名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件は意見の不一致。思い込みは危険だぞ。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!
僕は大学生で大のホームズファンの戸叶研人。
少し語りたい。付き合ってくれ。
二次創作は大いに結構。オリジナルに勝ることは絶対に無いが、それでも楽しい時間を楽しめるものが多い。
だが、我慢できないこともある。
それは“原作レイプ”だ。
『世界観のぶち壊し』
原作にはない存在を無理やりくっつけた展開にするものだ。原作の登場人物なら当然、そういう行動をするだろうという展開にしないは駄目駄目。原作の世界で普通に起きていることを、普通じゃないように扱うのも論外だ。
『性格・話し方・口調が原作と違う』
そのキャラが絶対にしない言い方だとか、二次オリジナルの現象を不必要に賛美したり蔑視したりする台詞を吐かせる。原作のセリフを踏襲するパートに、それ以外の要素をぶっこんでくるシーンは見ていて違和感しかない。キャラの人間性を否定する行為だ。
『明らかな能力の弱体化』
原作なら当たり前のようにできていることが何故かできない。フィジカル面の弱体化もそうだし、能力的にも原作なら楽々突破している壁がなかなか超えられない。原作を踏み台にしてご都合主義でゴリ押すのは見ていて不愉快だ。
といったところだ。
僕が特に嫌いなのが『キャラ崩壊』。原作への愛がこれっぽっちも感じられない。読んでいて不愉快極まりない。
ここに、『アイリーン・アドラーの嘲笑』という本がある。
金谷裕之と藤沢俊明の共同執筆した、早い話が「もしもアイリーンがホームズを嘲笑ったら」という二次創作の同人誌。
僕の嫌いな"キャラ崩壊系"の内容だ。これを読むくらいなら、ブックオフで100円で買える中古の自己啓発本を読んだほうが絶対に有意義に決まっている!
ふぅ。熱くなってすいません。思う存分語ったおかげですっきりしました。
口調も悪くなりましたね。申し訳ありませんでした。
ご清聴ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか、ホームズフリーク殺人事件。
敗因ですか? 敗因?
えっ? 殺人事件? 何言ってるんですか?
このホームズ二次創作に怒って殺人? 僕が? やるわけないでしょ。
そりゃ読んでいて怒りは沸きましたよ。だけど殺意までは沸きませんって。
たしかに、僕の中の死神的な声が「殺そう。殺せ」って喚いてますけど、そんなものに耳を傾けていたら社会では生きていけません。来年から社会人ですよ僕。
そんなことより、例の金谷が『シャーロック・ホームズフリークツアー』ってのを、彼がオーナーのペンションで開催するそうです。
金谷が主宰なのが気に食わないですが、それでもホームズを愛する者だけが集まるこのツアーは楽しくなること間違いなし。
応募者から抽選で選ばれるツアーでしたが、僕は幸運にも当選しました。
交際女性との2人枠だったのも幸運。まぁ、彼女はホームズ知識が少し足りないから、超難問クイズに挑むのは厳しいかもしれないですけどね。
というわけでツアー当日。金谷の運転する車に揺られて到着したのはペンション「マイクロフト」。良い名前だ。
マイクロフトっていうのは、シャーロック・ホームズのお兄さんの名前なんだよ。
この名前だけで僕の心の中はテンション最高潮で叫んでいるよ。
『殺そう、殺せ』『殺してまえ、いてもうたれ』って。
死神がうるさいね。でもそんなものに構ってしまう僕では無・・・
ん? 死神が2人になった? 関西弁のが増えた?
・・・・・・・・・・・・・
こうして僕は、ホームズが認めた唯一の女性・アイリーンが、ホームズをあざけ笑うなんて考えられない人間になった。
金谷と藤沢を殺そう。
藤沢もペンションに無事合流。メンツは揃った。よし殺せる。
(ちなみに、その揃ったメンバーの中に“コナンくん”という眼鏡の男の子がいた。良い名前すぎる。僕も一緒にその名前で盛り上がりたかったけど、藤沢がいたから断念)
ということでここからはトリックだ。
まずはツアー参加者が部屋に籠って超難問クイズに挑んでいる間に、金谷をサクッと殺害して死後硬直トリックを仕掛ける。
クイズは全1000問あるから、犯行時間に余裕は十分・・・
だと思っていた時期が、僕にもありました。
死後硬直が“車のブレーキを踏んだ”姿勢になるようにセットする。
この大変さたるや。
車のブレーキを踏んだことのある人なら分かるだろうが、当然ペダルには抵抗があるから足を伸ばして踏ん張る必要がある。
足先の死後硬直って、死後直後からは始まらないんだよ。硬直するまでは僕が死体の足を支えて固定する必要がある。
その長時間労働たるや。
えっ? 硬直がある程度進行するまで放置すればいいじゃないかって?
そんなことして目的の部位以外が下手な姿勢で固まったら、座席に座らせることができなくなって困るだろ。
じゃあテープで固定したり、重しを乗せておけばいいじゃないかって?
ペダルに対して硬直の軸がズレたらトリックが台無しさ。
つまり足が硬直するまでの4時間以上、ずっと死体を手で支え続けるしかない。
それがどれほどの苦痛かは、お察しください。
ということで頑張って用意した死後硬直トリック。
あとはクイズの答え合わせのために集められたリビングで待機してアリバイを作りながら、車が動き出すのを待つだけ。
【am3:30】
やっと動き出したよ車が。崖へ一直線に。やっと。思ってたより死後硬直が解けるまで長かった。
夜更かし高校生とコナンくんが車を追って走っていった予想外が発生したけど、2人とも危ういところで崖には落ちることなく、無事に金谷死体は回収不能に。
完全犯罪達成。あとは藤沢に「ガレージの車の後部座席の下にホームズの初版本が隠してある」と言うだけ。
この車にもあらかじめ罠を仕掛けてあるから、あとは待つだけ・・・
と、僕がワクワクしているところに急にブッコンできたのは、僕の彼女の綾子だった。
「あはははは。だって私、わかっちゃったんだもの。犯人の正体もトリックも。それを決定付ける証拠もね」
な、なんだって!?
おいおい、ここに来て急展開すぎる。
このペンションにはホームズマニアが集まっている。つまり、揃いも揃って推理レベルが標準偏差より高いメンツだ。だからもちろん警戒して証拠を残さないように注意していた。
まじか・・・
こうして、謎は全て解かれた。
と思っていた時期が、僕にもありました。
僕が犯人だとはしっかりバレていた。
だけど綾子は僕を庇って推理を話さず、「勘違い」ではぐらかしてくれたのさ。
いや、庇うつもりはゼロ。
目当ては金谷を殺した僕が手に入れているはずの初版本。(ただし、初版本の在り処は僕も知らない。聞く前に金谷を殺したからね。やっちまった)
このままじゃ綾子経由で僕の犯行が明らかになってしまう。最後の藤沢を殺せない。
綾子を殺すしかない。
殺害トリックは藤沢のものをそのまま引用。
焼き殺したよ。
藤沢を殺すトリックは新たに用意せにゃならんかったが、そこはお手軽に。
コンセントと針金で停電起こして、アイスピックで刺し殺す。
刺したよ。
高校生とコナンくんに邪魔されて殺せなかった。
殺せなかったのは残念だが、コナンくんにケガが無くてよかった。藤沢はまた後で殺せばいいだけ・・・
と思った矢先、高校生が急に扉を背に座り込んだ。
「ペンションのオーナー、金谷さんを車に乗せ、ガケから転落させた第一の事件。次にガレージで綾子さんを焼き殺した第二の事件。そしてこの部屋を停電させ、藤沢さんをアイスピックで殺そうとした第三の事件。この三つの事件を起こした犯人は、あなたや!」
え? オレ?
高校生が指名したのは、ホームズファンではないのになぜかツアーに参加していたコナンくんの保護者であるオッサンだった。
「ちがいまんがな。オッサンの後ろで冷汗流してる、戸叶さん、あなたやで!」
高校生は酷い関西弁で僕を名指しした。
うん、合ってる。合ってるが・・・ファッ!?
今日2回目の犯人当てが、どっちも急すぎる。
しかも高校生、オッサンに拳骨を喰らっても推理を続けるから厄介。
「それも可能と、なりまんがな」
「丁度いい頃合いでおまんがな」
「できまんがな、簡単に」
オッサンに殴られたダメージで言語中枢にエラーを起こしながら、咲き乱れる高校生の推理。
そして綾子も言っていた決定的な証拠とは、超難問クイズ1000問。その内容。
そう。金谷を殺した僕は、そのクイズを解く必要が無いからと、クイズを解いていなかった。だから、その内容を1問も知らなかったのだ。
こうして、謎は全て解かれた。
いかがでしたでしょうか? ホームズフリーク殺人事件。
敗因は、やはり設定への入り込みが足りなかったことでしょう。
ツアー参加者なら普通は挑むであろうクイズに挑まなかった。
ツアーという世界観を無視して、原作レイプしたことが敗因。
やっぱ、原作レイプは駆逐するべきなんだ。
たとえそれが、どんな作品が原作でもね。