俺は英雄を見たいんだ 作:どうして本気にならないんだぁ?
夜だというのに赤く輝く京都の町並み。
悲鳴が、怒号が響く中サイレンの音も聞こえる。
瓦礫の上に立つ一人の男を睨みつける少年と青年の中間の男は片腕を構え叫ぶ。
「行くぞドライグ!」
『ああ!』
男、イッセーは相棒のドライグに呼びかけ『
「『
名と神器を知りながらも顔は知らなかったのか、イッセーが神滅具を構えたのを見て獰猛に笑う男。
『ふん、白龍皇の小僧と同じタイプか………』
「戦う相手欲しさに暴れたってことかよ、ふざけやかって!」
『
機械音声のような言葉とともにイッセーが赤い
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』
『
9回の倍化。合計512倍の力を手にしたイッセーは上級悪魔にすら通じる一撃を持って殴り掛かり…
「はっはぁ!!」
「ぐあ!?」
殴り飛ば
何時の間にやら巨大な龍の腕を思わせる籠手のような盾にも見える物を装着した男。鋭い鉤爪のような剣が4本生えたそれは、形こそ異なれどイッセーと同じくドラゴンの力を感じる。
「
『地力の差だろう。相棒は、弱いからな。しかしあの形、亜種か? 封じられたドラゴンもそれなりの強さを持っていたのだろう』
ありふれた神器で、所有者の強さに依存するとはいえ
「イッセー君!」
「イッセー、無事か!?」
と、更に複数の影がやってきた。魔剣を携えた金髪の剣士、聖剣を持った女に金髪の気弱そうな、それでいて確かな意志を持ってやってきたであろう女、茶髪の男に銀髪の女性。
「おお、おお!聖剣魔剣に、邪竜の力か?ドラゴン宿した奴がさらに!いいねいいね、悪魔と言えどグレモリー眷属共は冥界の英雄達だ!楽しませてくれそうじゃあねえか!」
獰猛、狂気的に笑う男にグレモリー眷属と呼ばれた悪魔達は闘志を漲らせ睨み付ける。それに対して男はやはり嬉しそう。
「随分と、派手なことをするね。君は人間のようだが、英雄派かい?」
「元、な。抜けてきた、あんな名前負けサークルは。お前等、街を堕天使から守ったこともあるんだろう?お前等のほうがまだ英雄に近いぜ」
「悪魔になった身で、人に英雄と呼ばれるとは不思議な気分だ」
金髪の男の言葉にまさかの称賛をしてきた。青い髪の女は照れながらそう返す。
「ゼノヴィア!照れてる場合じゃないでしょう!?」
と、白い翼をはやした少女が増えた。
「いや、しかしだなイリナ。やはり元とはいえ教会の戦士だった身としては人間に英雄と呼ばれるのは嬉しい」
「ははぁ!英雄っての名乗るもんじゃなくて呼ばれるもんさ!」
イリナと呼ばれた少女に言い訳するように慌てるゼノヴィアというらしい少女。それに対して男はやはり豪快に笑う。京都を火の海に変えた凶悪犯とは思えぬほどに親しげに。
「俺は英雄が大好きだ!この目で英雄譚を見てみたい!だから、生半可な英雄もどきだったらぶち殺す」
「「「────!!!」」」
空間が軋むような重圧が広がる。親しげな雰囲気から一変、イッセー達の脳裏に蘇る堕天使幹部と相対した時のような圧迫感。
「っ!いくぞ、みんな!匙、手伝ってくれ!」
「おうよ!」
と、返事をする男。彼が匙だろう。
「木場!ロスヴァイセさん!そいつの攻撃力は異常だ、接近しすぎるなよ!」
「解ったよ、イッセー君!」
「はい!」
木場と呼ばれた男は魔剣から風や炎を放ちロスヴァイセと呼ばれた女性は無数の魔法を放つ。近付けさせないと言わんばかりの物量攻撃に、男は龍の爪を振るう。
「ひゃあ!」
まるで巨大な龍が爪を振り下ろしたかのように雷も炎も氷も光も何もかもを切り裂き、空いた空間を駆ける男。一瞬で接近してきた男に対処しようとするロスヴァイセだったが間に合わないと判断し防御魔法を展開するも吹き飛ばされる。
「『
「デュランダル!」
追撃しようとした男の足元から無数に映える魔剣。無数の刃物の森に包まれた男が動きを止め、ゼノヴィアが聖剣を振るう。
伝説級の聖剣が放つ光は男を飲み込み吹き飛ばした。
「やったか!?」
「ゼノヴィア、それフラグ!」
と、イッセーが叫ぶと土煙の向こうから笑い声が響いてきた。
「デュランダル、デュランダル!伝説の聖剣じゃねえか!ローランの剣!ヘクトールの槍!こんなところで英雄の武器にお目にかかれるとはなあ!」
多少傷が付いてるが、それだけ。人間とは思えぬ耐久性。ただ力が増してるだけで、ここまで?
と………
「貴様かぁぁ!京を荒らす不届き者はあああ!!」
「うお!?何、鬼!?」
「ああ?」
男の背後から現れる赤い肌に角の生えた大男。棍棒を振り下ろし、地面が揺れるほどの衝撃が発生する。腕を掲げ、再び振り下ろそうとした鬼だったがその腕が吹き飛ぶ。
「邪魔だ」
「っ!?」
鬱陶しそうに顔を歪め振るわれた爪が鬼の体を引き裂き…………木の葉に変わる。
「………あ?」
男は手首の甲で己の目元を覆う。その背後から迫る天狗に気づかず、錫杖で刺された。
「よくも、よくも歴史ある京の都を燃やしてくれたのう、小僧」
と、青白い炎が現れる。炎すら焼き尽くし作られた耳から現れる、金髪の狐耳を持った和服の美女。その横に天狗と腹を僅かに斬られた鬼が立つ。
「最早妾達の声など聞こえておらぬだろうが、それでも言わせてもらおう。早々にいね、小僧」
美女が扇子を振るうと同時に青白い炎が津波のように男に襲いかかる。おそらく幻覚を見せられているであろう男は反応でき───
『Boost!!』
「……………は?」
男から感じる圧力が、増加……否、
「っ!うおおおおお!!」
ずっと倍加していたイッセーが己の負荷を気にせず光線を放つ。光線が男を飲み込むも、一切の安心などできない。
「続けろ!魔力が尽きるまで、打ち続けろ!」
ゼノヴィアが、木場が、ロスヴァイセが光や炎や氷、放てるものをとにかく放つ。イリナも光の槍を無数に撃ち続ける。
轟音、轟爆。閃光が何度も光り、土煙が辺りを覆う。肩で息をするグレモリー眷属達は油断なく土煙に覆われたクレーターを睨む。
「げほ!はは……ははは!良いね、良いぜ!最高だあお前等!」
無傷ではない。あれだけの攻撃を喰らい、確実に傷は負っている。なのに笑っている。
カラスの頭をした山伏が迫るも腰辺りから生えた龍の尾のような物が彼等の一部を抉り取った。
「なん、なんだ………」
「あ?」
「何なんだお前!本当に人間か!?」
理不尽とも思える存在にイッセーの叫びに男は首を傾げた。
「ああ………ああああ、そういや俺とした事が自己紹介がまだっだったなあ」
納得したというように的はずれなことを言う男は世界に己を知らしめるかのように両手を広げた。
「俺の名は天月光輝!理不尽に思えるか?不条理だと叫ぶか!?それでいい!俺は、俺こそは!仲間の絆も戦士の力もすべて真っ向から捻り潰し、女を犯し男を殺し街を焼き命を喰らい宝を奪う怪物だ!」
怪物。神話、伝説における悪。英雄、神に討たれるべき存在であり、討たれる存在足り得るほど人を殺すモノ。
殺さなくてはならぬモノ。それを自称する人間の筈の男はイッセー達にやはり笑みを向けた。
「俺を止めたいか!?殺したいか!?なら足りねえ、その程度じゃまるで足りねえぞ!もっと覚醒してみせろ!そうすりゃお前も英雄だあ!」