名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
幼馴染とかいないし遊園地には縁がないけれど、黒ずくめの男たちと怪しげな薬を作っていた。
薬を作るのに夢中になっていた私は、お姉ちゃんが殺された後で組織に反発した。
処刑される前に毒薬を飲んで、気が付いたら
体が縮んでしまっていた!
宮野志保の居場所が奴らにバレたら周りの人間も巻き込んで殺されてしまう。
拾ってくれた阿笠博士に正体を隠すための名前を付けてもらった私は
「灰原哀」
と名乗り、奴らの情報を得るために父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ工藤新一と接触することにしたわ。
ということで、私は今から米花小学校に灰原哀として転校するわ。
入学のためには戸籍やら色々と偽造しなきゃいけないんだけど、阿笠博士が全部やってくれた。博士、あなた偽装工作に手慣れすぎじゃない? 組織からスカウト来るわよ。
「今日から皆と勉強することになった灰原哀さんです。みんな仲良くしてあげてね」
「は~い」
子供たちのいいお返事に歓迎されたけど、例の工藤君は・・・ノリが悪いわね。
本当に彼がお姉ちゃんが殺された事件に関わっているのかしら? 今日はその辺りを見極めたいわ。
とは思ったけど、所詮は平和な小学校。工藤君が子供のフリが上手だってことくらいしか分からないまま下校の時間になっちゃったわ。
工藤君の目の前で子供たちから「一緒に帰ろ」とか「家は何処なんですか?」とか聞かれたから、博士の住所を言ってあげたけど工藤君はピンときてないみたい。ボケすぎでしょ。あなたの隣の家よ? ダメダメじゃない?
一応、彼は子供たちと一緒に少年探偵団ってのをやってて、下駄箱を受付にして学校の子供たちから依頼を受けているらしいけど・・・小学生に交じって何やってるのよこの人。
今日も依頼は来たみたいだけど、どうせ『迷子になった猫を探して』とかのレベルでしょ?
流されて私もついていったけど、やっぱり依頼は「うちのにーちゃんが急にいなくなった」だったわ。
失敬。高校生のお兄さんの失踪だったわ。普通に警察案件。
警察も既に対応済みだったし。子供の出る幕じゃない。
工藤君もそれなりの形で捜査を始めたけど、まぁ普通レベル。
分かったことはお兄さんが描いて町の展覧会に出した『夏目漱石の肖像画』を、黒ずくめの服装の女が褒めていたってことくらい。
「それいつだ! いつ会ったんだその女と!」「女の他に黒い服の男はいたか?」
工藤君、急に血相を変えて子供に問い詰め始めたわ。
まさか
まさかのまさかだけど・・・
その黒ずくめの服装の人が、組織の人間だと推理したの?
いやいやいや。ないないない。組織の人間が町の展覧会なんかに何の用事で行くのよ。行ったとしても、素人の絵を褒めたりするガラじゃないわ。
でも工藤君はその線で捜査を開始。お兄さんが行きそうな場所で聞き込みを始めたけど、この程度のことならもうとっくに警察がやってるんじゃない?
あげくの果てにコンビニで普通に買い物してる人を見て「千円札でタバコ一個。妙だな」って言い始めたわ。
店の前に自販機があるのに、わざわざレジに並んだから怪しいらしいけど。ゴメンちょっと何言ってるかわからない。
あなた疲れてきたんでしょ。糖分摂取しなさい。
『欲しい銘柄が売り切れてた』とか『惰性でレジに並んじゃった』とか『お気に入りの店員さんに声をかけたかった』とか。可能性は無限よ。
なのに工藤君、何を思ったかレジに手を突っ込んで、さっきの千円札を掴んだの。奇行に子供たちも唖然。
「警察に電話して。それ偽札だよ」
ファ!? 偽札を当てた!? 根拠は乏しすぎるけど、探偵の悪運で引き当てたの!?
そして偽札犯の尾行開始。いえ、まだ確定じゃないわね。偶然、あの人は気付かずに偽札を使っちゃった可能性もある。
でも工藤君の推理は止まらない。お兄さんが夏目漱石の絵を描くのが得意だから、誘拐されて偽札づくりを手伝わされているって結論に至ったわ。
「あの男がそうだとはまだ言えないけど、ひょっとかすると俺の体を薬で小さくしたあの黒ずくめの・・・」
子供たちの前で心の声ポロリ。あなた、阿笠博士からの助言で正体を隠すことにしたんじゃないの? 私、がっつり聞いちゃったんですけど。
あと一ついい?
無い。100%無い。
スケールが小さすぎる。千円札で儲けるとか。無い。
あなた、小さくなったその日に見てるんでしょ? ケース一杯の万札をウォッカが脅し取ってるところ。組織、作るより奪う派よ。
その後、工藤君は私たちを危険な事件に関わらせるわけにいかないって考えたみたいで、私たちを撒いて捜査を続行。もちろんその程度、私の観察力でお見通し。
すっかり夜になっちゃった頃に、工藤君が不動産屋さんで聞き込みしているところに私たちも合流。
駅前の交番横にある新聞社の女社長が、黒ずくめの服装の女だってことを突き止めたわ。
工藤君は「絶対にそこから動くんじゃねぇぞ!」って言って、たぶん警察に通報しに行ったわ。
で、子供たちは言う事を聞かずに新聞社に潜入開始。私も同伴。
そうしたら見事!
『何だここは、まるで造幣局ではないか。ありゃ日本の札、これは偽札だ。お兄さんを探しててとんでもないものを見つけてしまった。どうしよう』状態よ。
「ダルマと一緒さ」
というところで例の黒ずくめの服装の女が登場。うん、やっぱり違った。組織の人間のことなら私、気配でわかるもの。
だけど拳銃で脅されちゃったから私たちピンチ。拘束してお兄さんに仕事をさせるために脅す材料にするみたい。
「バイバイ、お嬢ちゃん」って言ってるけど、まぁ撃つ気はないわね。隣、交番だし。銃声で一発アウト。
どうせ偽札を捌き終わるまで監禁って流れでしょ。
だけど残念。工藤君が警察に通報してるし、私たちさっき交番のお巡りさんにいってきますしたばかりだから。時間の問題。
「ダルマと一緒だと? 笑わせるな」
「誰だいアンタ!」
「江戸川コナン、探偵さ」
女の拳銃を蹴り飛ばして、子供たちのピンチを救った工藤君、カッコよく登場。
阿笠博士の発明、時計型麻酔銃とキック力増強シューズで。
犯人たちを一網打尽してくれたから結果オーライだけど、ふつう拳銃を蹴り飛ばす? 暴発したらどうするのよ。
最期のトドメは拳銃が足元に転がってきた私ね。
Ban!!!
「は、灰原・・・さん?」
女を掠めて撃った私の銃の腕前に、子供たちも工藤君も唖然。これにて一件落着。少年探偵団大勝利。警察も到着。
連行される女に向かって、工藤君は勝ち誇って告げたわ。
「こんなしょぼいヤマで足がつくとはドジったな。まぁ警察で洗いざらい吐くんだな。あんたらのバックにある大きな組織のことを」
だから違うって。女も「組織?」ってキョトン顔でしょ? 今気づきなさいよ。
「とぼけんな。あんたにもついてんだろ? ジンやウォッカみてぇなコードネームが」
警察の前で工藤君も迂闊すぎ。もしこの中に組織の関係者がいたらアナタ、正体バレるわよ。
まぁ組織の関係者、私だけだけど。
「悪いけど私ずいぶん前にお酒とは縁を切ったのよ」
当然、組織と無関係の女の口から出たのはただの禁酒継続中宣言。
はい。ここで工藤君ようやく早とちりに気付きましたとさ。
めでたしめでたし。
といっても私、発砲したことを警部さんにめっちゃ叱られたけど。そこは泣き真似で返り討ち。
涙は女の武器っていうけど、女児の涙はもはや兵器!
まぁリアル武器である拳銃の扱いは、ハワイで親父に習・・・じゃなくて、組織で構成員に習ったなんて言えないわね。
その後、泣き真似のままの私を工藤君はお守りして博士の家へ。
だけど途中で私を放置して帰ろうとしたから、薄情者の彼にはここでネタバラシ。
「APTX4869。これ、何だか分かる? あなたが飲まされた薬の名称よ」
まだ気付かない工藤君。
「薬品名は間違っていないはずよ。組織に命じられて私が作った薬だから」
またしても何も気付かない工藤新一君(16)
薬の効果を説明してようやく「灰原、まさか」って気付いてくれた。
「灰原じゃないわ。シェリー。これが私のコードネーム。どう、驚いた? 工藤新一君」
またしても気付いていない、のろまな探偵さん(6)。私が住所を言ってようやく博士の家のことに気付いたわ。
博士に電話し始めたけど、博士最近パソコン通信にこってるから電話回線塞ぎっぱなしなのよね。
面白くなってきたから「無駄よ。何度かけても話し中。受話器が外れたまま、彼はとることができないのよ。なぜなら、もうこの世にはいないんだもの」って煽ってあげたわ。
工藤君をからかうの楽しい。発散されていくストレス。
博士の家に確かめに行った工藤君を追いかけて私もゆっくり帰宅。
「ただいま」「おかえり哀くん」
ここでネタバラシ。
真実を伝えたら、若干不安な常識力の工藤君でも、厄介者の私を追い出すべきじゃないって結論付けてくれたわ。
ついでにこの時、私が思い出した薬のデータのフロッピーを探しに行こうって即決してくれたわ。
今のところ、決断力は◎。だけど推理力は若干△。
だってここまで話したのに、彼の目の前で死んだ宮野明美の妹が私だって気付かないんだもの。やっぱりさっきのコンビニの的中はマグレだったのね。
ということでいざフロッピー回収に静岡へ。
工藤君の子供のふりを見せられてから3時間後。
広田正巳教授の家に到着。したけど、広田教授死んでた。
事故死っぽいわ。本棚が倒れた拍子に転んで、置物に後頭部をぶつけて。その証拠に部屋には鍵がかかっていて、1つしかない鍵は散乱していたノートの下にあったんだもの。
「誰かに殺されたのかもしれないよ。事故に見せかけてね」
工藤君が提唱、密室殺人説。落ちていた電話の受話器が外れていなかったのが理由。
たしかに妙だけど・・・偶然って可能性もあるんじゃない?
そもそも密室なんだし。
だけど刑事さんも工藤君に乗せられて殺人説で推理スタート。
まぁ、別にどっちでもいいんだけどね。
私は薬のフロッピーだけあればそれでいi・・・・
無い。フロッピー、無い。
まさかだけど・・・組織の人間が? 先回りしてデータを回収しようとして、その時に出くわした教授を殺した?
って気になるのが普通なのに、工藤君はどっちかって言うと目の前の死亡事件の捜査のほうが興味津々みたい。
刑事さんの邪魔になりかねない現場漁り開始。
例の落ちていた電話機の録音メッセージを刑事さんと確認し始めたわ。
あの、刑事さん。子供を死体に近づけないほうがいいんじゃない?
ただメッセージの中に、聞き覚えのある声が入っていたわ。
「え~黒字生命です。当社の新しい保険の説明にお伺いしたんですが、お時間はいただけないでしょうか? また改めてお電話します」
ウォッカの声だぁ。
だけどむしろ安心。組織の人間だったらわざわざ密室殺人なんかしないで、フロッピーだけ回収するはずだもの。それに今頃焦ってるわね。フロッピーを回収できなくなったから。
そう思うと、保険屋さんみたいな優しい口調で電話した後に焦りまくってるウォッカ。想像するとちょっとカワイイかも。
とはいえ、そのかわいいウォッカがこの家の近くまで来ている可能性が高い今、あまり長居をするべきじゃないわね。
フロッピーがどこにいったのか分からないけど、諦めて逃げるべきよ。
「待てよ。お前は知りたくねぇのか? この事件の真相を」
何言ってるの? 別に知りたくない。命の方が大事だもの。それにこれは事故でしょ。
「事故じゃねぇ殺人だ。広田教授を殺した後、トリックを使ってこの部屋を密室にし、事故死に見せかけたんだ。今からお前に見せてやるよ、真実ってやつを。この世に解けない謎なんて、塵一つもねぇってことをな」
塵一つもない・・・言わんとしていることは分かるけど回りくどい。できたら普通に言って。
そんな私の思いをガン無視して始まる、工藤君の名推理。
阿笠博士の声を蝶ネクタイ型変声機で騙って、刑事さんや容疑者に語り始める工藤君。
にしても打ち合わせもしてないのに、博士って演技派ね。見事に口パクしてそれっぽく推理ショーを始めたわ。
そして私も無理だと思っていた密室トリックも見事に再現。
「どう? うまくいった?」「バッチリじゃ新一・・・いや、ワシの思ったとおりじゃ」
博士も迂闊。そんなおまぬけな博士の都合もガン無視して推理再開の工藤君。
こうして、謎は全て解けた。
いかがでしたでしょうか? 黒の組織から来た女 大学教授殺人事件
あの、何で私まで犯人視点みたいな扱いなの? あれかしら? 銃刀法違反の? まぁ別にいいけど。
今回の一件で・・・じゃなくて二件で、工藤君への評価はお姉ちゃんが言うほどの評判ってほどじゃないかなってところね。
また次の機会に判断していこうと思うわ。いつになるか分からないけど。探偵としての推理力を試されるような大事件なんて、そう身近で起きるものでもあるまいし。
ちなみにあのフロッピー。たしかに事件の後で回収できたわ。警察から返してもらえたけど・・・
あんまり言いたくないんだけど、組織のフロッピーって外部からは普通の文章ファイルに見えるけど、暗号を打ち込めば解析できるの。
だけど・・・組織のパソコン以外で開くとウイルスが作動しちゃって、もう開くことができない。
サイバー攻撃や情報漏洩を防ぐ最上位の手段をとってます。組織は情報セキュリティに特に力を入れています。って、会社のPRみたい。
ただ私、基本的に組織でしか仕事しないから、このルール忘れてた
昔、うっかり仕事を家に持ち帰って誤爆した構成員がいるとかいないとか聞いたことがあるわ。
私、そのうっかりさんのこと笑えないわね。恥ずかしい。