いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場 作:コントラポストは全てを解決する
「竜介神楽、あなたはクビよ!」
「俺ちゆちゃんのところでは働いてないよ?ていうか今日は1人なんだね」
「CHU2よ。そういう事じゃないの」
りゅう兄がちゆにクビを言い渡された。一体どういう事だろうか。
「あなたと同じくらいのギタリストを見つけたの。だから、あなたはクビよ」
「ああ、そういう。じゃあ、もうちゆちゃんとはこれっきりって事か。ちょっと寂しいね」
やったね。りゅう兄の周りをうろちょろする女が1人減った。今夜は豪華に行こう。
「別に、クビとは言ったけどあなたを見捨てるわけではないわ。光栄に思いなさい」
「見捨ててくれた方がありがたかったんだけどな」
「あなた、前に私にジャーキーをくれた事があったわよね」
「…………あぁー……前に作ったやつか。それがどうしたの?」
そういえば冷蔵庫の中にりゅう兄が試作で作ったジャーキーという食べ物があった。ちゆはそれが好きらしい。
「そのジャーキーがものっっっすっごく美味しかったの。だからね、竜介神楽。あなたを私の家のジャーキー係に任命するわ!」
「ジャーキー係はれおなちゃんじゃないの?」
「パレオは運ぶ係よ。作るのはあなた」
りゅう兄が作って、れおなが運ぶ…………ちゆは動かないの?
「3食デザート付きで夜は高級ベッドで寝かせてあげるわ。いい条件でしょ?」
「え、住み込み?」
「いついかなる時も私にジャーキーを行き渡らせるには住み込みが1番だわ。安心しなさい、家賃は取らないから」
住み込み……という事は、りゅう兄はこの家に帰って来なくなる?それどころか、りゅう兄と会えなくなるんじゃ……。
「そのバイトって、あこも連れて行ける?」
「あこ宇田川を?」
「うん。住み込みってことはあこと会えなくなるんでしょ?だったら一緒に連れて行こうかなって」
「あこ宇田川は何ができるの?」
「炊事洗濯なんでもできるよ。ドラムだって叩けるし」
「家政婦とドラマーならもういるわ。そもそもあこ宇田川はRoseliaじゃない。連れて行けないわ」
「Roseliaって関係あるの?」
「私怨よ」
「わぉ」
あこ、もしかして置いて行かれる?何がなんでもちゆについて行かないと……。
「それに、あなたにはいずれ私が作る最強のバンドのマネージャーになって貰うの。だから、あこ宇田川というライバルの1人を入れる訳には行かないわ」
「ただのジャーキー係が随分出世したもんだ」
りゅう兄、このままちゆに連れて行かれちゃうのかな……。ちゆがりゅう兄を連れてって、そのままりゅう兄を取られちゃったらどうしよう……。
「というわけよ、着いてきなさい。竜介神楽」
「拒否権がないのがちゆちゃんらしいね」
「あなたが美味しいジャーキーで私の胃袋を掴んだのが悪いのよ。分かったらさっさとついて来なさい」
「えー、やだなー」
「やろうと思えば、この家を買収することだって出来るのよ」
「わー、脅しだー」
買収……あこはついて行けないし……りゅう兄は連れてかれて、あこは家に戻る事に……。りゅう兄も焦って…………あんまり焦ってなさそう……。どういう事なの。まさかりゅう兄、ちゆについて行く気なんじゃ……。
「じゃあ、ちゆちゃん、俺から1つ提案」
「……何よ。言っとくけど、あなたに拒否権なんか──」
「ああ、ジャーキー係を拒む気はないよ。けど、住み込みはちょっと、ね?」
「……じゃあ、どうするのよ?」
「俺がいっぱいジャーキー作って、それをちゆちゃんに送るからさ。それで勘弁願いたいな」
「マネージャー……」
「そっちは保留って言う形でね?正直、俺にマネージャーは重任過ぎる。ちゆちゃんの足を引っ張っちゃうよ」
上手い事ちゆを言いくるめられてる。このまま行けばりゅう兄といられるかもしれない。
「……しょ、しょうがないわね。今回はそれで勘弁してあげるわ。でも、もしジャーキーを送り忘れたりしたら──」
「その時は連れていって貰って構わないよ」
こっそりあこもついて行こうかな。
「じゃあ、そういうことでいいかな。ちゆちゃん」
「……CHU2よ」
「俺はちゆちゃんが好き」
「なっ……!?」
りゅう兄、それだとちゆの事が好きみたいに聞こえるよ……。
「ふ、ふん。今日のところはこれくらいにしといてあげる」
「うん。またおいで。今度はれおなちゃんと一緒に」
「そうやってまたパレオをたぶらかそうと……」
「そんなつもりはないよ?」
あるでしょ?
「そ、それじゃ……また今度……」
「うん、バイバイ」
りゅう兄はちゆを玄関まで見送り、ちゆはそのまま帰っていった。
危ない。色々危なかった。
「いやーヒヤヒヤしたぜ。危うく家が買収されるところだった」
「りゅう兄、ずっとニコニコしてたじゃん」
「追い詰められた時の笑みだ。あこに怒られてる時もよく笑ってるだろ?」
「……確かに」
りゅう兄はピンチになると笑っちゃうらしい。あこはあたふたしちゃうから見習おうと思う。
ちゆがりゅう兄を最強のバンドのマネージャーにする時、あこはりゅう兄の隣にいられるのだろうか。それはきっと神様にしか分からない。