名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿   作:三柱 努

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大嫌いと大好きの距離埋める。二人の推理とサスペンス。
今日の事件も2人の新一。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!



殺人犯、工藤新一(コナン)

僕の名前は屋田誠人。

1年前、幼馴染で同級生の氷川萌生と遊園地には遊びに行かず、大学受験のために都心のホテルに泊まっていた時、義両親が死んでしまった。

失意に夢中になってしまった僕は、この事件を捜査した工藤新一の推理ミスに気付かなかったが、後日気付いた。

復讐心を覚えた僕は、彼の顔に整形する手術を受けるため麻酔を投与され。

目が覚めたら・・・

 

工藤新一になっていた。

 

 

工藤新一が周りの人間に危害を及ぼせば、社会的にも人間的にも抹殺できる。

推理ミスの助言を餌におびき寄せると、工藤新一は転がり込んできた。

あとは工藤新一を小屋に閉じ込めて、工藤新一に成りすまして事件を起こすだけだ。

僕の正体を知っているのは誰もいない。

 

工藤になっても頭脳は同じ

迷宮入りの迷探偵を抹殺

真実は、いつも一つ!

 

 

ということで始まりました僕の抹殺大作戦。

工藤新一を呼び出すためとはいえ、彼の知り合いまで村に呼び寄せてしまっているから、その人たちにすり替わりがバレないように工夫が必要。

顔はそっくりでも、声や仕草、服の趣味、身内にしか知りえない情報で秒アウトは確実。

 

そこで僕は、素っ裸で湖へダイブした。

この寒い時期に、ドボーンと!

そしてこう言うのさ

「わからない。僕が誰なのか、ここがどこなのか」

こうすれば、風邪を引いて声が変わったことにできるし、服の趣味も無意味、記憶喪失設定でゴリ押せば、知り合いにもバレずにすむ。

 

するとしばらくして、村の人が僕を見つけてくれた。

うん、しばらくして。

すぐには発見されなかったから、しばらく寒中水泳だった。

最初は水死体と思われたらしく、助け出されてすぐに毛布も貰えた。ついでにおばちゃんに裸見られた。

工藤新一の顔に泥を塗る一発目が全裸公開なんて、予想外だよ。

 

「新一~! ちょ、何で。どうして新一が?」

その後、すぐに工藤新一の知り合い4人が登場。来たよ。僕の演技力の魅せ場が。

何を聞かれても完璧に記憶喪失してやる。

僕は逆行性健忘。突然の疾病や外傷によって、障害が起こる前のことが思い出せなくなる記憶障害になった男。

 

 

「新一・・・それが僕の名前ですか?」

この答えでいいはずだ。記憶喪失なら、こう言うだろう。

「な、何をアホな事ぬかしとんねん! お前は東の高校生探偵・工藤新一。そんなしょーもなボケ、誰も笑わへんぞ!」

よし、まずは男子高校生1人陥落。

「ま、まさか工藤君」「記憶が」

続いて女子高生、おじさんも陥落!

 

イイんじゃないか?

記憶喪失の正解。歩めてる気がする。知り合いすら騙せてるぞ!

なんか、最初に歩み寄ってくれた女の子だけリアクションが薄いけど、まぁそういう暗い性格の娘なんだろう。

 

その後、濁声演技でひでぇカゼ声も通用。服は男子高校生が貸してくれることになり、4人と一緒に旅館に向かった。

どうやら4人は2泊3日で滞在予定だったが、僕・工藤新一を受診させるために急遽予定を1泊2日に変更することになったようだ。

これは少しマズイ。

 

 

僕の目的は工藤新一として悪事を働くこと。

知り合いの監視の目があると、その実行は困難だ。

その知り合いに手を出すという案もあるにはあるが・・・聞けば男2人はそれぞれ西と東の名探偵。犯罪者の天敵中の天敵だ。

女子高生2人にも手を出したくない。ソッチ系の悪事でも別にいいけど、何か嫌な予感しかしない。

 

すり替わり記憶喪失作戦、失敗だったかもしれない。

いやぁ、考えてみれば正攻法でも良かったんじゃない?

漫画でもありきたりな偽物登場回風に「俺は工藤新一だ」って町で悪事を働くだけでも良かった気がしてきた。

そりゃそういう漫画の話だと、本物が登場して終わりになるけど、今の時代ならネットに動画晒すだけで人生終わりにできるじゃん。

 

 

そんな僕の後悔も関係なく、4人は「工藤新一を1年前の事件現場に連れて行けば、何か思い出すかもしれない」という話にまとまっていた。

もちろん記憶喪失中の僕に拒否権無し。

 

そして到着、旧日原村長宅。相変わらず1年前の惨状のまま。

そこで名探偵2人は付き添いに来てくれた警官から、当時の捜査情報を聞き現場検証を始めた。

毛利小五郎も「強盗殺人に間違いない」って太鼓判。やっぱ本物の名探偵は分かってくれるなぁ。

 

「この工藤新一はこの事件を、日原村長が起こした無理心中だと推理したのよ!」

そこに現れたのは、僕の幼馴染で同級生の氷川萌生。

僕の代わりに工藤新一を糾弾してくれた。矛先は合ってるけど、その指先は僕の方を刺してるのが複雑なんだけどね・・・

 

そこに追加で現れたのは東都新聞の記者・河内深里。

工藤新一の決定的な推理ミスである「心中の動機と指摘された村長の癌告知は、実は良性腫瘍だと村長も知っていた」という点を4人に教えてくれた。

これには西の高校生探偵・服部平次もビックリ仰天。

「な、何やとォ!? おい工藤、どーいうこっちゃ。説明せェ!」

すごい剣幕で僕に迫ってきた。

 

・・・どう答えるのが正解だ? それ、僕の推理じゃないんだけど。文句言いたいのは僕のほうなんだけど。

いや、忘れちゃいけない。今の僕は記憶喪失。

「わからない。僕には何もわからないんだ」

このすっとぼけもあって、毛利小五郎はこの村で工藤新一が嫌われている理由を察してくれた。

 

その後も調査は続き、死羅神様の情報や、片方だけ残された仁王像、僕が崇拝していた頃の工藤新一コレクションを4人は捜査していった。

まぁ、何を調べようが“工藤新一の推理ミス”という真実が変わることはない。

僕は部屋に隠しておいた“万が一の自殺用&悪事用の拳銃”を回収。

これで一安心だけど・・・・疲れた。

 

思っていたよりも、記憶喪失って疲れる。なるもんじゃないよ記憶喪失。

いつバレるかどうかドキドキして、気が気じゃないんだから。

「私には分かっているわよ工藤君? あなたの魂胆は」

ん? 何かいきなり新聞記者が僕に言い寄ってきた。

「あら何? その顔、まさか私にもバレてないと思ってたの?」

 

・・・・・

 

やられた! 知り合いばかりに気を取られて、ノーマークだった新聞記者に記憶喪失がバレた!

幸いにも、記者はこのことすら記事にしたいらしく、4人の知り合いにも何も言わずに去っていってくれたけど・・・マズすぎる。

このままじゃ、いくら工藤顔で悪事働いても、この記者に偽物だと簡単にバラされて終わってしまう。

 

 

口封じするしかない。

幸い、記者はご丁寧に泊っている旅館を教えてくれたから、探すのには苦労しない。

あとは朝早くに旅館を抜け出して、記者を村長宅に呼び出してサクッと刺して、パトカーと救急車を呼ぶだけ!

 

えっ? わざわざ110番と119番するのか、って?

こうしないと、もし知り合い4人が先に村長宅に来て、僕を、工藤新一を庇って犯人隠避したらマズイだろ?

先に呼んでおくのが正解なのさ。

それに、これだけ面白い状況が揃ったら探偵たちがどういう反応や推理を見せてくれるのかも気になる。

つまり一度で二度美味しい。一石二鳥。

 

 

そして予想通り、記者を刺して茫然自失風の僕を4人が発見。

「この状況で警察呼んだら、血まみれの工藤が犯人にされてまうわ! とにかく、和葉は救急車! オッサンは車をここに持ってきて工藤を隠せ!」

と、救急車だけ呼ぼうとしているところにパトカー&救急車。

服部平次が僕を連れて裏口から出て、車のトランクに僕を隠した。

 

怖いくらい順調じゃないか?

この寒くて狭い真っ暗なトランクに放置されるのは辛いけど、これで工藤新一は社会的にも人間的にも死亡確定!

あとは隙を見て逃げ出すだけ。

まぁ、その後の僕の人生・・・どうするかは、今は考えたくない・・・

 

 

にしても、長いな放置プレイ。

車の外で何かガヤガヤと騒いでいるかと思えば、誰もいなくなったみたいにシーンとなって、それから長時間の放置。

昨日は全然寝れなかったから、それはそれで別にいいんだけど。

 

しばらくして服部平次が戻ってきて、僕を連れて村長宅に入っていった。

ん? こっち行くの? 警察来てるんじゃない?

そうしたら案の定、警察も「まさか工藤君が犯人だなんて言うんじゃ」ってリアクション。

さぁ、何を見せてくれるんだい高校生探偵さんよ。

 

「服には返り血、凶器には指紋。どっからどーみてもコイツが犯人やけど、そらそーや。コイツが犯人なんやから。つまりこの犯行にはトリックなんかあらへんかったっちゅうこっちゃ!」

後半、ひらがなが渋滞して何言ってるかわからなかったけど。

平凡! 高校生探偵・服部平次、ストレートに推理を放棄して僕を犯人として警察に突き出した。

さっきまで僕を庇っていた友情がウソみたいに、手のひら返し。まぁ正解なんだけど。

 

待てよ? 思えば今まで僕は『探偵のお手並み拝見』って気分だったけど、この状況は逆に僕のお手並み拝見タイムじゃないか?

ここで下手な答えを出したら、記憶喪失がバレて計画がすべて水の泡。

試されている・・・だが、見せてやろうじゃないか土俵際の意地ってやつを!

 

そこから咲き乱れる僕の「怖かったんだ」ゴリ押し迫真演技。涙も添えて。

これには警察もすっかり騙されて、僕の自白も困惑しながら受け入れる始末。

勝利目前!

 

そんな時、ソイツは突然現れた。

「それは、人間が生まれながらにして天より授かった終生不変のエンブレム。万人不同であるため、犯罪捜査に置いて最も確度の高い証拠になりうる痕跡。指紋、なんだろ?」

「し、死羅神様!?」

そう、それは僕の実父と僕が使っていた死羅神様コスプレを身にまとった男。

僕は一瞬でその正体を察した。

おそらく、今この話を読んでいる人にも分からない男の正体を。

僕が監禁しているはずの男が・・・ウ、ウソだ。どうやって?

どうやって、ベランダから現れたんだ!?

今コイツが入ってきたこのベランダの外は、断崖絶壁だぞ!

 

いや、今はそれよりも重要なのは、コイツの乱入で僕の正体が露呈確実になることだ。

“失敗は死あるのみ”精神で挑んでいる今回、今すぐに自殺するしかない!

だが、拳銃を取り出した僕に、コイツは「無駄だ」と銃弾を床に落として見せた。

バカな、いつの間に!? と拳銃を見ても、銃弾はちゃんと装填されたまま。

そこに死羅神キックが炸裂して、拳銃は僕の手から弾き飛ばされ、服部平次に奪われた。

「止めとき!仮装大会はこの辺で幕にしとこうや」

服部平次にもバレてた。

 

もう、謎は全て解かれていたんだろ?

 

「そう、彼は整形したんですよ。この名探偵気取りの馬鹿な高校生の顔にね」

うん、知ってた。はいはい、ご本人登場。工藤新一登場。推理咲き乱れる。

「ですよね? 奥田、いや、日原誠人さん?」

はい正解。

えっ? 随分投げやりだって? そりゃそうさ。あとは僕が辱められるだけなんだろ? 推理ミスするような迷探偵に。

でもさ、もう楽勝ゲーじゃん。今回は偽物がすり替わっただけで、本人登場したらもう終わりだし。事件自体のトリックも無いんだし。小学生でも解決できる案件だよ。

 

と思っていた矢先、工藤新一が語り始めた1年前の事件の真相。

義父は癌を苦にしていたのではなく、その時に受けた血液検査の結果、息子が実子でないことを知ってしまったのが原因で義母と心中していたんだ。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

えええええええええ!? 初耳!

しかもその情報、工藤新一が事件を推理し終わった夜、茫然自失で上の空だった僕にも聞かされていたらしい。

 

つまり、普通に工藤新一は推理ミスもしない、迷宮無しの名探偵だった。

 

 

謎はとっくに全て解かれていた。

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか? 殺人犯、工藤新一。

えっ? 敗因?
いやいや、敗因も何も。今回のはただのご本人登場だから、トリックもクソもないじゃないですか。

それに忘れていませんか?

河内さんはまだ死んでいない!

つまり僕は誰も殺していなかった。
だからこの殺人は未確定!
殺人未遂だから、勝負もクソもない!
ノーカウント、ノーカウントなんだ!


そもそも殺人鬼じゃないんだから事件簿のコンセプトとして、僕は挙げられるべきじゃないでしょ。
えっ? 本家の事件簿でも殺人未遂犯はちゃんと犯人として扱われていた?

既に詰んでいたのか。

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