いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場   作:コントラポストは全てを解決する

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Part21 閑話休題:一年A組その4

「明日香聞いて!六花がりゅう兄のうわき相手になった!」

「へー、そーなんだー(棒)」

「え?」

 

 六花がりゅう兄を恋する女の子の目で見ていたのはしゅうちのじじつ。あこはしっかりこの目で見たのだ。あこは誤魔化せない。

 

「か、神楽先輩の事は別にそんな風には見ていなくてですね。な、なんといえば良いか」

「じゃあ、先輩の事はなんて思ってるの?」

「そ、それは、その……頼りがいがあって、ギターも上手な年上の先輩で……おじいちゃんみたいな優しくて素敵な方だなって」

「……それ、褒めてるの?おじいちゃん?」

「褒めてますよ!」

 

 りゅう兄はまだまだぴちぴち(死語)だよ?週に1回ランニングしてるし、家でたまに筋トレもしてる。でもりゅう兄の腹筋は割れない。

 

「神楽先輩に撫でて貰うと、おじいちゃんに撫でて貰った時の事を思い出すんです」

「ああ、なんかわかる。私も昔お父さんに撫でて貰った時を思い出すんだよねー」

「りゅう兄はおじいちゃんでもお父さんでもないよ!」

 

 りゅう兄はまだまだぴちぴち(死語)だよ。勝手にお父さんやおじいちゃんにしないで。

 

「でも、あこだって先輩の事りゅう『兄』って呼んでるじゃん。お兄ちゃんみたいに見てるんでしょ?」

「りゅう兄はりゅう兄だよ?」

「うーんこの……」

「難しいですね……」

 

 どういうこと?

 

「そもそも、なんでりゅう兄なの?せいぜい竜介先輩じゃない?」

「なんでって言われても……りゅう兄はりゅう兄だもん」

「昔からそうだったんですか?」

「うーんと──」

 

 ……昔は、確か『りゅうすけ』って呼び捨てにしてて……あれ?なんで『りゅう兄』になったんだっけ。

 

「うーん……思い出せない。なにか大事な事があったような気がするけど……」

「まあ、そんな昔の事覚えてないってことだね。私もたまにあるよ。思い出せそうで出せない昔の事」

「ああ、私もありますあります」

 

 あこのりゅう兄呼びの原点は、多分そんな軽いものじゃないと思うけど……。まあ、思い出せないならいっか。

 

「なんの話ししてたんだっけ」

「六花がりゅう兄のうわき相手だって話だよ」

「わ、私は先輩の事をそういう目では……」

「でも、好きなんでしょ?」

「あぅ……」

「だってさ、あこ」

 

 なんで、りゅう兄はこんなにもてもてなんだろうか。なんでモテなくても良いのにモテるのだろうか。あこは不思議でしょうがない。昔はこんなにモテなかったのに。

 

「失礼しまーす。文化祭実行委員の戸山明日香いますかー?」

「あ、りゅうに──」

「神楽先輩!」

 

 ……え?

 

「ああ、六花ちゃん。こんにちは」

「はい、こんにちは!あ、あの、今日も、その……」

「大丈夫、ちゃんとわかってるよ」

 

 りゅう兄が来たと思ったら、六花が飛んで行った。りゅう兄に頭なでなでして貰っている。ちょっと六花、りゅう兄はあこのだよ。

 

「六花、尻尾振ってるねー。あこ、先輩の事取られないように頑張りなよ。六花、ああ見えて男子に人気あるらしいし」

「あ、あこだって負けないもん……」

 

 あこは男の子にモテた事がないから分からないけど、あこだって負けて無いはずだ。……人気があるって、どれくらいあるのかな。らぶれたーとか貰った事あったり……。

 

「あ、六花が先輩に顎の下撫でられてる」

「え?」

 

 顎の下なんてあこも撫でられた事……なにあれ、なんで2人ともあんな幸せそうなの。

 

「恋人みたいだねー」

「!」

 

 恋人みたい?そんなのあこが許さない。邪魔してやる!

 

「りゅう兄、あこも撫でて!」

「はいはい」

「あ、あの……神楽先輩」

「大丈夫、六花ちゃんも忘れてないからね」

 

 りゅう兄のなでなでだぁ……。

 

 

 

 

「わー、楽しそーう(棒)」

 

 明日香が遠い目をしている。どうしたんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 _____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、あこは夢を見た。小学六年生の頃、花火大会に行って、迷子になった時の夢だ。そういえばこんな事もあったなー。この時どうしたんだっけ。

 

『あこ!』

『お姉ちゃん?』

『あ、えっと……僕だけど。なんかごめんね』

『りゅうすけ……』

 

 そうだ。神社の下で泣いていたあこを、りゅう兄が見つけてくれたんだ。あこよりほんの少しだけ背の高いりゅう兄。まだあこがりゅうすけと呼んでいた時のりゅう兄だ。

 

『さ、帰ろう。皆待ってるよ』

「うん……。ねえ、りゅうすけ……なんであこを見つけられたの?」

『うーん……偶然としか言い様がないけど……』

 

 昔のりゅう兄──りゅうすけは照れくさそうに笑っていた。

 

『まあ、あこがどこにいてもきっと僕が見つけ出すよ。僕はあこが好きだからね』

『うん、ありがとう!』

 

 りゅうすけと昔のあこは、手を繋いで一緒に歩いていた。ああ、そうだ。どこにいても、どこで迷っても、いつもりゅう兄があこのそばにいてくれた。りゅう兄がいつも手を握っていてくれたのだ。

 

『あこの事、見つけてくれてありがとう』

『うん。あこが道に迷ったら、僕があこを見つけるよ。約束する』

『うん!約束!』

 

 ああ、思い出した。りゅう兄がりゅう兄になった理由。

 

『なんだかりゅうすけ、お父さんみたい!』

「お、お父さんか……。出来ればお兄ちゃんとかが良かったな……」

『お兄ちゃん……?じゃあ、りゅう兄だね!』

『りゅう兄、か。うん、良いんじゃないかな』

 

 どこにいても、どこで迷っても、必ずあこを迎えに来てくれる、優しくて頼れるお兄ちゃん。

 

『りゅう兄りゅう兄』

『うん、なんだい?』

『えっとね──』

 

 あこと手を繋いでくれる、あこの最高のけん属。

 

 

 

 

『大好き!』

 

 

 

 

 ああ、やっぱり、あこはりゅう兄が大好きだ。




いちばん小さな大魔王第七奏と同じ締め方。ぎゅっとくる。
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