ラファン村を制圧してから数日後、俺は冒険者達から奪った装備を纏い、メルロマルク城下町に再び訪れた。
荒くれ者の鎧
装備ボーナススキル……『騙し討ち』
今回は仲間探しである、ただの人間を仲間にすると裏切る可能性があるため【悪】に相応しい人材を探していた。そう、例えば、この世界に落胆している者など、何か情報がないかと歩き回っていた。
「そう簡単に見つかる訳ないか、人気の無い所に行けば1人くらいいると思ったんだけどなぁ、悪魔とか頭のおかしい奴とかが仲間になってくれると色々聞けて楽なんだがなぁ」
独り言をブツブツ言っていると村人同士の世間話しが聞こえて来た。
「聞いたか?ラファン村が魔物に襲われたって」
「聞いた聞いた、初心者用の村だからって国は動かないってよ」
「初心者用だからなぁ」
「可哀想に……それはそうと、『墓荒らし』は捕まったのか?」
「いや、まだらしいぜ?全く罰当たりな奴だぜ……」
あんだけ大暴れをして国が動かないってさすがはクズ国王だな、英智の賢王が聞いて呆れてくる、しかし『墓荒らし』か……ふむ。
俺は手を叩いて閃いた。
「よし……『墓荒らし』に会ってみるか」
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ーー深夜の城下墓地ーー
俺は草むらに隠れながら『墓荒らし』が来るのを待った、すると痩せこけて白衣を着た男が荷車にスコップを積んで現れた。見た目はメガネをかけた顔に全身から出てる根暗な感じのオーラがヒシヒシと伝わってくる。
「あいつか……?科学者っぽい服着てるけど、この世界なら錬金術師が普通じゃないのか?」
そう考えていると、男はザクザクと墓を掘り始めた。棺桶をこじ開けて何やら死体を動かそうとしている、そして死体を引っ張り出した所を現行犯を目の当たりにした俺は声をかけた。
「おいあんた、死体なんてどーするんだ?」
「!?」
「おっと、安心してくれ……あんたの──」
俺が落ち着かせようとした瞬間、痩せこけた男は体を突然巨大化させ、俺を殴り飛ばした。俺は墓石を何枚も貫通させ端から端まで飛ばされた。
『粗暴の怪物ハイドにより殺されました』
『EXP250獲得しました』
『筋力強化のスキルが解放されました』
『不死身の呪いによって再起動します』
俺は何事も無かったかのように土煙から現れると、変化した男は驚きを隠せなかった。
「あー痛てぇ……お前はもしかして、『ジキルとハイド』って奴か?」
「何!?何故俺の名前が分かった!?」
「マッドサイエンティストの【ジキル博士】と【粗暴の怪物ハイド】だな?」
「ジキルまで……貴様は何者だ!?」
「俺は福山龍二。いずれ、この世界の魔王になる男だ」
「魔王……だと……?」
「あんた達見たいな人物を探していた、良かったら仲間になってくれ……その前にジキル博士に変わってくれるか?」
俺にそう言われるとハイドは再び痩せこけた男に戻り、ジキル博士と思われる男は怯えながら俺に尋ねた。
そりゃ殺した相手が平然と歩いて戻って来たらそりゃ驚くわな。
「ハイドの一撃で生きてるなんて……あなたは不死身なのですか!?」
「俺は『不死身の呪い』にかかってるんだ。まぁ、痛みを伴うがね?」
「なんと……素晴らしい……!!」
「は?」
「アナタの不死身の体に興味があります!」
ジキル博士は俺の体をベタベタ触りだしたり虫眼鏡で覗いたりしていた。
えっなにこいつ、キモイんだけど。
「待て待てそんなに興奮しなさんな、それにしても、アンタはなんで死体漁ってんだ?」
俺はジキル博士に『墓荒らし』の理由を聞いた、聞く所によると『ある怪物』を造るからだと言う。
なるほど、怪物を造るスペシャリストだな?最高の人材じゃあないか。
「なるほどね、そんで墓荒らしか」
「はい……業界からも永久追放されまして」
「そりゃ死体で「人造人間作りました!」なんて聞いたらドン引くわ、なら俺んとこに”新鮮”な死体があるからソレ造ったら?」
「良いんですか!?」
「だけどその代わり、正式に俺の仲間になれよ?」
「もちろんです!この世界にもう未練なんてありませんからね」
「なら話しは決まったな」
「龍二さんの体も調べさせてもらっても良いですか!?」
「えー?俺も?」
俺はジキル博士に対して露骨に嫌な顔をする。
男にベタベタ触られてもチョットね、まぁ仲間になってくれるなら我慢するか。
「分かった……けど裸とかにはならねぇぞ!?」
「そこまでは私もチョット……」
「で?ハイドは納得したのか?」
「ハイドもこの視線で見てるので問題ありませんね、無理なら暴れてますから……」
「暴れても俺は死なないから大丈夫だよ?むしろハイドより強くなり続けるからいずれ根負けすんじゃねぇか?」
「あー、それもそうですね。死ねば死ぬほど強くなるのであれば私達もお手上げですから……ふふふふふふふ」
不気味に笑うジキル博士。
気持ち悪いっ!
「ならしっかり働いてくれよ?勿論、戦闘は話せるゴブリンと俺がやるから」
「ハイドに変われば問題ありませんよ──って、貴方ゴブリンと話せるんですか!?」
「『魔物の言語』のスキルがあるからな、大抵の魔物なら分かるぞ?」
「興味深いお方ですねぇ……フヒヒヒ」
「変態科学者がよく言うよ……ククク」
こうしてマッドサイエンティストのジキル博士と粗暴の怪物ハイドが仲間になった。