介だな。こうなるんだったら呪い系の魔法を覚えとくべきだったな。
「面白い、なら食らえ!『ホーリークロス』!!」
セラフィムは前後左右に白い線を延ばし、十字型の白い柱を作りだした。その光は俺の足元にまで伸びてくると、突然魔竜が騒ぎ出した。
《龍二様!、飛びますよ!!》
「なっなんだよ!急に!?」
ふわふわと飛び上がると、魔竜が話し出した。
《あの白い十字架は危なかったですよ。あのまま立ってたら消滅してましたね》
おいマジか。
「迂闊に近づけねぇな……」
俺と魔竜が様子を伺っていると、セラフィムは聖剣アロンダイトを俺にむけながらボソボソと何かを唱えているのか、口元を早々と動かしていた。
「『ディバインストライク』!!」
聖剣アロンダイトの剣先から突然光の弾丸を作り出し、俺に向け全て射出して来た。俺は猛スピードで光の弾丸を避け始めた。
「あんなもんまで使えんのかよ!!」
《龍二様!一旦離れますよ!!》
俺と魔竜は弾幕を避ける為に大空に飛び上がると、セラフィムはニヤリと笑った。
「かかったな!!『セイクリッドレイン』!!」
セラフィムが唱えた途端、俺の上に真っ白な雲が現れた。次第に、ポツポツと雨が降り出して来た。
「なんだ?この雨……?」
《なんでしょう?》
俺達が雨に当たっていると異変が起きた。雨が当たった部分がジュージューと鎧が焦げ始めていた。
「おいっ!やべぇぞ!!」
《これは聖水です!斬撃であの雲を斬り裂いて下さいっ!》
「よしっ!『デスブリンガー』!!」
俺は斬撃を飛ばして白い雲を斬り裂いた。雲を切り裂くと、聖水の雨は止んだ。
《何か変ですね……熾天使の長がこんな小技ばかり……怪しくありませんか?》
「確かにクサイな、罠か?」
《恐らく、如何致しますか?》
「どうするって、逃げてちゃ勝てねぇからな!」
そう言って俺は急降下しながらセラフィムに向かっていく。セラフィムは聖剣アロンダイトを構えると光が集まりだした。
「力の根源たる熾天使が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を光の刃の如き一撃で切断せよ!『インディグネーション・スラッシュ』!!」
ズバッ!!
猛スピードで突っ込んで来た俺を光の刃に切り捨てられ、地面に滑る様に墜落した。セラフィムは勝利を確信したのか、剣を鞘に収める。
「全ての魔力を一撃に込めた私の最強の技だ。この技を使ったのはお前が初めてだ」
セラフィムが立ち去ろうとした時、俺はフラフラと立ち上がった。
《龍二様!しっかりして下さい!》
「ぐっは……ゲホッゲホッゲホッ!!」
《セラフィムはもう魔力を使い果たしてます!こちらも一撃で放ちましょう!!このままでは龍二様の体が持ちません!》
セラフィムが後ろを振り返り、俺が生きている事に驚いていた。
「バカな!?私の一撃必殺を耐えただと!?」
「今度は……こっちの番だな……」
俺は魔剣ストームブリンガーをセラフィムに突き付けて唱え始めた。
「その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は猛獣の爪牙也。叫びすらも抱かれ、苦痛に悶絶するがいい!!『レオノーラ』!!」
そう叫んだ途端、俺の後ろから巨大な黒いライオンが現れた。咆哮をあげた黒いライオンはそのままセラフィムに向かって走り出し、セラフィムに噛み付いた。
「ぐはぁっ!!嫌だ!負けたくないっ!死にたくないっ!私は熾天使だ!私の正義が正しいんだぁぁっ!!」
黒いライオンはそのままバクッと口を閉じてセラフィムを飲み込んだ。レオノーラはそのまま大空に駆け上がって、消滅した。
「あんたの正義もさぞかし重かろうが、こっちも色々背負ってんだよ」
《なんということだぁぁっ!熾天使セラフィムが黒い獅子に食われたぁっ!!という事は……魔王側の勝利が決定!処刑は撤回が決まったぁぁっ!!》
「「「「やったぁぁぁぁぁっ!!」」」」
魔王達は全員総立ちで喜んだ。応援席からなだれ込んで来た魔王達はボロボロの俺を持ち上げて全員で胴上げを始めた。