いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場 作:コントラポストは全てを解決する
まずい。ひじょーにまずい。これから要注意警戒人物の一人が家に来る。りゅう兄の姉を名乗ってるけど、何かとりゅう兄と良い雰囲気になっちゃうあの人が来る。どうしよう……りゅう兄を取られるのは確実として……あとは……りゅう兄の頭を撫でたり、りゅう兄と手を繋いだり、ほ、頬にちゅーとかしちゃうのかな……。りゅう兄は渡せない。何か対策を考えなければ……。
「りゅう兄、商店街行こ!」
「え、これから花音先輩が来るのに?何か欲しい物があるならお金預けるから買ってくるか?」
「りゅう兄のバカ!」
「理不尽……」
ダメだ、りゅう兄はわかってくれない。だったら、玄関に居座って花音が来るのをがーどすれば……
「あ、いらっしゃいませ。花音先輩」
「う、うん。お邪魔するね、竜介君」
──…………。
「今日はゆっくりしていってください。お菓子も沢山用意しましたから」
「うん。ありがとう」
あー……りゅう兄と花音がきらきらしてる。すごい微笑みあってる……。なんであんなに恋人みたいなの。りゅう兄の恋人はあこなのに……。悔しい。
「あこちゃん、ごめんね。二人の家にお邪魔しちゃって」
「……別に」
二人の家……あこもりゅう兄の家族…………ってそうじゃない。花音に撫でられたからってあこはなびいたりしない。なんか甘くていい香りがして甘えたくなっちゃうけどそうじゃない。見張らなければ、りゅう兄がうわきしないよう見張らなければ。
「花音先輩、飲み物どうしますか?紅茶とジュースしかないですけど」
「あ、じゃあ紅茶にしようかな」
「分かりました」
りゅう兄、嬉しそうな顔しちゃって……。あこと一緒にいる時より活き活きしてる……。悔しい……りゅう兄の恋人はあこなのに……。
「ねえ、花音」
「どうしたの?あこちゃん」
「なんで花音はりゅう兄とそんなに仲が良いの?」
「え?えーっと……そう見える?」
「うん」
りゅう兄が花音といる時は、あこの知らない笑顔でりゅう兄が笑う。今までりゅう兄をくすぐったり、お手伝いしたりしてみたけど、あの笑顔は引き出せなかった。
「りゅう兄、花音といるとすごく幸せそうに笑うよ」
「そっか……それなら、うん。良かった」
花音も幸せそうな笑顔になった。なんで……なんで花音までその笑顔になるの。あこはそんな顔で笑えないよ?どうしたらその笑顔が出せるの?
「ねえ、あこちゃん。竜介君の幸せって考えた事あるかな?」
「りゅう兄の……幸せ?」
「うん。どんな時に、どんな風に、竜介君は幸せを感じるのかなって。私はいつもそのことを考えてるんだー」
りゅう兄の、幸せ。どんな時に、どんな風に…………考えてみてもわからなかった。花音なら知ってるのかな。りゅう兄を幸せにする方法。
「花音は、りゅう兄を幸せに出来るの?」
「うーん……多分、本当の意味では竜介君を幸せにはできないかな」
「じゃ、じゃあ、誰なら出来るの?」
「それはね──」
誰、誰ならりゅう兄を幸せに出来るの。あこじゃないのが悔しいけど、その人の前にりゅう兄を連れて行ってあげたい。
「花音先輩、紅茶入りましたよ」
「あっ、うん。ありがとう竜介君」
「いえいえ。それと、はい。あこもオレンジジュース。なんの話ししてたんだ?」
「……内緒」
「えー、気になるなー」
りゅう兄の顔を見上げてみる。いつも通りに笑っていた。
あこにも、りゅう兄の幸せの笑顔を引き出す事が出来るのかな……。
「りゅう兄、頭撫でて!」
「え、急にどうしたんだよ?」
「いいから!早く!」
「うーん…………じゃあ、ちょっと失礼して……」
りゅう兄があこの頭を撫でた。あ、半年振りのりゅう兄のなでなで……気持ちいい…………って違う。あこが幸せになってたらダメだ。りゅう兄の顔を……あ、撫でられてるからりゅう兄を見上げられない……。りゅう兄、今どんな顔してるのかな……。
「ふふっ。竜介君、幸せそう」
花音が紅茶を飲みながら何か言ってるけど上手く聞こえない……。うー……りゅう兄の顔がみたいよ……。
花音を出汁にして食うりゅうあこは上手いか。
竜介を幸せに出来るのはただ一人──