俺は英雄を見たいんだ   作:どうして本気にならないんだぁ?

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第1話

 英雄派。そう名乗る連中に誘われた。

 俺には特別な力があるのだとか。それがこの龍の手(トゥワイス・クリティカル)………。

 俺以外にも持ってる奴は沢山いる。俺はきっと、英雄には馴れんだろう。だが、英雄譚は昔から好きだった。俺の憧れだ。新たなる英雄の軌跡をこの目で見れるなら、嗚呼、それはきっと素晴らしいことだろう。そう、思ったのだ……思って、いたのだ。

 

 

 

 

「ふざけるな………ふざけるなよ、なぁ、おい………」

 

 悪魔を殺す。これは良い。悪魔は昨今無理矢理人を攫い転生悪魔に変える者も多いのだから。

 堕天使を殺す。これも良い。神器持ちという理由で殺される者は後を絶たない。人間からすれば知ったことか、だ。

 天使を殺す。まあ良い。神が居ないのを言い訳に信仰を集めなくてはならないからと神器システムの改善をしようともしない。

 だが……だが、動機がなんだと?人の身で、何処までやれるか証明したい?神や怪物を倒すのは何時だって人間だった?

 

「ふざけるな………そうじゃねぇだろ、怪物も、神も、結局は過程だろうが!英雄は、守るべき人間を守って、英雄になろうともしねぇ祈って縋るクズどもを守ってこそ英雄だろうが!転生悪魔も助けず神器使いを洗脳してシステムに割り込める槍も戦闘にしか使わず英雄だぁ?英雄を舐めるな、人の希望の象徴を、人類の栄光の光を貶めてんじゃぁねぇぞ!」

 

 英雄派拠点の一つ、幹部及び上級戦闘員を集めた会合で、英雄派の首領である曹操の活動を開始するという宣言に、誰もがやっと自分達の力を知らしめる時が来たと笑みを浮かべる中叫ぶ男が一人。

 天月(あまづき)光輝(こうき)………『龍の手』(トゥワイス・クリティカル)という平凡な神器持ちながら上級戦闘員に数えられ、幹部の次に強いとまで言われる存在だ。

 

「ちょっと、どうしたのよ光輝………」

 

 と、ジャンヌダルクの魂を継ぐ転生者にして聖剣を生み出すことが出来る『聖剣創造』(ブラック・ブレードスミス)を持つ幹部の女性が諫めようとするが光輝は何処に吹く風。

 

「てめぇらの頭こそどうした?英雄になりたいんだろ?世界を救いたいんだろ?関係ない神話まで襲って、力を証明するだけの何処が英雄だぁ!?」

「落ち着きなよ光輝……過去を振り返ると良い。英雄は、何時だって強大な敵と戦ってきた。そう、僕の祖であるシグルドを筆頭にね」

「そうだぜ。たく、急に叫んで何訳のわからねぇことを………」

「…………てめぇらにゃがっかりだ………ああ、がっかりだよ畜生どもが!」

 

 北欧の英雄シグルドの因子を備えるシグルド機関成功体ジークフリート、ギリシャの大英雄ヘラクレスの魂を引き継ぐと名乗るヘラクレスの言葉に光輝はガシガシと頭をかき叫ぶ。剣呑な空気が会議場に満ちる。

 

「ここに居ちゃ俺は英雄に会えねぇ………会えるはずがねぇ。そもそもこの時代、誰も英雄なんか求めちゃいねぇ………負けた魔王と戦いたいだけの白龍皇、英雄を名乗る単なる暴れるガキどもの集まり。トップが強いだけの組織にいったい誰が助けを求める、いったい何奴が英雄を求める!」

 

 流石に止めた方が良いと思ったのか曹操が顎で光輝を指す。貴重な戦力で、失うには少し惜しいが幹部もいる。一人ぐらいなら別に───

 

「嗚呼、だから俺が代わりにやってやる………」

「が!?」

 

 押さえ込もうとしたヘラクレスが殴り飛ばされた。英雄派の中でももっとも馬鹿げた防御力を誇るというのに、だ。

 

「世界を壊す怪物になってやる!文明を破壊する獣になってやる!星を飲み込む災厄になってやる!俺はやるぜ、やってやるぜ!俺を止めに来る英雄をこの目で見るためになぁ!」

 

 ジークフリートの魔剣を片手で止め、握りつぶす。驚愕に目を見開くジークフリートの頭部を踏み潰し光輝は龍の手を呼び出す。否、光輝の腕が龍そのものへと変化する。

 力を求めて対価を差し出す。しかし弱いので封じられていた魂は食いつぶす。

 

「真の英雄になりてぇなら俺を殺して見ろ!本気の俺に勝って見ろぉ!お前等が英雄なら出来るはずだ。過去の英雄だって、そうやって怪物退治をしてきたんだからなぁ!」

 

 

 

 町が破壊された。多くの死者が出た。

 教会が襲撃された。多くの死者が出た。

 人が死ぬ。人が死ぬ。犯人は摩訶不思議な超常の力を使う者。

 誰かが言った、あれは悪魔だと。

 誰かが言った、異教徒の神だと。

 誰かが言った、宇宙の使者だと。

 誰かが言った、神の怒りの化身だと。

 ある者達には解っていた。神器使い。秘匿されるべき存在でしかないと。記憶操作を行おうにも規模がデカく、一つの場所を違和感なきように記憶改変を行う間に別の場所で破壊が起こり、ニュースやネットにもはや消せないほどの情報がばらまかれる。恐ろしきかな現代社会。

 警察が動く。軍が動く。国が動く。悉く潰される。

 悪魔が動く。天使が動く。堕天使が動く。少しは相手になって、しかし全て潰された。

 よって名うての悪魔達が動いた。

 

 

 

「やい!てめぇ!」

「あぁん?」

 

 せっかくの修学旅行。女湯を覗きに行こうとしたら突然爆音が聞こえ、京都の町が火に包まれた。イッセーは怒りに燃え空に浮かび狂笑する男に叫ぶ。

 

「てめぇのせいで、女湯のぞけなかったろうが?」

「……………はぁ?」

「許せねぇ……ぶっ飛ばしてやる!」

 

 と、イッセーが叫ぶ。明らかに町並みを破壊したであろう自分に叫んでくるイッセーに、男はほぉと興味深そうな目を向ける。

 

「なんだなんだぁ?悪魔のくせに俺が許せねぇか?女湯とかは、まあ訳が分からんが俺に挑むか!?弱っちぃお前が!ああ良いぞ、かかってこい!弱かろうが何だろうが本気で挑んでこい!勇気と希望とやる気がありゃぁ、俺なんて怪物に負けるはずねぇからなぁ!」




望まれたら続く

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