いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場 作:コントラポストは全てを解決する
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文化祭の迫る日の土曜日。有咲を家に呼んだ。りゅう兄はいない。
「有咲……」
「ど、どしたんだあこちゃん……。そんな悲しそうな顔して……。竜介になにかされたのか?」
有咲は味方だと思ってた。おっぱいは大きいけど、りんりんみたいにいろじかけしないし、りゅう兄も有咲だとうわきをしない。あこの中では、間違いなく安全地帯だった。けど、それは間違っていた。
「有咲……信じてたのに……」
「え?な、何の話だ?」
「酷いよ……。裏切るなんて……」
「ほ、本当になんの話しをしてるんだ?あこちゃん?」
心の中でずっと、有咲なら大丈夫だって思ってた。有咲ならりゅう兄のうわきを止められるかもって思っていたのに。どうして……。
「有咲も女の子だもんね……」
「お、女だが……。え、なに?性別の話?」
有咲も女の子だ。当然男の子に恋したっていい。だけど、なんでよりにもよってその相手が──
「なんで、りゅう兄なの?」
「え?」
「なんでりゅう兄を好きになっちゃったの……」
「なっ──!?」
なんで、あこの恋人に恋をしちゃったの……。
「あ、あこちゃん、話を聞いてくれ。私は別に竜介に恋してるってわけじゃ」
「嘘つかなくていいよ。あこもう全部知ってるから……」
「いや、全然違くてな?私は竜介なんか──」
「じゃあなんで、さっきからあこと目を合わしてくれないの?」
「うっ……」
図星じゃん……。やっぱり有咲、りゅう兄のことが……。隠さなくて良いのに。全部知ってるんだから。悲しい事だけど。
「どこで私が竜介を好きだって知ったんだ?」
「美咲から聞いた……」
「奥沢さんめ……」
美咲が言ってた。有咲がりゅう兄を好きだって。
「有咲もりゅう兄のうわき相手になっちゃうの?あこの行く道を阻むの?」
「わ、私は……」
「どっち?」
「うっ……」
出来れば、有咲にはこのまま引いて欲しい。あこは有咲と戦いたくない。リサ姉の時のようになるのはごめんだ。
「私は、竜介が好きだ……。それは曲げられねぇ」
「じゃ、じゃあ……」
「けど、聞いてくれ。私は竜介の彼女にはなれない」
「な、なんで?」
有咲は可愛いし、おっぱいも大きいし、ツンデレだからヒロインなんじゃないの?美咲が言ってたことと違う……。ツンデレツインテ巨乳はヒロインだって言ってたのに。
「なあ、あこちゃん。私と竜介の過去、知ってるか?」
「あ、あんまり知らない……けど、りゅう兄が有咲の面倒見てたっての言うのは知ってる……」
「まあ、だいたいそんな感じだ。私の両親が交通事故で死んで、それから竜介は私と一緒にいるようになった。よく家にも遊びに来てたよ」
小さい時のりゅう兄、あこから隠れて有咲のところに行ってたんだ。知らなかった。たまにりゅう兄の家に遊びに行ってもいない時があったけど、その時有咲のところに行ってたのかな。
「よく私を外に連れ出して、なけなしの小遣いでアイスとかジュースとか買ってくれたりさ。本当にバカなやつだった」
「……」
りゅう兄、昔のあこにはそんな事してくれなかったのに……。昔は有咲の方が大事だったのかな。少しショックだ。
「学校で問題起こしちまったり、婆ちゃんに悪態ついちゃったりして喧嘩した時は、自分の事のように心配してさ。私の周りをうろちょろしてたんだ」
「有咲はそれでどう思ったの?」
「正直、ちょっとウザかった。私はそんな心配されるほど子供じゃねーって意地張ってた。だからさ、1回竜介に言っちまったんだ、『私を子供扱いするんじゃねー』って」
りゅう兄、それで有咲を嫌いになったりは……してないよね。じゃなきゃ今もこんな仲良くないもん。有咲とりゅう兄は本当の親子みたいに仲良いもんね。
「りゅう兄はなんて返したの?」
「あいつ曰く、ただ、私が泣かないように頑張ってただけだったらしい」
「有咲が、泣かないように?」
有咲が泣かないように……つまりどういうことだろう。難しい話はあこにはわからない。
「母ちゃんと父ちゃんが死んだって知った時、私は思いっきり泣いた。多分、人生で1番泣いたと思う」
「それをりゅう兄が見てたの?」
「恥ずかしいことに、あいつの胸の中で泣いてたんだ」
有咲をりゅう兄がハグして、有咲を涙を受け止めてたんだ。りゅう兄、かっこいい……。あこも泣いたらりゅう兄にそうして貰えるのかな。
「竜介が私の泣いてる姿を見て、二度と私が泣かないようにって誓ったんだとよ。大袈裟だよな、友達の両親が死んだだけなのに」
「りゅう兄はきっと、それだけ有咲が大切だったんだよ」
「かもな」
昔のあこは、有咲ほどりゅう兄に大切にされていたんだろうか。昔のあこは何回も泣いた。けど、りゅう兄に二度とあこが泣かないように、なんて言われた記憶はない。やはり、昔は有咲が大切だったのか。悔しい。
「でもその話が、なんでりゅう兄と恋人になれないって事になるの?」
「簡単な話だよ。竜介の中で、私という存在がデカくなりすぎただけだ」
「りゅう兄の中で……有咲が……?」
つまり、どういうこと?
「竜介に聞いたんだ。私は竜介にとってどんな存在かって。そしたら、あいつなんて答えたと思う?」
「うーん……親友、とか?」
「『娘』だってさ」
有咲がりゅう兄の、娘?どういうこと?そういう特殊なぷれい?ダメだ、あこにはさっぱりわからない。やっぱり難しい話は苦手だ。
「竜介に娘って言わせるほど、私は竜介に近い位置に来ちまった。これはもう、どーにもできねえ。だから、私が竜介の彼女になるのは無理なんだ」
「うーん……有咲がりゅう兄にとって、大切すぎる人になっちゃったって事?」
「まあ、そんな感じだな」
なるほど、少し分かった。
「だから安心してくれ。私はもう終わってる」
「うーん……うーん?」
「どうしたんだ?難しい顔して」
なにか引っかかる。どうにも、昔のあこと有咲で、りゅう兄の対応が違いすぎるのだ。
「昔のあこが泣いたって、りゅう兄はハグしてくれたりしなかったよ?泣きたい時に泣くのが1番ーとか言ってたし」
「そうなのか?まあ、竜介にも気分があるからな」
「それに、昔のりゅう兄、お小遣いでジュース買ってくれることなんてたまにしかなかった。自分のお金使えーって言ってて」
「……私に使いすぎてたんじゃないか?」
怪しい……。これは、もしかして──
「昔のりゅう兄、あこより有咲の方が好きだったんじゃないの?」
「ッ!……い、いや、そんな事ないだろ。昔っから、俺はあこが好きだーって言ってたのに」
「でも、有咲に比べて、あこには厳しいし……。無意識に有咲を好きになってたのかもしれないじゃん」
まさか、あこはただのおまけ?本命は有咲で、あこはただの遊びだったりするのだろうか。もしそうだとしたらあこは泣く。近所迷惑など考えず泣き叫んでやる。見てろりゅう兄。
「か、仮に昔の竜介が私を好きだったとしても、今はあこちゃんが愛されてるんだからいいんじゃないか?」
「あこ、本当に愛されてるのかな。あと1年ぐらいしたら有咲に乗り換えたりしない?」
「だ、大丈夫だって」
本当は有咲が好きだからって、あこは捨てられたりしないだろうか。心配で夜も眠れなくなりそうだ。
「りゅう兄はうわきも多いし、もしかしたら心変わりしちゃうかも……。有咲、どうしよう……りゅう兄に捨てられちゃう……」
「竜介はそんな事しねーから」
「でも、もしかしたら……」
まやさん辺りにりゅう兄を取られる気がする。それか花音。まやさんは最重要要注意警戒人物で、花音は要注意警戒人物だ。この2人にりゅう兄を取られたら、あこはもう勝てる気がしない。
「あこはどうしたら……」
「竜介に直接聞けば良いんじゃねーか?てか、それしかないだろ」
「分かった聞いてみる……」
帰ったらりゅう兄に聞いてみよう。りゅう兄はなんて答えるだろうか。有咲が好きと答えるか、それともまやさんか、または花音か。あこの名前以外が出てきたら包丁で刺してやる。後ろからグサッと。
「そもそも、なんであこはこんなに不安にさせられるんだろう……あこ、りゅう兄に嫌われてるのかな……」
「いや、竜介が不安にさせてるって言うより、あこちゃんが勝手に自爆してるだけじゃ……」
「?」
「自覚なしか……」
あこ、自爆してるの?そんなわけないよね。全部りゅう兄がいけないんだ。あこにわかるようにうわきして、あこを不安にさせて。りゅう兄が悪い。
どうしたら、りゅう兄はうわきしないようになるだろうか。
「うーん……」
「また考え事か……」
りゅう兄が、他の女とうわきしなくなる方法…………──はッ!!!
「そうだ、りゅう兄を女の子と合わせなければ良いんだ」
「あ、あこちゃん?」
「でも、家の外に出たら女の子と出会っちゃう……いや、待って?りゅう兄を家の外に出さなければ、りゅう兄は女の子と出合わないのでは?」
「あこちゃん?おーい」
あこ、閃いたかもしれない。
「有咲、わかったよ!りゅう兄にうわきされない方法」
「あー、うん……良かったな(諦め)」
「うん!」
これで、やっと、りゅう兄にうわきされなくなる。あこの悲願が叶うんだ!
「竜介、頑張れよ」
有咲は遠い目をしていた。どうしたのだろうか。