名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件はリモート狙撃 狙えないけど狙い撃て
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!
私は衆議院議員・高田代議士の秘書、新倉常章。議員秘書といえば未来の議員。私も議員になりたい。そろそろな時期だ。高田が引退したりすれば私がそのポジションにつくことになる。
よし、高田を殺そう。
だけど直接殺してしまえば、その死によって得をする私が疑われてしまう。
ということで、議員秘書として働いている中で得た闇のつながりを利用する。議員秘書なら誰でも持っているコネクションだ。
恐喝屋の平岡を利用する。平岡は最近、石本という社長を恐喝している。それを利用する。
『平岡が石本社長の命を狙った』という筋書きを作るのだ。
まず石本社長に脅迫状を送る。命を狙っている感を演出するためのものだ。
次に石本社長と高田が近い距離にいるタイミングで高田を射殺する。
こうすることで、石本社長が狙撃されて、流れ弾で高田が死んでしまったように見えるというわけだ。
トリックは簡単。遠隔発砲装置を使うだけ。そしてこの装置を平岡に回収させて、あとは平岡を口封じすればいい。
ただタイミングがすごくシビア。
一応、この発砲装置は高田のいる場所を自動追尾する最新のシステムを使っているから問題はないが、発砲自体は手動。タイミングを図る必要がある。
発砲は石本社長の側に高田を誘導してから。先導するのは私の秘書としてのポジションがあれば簡単だが、そうなると狙撃時に私も高田の近くにいることになる。流れ弾が私の方に命中する可能性があるのだ。しかもそれを狙いを定めて行うのではなく、いかにも誘導している素振りを見せながら。ようはノールックで撃たなければならない。
そして本番当日。そりゃ緊張もしますよ。思わず遠隔装置のリモコンを落としてしまって、中の電池が外れちゃったりしますよ。いくらメンタル鬼強の議員秘書だって、人殺す時は緊張だってしますよ!
だけど発射はベストタイミング!
弾丸は石本社長の肩を掠めながら、私には当たることなく、見事に高田に命中。サクッと殺害に成功!
平岡もちゃんと打ち合わせ通りに遠隔装置の回収をしてくれた。しかも運よく目撃情報から平岡が容疑者に上がってくれた。
自分でも怖いくらいに上手くいっている。
だが本番はここから。
何故なら高田は衆議院議員。
みなさんもテレビのニュースを見たりしてご存知だと思うが、議員が死んだとなれば大ニュース間違いなしの大事だ。
それは秘書にとっても大事。関係各所への報告や後援会との連絡調整。業務の引継ぎに部下たちへの指示。そして今回は石森社長のトラブルの巻き添えになって死んだことになっているから、その関係者との責任の所在に関する打ち合わせもしなければならない。
殺人後の秘書ってやることが
やることが多い!
犯人って普通はトリックや事件のやり方の大変さに悩むものだけど、私は違う。
事件の後にやることが多い。事件後のほうがストレスフル! たしかに自分で蒔いた種だけど。
そしてもちろん平岡の口封じもしなければならない。忙しいのに。
ということで平岡との集合場所の廃ビルで平岡をサクッと殺害。あとは遠隔装置を回収するだけ・・・
え? 遠隔装置、どこ?
その後、一生懸命探したけれども遠隔装置は見つからなかった。これはマズイ。
もし警察が遠隔装置を見つけてしまったら、石本社長狙撃の真の狙いが平岡の殺害だってことがバレてしまう可能性がある。
って、なんてな。そこはぬかりのない私。
石本社長に罪を被せちゃえばいいのさ。
そう、遠隔装置のリモコン。これを石本社長の社長室に隠しておくのさ。こうすれば警察の捜査の手が石本社長に及んだ時に、石本社長が高田を殺したってことになるはず。自分が撃たれることで容疑者から外れるカモフラージュ作戦だと警察が疑ってくれるはず!
ということで私は次の日の朝、石本社長の会社に訪問した。もちろん例の高田巻き添え死亡の件で、秘書としての正式な訪問。ようは「あなたのせいで高田先生が死んだ!」って文句を言いに行ったのさ。
そして隙を見てリモコンをセット。これで全ての仕掛けが終わった。
あとは高田の跡を継いで議員になるだけ・・・
やることが、やることが多い生活が待っている! でも待ってました!
と歓喜していると、突然警察からの招集がかかった。あの名探偵の毛利探偵が事件の真相にたどり着いたというのだ。
うわ、油断してた。そうだよ石本社長は私の脅迫状のせいで、ボディーガードに毛利小五郎を雇っていたんだ!
そう。この事件には名探偵が初動捜査から関わっていたのだ。
まずい。非常にマズイ。
「真犯人はあなたです!」
毛利小五郎の推理した高田死亡の真犯人。それは柴田という男だった。誰?
そこから咲き乱れる毛利探偵の迷推理の数々。
うん。真犯人は私。だからその推理全部違うって知ってる。しかもグダグダなトンチンカン推理で柴田だけじゃなくて石森社長たちも呆れムード。
私は何を聞かされているんだ? もう帰っていい?
すると毛利探偵は急にフニャッと座り込んだ。
「冗談はさておき」
私が聞かされていたのは冗談だった。え? 何この流れ・・・
そこから始まる毛利探偵主導の高田狙撃事件の再現。
今度はビックリするくらいに正解。全部当たってる。何さっきの、私を油断させるための演技?
だけど流石にさっきまでのポンコツのせいで、柴田からもイマイチ信頼されていない感。
柴田は自信満々に石本の会社で見つけたリモコンを証拠として提示した。
よし、これはチャンス。私も後押しに「社長室で見つけたリモコン」を強調して、石本社長の真犯人説をプッシュした。
「聞きましたね! 今の一言を」
え? 何? 毛利探偵が鬼の首をとったような雰囲気を出してきたぞ?
しかも急に柴田もしてやったり顔をし始めた。
「俺はリモコンを石本の会社で見つけたと言ったんだ。社長室で見つけたなんて一言も言ってないよ」
「語るに落ちましたね新倉さん。犯人はあなただ!」
あ・・・・・
しかも決定的な証拠まであった。リモコンに付着した私の指紋。いやリモコン自体には指紋はついていない。ついてしまったのは、あの時に外れてしまった電池のほうだった。
こうして、謎は全て解かれた。
いかがでしたでしょうか? 謎の狙撃者殺人事件。
敗因は2つ。1つは調子に乗って推理に口を挟んでしまったこと。見事なまでに語るに落ちてしまった。
そしてもう1つは・・・・安物のリモコンを使ってしまったこと。落としただけで電池が外れるような品質のものを使わなければよかったのに。
忘れがちなことだけどトリックで何よりも大事なのは、トリックに使う凶器の品質! 筋力でもフィジカルでもない。まずは品質!