いちばん小さな大魔王!せかんどし〜ずん:りゅう兄のうわき現場 作:コントラポストは全てを解決する
1ヶ月ぶりですね
「りゅ〜う〜君!」
「おお、香澄か。今日はどうした?」
「あっちゃんとの事考えてくれた?」
「あ、あー……うん。四六時中考えてるよ」
今日はりゅう君の家にやってきた。以前りゅう君が言ってくれた、あっちゃんと付き合うかどうかの答えを聞くためだ。早いところあっちゃんとくっついて欲しい。一刻も早く、あっちゃん幸せ計画のためにりゅう君を手に入れなければ。
「今日はあこちゃんいないの?」
「自分の部屋でゲームしてる」
「そっか。で、りゅう君、あっちゃんの事なんだけどね──」
「あ、ああ。そうだな……明日香もいいが、やっぱり俺はあこが……」
「え?」
あっちゃんより……あこちゃん?……は?
「りゅう君、いい?りゅう君はあっちゃんと付き合うべきなの。あっちゃんの方がいいでしょ?水泳部のエースだし、勉強だって頑張ってる。良い大学行きたいってあっちゃん張り切ってたよ。そんなあっちゃんを、りゅう君は放っておくの?見捨てるの?」
「あ、明日香は俺がいなくても頑張れるだろ?」
「りゅう君がいたら、あっちゃんはもっと頑張れるよ!」
りゅう君があっちゃんの彼氏になってくれたら、あっちゃんはきっと喜んでくれるはずだ。いつも姉らしい事ができてない私だから、こういう時くらいは姉っぽい事をしてあげたい。
「りゅう君を幸せにできるのはあこちゃんじゃない、あっちゃんなんだよ。りゅう君はそこをわかってるのかな」
「俺と相性いいのは明日香って事か?」
「そうだよ。あっちゃんがりゅう君の運命の人なの」
「初耳だ……」
あっちゃんこそがりゅう君にふさわしいんだ。あこちゃんじゃない。あこちゃんはあくまで遊び。本命はあっちゃん。そうだよね?りゅう君。りゅう君は絶対あっちゃんを選ぶ。そう決まってる。
「俺はあこの方が好きなんだけどなーって」
「なんで?あこちゃんよりあっちゃんの方が可愛いじゃん」
「馬鹿野郎。そこは両方可愛いって言うところだ。俺は両方可愛いと思うね」
「じゃあ、あっちゃんを彼女にしてよ。あっちゃんも可愛いんでしょ」
りゅう君はなかなかあっちゃんを恋人にしようとしない。一体何が、りゅう君をそうさせるのか。何がりゅう君のストッパーになっているのか。私にはわからなかった。
「悪いが俺にはあこがいるんでな。だから明日香は恋人に出来ん。すまんな」
「……ふーん、そっか。りゅう君があっちゃんを恋人にしないのは、あこちゃんがいるからなんだね。……ちょっとあこちゃんの部屋行ってくる」
「待て香澄、その手に持ってるカッターナイフはなんだ」
あこちゃんの部屋に向かおうとする私の手を、りゅう君は掴んで離さない。その手を離さないってか。面白い冗談だね。私は笑わないよ。
「離して」
「やだ」
「HA☆NA☆SE」
「I☆YA☆DA」
これは、終わりのない戦いを制さなきゃいけないみたいだね。あっちゃんにりゅう君を渡すから、出来れば傷つけたくなかったんだけどな。まあ、仕方ないか──
「キラキラドキドキパーンチッ!!!!」
「ぬるい」
「なッ──!?」
私渾身のキラキラドキドキパンチが!?しかも片手で受け止めるなんて……。重たいギターで鍛えた筋肉が……。りゅう君、一体何者なの……。
くっ……これじゃああこちゃんを消しにいけない。あっちゃんが幸せになれない。
「……あこちゃんをこの世から抹殺するまで、私諦めないから」
「じゃあ、あこが死んだら俺も死ぬわ」
「りゅう君は死なせない。あっちゃん幸せ計画のために」
「香澄の目の届かないところで死ぬから」
なら、りゅう君を私の家に攫ってしまおうか。そうすればりゅう君は私の目の届く範囲にいられる。りゅう君を戸山家に監禁すれば、その隙にあこちゃんを消せる。
「りゅう君を家に連れて行くことにする。大人しくついてきて」
「俺を香澄の家に連れてってどうする気だ。俺は行かない」
りゅう君は私の家に行く気がないようだ。仕方ない、りゅう君にはこのクロロホルムを吸って貰って、私が担いで家まで連れてくとしよう。
「香澄?そのハンカチはなんだ」
「りゅう君、じっとしてて。私が楽にしてあげる」
りゅう君にハンカチを近づけたら、ハンカチをはたき落とされた。酷い、乙女の手を叩くなんて。
「りゅう君、今私の手叩いたよね。皆にりゅう君が私に暴力奮ったって広めるから」
「俺はそんな脅しには屈さない」
「……チッ」
この程度の脅しじゃりゅう君は屈しないか。どうしたら……どうしたらあこちゃんを消しつつ、りゅう君を家に連れ帰れるか。りゅう君は男の子だから力が強い、力技じゃ無理だ。だったら、りゅう君に襲われそうになったとかのガセ情報を流して……ダメだ。皆りゅう君の事信頼してるから信じて貰えない。なにか、なにかいい考えはないか……。
「香澄、必死すぎだ。もう少し明日香を信じてやれよ。明日香は俺なんかいなくても十分やっていける」
「確かにあっちゃんはすごいよ。だからこそ、そんなすごいあっちゃんをもっとすごくするために、りゅう君が必要なの。お願いりゅう君、あっちゃんと付き合って?」
全てはあっちゃんのために。
「うーん……香澄がそこまでする意味がわからん。明日香にそんなに固執する必要あるか?」
「私はあっちゃんが大好きなの。小さい頃からずっとね。あっちゃんの笑顔を見るのが私の幸せ。だから、あっちゃんの笑顔のためにりゅう君が必要なの。もっとあっちゃんを笑顔にするために」
「狂ってんなぁ……」
あっちゃんの幸せが私の幸せでもある。あっちゃんにもっと幸せになって欲しい。あっちゃんの笑顔が見たい。あっちゃんの幸せそうな顔が見たい。そのためならなんだってする。
「私はあっちゃんのためならこの命だって捨てるよ」
「香澄、そういうのを病んでるって言うんだぞ。ほら、いつものキラキラドキドキを探す香澄に戻って。一緒にキラドキすること探そう?」
「りゅう君、私はね、あっちゃんとりゅう君が仲良くしてるのを見るのが1番キラキラドキドキするの。だから、あっちゃんといてあげて?」
「まあ、明日香といるだけなら良いが……お前の事だから明日香と付き合えって言うんだろ?」
「もちろん」
りゅう君があっちゃんと付き合うまで私は引き下がらない。
「どうしたらりゅう君はあっちゃんと付き合ってくれる?」
「うーん、あこと出会う前に来てくれたらワンチャンあったかもだけど、今はなぁ」
「やっぱりあこちゃんがいるからなんだよね。わかったよ、あこちゃんは私がどうにかする」
「さっきまであこを始末しようとしてたやつなんて信用できない」
信頼がないなぁ。もっとりゅう君には私を信じて貰いたい。そうすればあこちゃんをりゅう君の目に止まる事なく、穏やかに、静かに、この世から消せるんだけど。
あこちゃんさえいなければ、今頃あっちゃんはりゅう君と幸せに笑ってたのに。
「りゅう君、こう考えよう?あこちゃんさえ消えれば、りゅう君には今までにないほどの輝かしい未来が待ってるって。そう思えばあこちゃんなんていらなくなるでしょ?」
「香澄は知らないかもしれないが、俺あこがいないと病んじゃうんだ。リスカとかしちゃうし。わかる?あこの重要性。俺はあこがいないと生きていけないの」
「それって、あこちゃんがいたからりゅう君は病むようになっちゃったって事だよね。やっぱり、あいつは抹殺すべき存在……」
やはり宇田川あこはこの世にいちゃいけない。
「でも、あこがいなけりゃ俺は今頃なんの取り柄もつまらない人生を送ってたかもしれないんだ。だから、あこは必要だったんだ」
「あこちゃんと出会わないりゅう君の人生だって、つまらなくはないよ。だって、あっちゃんに出会うんだから」
「明日香とも出会わないかもしれないだろ」
「出会うよ。だって、りゅう君の運命の人なんだから」
嗚呼、あっちゃんと付き合えるりゅう君が羨ましいなぁ。だってあっちゃんを幸せに出来るんだよ?あっちゃんの隣で、あっちゃんの1番の笑顔を見れるんだよ?りゅう君にはその権利がある。羨ましい。私があっちゃんを幸せにしてあげたかった。でも、私はあっちゃんのお姉ちゃんだから、あっちゃんの幸せの手助けをするだけ。手助けをして、あっちゃんに幸せになってもらうのだ。りゅう君はそのために必要なのだ。なのに、あこちゃんはそんなりゅう君奪った。あの
「……ちょっとあこちゃんの部屋行ってくる」
「またか。てか行かせねーよ」
「りゅう君どいて、私はあいつを消す使命があるの。私の怒り、ぶつけなきゃ収まらない」
「香澄、熱くなりすぎだ。ほら、今日はもう帰れ」
りゅう君が私を帰らせようとする。りゅう君はわかってない。今の私は何をするか分からないのだ。もしかしたらりゅう君ですら傷つけてしまうかもしれない。
「りゅう君どいて」
「やだ」
「じゃあ、りゅう君から始末する。大丈夫、峰打ちで済ますから」
「……はぁ、しょうがないか──」
何をするか分からない私を前に、りゅう君はスマホを取り出す。何をする気だろうか。
「……何する気?」
「明日香に連絡する」
「私はやましいことなんて何もしてないよ」
「
「……りゅう君、卑怯だよ」
「卑怯もらっきょうも大好物だよ」
仕方ない。今日のところは撤収するとしよう。あっちゃんには悲しんで欲しくないもん。
「今日は帰る」
「おう。そうしてくれ」
私は荷物を纏めて玄関に向かう。本当はあこちゃんを始末したかったけど、それをしちゃうとあっちゃんが悲しんじゃうからやらない。りゅう君をどうにかする作戦にシフトしよう。りゅう君はどうやったらあっちゃんに靡いてくれるかな。やっぱり、あっちゃんを襲ってしまうような魅了作戦がいいな。りゅう君があっちゃんとエッチしてくれれば全てが片付く。
あーあ。りゅう君の記憶がなくなって、そのままあっちゃんのものになったりしないかなー。
私はそんな事を思いながら、りゅう君の家を出た。
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