本名は竜山翔梧。身長は161cm体重は53kg血液型はA型。7月7日生まれ。能力は『重力からの解放』。この能力は自身と触れている物質の重力をコントロールできる。
『空の配達員』と言われ、戦場において輸送業を担当するが、実質は破壊工作を中心に行う戦士で彼が出てきた戦場には何一つとして残らず、生物は死に絶えると言われる。遊び感覚で色々やる戦士で、ゲーム感覚で人を殺したりも出来る。情のない戦士と言われているが、本人はそれらを全く気にしていない。かなりのゲーマーで、世界の半分のゲームをやったと言われ、戦士としての仕事をやるのも全部ゲームの小遣いのため。かなりのゲーマーでゲーム無しで生きていけない彼だが、そんな彼の腕前、評価は全国のゲーマーに注目され、今は人気動画投稿者になっているとのこと。
「人生ゲームが全てだな」は本人の名台詞の一つ。
天井に大きな穴ができたドーム。さっきまで十二戦士達がいたイスラム的な円形建物は最早、中が丸見えの破損物となってしまった。
十二戦士が生きているのか。そんな疑問が出てくるかもしれないが結論で言うと、生きている。
例えば、彼等のように空に逃げた者もいる。
「ひゅー、危なかったな、兄貴」
「あぁ、一歩間違えてたら俺様達もあの瓦礫の下になっていたかもな」
『辰』の戦士断罪兄弟・兄はにやけながら地上の世界を見ている。彼の能力である『天の抑留』は空に留まり続ける事が出来、そのうえ彼の視力は大気圏すれすれからでも地上の世界が分かる程よい。傍観をするならうってつけの能力である。
「それにしても弟よ。お前があの『偽巳』に気付かなかったら、今頃俺らが串刺しになっていたとこらだったなぁ」
「感謝してくれよ、兄貴。俺の能力『地の善導』によぉ」
『巳』の能力『地の善導』は地上、もしくは地下での出来事を振動により察知する能力。彼の能力のおかげで彼等兄弟は助かったといっても過言ではないだろう。
しかし、断罪兄弟・弟は不満だった。彼は自分で放火魔になってもおかしくはなかった、と平然で言うほどの者だ。自分の手で人や建物に火をつけたがるのは当然の欲求。しかし、断罪兄弟・兄とは違って空中戦ができない彼は思い通りに戦う事ができない。
断罪兄弟・弟は表には出さないが、そこだけは不満だった。たとえ、『偽巳』の戦士が潜んでいる地上に行きたかった。
そんな弟の考えを読んでか、『辰』の戦士は『あのもぐら男が死ねばコンビネーションを見せつけられるんだが』とぼやいた。
「まぁ、悔やんだって仕方ねぇさ兄貴。まだ俺達は生きているんだ。そのうち、見せつけられるさ」
「そうだな、弟よ」
そう言って大笑いする二人。彼等にとってここ空の上は自分達の独壇場であるのはほぼ確定の事であり、弟のコンビネーションを失わせた上での切り札カード。これを切っているからにはどんな戦士でも彼等を発見されることはないだろう。
自分達と同じように空にいない限り。
「さぁて、ここらで特等席で見物といこうじゃねぇか」
「俺としては十二戦士の方に勿論勝ってほしいな。じゃなきゃあ、俺達の存在が無くなっちまうからな」
「お、良いこと言うねぇ、弟。まぁでも、勝ってほしいのは俺様も同感だな。まぁ、取りあえず隙をついて偽十二戦士達をぶち殺してやろうぜ」
「それ良いな!」
ギャハハ、と笑う断罪兄弟。愉快そうに笑う彼等。
しかし、断罪兄弟・兄はすぐさま笑うのを止めてしまう。それは彼が左側を向いたときから。辰の戦士はその方向で有るものを発見し、それに呆然とした。
突如とした兄の変化を弟は見逃さない。
「おい、どうした兄貴。なんかあったのか?」
しかし、兄はそれには答えない。弟はさらに呼び掛けようとした、その時。
突然、自分の体が横へと移動した。いや、動かされた。
『巳』の戦士は急な事に戸惑いながら、
「兄貴、どうしたんだよ!?急に動いたりして」
と、問い詰めるも次の瞬間、何も言えなくなった。
なぜなら、彼の真横から何かが通り過ぎ、十秒も経たないうちに後ろで爆発が起きた。
(嘘だろ……俺らがいるのは大気圏ぎりぎりだぞ!なんでそんなところにいる奴が居るんだよ!)
「チッ、まずいぜ、これは!」
『辰』の戦士は言葉と共に弟を抱えて猛スピードで前へ前へと進んでいく。そして、その進路を阻もうと大量のロケット弾が飛んでくる。
「しっかり捕まっていろよ!」
後ろで次々と轟音が鳴る中をぐんぐんと行く。それは一種、映画のワンシーンにでもありそうな物だが、本人達はそんな悠長な事を思っている暇はなかった事だろう。
断罪兄弟・弟はロケット弾の中、遠くにいる自分達と同じように天空にいる男を見つけた。青い髪の毛に青い服という青一色であるが、男の右手にはロケランを弾き手を持ち手にしている。彼こそが断罪兄弟に攻撃を仕掛けてきたのは最早間違いない。
男は断罪兄弟が自分の姿を認めた事をじろりと一瞥して理解した。そして笑った。
天空にいる者はよぉ、と喋る。兄弟は何事もなかったかのように振る舞った。
「久しぶりだなぁ、星龍。それとも何だ、こうやって呼んでほしいか?『空の配達員』って」
兄の台詞にやれやれ、と被りを振る星龍。しかし、表情から見て、本気で嫌がっていたりするわけでもなく、ただ不敵に笑うのみだった。
「『空の配達員』様は何故ここにいらっしゃるのでしょうか?ひょっとして職務怠慢ですか?」
おどけたように喋る『巳』の戦士。明らかな挑発文言であるが、これにも配達員は怒らない。どころか、えぇ、そうです、さぼりなんです、と笑いながら応じる。
「なら働けよ、配達員。俺様達はお前に構っている暇はねぇんだよ」
「そうはいかないんだよ俺はなぁ。何故って?そりゃあ決まってる」
ロケットランチャーの銃口を彼ら兄弟に向ける。断罪兄弟も身構える。静かな時間。彼等は天空で睨み合っている。互いが互いに牽制し、相手の隙を窺う。それは時代劇にでも見る剣豪同士の立ち合いのようだ。
しかし、そんな時間は長くは続かなかった。
「『偽辰』の戦士、『量で殺す』星龍!」
「『辰』の戦士、『遊ぶ金欲しさに殺す』断罪兄弟・兄!」
「同じく『巳』の戦士、『遊ぶ金欲しさに殺す』断罪兄弟・弟!」
彼等の大声が響くと同時に闘いは始まった。
先に仕掛けたのは星龍だった。ロケットランチャーの引き金を素早く引く。しかし、『辰』の戦士は飛び出てくるロケット弾を造作もなく避けていく。その間、弟は戦闘の準備を整えていた。そして、整うと同時に彼の持つ武器『人影』を相手に目掛けて撃つ。しかし、これは先刻の『辰』同様に『偽辰』の戦士も避ける。
『辰』の戦士は歯がみした。この状況はどう考えても自分達が不利だからである。『辰』の戦士は弟と同じように放射器を使うのだが、片手ではどう考えても操作できない。それに操作できたところで、兄弟のコンビネーションなんて物は活かせはしない。そして、最大の難点としては武器の利点があちらの方がこの状況では良いことだろう。
(あいつの武器『龍星』は射程範囲はあまり良いもんでもないし、弾も重くできている。が、あいつの能力『重力からの解放』のせいでその重さはなかったことにされるし、射程距離がなくてもあの弾は何秒か経ったり、何かが触れたら爆発する危険な武器だ。そんなもんを相手にして、無策で闘っても勝てるなんてほぼありえない)
「クソッ!」
舌打ちに似たような事を言って、『辰』の戦士は後退する。
「逃がすかよッ!」
そんな龍を追いかけるべく偽の龍は猛スピードで追撃する。速さは同じ。しかし、それは想定通り。
「弟!」
「任せろ、兄貴!」
『巳』の戦士は火炎放射器を相手に目掛けて放つ。しかし、それはさっきと同じ要領で避けられていく。時間稼ぎの為とは言え、自分の持つ武器の攻撃をひょいひょいと避けられるのは気分がよいものではない。案の定『巳』の戦士はクソがッ、と悪態をつく。
「そんなもんで何時までも時間を稼げると思うなよ!てめぇらよりも俺の方は断然アドバンテージがあり、武器もこっちの方が今は良いんだ!何時まで逃げれるか見物だぜ!」
余裕を見せて吠える偽物。彼からしてみれば、もうこの闘いは負けない闘いへと確定し、この追撃戦もただの鬼ごっこと化している。
『辰』の戦士は焦る。
彼の考えはまず、地上へと降下することを思いつく。しかし、今更地上へと行ったところで星龍が逃がしてくれるとは思えない。それに降りたところで地下に潜伏している『偽巳』の戦士が待っているだけ。しかも、他の戦士については何も知らない。そんな状況でむざむざと降りても無駄死にするだけだ。
次に思いついたのは、このまま逃亡すること。しかし、そんなの出来たとしても結局、『偽辰』の脅威を常に考えなければいけない。それに『偽辰』は性格上からして地上に降りることはまずない。彼は恐らく、自分達を始末し終えると、地上に向けての攻撃を開始する事は必須。
そして、もう一つの選択は星龍を殺すこと。これが一番手っ取り早く解決する方法で、かつ最も実現が困難な方法だ。星龍も言ったように向こうの方がアドバンテージがある。それに、ここは大気圏ぎりぎりの高度。上に上がって狙い撃ちも出来ないし、下に降りたらそれでこそ相手の思う壷だ。
どれを取っても一つ間違えれば最悪の事態。断罪兄弟・兄は兄弟の頭脳役として脳を働かせるも、どれも確実ではないことに煩悶とする。『辰』の戦士は頭は確かに(弟よりは)賢いが予想外の事に関しては弱い性格で、何時ものような選択が出来なくなってしまう性である。
そのため、今回も彼は選択できないでいる。
(クソ!どうすれば……)
考えれば考えるほど、彼の頭はどんどんと荒れていく。色んな物が出てきて氾濫してしまう。そんな中、ふとある事がぽーんと『辰』の戦士の頭を過ぎる。
「おい、どうする兄貴!俺達、追いつかれるぞ!」
「なぁ、弟よ」
淡々と語る断罪兄弟・兄。それはある種悟りを開いているような口振りをしている。断罪兄弟・弟は兄の突然の変化に戸惑いながら恐る恐る聞く。
「どうした兄貴?気でも狂っちまったのか!?」
「いいや、弟よ」
にやっと笑う『辰』の戦士。弟はさっきまでの雰囲気の変わりようには驚きはするものの、兄が何か名案を思い浮かんだのは明白だった。自然と『巳』の戦士にも笑みが零れる。
「兄貴、何を閃いたんだ。きっと妙案何だろう?」
「あぁ、その通りだぜ。弟よ、だが今回の策は本当の意味での断罪兄弟のコンビネーションを見せるときになるがな」
「もちろん、示してやるよ!俺達極悪非道の断罪兄弟だぜ!コンビネーションなら十八番も良いところだぜ」
了承の返事を貰った『辰』の戦士は弟の耳元で作戦内容を伝える。弟は作戦を聞くと、少々驚いた表情をするが、兄貴を信用するよ、という返事で了承した。
…
「断罪兄弟の奴ら、何かやってんな」
『偽辰』の戦士は断罪兄弟がこそこそ話を視認していた。彼は兄弟が何か企んでいるのを看破するが、流石に会話の内容は分からずにいた。『辰』の戦士と同様に目は良くても耳は常人と同じなのだ。
「まぁ、どんな作戦を仕掛けたところで俺の敵ではないがな!」
最早、断罪兄弟なんてものは彼の眼中にはなかった。それどころか、彼は次に自分が起こす作戦の事について考えていた。中々渋い役割にはないが、今回ばかりはしょうがない。
「何にせよ、これは勝ちが確定している闘い。さっさと終わらし」
そんな『偽辰』の戦士の台詞が言い終わる前に彼は目を見張るような出来事が彼を襲った。
なんと、さっきまであんなに逃げていた断罪兄弟がこっちに猛スピードで突っ込んで来たのだ。彼は『龍星』を構えて向かえ撃つものの『辰』の戦士は攻撃を避けて、すぐさま元のルートを辿って来る。
(流石にこんなに近寄られたら……殺される!)
電流のような恐怖が駆け巡る。彼は突然の事に戸惑いながらも、反射的に右へと主軸を傾ける。『辰』の戦士は一瞬だけ通り過ぎる際に減速するも、そのまま通り過ぎ『逝女』を持って、そのまま急降下した。
『偽辰』の戦士はほっとする。助かった、と。しかし、星龍は確かな異変を感じる。
背中に人の重みを感じているのだ。
(なんだ、何か乗っているのか?)
背中を触ろうとすると、
「おいおい、俺に触ろうなんて百万は必要だぜ!」
その声を聞いて、星龍は焦る。だって背中にいるのは『巳』の戦士なのだから。
(な……何故?)
世界がぐらっと眩む。何故、どうやって俺の背中に……。
そんな疑問を繰り返し、答を得ようとする星龍。しかし、彼に答は与えられなかった。
「おらおら、燃えろ燃えろ!ギャハハハ!」
後ろから焦げ臭い臭いがする。彼は察した。何が自分に起きているのかを。
「畜生!やめろ、俺から放れろこの野郎!さっさと落ちてしまえ!」
大声で喚き散らす星龍。そこには最早、勝者としての影を落とし、敗者へと確実に染まっている。
彼は必死に噛み付いて来る蛇を振り下ろそうとする。
だが、それは最早手遅れとなっていた。
「熱い、熱い!このままじゃ俺は……おい、やめろ!今すぐ俺に」
言葉はまたもや言い終わらせる事が星龍には出来なかった。炎が彼の全身を包もうとしていたからだ。龍は最早、人の言葉を喋れなくなった。ただ、叫ぶことしか彼には残されていなかった。
「ああああああああ!」
「さて、そろそろ」
嗚咽する『偽辰』を放って断罪兄弟・弟は下を少し見ると、にやりと笑って龍の背中を掴むことをやめ落下した。落ちる『巳』の戦士。このままだと彼は地上に落ちてバラバラ死体へとなることだろう。だが、彼がバラバラ死体になることはなかった。落ちた先には先行して下の方へ降りていた断罪兄弟・兄がいた。彼は自分の弟を両手でキャッチすると、すぐさま天へと舞い上がった。
一方、偽の龍は火炎にまみれながらも地上へと堕ちた。そこからは、ただ彼が燃えかすになるのに時間はかからなかった。
偽の龍は神の罰をくらったのだ。
(十二戦士・残り十一人/偽十二戦士・残り十一人)