いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場 作:コントラポストは全てを解決する
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「りゅう兄の誕生日パーティーしたよ!楽しかった!」
「いいなぁ。私も水泳部の遠征がなければ」
「私も家の人の遠出に付き合わされて行けませんでした……」
いつもの昼休み。あこは明日香と六花にりゅう兄の誕生日パーティーをしたことを自慢した。初めてのりゅう兄の誕生日パーティー。本当に楽しかった。りゅう兄が喜んでくれたのが印象深い。あとケーキが大きかった。
「私、先輩の誕生日祝った事ないんだけど、先輩の誕生日パーティーっていつやったの?」
「先週の土曜日だったよ」
「私も、今からでも神楽先輩になにかプレゼントを渡した方がよろしいでしょうか……」
「大丈夫じゃない?あんまり多く貰っても、りゅう兄困っちゃうでしょ」
そのうちガールズバンド全員でりゅう兄の誕生日を祝うことになったりして。それはそれで楽しいそうだ。
「あこちゃんはいいですよね。神楽先輩の幼なじみだから、小さい頃から神楽先輩の誕生日会に参加できて」
「……あこも、今年初めてりゅう兄の誕生日祝った」
「え、なんで?先輩とあこって幼なじみなんでしょ?どうして誕生日祝わなかったの?」
あこは答えていいか迷う。この事はあんまり話したくなかった。
「……りゅう兄、毎年テキトーな日を誕生日にして1人で過ごしてたらしいから、あこ行けなかった……」
「毎年テキトーな日って……先輩、自分の誕生日知らなかったの?」
「今年ほけんしょー見るまで気づかなかった」
「でも、毎年適当な日を誕生日にしてたなら、それこそみんなで誕生日決めて祝えたんじゃないですか?」
「皆、りゅう兄の誕生日まだかなって待ってて、毎年何も行動起こさなかった……」
「何それ。毎年来ないってわかってたんだったら、聞くなりなんなりしなよ。それでも先輩の幼なじみなの?」
「……」
「あ、明日香ちゃん!言い過ぎです!」
明日香の意見もご最もだ。それに、毎年りゅう兄の誕生日を待ってたのは、蘭ちゃんだけだったかもしれない。あこは気にもした事もなかったから。
「で、先輩には何渡したの?」
「フライパンだったり、手作りストラップだったり、指輪だったり」
「あこちゃんは何を渡したんですか?」
「…………5万円分のプリペイドカード……」
「はぁ?何それ。愛がないねぇ」
「あ、愛情はいっぱい込めたよ!りゅう兄も喜んでくれたし……でも、皆にも同じような反応された……」
「だろうね。プリペイドカードなんて、ほとんどお金じゃん。それを選ぶのはどうかと思う」
明日香の言葉が心に刺さる。りゅう兄は喜んでくれたけど、逆に言えばりゅう兄しか喜んでない。やっぱり、あこは間違ってたのかな……。
「で、でも、あこちゃんだって必死に選んだんでしょうし……」
「どうかねー。適当に選んだんじゃないの?恋人からなら何貰っても嬉しいはずとか図に乗って」
「あこ、ちゃんと迷いながら選んだよ?でも、何渡したらいいか分からなくて……それで、あこが貰って嬉しいものを選んだ……」
「はぁ……このゲーム脳は……」
「あ、明日香ちゃん……」
あこには誕生日プレゼントを選ぶセンスはなかったのだろうか。来年は包丁とかにしよう。いや、高級まな板……無難にハンカチとかでも……うーん、面白みがない。
「次の先輩の誕生日は私もプレゼント贈るよ。あこが変なもの贈らないかの監視も兼ねて」
「つ、次は大丈夫だもん……」
「どうだか」
「あはは……」
今日の明日香はピリピリしている。六花は苦笑いだ。あこは心苦しい。
「はぁ……先輩に両親がいればこうはならなかったのに」
「神楽先輩の両親、いないんですか?」
「何故かいなくてねー。ほんと、何してんだか」
「…………りゅう兄の両親は、離婚してて帰って来てない」
あこはこの事を言っていいかわからなかったが、思い切って言ってみた。
りゅう兄には昔から両親がいない。離婚してバラバラになったせいで、昔からおじいちゃんと暮らしてた。一体、りゅう兄のお母さんとお父さんはどこにいるのだろうか。
「先輩、ずっと放ったらかしにされてたって事?よくグレなかったね」
「親の愛を知らないで育ったなんて……可愛そうです……」
「でも、おじいちゃんがいたよ。りゅう兄には」
りゅう兄をずっと見ててくれたおじいちゃん。りゅう兄はおじいちゃん子だからとっても優しい。自分の事じゃ絶対怒らない。誰かが危ない事をした時とか、誰か守るためとか、そういう時にしか声をあげなかった。
「そのお爺さんも先輩が中3の時にいなくなった。じゃあ、誰が先輩に家族の愛をあげるの?」
「あこだよ」
「あこはまだ恋人じゃん。恋人は家族じゃない」
「りゅう兄はあこのこと家族だって言ってくれたもん」
「それは口先だけの関係でしょ。実際には家族じゃない。結婚するまで家族にはなれないんだよ」
「あこはりゅう兄と結婚するよ」
「そうなの?先輩をエロい目でしか見れないあこが?」
「あ、明日香ちゃん……」
あこはりゅう兄をちゃんと家族として見てる。えっちな目だけで見てるわけじゃない。明日香は酷い勘違いをしているようだ。なぜ、今日の明日香はこんなに期限が悪いのだろう。りゅう兄の誕生日パーティーに出られなかったのが原因だろうか。
「なんかさー私思うんだけど、あこって先輩とセックスするためだけに付き合ってるように見えるんだよね。あこの性欲に、先輩が付き合ってあげてる感じ」
「明日香ちゃん、言い過ぎですよ……。あこちゃんだって先輩を愛してるんですから」
「じゃあ、先輩と1ヶ月セックス禁止で行ける?」
「……」
「あ、あこちゃん?どうして黙ってるんですか?」
りゅう兄と……1ヶ月えっち禁止……りゅう兄との繋がりを感じられるえっちが禁止……りゅう兄との愛を1番貰えるえっちが禁止……そんなの、耐えられない。
「りゅう兄とのえっちは、愛を確かめるためでもあるの……だから、えっち禁止は正直辛い……」
「いちいち確かめなきゃいけないの?愛って。普通当たり前にそこにあって、深めるものじゃない?そのためにキスとかセックスとかがあるんだし。あこと先輩の仲って、意外と脆いんだね。幼なじみとは思えないや」
「ッ!」
「明日香ちゃん!」
明日香の一言に六花が怒った。あこはただ面食らっている。あことりゅう兄は、そこまで仲が良くなかったのだろうか。あことりゅう兄の過ごした時間は偽物だったのだろうか。
「はぁ……。誕生日プレゼントと言い、愛の脆さと言い、先輩はよくあこと一緒にいられるね。わがままで、独占欲が強くて、バカで、何でもかんでも浮気にして、ドラムを叩く事しか能がなくて」
「なんで今日の明日香ちゃんは、そんな酷い事ばっかり言うんですか……」
「先輩の誕生日の話のくだりを聞いて、ちょっとイラッと来ただけ。先輩はあんなに皆を大切にしてたのに、皆はその愛を返さなかった。先輩の愛を当たり前だとでも思ってたのかな。いやー怖いね、感謝を忘れるって」
明日香の言う通りだ。あこだって、りゅう兄のあの世話焼きな性格が当たり前で、お礼を言ったことなんてなかった。それを当然だと思ってた。だから、りゅう兄の誕生日が来ないのも、当然で片付けた。りゅう兄はあこの誕生日を毎年祝ってくれたのに。
「ま、この調子だったらいつか先輩とあこ別れるでしょ。いやー楽しみだなー、先輩が私の彼氏になるの」
「明日香ちゃん、さっきから言い過ぎですよ。あこちゃんの気持ちも考えたらどうですか」
「恋人をエロい目でしか見れなくて、大切な人の誕生日もまともに祝わなかった人の気持ちなんて分かりませーん」
「明日香ちゃん!!!」
六花と明日香が言い合っている。あこはずっと、何も言い返すことができない。明日香の言ってる事は全て事実だから。確かにあこはりゅう兄をそういう目で見てるし、誕生日も来ないのが当たり前だと思って祝わなかった。全て明日香の言う通り。
けど、だけど……あこがりゅう兄を想う気持ち。これだけは本物だ。りゅう兄のことが大切で、一生を添い遂げる覚悟がある。
「確かにあこは、りゅう兄をえっちな目で見てるし、誕生日も祝わなかった。だけどね、それでもあこはりゅう兄を愛してる」
「愛してるって言えば何でも許される訳じゃないんだよ?」
「許されなくて良いよ。これからちゃんと、りゅう兄と向き合って行くから」
今までの事はどうにも出来ない。だから、これからをどうにかしていく。そうするしかない。それしか、りゅう兄に甘えてた罪を償う方法がない。きっと、りゅう兄は気にしなくて良いとか言うんだろうけど。あこはりゅう兄から逃げないってもう決めてるから。
「……あこもあこなりに考えてるんだね。でも、正直あこと先輩は釣り合ってない。先輩はあこにはもったいなさすぎる。それでも、あこは先輩と向き合うの?きっと苦しいよ?」
「どんなに辛くても、どんなに苦しくても、いつもりゅう兄が側にいてくれるから。だから、大丈夫。あこはりゅう兄から逃げない」
「ふーん……分かった。じゃあ、今は先輩をあこに預けとくよ。いつか私が貰うけど」
「りゅう兄はあげないよ」
「ふふ、どうだか」
明日香にりゅう兄は渡さない。ついでに六花にも渡さない。りゅう兄はあこのものだ。絶対誰にも渡さない。
「あこちゃん、明日香ちゃんに好き放題言われてたけど良いんですか?もっと強く言い返した方が……」
「ううん。これで大丈夫」
「そ、そうですか……」
六花は優しい。ずっとあこを庇って怒ってくれた。けど、明日香だって優しい。明日香はりゅう兄を想って怒ってたから。だから、今回は誰も悪くない。強いて言えば、りゅう兄を雑に扱ったあこが悪い。だから反省しなきゃね。
りゅう兄とあこは、とてもいい人達に囲まれてるみたいだ。これからも大事にしていこうと思う。まる。