名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件は双子の犯人。捜査担当刑事も双子!
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!
僕は国友家の運転手、綿引勝史。
13年前に父と弟が国友家のクルージングで事故に遭って、他の使用人と一緒に死んでしまった。
と思っていたら弟だけひょっこり生きてた。
よかった。
で、終わればよかったんだけど。
弟は記憶喪失になっていました。
と思っていたら、記憶はすぐに戻りました。
よかった。
で、終わればよかったんだけどね。
どうも旦那様と奥様が、控えめに言ってクソな社長と一緒になって、殺したり沈めたりで僕らの父を含めて4人殺しているんだ。
よし復讐だ。
双子トリックを使うぞ。片方がサクッとしている間に、もう片方がアリバイを作るんだ。
でも言うは易く行うは難し。
弟が生きていると社長にバレたら、また命が狙われ、周りの人間にも危害が及ぶかもしれない。
正体を隠すことにした僕らは、咄嗟にではないけれど、兄弟ともに僕1人の人間として生活して弟の存在を隠すことにした。
結果から言っておこう。この双子トリックに最も必要なもの。
それは 仲良しの双子 だ。
いや、あくまで結果から分かっただけ。僕らも終わってから気付いた。
僕ら2人を1人の人間として周りに見せかけるためには、生活の全てを2人で分ける必要があったんだ。
1つの部屋を2人で分けっこ。
仕事をしている時に得た情報も2人で分けっこ。
ご飯も「最近急に食べる量増えたね」って言われないために2人で分けっこ。
「いや、そこは食事量増やしていいんじゃないか?」ってなるかもしれないけど、それだと誰かと食事に行った時に「お前、いつもたくさん食べるだろ?」って言われるから、1人当たりの摂取量を減らす方向で。
消耗品も2人で分けっこ。
「トイレットペーパーの減りが早いね」と言われないために、使う長さも決めて。
幼馴染に「小さい頃に助けてくれたのって弟さんだと思ってたけど、あなただったのね」と、手の傷を気付かれたけど、どうにか誤魔化して。
「じゃあ兄さんの手にも傷をつけとこうか?」ってなったけど、ちょっとでもズレて失敗したら余計にバレる可能性があるから「“アル”よりも“ナイ”ほうが人間は認識しにくいものだよ」ってことでどうにか回避。
あとは生活の諸々、片方が仕事中はもう片方が部屋で静か~にしておかなきゃいけないのは普通ならストレスだけど、僕らは意外と平気。
という感じで、28歳になっても仲が良い兄弟だからこそストレス少なく1/2生活を2年間も完遂できた。
じゃあ、本番行こうか。
まずは2月4日に脅迫カード送付。
次は7月4日に屋敷の食器棚を倒してぶっ壊す。
4月4日に壁に向かってボールを投げて遊ぶ。
そして明日、10月4日。
仇を討つよ。
うん。年3回しか心霊風の復讐してない。
よくもまぁ2年間も我慢できたね僕ら。
だったのに
「あ、悪霊!? この私に悪霊の呪いを解けと!?」
うわぁやっちゃった。
旦那様、悪霊騒ぎにビビりすぎて名探偵・毛利小五郎を召喚。
よりにもよって本番の日に最強の探偵降臨。今まで霊媒師や神父さんだったじゃん。霊的だったのにいきなり物理的に解決させようとしてきた。
しかもここ静岡なのに。さすがお金持ちは課金が贅沢。
でももう後戻りはできない。
そしてその夜。
殺人成功。
いや、僕は殺していない。やったのは弟。
僕がアリバイを作っている間に、弟が仇の社長をギュッと。
そりゃそうだ。実際に殺されそうになったの弟だもの。
弟がどんな殺し方をしたのかは見てからのお楽しみだったけど、正直ドン引き。
首吊り自殺に見せかけたのはいいけれど・・・若干。若干、不自然なんだよなぁ。
首吊り位置が極端にベランダに近すぎて、自殺できなくはないけどやりにくい位置に。
殺意がちょいと滲み出すぎた。
おかげで毛利探偵も警察も自殺だけじゃなく他殺も疑い始めてしまっている。
まぁ、どうせ双子トリックが見破られることはないから問題ないけどね。
でもって残る標的の旦那様も、警察の事情聴取の間に3階のロックのかかった部屋に閉じこもってくれている間に会う約束をしてサクッと・・・
できてりゃよかったんだけどね。
旦那様、僕と死んだはずの弟がダブルで現れたショックで死ぬほど驚いて心臓発作を起こしてしまった。
いや、辛うじて薬に手を伸ばしていたけど、弟が殺意のあまりに薬瓶を奪って薬踏み潰したからギリギリ僕らの手でトドメを刺せた形。
だけどそこに思わぬ邪魔が。
ベランダに吊るしておいたロープを使って、誰かがこの密室になった3階に上ってくる気配が!
おい・・・誰だよこんなところにロープ吊るしておいた奴・・・
え? 弟が警察を攪乱するために指紋を残しておくために吊るしたんじゃないかって?
いやいや。もう薬の瓶に指紋残したから不要。
マジでいったい誰なんだよ。このロープ残したの。
なんて言ってられないね。急いで隠れよう。
そしてロープで上がってきた主が部屋を開けたら、どさくさに紛れて現場に駆け付けたフリをする・・・はいいけど、2人で脱出するの無理ゲー。
きっと廊下に見張りもいるんだろうし。
となったら、やることは1つ。
そう。双子なら誰もがやったことがあるあの裏技。
『部屋を調べる皆の一番後ろに付き、部屋に入るのも出るのも一番最後になるようにして、兄弟が隠れている部屋の1つ前で出るフリをしてそのままそこに留まり、皆が次の部屋に入るタイミングに合わせて扉の裏に隠れていた兄弟はシレッと皆に混ざって、双子がすり替わる』という技さ!
結果は大成功。無事に弟が僕と入れ替わって、そのまま何事もなく犯人探索打ち切りになったよ。
これにて僕らのトリックは完了!
あとは警察が捜査を諦めて出て行くまで、この密室になった3階で隠れておくだけ。
長い戦いになりそうだ。
と、思っていた矢先。その翌朝。トンデモない大声に僕は叩き起こされた。
「いいですか皆さん! これからひと部屋ずつ調べますが、あの時と違い私は最後に部屋に入らせてもらいます! 怪しい行動をされる方がいないか見張れるように! ですから前回、最初に部屋に入って窓やベランダを調べた私の役は綿引さんにお願いします! よろしいですね! では寝室の隣のこの書斎から始めましょう! もちろん何か見つけたり気付いた事があればすぐに私にお知らせを!」
滅茶苦茶にわかりやすい捜索再開が宣言された。昨日から捜査を担当している刑事さんだ。
呆れるほどわかりやすいけど、弟が刑事さん役でベランダを探すっていうなら、僕はそのままベランダに隠れていればいいってわけだね。
結果。普通に僕の事はスルーされて捜索終了だったみたいだよ。
でも何かが怪しい・・・
まさか!?
案の定。毛利探偵が推理ショーを始めていた。
そして僕と弟が使った入れ替え技と全く同じものを、あの刑事さんが双子の弟を呼び寄せて再現していたみたいなんだ。
しかもトリックの説明だけのために、わざわざ神奈川県警から呼び寄せたらしい。
双子なら静岡県にもいるでしょ?
こんな朝早くに双子を酷使! 毛利探偵も召喚エグイなぁ。
そして咲き乱れている毛利探偵の名推理。
そろそろ弟が推理の矢面に立たされているのを、別の部屋で聞いているのは心が苦しくなってきた。
往生して僕も行きますか。毛利探偵が推理ショーをやっている部屋に。
?
なんか部屋の入り口で眠っているように推理している毛利探偵のところに、子供がいるぞ?
しかも蝶ネクタイをグイーって口元にやって遊んでいる。そんなことしたら伸びちゃうぞ。
ああいう遊びが子供たちの間で流行っているのかな?
まぁいいか。
こうして、謎は全て解かれた。
いかがでしたでしょうか? 仏滅に出る悪霊。
敗因はもちろん、毛利探偵が来たことですね。
旦那様を脅すために脅迫状を送ったのがマズかったかな。
他の復讐は心霊じみた方法だったからビビッてくれたのに、そこだけ明確に人間味を出しちゃったのが駄目だった。
しかも標的の中で特に悪い社長のほうはあんまりビビッてくれていなかったし。
何かをするなら、方向性を1つに定めて徹底的にやるべきだったと思います。
まぁ復讐だけは成功したから、僕らとしては満足だったんだけどね。