いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場   作:コントラポストは全てを解決する

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Part35 裏切り者:有咲

 文化祭の迫る日の土曜日。有咲を家に呼んだ。りゅう兄はいない。

 

「有咲……」

「ど、どしたんだあこちゃん……。そんな悲しそうな顔して……。竜介になにかされたのか?」

 

 有咲は味方だと思ってた。おっぱいは大きいけど、りんりんみたいにいろじかけしないし、りゅう兄も有咲だとうわきをしない。あこの中では、間違いなく安全地帯だった。けど、それは間違っていた。

 

「有咲……信じてたのに……」

「え?な、何の話だ?」

「酷いよ……。裏切るなんて……」

「ほ、本当になんの話しをしてるんだ?あこちゃん?」

 

 心の中でずっと、有咲なら大丈夫だって思ってた。有咲ならりゅう兄のうわきを止められるかもって思っていたのに。どうして……。

 

「有咲も女の子だもんね……」

「お、女だが……。え、なに?性別の話?」

 

 有咲も女の子だ。当然男の子に恋したっていい。だけど、なんでよりにもよってその相手が──

 

「なんで、りゅう兄なの?」

「え?」

「なんでりゅう兄を好きになっちゃったの……」

「なっ──!?」

 

 なんで、あこの恋人に恋をしちゃったの……。

 

「あ、あこちゃん、話を聞いてくれ。私は別に竜介に恋してるってわけじゃ」

「嘘つかなくていいよ。あこもう全部知ってるから……」

「いや、全然違くてな?私は竜介なんか──」

「じゃあなんで、さっきからあこと目を合わしてくれないの?」

「うっ……」

 

 図星じゃん……。やっぱり有咲、りゅう兄のことが……。隠さなくて良いのに。全部知ってるんだから。悲しい事だけど。

 

「どこで私が竜介を好きだって知ったんだ?」

「美咲から聞いた……」

「奥沢さんめ……」

 

 美咲が言ってた。有咲がりゅう兄を好きだって。

 

「有咲もりゅう兄のうわき相手になっちゃうの?あこの行く道を阻むの?」

「わ、私は……」

「どっち?」

「うっ……」

 

 出来れば、有咲にはこのまま引いて欲しい。あこは有咲と戦いたくない。リサ姉の時のようになるのはごめんだ。

 

「私は、竜介が好きだ……。それは曲げられねぇ」

「じゃ、じゃあ……」

「けど、聞いてくれ。私は竜介の彼女にはなれない」

「な、なんで?」

 

 有咲は可愛いし、おっぱいも大きいし、ツンデレだからヒロインなんじゃないの?美咲が言ってたことと違う……。ツンデレツインテ巨乳はヒロインだって言ってたのに。

 

「なあ、あこちゃん。私と竜介の過去、知ってるか?」

「あ、あんまり知らない……けど、りゅう兄が有咲の面倒見てたっての言うのは知ってる……」

「まあ、だいたいそんな感じだ。私の両親が交通事故で死んで、それから竜介は私と一緒にいるようになった。よく家にも遊びに来てたよ」

 

 小さい時のりゅう兄、あこから隠れて有咲のところに行ってたんだ。知らなかった。たまにりゅう兄の家に遊びに行ってもいない時があったけど、その時有咲のところに行ってたのかな。

 

「よく私を外に連れ出して、なけなしの小遣いでアイスとかジュースとか買ってくれたりさ。本当にバカなやつだった」

「……」

 

 りゅう兄、昔のあこにはそんな事してくれなかったのに……。昔は有咲の方が大事だったのかな。少しショックだ。

 

「学校で問題起こしちまったり、婆ちゃんに悪態ついちゃったりして喧嘩した時は、自分の事のように心配してさ。私の周りをうろちょろしてたんだ」

「有咲はそれでどう思ったの?」

「正直、ちょっとウザかった。私はそんな心配されるほど子供じゃねーって意地張ってた。だからさ、1回竜介に言っちまったんだ、『私を子供扱いするんじゃねー』って」

 

 りゅう兄、それで有咲を嫌いになったりは……してないよね。じゃなきゃ今もこんな仲良くないもん。有咲とりゅう兄は本当の親子みたいに仲良いもんね。

 

「りゅう兄はなんて返したの?」

「あいつ曰く、ただ、私が泣かないように頑張ってただけだったらしい」

「有咲が、泣かないように?」

 

 有咲が泣かないように……つまりどういうことだろう。難しい話はあこにはわからない。

 

「母ちゃんと父ちゃんが死んだって知った時、私は思いっきり泣いた。多分、人生で1番泣いたと思う」

「それをりゅう兄が見てたの?」

「恥ずかしいことに、あいつの胸の中で泣いてたんだ」

 

 有咲をりゅう兄がハグして、有咲を涙を受け止めてたんだ。りゅう兄、かっこいい……。あこも泣いたらりゅう兄にそうして貰えるのかな。

 

「竜介が私の泣いてる姿を見て、二度と私が泣かないようにって誓ったんだとよ。大袈裟だよな、友達の両親が死んだだけなのに」

「りゅう兄はきっと、それだけ有咲が大切だったんだよ」

「かもな」

 

 昔のあこは、有咲ほどりゅう兄に大切にされていたんだろうか。昔のあこは何回も泣いた。けど、りゅう兄に二度とあこが泣かないように、なんて言われた記憶はない。やはり、昔は有咲が大切だったのか。悔しい。

 

「でもその話が、なんでりゅう兄と恋人になれないって事になるの?」

「簡単な話だよ。竜介の中で、私という存在がデカくなりすぎただけだ」

「りゅう兄の中で……有咲が……?」

 

 つまり、どういうこと?

 

「竜介に聞いたんだ。私は竜介にとってどんな存在かって。そしたら、あいつなんて答えたと思う?」

「うーん……親友、とか?」

「『娘』だってさ」

 

 有咲がりゅう兄の、娘?どういうこと?そういう特殊なぷれい?ダメだ、あこにはさっぱりわからない。やっぱり難しい話は苦手だ。

 

「竜介に娘って言わせるほど、私は竜介に近い位置に来ちまった。これはもう、どーにもできねえ。だから、私が竜介の彼女になるのは無理なんだ」

「うーん……有咲がりゅう兄にとって、大切すぎる人になっちゃったって事?」

「まあ、そんな感じだな」

 

 なるほど、少し分かった。

 

「だから安心してくれ。私はもう終わってる」

「うーん……うーん?」

「どうしたんだ?難しい顔して」

 

 なにか引っかかる。どうにも、昔のあこと有咲で、りゅう兄の対応が違いすぎるのだ。

 

「昔のあこが泣いたって、りゅう兄はハグしてくれたりしなかったよ?泣きたい時に泣くのが1番ーとか言ってたし」

「そうなのか?まあ、竜介にも気分があるからな」

「それに、昔のりゅう兄、お小遣いでジュース買ってくれることなんてたまにしかなかった。自分のお金使えーって言ってて」

「……私に使いすぎてたんじゃないか?」

 

 怪しい……。これは、もしかして──

 

「昔のりゅう兄、あこより有咲の方が好きだったんじゃないの?」

「ッ!……い、いや、そんな事ないだろ。昔っから、俺はあこが好きだーって言ってたのに」

「でも、有咲に比べて、あこには厳しいし……。無意識に有咲を好きになってたのかもしれないじゃん」

 

 まさか、あこはただのおまけ?本命は有咲で、あこはただの遊びだったりするのだろうか。もしそうだとしたらあこは泣く。近所迷惑など考えず泣き叫んでやる。見てろりゅう兄。

 

「か、仮に昔の竜介が私を好きだったとしても、今はあこちゃんが愛されてるんだからいいんじゃないか?」

「あこ、本当に愛されてるのかな。あと1年ぐらいしたら有咲に乗り換えたりしない?」

「だ、大丈夫だって」

 

 本当は有咲が好きだからって、あこは捨てられたりしないだろうか。心配で夜も眠れなくなりそうだ。

 

「りゅう兄はうわきも多いし、もしかしたら心変わりしちゃうかも……。有咲、どうしよう……りゅう兄に捨てられちゃう……」

「竜介はそんな事しねーから」

「でも、もしかしたら……」

 

 まやさん辺りにりゅう兄を取られる気がする。それか花音。まやさんは最重要要注意警戒人物で、花音は要注意警戒人物だ。この2人にりゅう兄を取られたら、あこはもう勝てる気がしない。

 

「あこはどうしたら……」

「竜介に直接聞けば良いんじゃねーか?てか、それしかないだろ」

「分かった聞いてみる……」

 

 帰ったらりゅう兄に聞いてみよう。りゅう兄はなんて答えるだろうか。有咲が好きと答えるか、それともまやさんか、または花音か。あこの名前以外が出てきたら包丁で刺してやる。後ろからグサッと。

 

「そもそも、なんであこはこんなに不安にさせられるんだろう……あこ、りゅう兄に嫌われてるのかな……」

「いや、竜介が不安にさせてるって言うより、あこちゃんが勝手に自爆してるだけじゃ……」

「?」

「自覚なしか……」

 

 あこ、自爆してるの?そんなわけないよね。全部りゅう兄がいけないんだ。あこにわかるようにうわきして、あこを不安にさせて。りゅう兄が悪い。

 どうしたら、りゅう兄はうわきしないようになるだろうか。

 

「うーん……」

「また考え事か……」

 

 りゅう兄が、他の女とうわきしなくなる方法…………──はッ!!!

 

「そうだ、りゅう兄を女の子と合わせなければ良いんだ」

「あ、あこちゃん?」

「でも、家の外に出たら女の子と出会っちゃう……いや、待って?りゅう兄を家の外に出さなければ、りゅう兄は女の子と出合わないのでは?」

「あこちゃん?おーい」

 

 あこ、閃いたかもしれない。

 

「有咲、わかったよ!りゅう兄にうわきされない方法」

「あー、うん……良かったな(諦め)」

「うん!」

 

 これで、やっと、りゅう兄にうわきされなくなる。あこの悲願が叶うんだ!

 

「竜介、頑張れよ」

 

 有咲は遠い目をしていた。どうしたのだろうか。

 

 

 

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