名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
俺は山科大学付属高校2年生、美術部員の成沢研太。
同じ部活の伊能耕平に弄ばれて殺された妹の仇を討つため、殺害を計画している。
毎年、美術部の夏合宿で利用している「民宿なぎさ」という場所がある。
そこで恒例の肝試しをしているんだが、そこで殺す。
まずは事前準備のために前乗りだ。
犯行予定現場は旅館のすぐ裏にある墓場の、その奥にある廃校の女子トイレ。
来てみて思った。ココすごい立地条件。旅館側から見ても、学校から見ても。
普通、墓場の隣に作るか?
墓が先でも学校が先でも旅館が先でも。
あとさ、ここが廃校になったのは8年前。
たった8年前まで、戦前に建てられた木造建築に子供たちが通っていたんだ。
しかもトイレも古いままの落下式。分かるか? 落下式。ぼっとん便所ってやつだよ。
俺なら絶対に登校拒否してたな。それは言える。
まぁそれはそれ。
俺はトリックに使う石膏製の便器や針、毒、ピンポン玉、赤いインクをトイレに隠しておいて、ここでの準備は完了。
あとは電話番号で俺だと分からないようにするための新しい携帯電話。伊能の携帯のバッテリーと同じものを購入しておく。
準備は周到に進めてきた。
失敗はない。
よほど、名探偵でも現れない限りな。
当日
さっそくピンチだ。
美術部員の1年生が全員、夏風邪でダウンした。
だから今日、夏合宿に参加しているのは俺含めて4人。
つまり、肝試しがイマイチ盛り上がらない!
いくら毎年恒例の行事とはいえ、俺たちはそもそも美術部。
肝試しなんてその場のテンションが乗らなかったり、雨天で中止するレベルの優先度。
殺害用の毒針やらの用意はある。だが、肝試し以外での活用法は考えてきていない。
これは・・・断念せざるをえないのか・・・
だがその時! 俺たちの前に現れる救世主。
不動高校ミステリー研究会の御三方が現れた。
1人は金田一くん。
もう1人は七瀬さん。
3人目はよく分からん。うまく認識できなかった。
まぁ誰にせよ、肝試しに一緒に参加してくれるっていうなら大歓迎。
いや、まだこの段階では「参加する」とは答えてくれていないが・・・ミステリー研究会なら参加する流れだろう。
ということで俺たちは肝試しまでの間、打ち解けるために一緒に卓球に興じた。
金田一くんだけは卓球が終わるころに現れたけど、もう夕飯の時間だったから俺は彼の手からピンポン玉を回収して、フロントに道具一式を返却するフリをしてトリックに使う用に抜き取っておいた。
さぁ、ここからが本番。
肝試しの順番決めくじ引きをして、俺がラス2、伊能がラス1になるようにイカサマをdo。
他のメンバーが恐怖と戦い終え、いよいよ俺のターン。
廃校の女子トイレに伊能殺しのトリックを仕掛けに行く。
これダメかもしれない。
俺の下準備は明るいうちだったから、この暗さは想定していなかった。
明かりはロウソクだけ。
そりゃ妹の仇のために勇気を振り絞れるが、トリックの準備には明らかに・・・
光・源・不足!
俺が今からやらなきゃいけないのは
・物置のトイレ化
・イタズラ風インクの用意
・毒針の準備
トイレ化は、この肝試しのチェックポイントが「一番奥のトイレ」であることを利用して、他のメンバーが入った時には物置。伊能が入った時にはトイレになるようにするためのもの。
物置の掃除道具を片付けて、隠しておいた石膏便座を設置するだけ。
これは簡単。
イタズラ風のインクも、死んだ伊能をみんなで探さないようにするために、伊能のイタズラに見せかけて捜索を諦めるようにするためのもの。
これも簡単。
問題は毒針さ。
毒は今から塗る。下準備の日にあらかじめ塗っておく手も最初は考えたが、さすがにこの暑い夏の時期に屋外放置した毒が分解されて致死性が落ちる可能性がある。
だから当日塗りが確実。
この蝋燭の明かりだけのトイレで・・・猛毒を?
そりゃたしかに懐中電灯の明かりなんかが外に漏れたらバレるけどさ。
命がけの作業を、ほぼ手先の感覚だけを頼りに?
やってやろうじゃねぇか! 俺は美術部! 手先の器用さには自信がある!
と、毒を塗り終えたから、次のモノを取り付けようか。
麻酔針をな。
えっ? なぜそんなモノが必要かって?
皆、知らないだろうが。
即死する猛毒は、“即死”しない!
刺されてゼロ秒で死ぬわけじゃない。刺されてゼロ秒で“死から逃れられない”だけなんだ。
つまり毒が回るまでの間、毒で苦しむ伊能が、助けを求めてしまう。
このトリックの要は、伊能に物置の中で死んでいてもらうこと。
だから、伊能には“その場で動けなくなってもらう”必要があるんだ。
俺も最初は「無理じゃね?」と思った。
だけどな、この世界には“刺された瞬間に”効果を発揮して、撃たれた相手が動けなくなる代物があるんだ。
俺は入手した。
刺された瞬間に「ふにゃっ」とか「ほへっ」とか言って眠りについて、しかも刺さった瞬間すぐ体内に溶け込み消え去り針痕が残らない。
さらに、眠るときに決まって”眠らせた側に都合の良い姿勢”で眠ってくれるのさ。
椅子を置いておけば椅子に座り、ドアが開かないようにする位置に座ってもらいたければそのように。
さらにさらに、麻酔の代謝がとても良く、眠らされた状態から起きた直後でも、体がフラフラとせず、むしろ”全力疾走”すら可能なほどに元気になる。つまり体内に薬品の成分が残らない。
そんな麻酔針をな!
入手経路については聞かないでくれ。そういう約束なんだ。
さて、話を戻そう。
全ての準備を終わらせたら皆の元に戻って伊能にバトンタッチ。
時間がかかった分、みんなから「怖がりすぎ。時間かかりすぎ」って目で見られるのは我慢。
その後、伊能がいつまで待っても戻らないからと、みんなで探しに行ってイタズラを発見して旅館へ帰る。
伊能を待つ間に、「花子さんと赤インク」の怖い話を聞かせてもらった。(へぇ・・・初耳)
そして待ちくたびれてみんなが寝た2時半過ぎ。
旅館を抜け出して伊能死体の待つ廃校トイレへ。
物置から伊能死体を運び出して墓場に捨てる。
物置を元に戻して、毒ピンポンや石膏便器を人目につかない遠いところに捨てに行って。
旅館に戻れたのはほぼ朝。
そして朝食後にみんなで伊能を再捜索して、シャツに赤いインクが垂れて、真っ赤なチャンチャンコを来たような状態になった死体を発見。
・・・・ん?
あれ?
俺
赤インクを垂らした覚えないぞ?
?????
それから、俺の頭は真っ白になった。
睡眠不足だからな!
その後、警察に容疑者として取り調べられ、ポンコツの血ですぐに解放され、金田一に誘われてもう一度、廃校に行って、チェックアウトを済ませて
眠ぃ・・・寝てないんだよコッチは。
あとは帰りの最終電車で寝よう・・・と思っていた矢先・・・
「じゃ、みなさん行きましょうか。もちろん、亡霊学校の『花子さん』のいるトイレ。伊能さんの死の真相は、みんな知りたいでしょ?」
金田一が誘いやがった。
なんだコイツ? 死神の手招きだろ。睡眠不足で死ぬぞ俺。
そして周囲が暗くなり終電に乗り損ねたことが確定した頃
廃校トイレで金田一は語り始めた。
「犯人は玉やラケットを返しに行った人物。鳴沢研太! 亡霊学校の怪談に見立てて伊能を殺害したのは、あんたなんだよ!」
そこから咲き乱れる金田一の名推理。
うん、全て的中している。
ってことは当然、最大の謎も解いているはずだ。
俺が仕掛けていない、伊能の死体の赤いインクの謎もな!
そして、謎は解かれていなかった
いかがでしたでしょうか? 亡霊学校殺人事件。
いやぁ恐ろしいなミステリー研究会。
俺、クラブ活動ってのを部活より下に見ていたけど、考えを改めたよ。
警察すらスルーした俺のトリックを暴いてしまうんだから。
さすがミステリーを研究しているだけはある。
あと、今思い出したんだが・・・
死後硬直って3~4時間で指先まで硬直するらしい。
だが、俺が伊能の死体を運んだ時、死後3時間は経過していた。
なのにあの死体は、狭い物置の中で死んだ時の姿勢で固まってはいなかった。
まるで今の今まで生きていたみたいに・・・ダランと手足をぶら下げて・・・
この謎も、きっと全国大会レベル優勝のミステリー研究会がいたら解いてくれるんじゃないかな?
と期待して、俺は刑に服したいと思います。
それではまた、いつの日にか。