名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件はバレンタイン。あと1か月で学年変わる。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!
4年前に雪崩に巻き込まれて行方不明の兄がいる私は、カメラマンの甘利亜子です。
今、お世話になっているロッジが催しているバレンタインチョコ作りのお手伝いの真っ最中でーす。
明日も女子高生が2人、このチョコレート作りに来る予定。
その準備も兼ねて、私の恋人『二垣佳貴のチョコ作り初挑戦』が今から始まるわ。
ザクッ
包丁で切れる親指。
飛ぶ鮮血。
ひっくり返る救急箱。
暴れる彼氏。
着替えを取りに行く私。
「悪いな夏也、妹はもらったぜ」
彼氏の鞄に入っていたビデオには、兄と元・オーナーが雪崩に巻き込まれるシーンを彼が撮影した非道なものが映っていた。
・・・・・・・・・・・
ということで、思いついたトリックは、
カメラに付いた血を利用して犯行時刻をズラす!
ええ、唐突なのは分かってる。自分の才能が恐ろしいのも分かってる。
だってこれ、数秒前まで平和な1日を過ごしていた私が、友達が心配して見に来るまでの間に思いついて、下準備を実行するのよ。しかも泣きながら。
どんだけメンタル強いのよ私って話。
って話はさておき、いよいよ本番。
女子高生2人と一緒にチョコを作って、頃合いを見て彼氏をサクッと殺害。
しばらくして、犬の三郎に呼ばれてみんなで彼の死体を発見。
すると、女子高生の保護者のお父さんが彼の死体を見て、殺人だとすぐに判定したの。
「今は刑事じゃないが、元刑事の探偵、毛利小五郎だ!」
唐突!
あの、まだ私が殺意を抱いてから24時間経ってないのよ?
それなのに。
映画のジャンルで言ったら、昨日までのホームコメディがスリルとショックに変わって、それが今はサスペンス。
直後、名探偵毛利小五郎の推理が、私の誘導した通りの殺害時刻に至ってくれたのも束の間。
トリックの都合上、彼にかけたゴーグルを見て女子高生がひとこと。
「もしかして、犯人がわざとかけさせたとか?」
ここに来て名探偵毛利小五郎ではなく、茶髪女子高生の名推理が炸裂。
何この子? 雪山で起きた殺人事件に物怖じするどころか、探偵以上の観察眼を持っているの!?
「そーいえばボク、変なもの見つけたよ! ホラ、このチョコレート! この兄さんのおなかの上にのってたんだ!」
そう言って、眼鏡の子供が無邪気に見つけたのは、彼の死体の上に乗った私が作ったチョコレート。
!!!???
まってぇ・・・サスペンスだったのが急にSFになったのよさ。
誰もロッジからチョコを持ってきていないのに、何故か今ここにあってはならないものが置かれている。
誰かが私に罪を被せるために置いたのなら自然と説明がつくけど・・・そもそも私が犯人なんだからアリエナイ。
お化けでも現れない限りは・・・・ね。
その後、ロッジに続くトンネルが雪崩で埋まって脱出不可に。
雪崩やめて~。兄が死んだトラウマが蘇るから~。
そして毛利小五郎の捜査が進み、クマみたいな男がロッジの周辺で目撃されていたり、友人が精神的にオカしくなっちゃったり、男性客2人が彼の部屋を漁っていたり。
展開とジャンルが狂いすぎた映画みたいな状態になってきたわ。
「今から小五郎のおじさんが台所で推理ショー始めるってさ」
私の言いたいこと、分かるでしょ?
一度、お茶でも飲んで休まない?
でも休ませてくれないのが名探偵毛利小五郎。
私のチョコを犯行現場に置いたのは2匹の犬ってことを教えてくれたわ。
山岳救助犬の性質で死体を遭難者と勘違いしてチョコを送り届けていたのが真相だったの。
よかった。SFが消えてくれた。
「犯人は・・・まるで昼間に殺されたように偽装したんだ。ですよね? 甘利亜子さん!?」
謎は全て解かれた。
えっ? アッサリすぎないかって?
もうね、疲れたの。テンションとジャンルの乱高下。ジェットコースターに何時間も揺られて平気な人いないでしょ?
でもそれもやっと終着。ほっとしている自分がいるわ・・・
ドオォン
響き渡る銃声。
男性客が猟銃を発砲して、私たちを脅し始めたの。
やめてぇ。何してんのこの人たち。
曰く、2人は4年前に兄を誤射して雪崩を起こして殺し、その証拠の映像(私が昨日見たビデオ)をネタに恐喝した彼氏を殺すつもりだったそうなの。
彼、馬鹿なの?
自分の恋人を連れて山奥で殺人犯を恐喝するとか。
私が殺さなくても、どのみち今日死ぬ運命にあったってこと?
しかも、私が殺しちゃったせいで今、男たちが私たちの事を殺そうとしているという・・・
もう次に何が来ても驚かないわ。
今の私にあるのは無。
男の1人が女子高生同士での殺し合いを命令するという、バトルロワイアル要素をぶち込んできても。もう驚かない。
今の私にあるのは無。
夜中にコンコンと外からドアを叩く音が聞こえてくるという、13日の金曜日みたいなことが起こりそうな要素が来ても。もう驚かない。
今の私にあるのは無。
様子を見に行った男がドアを吹き飛ばしてロッジの中に飛び込んできて、ジャッキーチェンの映画みたいな展開になったのは、ちょっと驚いた。
入ってきたクマみたいな男が「大丈夫。銃口の向きと引き金の指の動きに集中していれば、弾は避けられます」って中学生みたいな発想の事を言ってきて、口がアングリと開いてきたわ。
ドォン! ガォ!
「ほらね?」
ほらね、じゃないわよ。
ヤ、ヤロォって、雑魚臭い台詞を言い出した男の背後に、バレンタインチョコのデザインセンスの無かった女子高生がトッと飛びこんで。
その隙に、弾丸避けほらね熊が迫って・・・
ドゴ!!
クロス延髄切りが炸裂!
プロレスが入ってきた。もうジャンル何てどうにでもなれ!
そして熊がこの私たちの窮地に現れた理由を語り始めたわ。
「あなたが好意を寄せる男を見定めに来たんです。本当にあなたに相応しい男かどうかをね。とぼけないでください。あなたの手編みのセーターと手編みの湯飲みを手中にし、そして今回、チョコレートを頂戴する男ですよ。さぁ、どこです?その幸運な男は?」
とおっしゃるのは、MAKOTOチョコの名を冠する真さんだった。
いかがでしたでしょうか? バレンタインの真実。
何? 最後のラブコメ・・・
もう、誰も私の殺人の事、覚えてないでしょ。
とにかくジャンルが渋滞して渋滞して。犯人に優しくない事件だったわね。
そりゃ、真犯人2人がボコボコになったのはスカッとしたけど。
余韻ってもんがないでしょ。
だって、犯人(私)の最後の出演コマが“ポカン顔”って。今までそんな事件あった?
もう、次の事件ではしっかりと事件してね。
ということで、わたしからのリクエスト条件提示はコチラ。
「雪崩からの生還」
もうね、散々振り回されて可哀そうな私にせめて心の救済をお願い!
雪崩に巻き込まれたまま行方不明・・死んでしまったりしないで、
ちゃんと生きて帰ってきてくれる。そんな犯人をお願いするわ。
次の犯人さん、貴方は兄のように死なないで。