元太刀の勇者は立ち直れない   作:ボトルキャプテン

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最終話です。最後までお付き合い下さい。


最終話ーしばしの別れ

熾天使達との戦いから更に100年後、俺は罪を償いながら刑務作業に取り組んでいた。天界の岩を砕いていると、看守に声をかけられた。

 

「アンドロマリウス!!」

《龍二様、看守がお呼びですよ?》

 

ハンマーを振り下ろすのを止め、汗を拭いながら後ろを振り返った。

 

「あ?なんだよ」

「面会だ。監獄に戻れ」

 

面会?

 

首を傾げながら作業を止めて看守について行こうとすると、安全ヘルメットを被ったアザゼルとベルゼブブが一輪車を押しながら、

 

「おや?アンドロマリウスくん、休憩時間はまだですよ?」

「なんや、サボりか?」

「ちげーよ。面会だよ、面会」

「そうですか。いいタイミングでしたねぇ」

「んじゃ、後は頼んだよ〜」

 

ベルゼブブとアザゼルに挨拶した俺は、監獄に連れて行かれて面会室までやって来た。そこには、掟を司る女神・ネメシスがいた。

 

「作業お疲れ様です。龍二さん」

「やっほ〜、ネメシス。セラフィム以来かな?」

「そうですね。お元気そうでなによりです」

「俺に面会したい奴が居るって聞いてきたんだけど、それってネメシス?」

 

俺がそう尋ねると、ネメシスは首を横に振った。

 

「いえ、私では無いです」

「え?んじゃ〜……誰?」

「ターニア・J・ローズブレイドという女神と」

「いや知らない人なんだけど?Jって何?」

「そうでしょうね。私の先輩に当たるお方ですし、あるお方の担当の女神ですから」

 

いやだからJって?

 

「まぁ、女神は嫌いだから拒否します」

「そう言うと思いました。ですが、その方ではなく、その担当の勇者が龍二さんと面会したいそうなんですよ」

 

勇者?

 

「物好きが居るものだな、一体誰だ?」

「ライト・ダテと言えば分かりますか?」

「────っ!?」

 

俺は思わず声を失った。

 

ライト。鎧の勇者と呼ばれ、俺に強力なダメージを負わせた張本人。

 

「まぁ、アイツとは色々あったけど悪いヤツじゃないからなぁ」

「どうします?会うの辞めますか?」

 

少し考え込んだ俺は、

 

「いや、会おう。『地獄門』や『月食の鎧』とかアイツのお陰で解放出来た訳だしな。ライトと出会って無かったら四凶武器を全て集められなかったし」

「そうですか。では先方にはライト・ダテさんのみとなら面会をすると伝えて起きます」

「わかった」

「では、面会室ではなく特別に部屋を看守長からお借りしてますのでそこでお待ちください」

 

そう言ってネメシスは俺を別室に連れて行き、そこで待つ様に指示された。そして10分後。

 

コンコン。

 

ドアがノックされた。

 

「来たのか?ネメシス」

「はい。お通して良いですか?」

「ああ、いいぞ」

 

ドアが開かれるとそこには、少し大人びた鎧の勇者・ライトが立っていた。俺は見た途端、ライトに声をかける。

 

「よぉ、ライト。久しぶりだな」

「お久しぶりです。魔王・龍二さん」

 

俺は立ち上がってライトに拳が届く距離まで近付いた。それをドアの隙間から覗いていたネメシスと白い髪の女神が慌てて入って来た。

 

「龍二さん!ダメですよ喧嘩は!?」

「ネメシス!止めるわよ!?」

 

俺はネメシスの言葉を無視して手を上げて……ガシッと握手をした。

 

「あの時は悪かったな」

「いえ、俺の方こそ生意気言ってすいませんでした」

「ライトのお陰でロキやメディアを倒す事が出来たよ」

 

硬い握手を交わしていると、女神達は呆気に取られていた。

 

「あ、あれ?一触即発だったんじゃ?」

「そ、そうよね?あのビリビリとした雰囲気は今にも殴ろうという感じに思えたんだけど?」

「あのな?一度は殺し合った仲でも仲良くなれる事があるんだよ。な?」

「そうですね」

「で?今日はなんの用だ?まさかあの時の続きをしに来た訳じゃないだろ?」

 

俺がそう言うと、ライトが首を横に振った。

 

「いえ、今日は純粋に貴方に会いに来たんです。これはつまらない物ですが、一緒にどうですか?」

 

ライトはパンパンに膨らんだリュックを降ろしてリュックの中から酒やつまみ、挙句の果てにはゲーム機まで出て来た。

 

「うおお……日本の物を見たのはいつぶりだ?懐かしいなぁ」

「そうだと思いましてね。どうです?決着はゲームで付けませんか?」

「そういう話なら喜んで受けて立とう。ネメシス、良いよな?」

「構いませんよ?看守達はこの部屋には近付かない様にしてあるので」

「話は決まった。なら決着を付けようか」

 

────────────────────────

 

2時間後。

 

「ネメシスてめぇっ!俺に赤カメぶつけやがったな!?」

「ゲームで本気にならないで下さいよっ!わっ!」

「あら?ネメシスは日本に疎いのね」

「一気にまとめて吹き飛ばしてやる!!」

 

マリ〇カートで潰し合いをしていた。声が外に漏れていたのか、アザゼルとベルゼブブが入って来た。

 

「な、なんや!?龍二、ワレ面会とか言って遊んどるやん!?」

「見ない顔の方も居ますね?その面構え、勇者とお見受けしました」

「─────っ!?」

 

ライトはアザゼルとベルゼブブを見た途端戦闘態勢に入ったが、俺がまぁまぁと宥めた。

 

「龍二さん。なんですかコイツら!?」

「大丈夫コイツらは監獄仲間だ。アザゼル、ベルゼブブ、作業は終わったのか?」

「終わったで?えらい苦労したわ」

「久しぶりの重労働でした」

「ご苦労さま。お前らもどう?」

 

俺がWiiのリモコンを手渡すと、アザゼルが手に取った。

 

「ええの?遊んでええの!?」

「良いよ?俺はちょっと話したい事があるから」

「では、アザゼルくん。お言葉に甘えて遊ばせてもらいましょう」

「なら私達は受付で待ってますね?ごゆっくり」

 

ネメシスとターニアは部屋を出て行くと、俺とライトが酒盛りをし始めると、アザゼルとベルゼブブが。

 

「アザゼルくん、そろそろ僕にもWiiをWiiをやらせて下さいよ」

 

ゴッ!

 

アザゼルが夢中になってリモコンを振り回すとベルゼブブの顔面に当たった。ベルゼブブが鼻先を赤くして蹲ると、アザゼルが申し訳なさそうに、

 

「い、いやいや今のはワシ悪ないで?べーやんの間合いの測り方が甘いのが悪いんやで?」

 

ベルゼブブはスっと立ち上がって。

 

「そうですね。今のは確かに僕が悪かった。でも、そろそろ代わってくれてもいいでしょう?」

「い、いやや。べーやん絶対怒ってんもん」

「ハハハハ怒ってなんかいませんよ」

「楽しくゲームするって約束する?」

「ええ。楽しくゲームしますとも」

「しゃあないのう。5分だけやで?」

 

アザゼルはそう言ってベルゼブブにリモコンを渡した瞬間、ベルゼブブはアザゼルを押さえつけて、

 

「てめぇっ!オラァッ!!オラァッ!!オラァッ!!」

 

リモコン使ってゴンゴンと殴り始めた。

 

「うるせぇぞ!静かにしろ!。悪いな、囚人はこんなんばっかだ」

「あはは……」

「で?誰と結婚したんだって?」

「セーアエット」

 

あー、あの女騎士か。

 

「へぇ〜。ラフタリアじゃなかったんだ」

「ラフタリアはあくまでも尚文の女でしたからね。あの時連れて来たのは龍二さんが動揺するんじゃないかって思って連れて来ただけです」

「なるほどね。結婚したっていうなら……プレゼントの一つでもあげなきゃな」

 

そう言って俺は右手を光らせてライトに向けた。

 

「ほら、受け取れ」

「なんですか?」

 

ライトも俺を真似て左手を差し伸べた。俺はライトの手の上で広げるように開く様にすると、光はライトの左手に吸収されて行った。

 

「なんです?今の?」

「『月食の鎧』のスキルをお前に譲った」

「えっ!?そんな事が出来るんですか!?」

「俺は魔王だぞ?なんだって出来んだよ。女神達には内緒だからな?」

 

俺はしーっと指で口を抑えながら言った。

 

「ありがとうございます。この力は大事にさせて貰います」

「この月食の鎧の力は強大だ。これはヤバいなって時に使いな」

「はいっ!」

「さて、そろそろお開きにするか。アザゼル、ベルゼブブ。片付けて牢屋に戻るぞ〜」

 

────────────────────────

 

その後、後片付けを終えて特別室から出た俺達はライトと別れの挨拶をした。

 

「これでお別れだな」

「そうですね……」

「まぁ、行き詰まったりしたら相談くらいには乗ってやるよ」

「せやせや、たまに英雄がカチコミにくるさかい、あんさんみたいな奴だったら歓迎するで」

「しばしの別れだ。またな」

「はいっ!さようなら」

 

ライトとそこで別れ、お互い逆の方向に向かって歩き始めた。この300年後、司法取引きを行ってとんでもない異世界に行ったのはまた別のお話し。

 




ご愛読ありがとうございました!。これで元太刀の勇者は立ち直れないを終了します。

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