名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
兄の仇・江原を突き落として殺すことに成功した私・佐山明子。
落ちてきた江原の死体に驚いて、ホテルの下のレストランは大騒ぎ。
婚約者の聡がホテルの部屋に戻ってきてから、一緒にレストランに降りることに。
するともう警察と毛利探偵が捜査していて、事故死として処理の真っ最中♪
計画通り・・・と思われたその時!
「あれ? おかしいよこれ」
コナンくんのひとことで状況は一変。
どうやらネクタイの結び方がおかしく、ベルトの付け方が逆みたい。
毛利探偵も最初は江原の癖だと言っていたけど、コナンくんが何故か持っていた江原の頭に巻いていたネクタイの結び目で、『誰かに着せられた』と推理。
ものの数分で自殺ではなく他殺だとバレた。
さすが名探偵、仕事が早い。子供虐待してるくせに。
その後、当たり前のように事情聴取される私。
でも抜かりは無いわ。ミステリーなら当たり前の展開だもの。
私には切り札がある。それはアリバイ。事件発生直後にかけた電話がね。
でも、今回それはあえて使わない! 何故って? いかにもアリバイが無い容疑者ってのは、ミステリーだと犯人じゃないって展開が多いからよ。
そしてそういう登場人物は、後になって“些細な会話”からアリバイが証明されるもの。
だからこの取り調べで私が話すアリバイは『事件発生時刻に観ていた映画の内容』だけよ。
まぁ・・・証拠にならないのは重々承知。なんだけど毛利探偵、取り調べが面倒なのかマトモに聞こうともしないのよ映画の内容。
あのね、これでも私がちゃんと前もってこの地域のテレビジョン買ってきて、レンタルビデオで予習してきたのよ。手間がかかってるのよ、この捨てアリバイに!
ちょっとくらい耳傾けなさいよ、腹が立つ。
その後、取り調べが終わり蘭ちゃんとコナンくんと一緒に部屋に戻る私。
エレベーターの中でもまず口から出てくるのは愚痴。それを聞いてくれる蘭ちゃんは良い子。
いけないいけない。今がチャンスじゃない。さりげなく決定的なアリバイを話すタイミング。
思い直した私は、犯行直後の10時にホテルのフロントにモーニングコールを頼んだことを2人に話したわ。ミステリー物のドラマだと、この何気ない会話から出てきたアリバイは鉄壁。非犯人フラグ。
するとこのアリバイに真っ先に喰いついてきたのはコナンくん。ホテルの通話履歴が管理されていることを知っていたの。今どきの子供は博識ね。
蘭ちゃんも私のアリバイ証明に、まるで自分の事のように喜んでくれたわ。
なんて良い子達なの。はぁ、なんて居心地がいいエレベーター。
この余韻が永遠に続いてくれないかしら・・・
その時、開いたエレベーターの扉から覗く顔に、私の血の気はサーっと音を立てて引いていった。
そこ立っていたのは・・・闇の男爵!?
えええええええええ!?
驚愕の展開すぎて色んなものが追いつかない。
蘭ちゃんは凄く度胸があるみたいで、闇の男爵に向かって蹴りをお見舞いしていたけど、その全てが躱されたわ。
でもその動き・・・私、見覚えがありすぎるんですけど・・・これ、聡じゃない?
何故、どうして聡が。そもそもその衣装、警察が管理しているはず。しかも使わないから私のカバンに片付けておいたカツラまでつけて。
いやいや、ありえないありえない。
普通に考えて、これは・・・ホテルに偶然滞在していた、闇の男爵コスプレが好きで夜中に徘徊する格闘家よ。
そうじゃなかったら・・・まさかだけど・・・
そんな呆然寸前の私と蘭ちゃん、コナンくんは急いで警察のところに戻って事情を報告。
すると、遺体安置をしていた警官が何者かに襲われて、闇の男爵の衣装を奪われたと報告も。さらには闇の男爵の衣装がプールに捨てられていたという報告まで。
そこで容疑者再招集からの再取り調べ、からの部屋の捜索。
休む間もない怒涛の展開。私の冷や汗はダラダラ。
衣装を盗んで私たちの前に現われて、プールに捨てたのがもし聡じゃなかったら、私の部屋にはまだカツラが残っているってことだから・・・
そして警察が部屋に来て捜索開始。
特に怪しいものは見つからず。
これは、安心していいのかしら? つまりこれ、聡が私のカツラを見つけちゃって、私の事を犯人だと思って、身代わりになるためにコスプレしてたってことよね?
少なくとも、私がただの趣味で闇の男爵風のオカッパのカツラを旅行に持ってきたイタイ女だと思っただけではないってことよね。
その後、事情聴取やらから解放された私達。
互いに交わす言葉も少なく、そろそろ就寝時間。
今夜は、眠れないかも。
と、それでもがんばって寝ようとした矢先に、まさかの警察からの再招集!
ったく、何時だと思ってるの?
しかも警官が「マットとベッドシーツを借ります」って。借りるも何もホテルの物だから私たちに言われても。
そしてわけも分からぬままレストランに呼び出された私達。
今から毛利小五郎の推理ショーがおこなわれるそうよ。
・・・・まさか、真相に辿り着いたってこと!? 私の渾身の闇の男爵トリックが!?
と、不安に胸が締め付けられた矢先に告げられたのは、闇の男爵衣装が盗まれた時に警備していた警官が空手の達人だったという情報。
そう、もうお分かりですね?
「そんな芸当ができるのはただ1人。元・空手チャンプの前田聡さん。貴方d」
「お父さん!」
毛利探偵から告げられる冤罪の宣告に待ったをかけたのは蘭ちゃん。
なんと彼女、第1の事件の起きた10時の聡のアリバイを飛び込みで証明したの。
これには計算外といった様子の毛利探偵。
私にとっても計算外の想定外。もちろんイイ方向に転がっているわ。
そして、毛利探偵は苦し紛れに、容疑者で唯一アリバイの無い今野史郎に矛先を向けたわ。「何を隠そう、彼は空手の達人!」と背後から殴りかかってね。
もちろん、今野は空手の素人。可哀想に、冤罪かけられて殴られ損。子供を虐待するような探偵はこういう無茶なことするから、これからは私も背後を気を付けないと。
って言ったばかりだけど、背後ばかり気を付けていても駄目なのよ。
それは、毛利探偵が眠ったように座り込んで、彼が手を挙げた時に起こったわ。
「危ないから、像から離れてください」
そう毛利探偵が注意を促した直後、無数の布団が空から落ちてきたの。
これは実験。
容疑者それぞれの部屋から“人の重さと同じになるように重りを付けた布団”を落としたらしく・・・他の部屋の布団は像から離れた場所に落ちていたけど、私たちの部屋の布団だけが見事に騎士像の剣に突き刺さっていたわ。
危なすぎる。危ないどころじゃないわよ毛利探偵!
像から離れた場所にも、私たちのすぐ側にも落ちてるんですけど。人と同じ重さの布団が。20階以上の高さから落とされた布団が!
さすがは虐待常習犯。やることが乱暴!
と、人のこと言えない。私には言えない。だって私も今日、落とす系でやらかしてたんだもの。
その後、咲き乱れる毛利探偵の名推理の末
・・・謎は全て解かれた。
聡が私を庇って「俺が犯人だ」と言い出したけど、さすがにもう無理があるわ。
私ができることは1つだけ。
精一杯、悪女を演じて、聡に嫌われること。彼が他の女と新しい人生を送ってもらうため。
「まってるからな。戻ってくるまで、ずっとまってるからな」
いかがでしたでしょうか?
闇の男爵殺人事件。
復讐を果たすことはできたけど悔しいわ。これが本物の闇の男爵だったら毛利小五郎なんかに負けなかったのに。
敗因ね。やっぱり『愛』が足りなかったことかしら。
いつも聡にちゃんとネクタイを締めてあげていれば、本番で失敗しなかったに違いないわ。あとベルトも。
でも1つ嬉しかったのは、聡からの愛を感じることができたことね。
だって、彼が闇の男爵の衣装を着て私達の前に現われた時。
私達がどのエレベーターで何時何分何秒に降りてくるかも分からないのに、あのコスプレ姿でずっと待ってくれていたのよ。他のお客さんに見られたら大騒ぎだってのに。あんな暗い廊下で。
これはもう、“愛”としか言えないわよね。