いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場 作:コントラポストは全てを解決する
つぐちゃんにりゅう兄のうわきの事を相談したら、りゅう兄と話をしてくれる事になった。今は羽沢珈琲店にいる。
「竜介君にお話があります」
「なんだ、改まって」
「あこちゃんから相談を受けたんだ。竜介君の浮気が酷すぎるって」
「俺浮気した事なんて一度もないぞ?」
りゅう兄の嘘つき。あこの目の前で何回も何回も何回も何回もうわきしたじゃん。
「あこちゃんが言ってたよ。両手の指でも数えきれないほど浮気されたって。私、そういうの良くないと思う」
「うーん……そう言われましても、俺としては普通に、普通ーに過ごしていただけでして。心当たりがなくてな……」
「これは……一から性根を叩き直す必要がありそうだね」
やっちゃえつぐちゃん!
「良い?竜介君。まずね、恋人をほったらかして他の女の子と一緒にいすぎなの」
「え、そう?」
「うん。それとね、竜介君はボディータッチが多すぎるよ。同性でも竜介君ほどボディータッチはしないと思う」
「そ、そうなのか」
りゅう兄は最近人の頭をなでなでするようになった。それに加えて、いぶやかすみやはぐみにハグされたりしている。ちさと先輩や花音、紗夜さんに頭をなでなでされる事もある。
「次にね、竜介君は女の子に可愛い可愛い言い過ぎなの。女の子はそれだけで勘違いしちゃうんだよ?」
「ま、マジか……。で、でも女の子を褒める時って可愛い意外になんて言えば良いんだ?俺ボキャ貧だからそれ意外を知らないんだよ……」
「じゃあ、練習してみよっか。試しに私の事可愛いって言葉を使わないで褒めてみてよ」
「わ、分かった」
りゅう兄が誰かに可愛いって言う時、てっきりあこは口説いているのかと思ってたけど、りゅう兄はただ褒めてただけなんだね。あこ勘違いしてたよ。
「え、えっと……つぐみは、小さい頃から頑張り屋で、いつも無理してて、でも誰にも頼らなくてさ。休めって言っても全然休まないし、それどころか余計無理するから心配になる。でも、そんなつぐみだからこそ俺は好きだし、支えたいって思う……。俺は、つぐみが好きだ」
「竜介君……。よし、結婚しよう」
「え?」
え?
「つぐみ?」
「……あっ。今のは忘れて」
「いやでも、結婚って」
「忘れて」
「あ、はい」
つぐちゃん、今結婚って……。え、どういうこと?つぐちゃんもりゅう兄が好きなの?
「えっと、今のが竜介君の褒め?」
「あ、ああ。変だったか?」
「うーん……変じゃないけど、ちょっと情熱的すぎるかなー。もっと普通で良いよ」
「もっと普通……。難しいな、人を褒めるのって」
りゅう兄も難儀だな……。これからはもっと優しく接しよう。とりあえず、正座はしばらく控えようかな。りゅう兄が可哀想だ。
「もし仮にさ、つぐみだったらどう褒める?誰でも良いから1人褒めてみてくれよ」
「え?うーん……分かった。そうだね、じゃあ──」
つぐちゃんは誰を褒めるんだろう。蘭ちゃんかな。それともモカちん?あ、お姉ちゃんかな。
「──その人はね、昔から色んな人のために頑張ってる人だった。お店のお手伝いをしたり、迷子の子をお母さんの下まで案内したりしててね、泣いてた蘭ちゃんをよく引っ張ってたんだ。好きな子のために全力になって、たまに変なことをするけど、そこも嫌いになれなくて。とってもとっても素敵な人」
「良い人だな」
「うん。この世界にはこんなに素敵な人がいるんだよって、私の自慢なんだ」
そんな良い人がいるんだ。あこは今の話を聞いて、真っ先にりゅう兄が思い浮かんだかな。昔から商店街の人達のお手伝いをしたり、迷子の子を助けたりしてたし。
「私はね、その人の隣にいたかった。けど、いられなかった」
「引っ越しちゃったりしたのか?」
「えっと、恋人ができちゃってね」
「あらま」
つぐちゃんはその人の事を取られちゃったんだ……。つぐちゃん可哀想……。
「その人の事は諦めたけど、やっぱり心の隅では諦めきれてなくて…………あはは、変な話しちゃったね」
「いや、良いよ。俺、その人がつぐみの隣に来れるように願ってる」
「竜介君は変わらないなぁ……」
「?」
?
「それにしてもあれだな、その人、蘭を引っ張ってたって言ってたけど、蘭の身近にそんな人がいたんだな。もしかして恋人って蘭なのか?」
「ううん、違うよ」
「ありゃ、そうなのか。まあ、そうだよな〜。出なきゃ蘭が俺に許嫁の相談なんてするわけないし」
「……許嫁の相談?」
「そうそう。前に蘭が俺と許嫁になるかもしれないって言ってきてさー。まあ、あこがいるから断ったんだけど」
「……ふーん、そっか」
そう言えばそんな事もあったっけ。蘭ちゃんのお父さんが、蘭ちゃんとりゅう兄を許嫁にしようとしてるって話。結局今どうなったのかな。
「ねえ、竜介君」
「お、どした?」
「うちでさ、働いてみない?」
「ここでか?」
りゅう兄新しいアルバイトするの?あこは応援──
「ここで働いて、いつかここを竜介君が継ぐの」
「羽沢珈琲店を、俺が、継ぐ?」
え?
「どう?いい話でしょ?」
「うーん……」
「住み込みでも良いよ?」
「住み込みバイトか。なんか、ちょっと面白そうだな」
あこは知っている。確か、りゅう兄みたいな他所の人がつぐちゃんの家のような店を継ぐときって、その家の人と結婚しないといけなかったはずだ。ということは、りゅう兄を継がせようとするつぐちゃんの目的は──ッ!
いけない。ここにいてはいけない。
「りゅう兄、帰るよ!」
「え、あこ?急にどうし──」
「いいから!早く!つぐちゃん、お金ここに置いとくから!お釣りは良いよ!」
あこはりゅう兄の腕を引っ張って店から出た。やっぱり、つぐちゃんが褒めてた人はりゅう兄だったんだ。だから、つぐちゃんが隣にいたかった人はりゅう兄で、その人の恋人って言うのはあこの事なんだ。
「ふふっ。やっぱり、あこちゃんは勘が良いなァ♪」
つぐちゃん怖い……。しばらくここには来ないようにしよう。つぐちゃんに相談したのは間違いだった……。