いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場   作:コントラポストは全てを解決する

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Part44 ハッピーバースデー:りゅう兄──前

 それは、いつもの昼休みの事。屋上でAfterglow(いつものメンバー)とあこでお昼ご飯を食べていた時だった。不意に、ただボソッと、分からない問題を聞くように蘭ちゃんが言ったのだ。

 

「あたし……──竜介の誕生日知らない……」

「竜介君の」

「誕生日?」

 

 つぐちゃんとひーちゃんが蘭ちゃんの言葉に反応した。そして蘭ちゃんがまた話す。

 

「毎年毎年、竜介の誕生日はまだかなって思いながら1年を過ごして、結局祝えないまま1年が終わってる。あたし、竜介の誕生日を祝いたい」

「モカちゃんも祝いた〜い」

「私も!」

「私だって!」

 

 蘭ちゃんの言葉にモカちん、ひーちゃん、つぐちゃんが続く。

 

「というわけであこ、竜介の誕生日教えて」

「え、あこも知らないよ?」

「…………巴は?」

「アタシも知らないぞ?」

 

 なんてことでしょう。ここにいる全員、りゅう兄の幼なじみを名乗っておきながら、誰もりゅう兄の誕生日を知らないではないか。ましてやりゅう兄の恋人であるあこは絶対知らなきゃいけない事なのに。なんであこは今までりゅう兄の誕生日を気にしなかったんだろう。

 

「思い返すと、私達竜介君の事何も知らないね。住んでる場所以外何も。血液型とか星座とか──家族、とか」

「りゅう兄のお父さんはバンドマンで、お母さんは女優だって言ってたよ?もう離婚してるんだって」

 

 つぐちゃんのりゅう兄の家族を知らないという問に、あこは答える。皆初めて知ったという顔をしていた。あこもこないだ初めて知ったからおあいこだ。

 

「竜介には爺ちゃんがいたよな。中3の時に死んじまった」

「おばあちゃんは?」

「それはわからん」

 

 りゅう兄が小さい時から中学3年間を世話してくれたりゅう兄のおじいちゃん。今はいないけど、代わりにあこがいる。

 

「竜介のおじいちゃんって仕事何してたの?誰か知ってる?」

『……』

 

 蘭ちゃんの質問。皆黙ってしまった。

 

「竜介君のおじいさんだっていつも家にいた訳じゃないよね。もしかして竜介君、毎年1人で誕生日過ごしてたのかな……」

「それは……どうだろうな」

 

 なんでりゅう兄、あこに言ってくれなかったんだろ。あこはりゅう兄と一緒に誕生日を過ごしたかった。プレゼントあげたかった。りゅう兄は毎年あこの誕生日を祝ってくれたのに、あこは祝えなかった。なんだか、とても悔しい。そして悲しい。

 

「どうする?誰も竜介の誕生日知らないよ?これじゃあ祝うに祝えない」

「……聞こう」

「聞くって……リー君に〜?」

「うん」

 

 こうして、りゅう兄に誕生日を聞くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 それからりゅう兄に電話して、りゅう兄に屋上までやって来て貰った。そして、早速りゅう兄に誕生日を聞いたのだ。

 

 

「俺の……誕生日?」

 

 

 りゅう兄は首を傾げた。

 

「知らん」

「知らん……って、竜介、毎年誕生日どうしてたの?」

「毎年テキトーな日を誕生日にして、1人でコンビニのモンブラン食べてた」

「竜介のおじいさんは?」

「じいちゃんは仕事で疲れてるだろうなって思ってたから誘わなかった。それに、誕生日は祝わなくていいって俺が強く言ってたし。ほら、じいちゃん歳なのによく無理するからさ、俺の誕生日なんかに時間割いて欲しくなかった」

「誕生日なんかって……誕生日は1年に1度の、自分が生まれた大切な日なんだよ?祝わなきゃダメじゃん」

 

 蘭ちゃんの言葉に、皆が頷く。りゅう兄は誕生日を軽く見すぎていると、あこにも分かった。これは1度、りゅう兄に誕生日を祝われる喜びを教えてあげなければ。

 

「ねえねえリー君、リー君はさ〜モカちゃん達の誕生日を祝う時も、誕生日なんか〜って思ってたの〜?」

「それは違う。皆の誕生日は皆が生まれた聖なる日。軽く見ちゃダメだ」

「なんでその考えを自分にも適用しないのかな〜」

 

 モカちんの言う通りだ。りゅう兄、自分の誕生日も軽く見ないで。りゅう兄の誕生日はりゅう兄が生まれた聖なる日なんだよ。

 

「りゅう兄、あこ達はりゅう兄の誕生日を祝いたいの。だから、誕生日教えて」

「じゃあ、今年は1週間後くらいを俺の誕生日にして、皆で祝うか」

「そうじゃなくて、りゅう兄の本当の誕生日を祝いたいの」

「本当の誕生日……」

 

 りゅう兄に言ってはみたが、りゅう兄の本当の誕生日を知る方法なんてあるのだろうか。誰かいい案を考えてくれないかな。

 

「俺の本当の誕生日……?はて、特定不可能では」

「ほら、赤ちゃんの頃を思い出して」

「ひまり、それは無理だろ」

 

 ベイビー時代……ましてや生まれた時を思い出すなんて無理だろう。

 

「アルバムとかにさ、竜介君の生まれた日が書かれたチェキとか写真とかないかな」

「りゅう兄とあこの家にアルバムなんてあったっけ?」

「あ〜ちょっと待て、前どっかで見た気がする」

「竜介君、頑張って思い出して!」

 

 りゅう兄は頑張って記憶の中から探る。頑張ってりゅう兄。もうすぐで皆にお誕生日祝って貰えるよ!りゅう兄の誕生日は何をプレゼントしようかな。新しいフライパン、包丁、エプロン、色々ある。まあ、そのためにはりゅう兄の誕生日を突き止めきゃいけないけど。

 

「ダメだ思い出せん」

「じゃ、じゃあ、竜介君の親戚に聞いてみるとか!」

「俺の親戚だいたい死んでる。皆年老いてたから」

「少子高齢化の波だね〜」

 

 つぐちゃんの提案もダメだった。あこも何か考えなきゃ……えっと……えっと──

 

「りゅう兄の中に刻まれた運命の血筋が……こう……バーンってなって──」

「あこちゃん、今はふざけてる場合じゃないんだよ」

 

 別にふざけてるわけじゃない。つぐちゃんも怒らないで。

 

「あこちゃんのお母さんとか知ってないかな。よく小さい頃の竜介に会ってたらしいし」

「母ちゃんもさすがに竜介の誕生日は知らないって言ってたなー」

 

 ひーちゃんの提案もダメだった。

 

「お手上げだね〜」

「だな」

 

 モカちんのお手上げ発言に、皆が黙ってしまう──と思っていたが、蘭ちゃんポツリと喋りだした。

 

「……1つ思ったんだけどさ」

「どうしたの?蘭ちゃん」

「──保険証見れば良くない?」

 

 蘭ちゃんは天才だった。

 

「りゅう兄!ほけんしょー出して!」

「財布の中だな。ちょっと待ってろ──……はい」

 

 りゅう兄からほけんしょーを受け取り、皆でりゅう兄の誕生日が書いてある欄を見た。

 

「──今日から2日後の29日か」

「ちょうどいいじゃん。2日もあれば盛大にパーティーできるよ」

「いや、盛大にはやらなくて良いよ。俺はひっそり、こじんまりとした、そうだな、俺の家であこと2人、静かにディナーでも──」

「つぐ!2日後の午後3時からお店空けといて!」

「わ、わかったよひまりちゃん!」

「俺の話聞いてる?」

 

 りゅう兄との2人っきりのでぃなーもいいけど、あこは盛大にやりたい。でぃなーよりも、うたげの方が良い。

 

「よし、会場は抑えた。あとは料理とケーキとプレゼントだね」

「プレゼントか〜」

「プレゼント……」

「プレゼント、か」

 

 なんだろう。プレゼントって言葉を聞いて蘭ちゃんとつぐちゃんとモカちんの目がギラついてる。何か企んでいるのだろうか。

 

「「「竜介(竜介君)(リー君)。明後日、誕生日プレゼント買いに行かない?」」」

 

 蘭ちゃんとつぐちゃんとモカちんが口を揃えてりゅう兄を誘う。誕生日デートに洒落こみたいらしい。

 

 

 甘いよ皆、チョコレートより甘い(トレギア並感)

 

 

「りゅう兄〜。明後日、一緒にプレゼント買いに行こ?」

「「「ッ!!!」」」

 

 こういうのは女を出していかなきゃ男は釣れないのだ。上目遣いで、できるだけ瞳をウルウルさせて。そうすれば男なんて簡単に落とせる。そう雑誌に載ってた。ギラついた女など相手にされないのだ。これでりゅう兄はあこのもの──

 

「なら、明後日皆で買いに行くか」

「「「「……は?」」」」

 

 りゅう兄の言葉にあこと蘭ちゃんとつぐちゃんとモカちんが眉をしかめた。戦争の始まりである。

 

「いや違うだろ竜介。こういうのは当日まで秘密が1番だ。アタシ的にもそっちの方が良い」

「そーなの?じゃあ俺も誕生日まで待ってようかな」

 

 お姉ちゃんは当日サプライズが良いらしい。りゅう兄誕生日デート戦争は当日サプライズという事で幕を閉じた。

 

「竜介君!誕生日の日は何食べたい?私頑張ってなんでも作るよ!」

「ん?そうだなー、唐揚げとシーザーサラダと、あとさっぱりしたしゃぶしゃぶとかあったら皆喜ぶんじゃないか?」

「皆が喜ぶものじゃなくて、竜介君が食べたいものを聞いてるんだけどな……」

 

 りゅう兄はつぐちゃんの言葉の意図を汲み取れなかった。全くりゅう兄は。誕生日の日なんだから自分の事だけを考えて欲しい。りゅう兄の悪いところだ。必要な時以外も皆の事を優先する。

 

「俺が食べたいもの……なあ、あこ。俺の好きな物ってなんだ?」

「りゅう兄、マグロの赤みと手羽先が好きじゃん」

「いや、なんであこちゃんに聞くの?竜介君、もっと自分の事に興味持って……」

「りゅう兄はあこの事を1番に考えてくれるから」

「そうだな」

「惚気ないで」

 

 りゅう兄はあこの事が好きで好きでしょうがないのだ。ひれ伏せ負けヒロイン共。あこはりゅう兄に選ばれたヒロインズの王であるぞ。

 

「りゅう兄〜♪」

「お、どうしたあこ、急に抱きついて」

「くっ、あこめ……ここぞとばかりに女を出して来やがる……!」

「まあ、油断してる人ほど足元すくい易いけどね〜」

「あこちゃんには負けないよ」

 

 もう負けてるんだよなぁ……。それに、あこは油断なんかしてない。りゅう兄が他の女になびかないようにしっかり監視しているのだ。

 あこは蘭ちゃんとつぐちゃんとモカちんに、りゅう兄とのイチャイチャを見せつけていた。蘭ちゃん達の視線が鋭い。楽しい、りゅう兄初恋軍団(負けヒロインズ)にりゅう兄とのイチャイチャを見せつけるの楽しい(ゲス)

 

「ま、まあ、予定も決まったし、今日はもう解散しよっか。ほら、蘭、モカ、つぐ、行こ。いつまでもあこちゃんを見てないで」

「止めないでひまり。あたしは──あたし達は、あの邪智暴虐の魔王を倒さなきゃいけないの……!」

「さすがにモカちゃんも許容範囲外〜」

「私だって悔しい……!」

「ほら、チャイムなるから行くよー」

 

 ひーちゃんとお姉ちゃんが他の3人を連れて行った。あこももう戻らなきゃね。また放課後までりゅう兄と会えなくなるのは寂しいなぁ。まあ、授業が終わるまでの我慢だ。

 

「じゃ、あこもまたな」

「うん。バイバイ」

 

 りゅう兄と別れ、あこは自分の教室に向かう。教室に戻ったついでに明日香と六花にりゅう兄の誕生日の事を話した。2人も祝いたがっていたが、どうやら予定があるようだ。りゅう兄誕生日パーティーはいつもの5人とあこでやることになった。楽しみ。

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