名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件はハンドルネーム。全員分は覚えられない。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!
私は先月、手品ショーの最中に事故死した日本の脱出王・春井風伝の孫娘・田中貴久恵。
おじいちゃんの死の原因は、プライベートで正体を隠して参加していたチャットサークルのメンバーに良い所を見せようと無理をしたから。
そう、ただの不慮の事故。
なんだけど、そのメンバーのうちの2人・西山さんと浜野さんの嘲笑コメントがどうしても許せなかった。
もう殺さずにはいられないほどにね。
そういうわけで2人を殺すわ。
舞台は奇術愛好家連盟のオフ会が行われる雪山のロッジ。吊り橋1本だけしか道が無い陸の孤島でね。
この橋を燃やして落とせば、トリックし放題の舞台の完成よ。
・・・どうやって?
オフ会が本格的に始まる前にこっそり抜け出して、急いで走って火をつける? 怪しいなんてもんじゃないわ。
つまり、メンバーが揃ってから、橋に遠隔で火をつけるリモコンがいるってことよ。
私にそんな技術は・・・・無い。
だけど、そんなリモコンは・・ある。だって私の実家は春井奇術団っていう手品師一家。そういう手品用品は簡単に手に入るのよ。
ただ1つ心配なのが、モチベーションが続くかどうか。
ハッキリ言って不謹慎な失言に対する殺意だから、2人殺すトリックに頭悩ませている間に殺意が薄れるわ。脳内殺人の時点で満足しちゃうのが普通。
だから今回、私は2人中1人をストレートに撲殺して、もう1人の殺人にだけ手品師一家の名に恥じぬトリックのオンパレードで殺すことにしたわ。殺意モチベーションを維持できるように。
無理やりじゃないかって? うん、自分でもそう思う。
だけど、何故か不思議と、そんな気分になっちゃっているの。
死神的なのに背中を押されているような、そんな感じなのよ。
ということで当日。
まずは杯戸町のアパートに住む西山を撲殺! パソコンのモニターに「まずは一人目 影法師」って残して、ついでに電話を留守電にして退出。
ちなみに影法師ってのは、私の裏アカ。チャットサークルの架空メンバー兼、事件の容疑者にするの。
続きまして雪山にて。
まずは吊り橋に灯油を撒いて、見えない所に遠隔操作吊り橋バーニング装置をセット。
灯油臭さも、外気温が寒いから臭いが抑えられて“ちょっと変な臭い”程度になったわ。それこそ風邪引いて鼻水出してる人には全く分からないくらいの匂いよ。
気にしない気にしない。
さて、到着したらメンバーと初顔合わせ。
私「イカサマ童子(おじいちゃんが使ってたハンドルネーム)」に、意外と抜け目ない「レッドヘリング」土井塔くん、「無口な腹話術師」の荒さん、「イリュージョン」黒田さん、無口なバイトの須鎌くん、憎き浜野のネカマ「消えるバニー」。
そして最後に来たのは、オジサンふりの女の子「魔法使いの弟子」こと園子さんと、そのお友達の蘭さん。
その付き添いに来ていたお父さんと風邪引きボウヤはそのまま帰宅するみたい。
この2人がちゃんと帰ってから、吊り橋燃やさないといけないわね。遠隔バーニングにしといて良かった。
頃合いを見てバーニング!
アーンド、浜野殺害トリックの下準備。浜野に花を持たせる奇術を2人で打ち合わせる。
あとは電話線を切断。
そしてお風呂を沸かして準備OK。
えっ? 最後の要らないって?
分かってないわね。手品ってのは一見、不必要な行動が方程式に組み込まれているものなの。ようは“黙って見てなさい”ってことなの。
さて、夕ご飯タイムが終わったらいよいよ本番。
なんだけどその前に、ロッジの前で風邪引きボウヤ・コナンくんが倒れてた!
しかも「早くここから逃げろ」って。
・・・・これってまさかだけど、コナンくんを吊り橋バーニングに巻きこんじゃった?
ゴメン! 本当にゴメン! 火傷してるし風邪でダウンだし・・・
なんだかこの子の弱った姿を見ていると、謝意が強くなってきたせいか、殺意がどんどん消えていく感じがするわ。
色々準備したけど、浜野を殺すの、やめようかしら・・・
なんて後悔しているところに、医大生の土井塔くんが解熱剤を持ってきてくれた。
もう大丈夫。良かった。
不思議だけど、この子が助かるおかげで、殺意のモチベーションが戻ってきた気がするわ。
よし、殺れそう。
さぁ今度こそ本番。夜の飲み会の宴会部長をハプニングで浜野になっちゃうように仕向ける手品をするの。
私はサクラとして立ち回って、風呂焚き係になるようにね。
思い出した? さっきお風呂を沸かしておいた理由がコレ。
ここのお風呂は薪で沸かすから時間がかかって拘束時間が長い。
だけど先に沸かしておけばその時間を殺人に充てることができるでしょ?
ということで浜野をサクッと殺害!
さぁ本番開始ね。ここからが本当の本番。不可能殺人のスタートよ。
まずは二本のボーガンの矢の後端に輪を作った長い紐を通して、紐の両端をベランダの手すりに結ぶ。後は矢を一本ずつ木に撃ち放つ。
紐がヨットのマストに張られた二枚の帆を形どる様にして、浜野の死体のベルトに紐をくくってベランダから流せば、ロープウェイみたいに裏庭の中央に落とせる。
最後にベランダに結んだ紐を切って、ボーガンを発射すれば証拠は楽に隠滅。
複雑なトリックだって? 私は平気よ。
やることが複雑だけど大丈夫。そう、奇術師ならね。
というより、これってそんなに複雑なんですか?
むしろ退屈すぎるせいかお肌カサカサよ。寒くて乾燥しているせいって可能性も否定できないけど。
その後、飲み会の時間。皆が残りメンバー(私と私が殺した西山)の不在を話題にあげ始めた頃。
「来ないよ。その人殺されたよ、自宅のマンションで」
寝起きのコナンくんが物騒なことを言って飲み会の席に現われたわ。何故この子、そのことを知っているの!?
って一瞬ビックリしたけど、どうやら事件がラジオのニュースになっていて、それを聞いてコナンくんは急いでこのロッジに戻ってきたみたいなの。
ますますバーニング確定。ほんとゴメン。
しかも話の流れで浜野の部屋に行くことになっちゃって、みんなで死体発見に至ってしまったから、子供に死体を見せることになってトラウマ植え付け確定・・・ほんとゴメン。
土井塔くんが浜野の死亡を確認して「不可能犯罪」って断言してくれたけどほとんど上の空の私。
それから『周囲に殺人鬼がいるかもしれない』って、ジェイソン的な展開を危惧したメンバーで、身を守るためにしばらく皆で固まって過ごしたわ。
さて、この辺でトリックの後片付けね。トリックに使ったボーガンの矢を回収する口実を作るトリックを発動させるわ。
まず、寒くなってきたからと上着を取りに何人かで私の部屋にGO。
スキを見て窓ガラス割り装置を作動させて、背中越しにボーガンをショット! もちろん誰かに当たらないように巧みにね。
さらに追撃の風呂場の窓ガラス割り装置も作動! 風呂場の鏡にあらかじめボーガン打ち込んでおいたものを添えて。
これで“誰かが外からボーガンを撃ってきている”って状況を作れるから、とどめに私が率先して『犯人出てこいや!』って言えば、自然な流れでボーガンの矢の回収のために森の中に入れるってわけよ。
まぁ1つ計算外だったのが、木に刺さった矢が抜きにくかったこと。引っ張った勢いで尻もちついちゃった。
その後、捨てておいたボーガンを荒さんが見つけてくれたから、「もう狙われる心配がない」ってことで、穏やかなムードになってきたわ。
コナンくんがみんなのアリバイや現場の状況に興味を持って探偵ごっこを始めたけど、すぐに飽きちゃったのか冬休みの図工の宿題をし始めたわ。
いい感じの平和♪
もつかの間、急にコナンくんが居なくなっちゃったの!
「うわぁああああ」
そしてロッジに響き渡るコナンくんの悲鳴! 一体、何が起こっているの!?
すぐに2階でコナンくんは見つかったけど、同時に割られる窓と射られるボーガンの矢!
そしてコナンくんが「犯人は外にいる!」って飛び出して行っちゃった。追いかける私たち・・・って、なんかデジャヴ・・・私のトリックと同じ流れ・・・
そんな私の冷や汗に呼応するように、「ふにゃ」と崩れる園子ちゃん。
急に“血塗られた奇術ショーを再現する”って言い始めたわ。
・・・・なんだって!?
そして蘭ちゃんをアシスタントに、私のトリックを再現し始めたわ。
現場のベランダからボーガンを構える蘭ちゃん・・・危ない。
「みんなどいて!」って言ってるけど、素人に扱わせる代物じゃないのよボーガンは!
一応、経験者っぽい土井塔くんが代わりに再現していたから、私たちと蘭ちゃんに怪我人は出なかったけど、園子ちゃんってかなり危うい橋を渡る子みたい。
それからロープウェイトリックを再現しきった園子ちゃんは、不敵にこう言ったわ。
「そうでしょ? 犯人の田中貴久恵さん」って。
うん、たしかにそう。だけど、私にも言い分があるわ。
さっきのデジャヴの部分・・・コナンくんにやらせたわよね? 実際にやった私には分かる。あの“背中越しボーガン”の超危険技、奇術団出身の私だからできる技よ。
それを小学生にやらせたっての!?
クレイジーにもほどがあるわ!
その後も咲き乱れ続ける園子ちゃんの名推理。
こうして、謎は全て解かれた
んだけど、さらなる衝撃展開が発覚!
土井塔克樹はアナグラム。どいとうかつき⇒かいとうきつど
なぜか怪盗キッドが現れて、ハングライダーですぐに帰っちゃったの。
なんか・・・余韻のすべてを持っていかれたわ。
いかがでしょうか。奇術愛好家殺人事件
犯人の田中貴久恵です。
田中貴久恵です。
なんで2回言ったかって?
だって、私の名前なんて誰も覚えてないでしょ?
『土井塔克樹が怪盗キッド』のインパクトが強すぎて、私の名前なんて誰の印象にも残らなかったのは分かっているからよ!
そうじゃなくても、今回はおじいちゃんの『春井風伝』とか、『黒羽盗一』とか『九十九元康』とか『真田一三』とか『木之下吉郎』とかのビッグネームが出すぎているから・・・余計に田中なんて地味なのに。
敗因は何かって?
名前よ。
『いやいや、トリックの敗因を』って無粋な事言ってる貴方。
2回言うわ。
敗因は名前
名前のインパクトが弱すぎたこと。それだけよ