名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件はやることが多い。無事に間に合えトイレトリック。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!
俺は殿山十三。やたらと狙われる名前だが、俺は狙う側だ。
浮気相手に結婚を迫られて女房にバレそうになって追い詰められているが、それでも狙う側の人間だ。
そう、浮気相手の命を。な。
殺害計画についてなんだが、犯人で『イベント中』だとかの非日常の時間に殺そうとする奴がいるだろ?
それじゃ駄目なんだよ。自分のホームで、日常の何気ないひと時に殺さないと、犯人の実力は発揮出来ない。
だから俺は行きつけのカフェ・ロイヤルのトイレで待ち合わせ、そこで強盗犯の犯行に見せかけて殺すのさ。
どうやって強盗に見せかけるって?
詳しい説明は面倒だから割愛するが、結論言えばここのトイレは絶妙に殺人に優しい親切設計。それにもし強盗じゃないとバレても、俺は容疑者から外れることができるんだよ。
っつうことでいざ本番。
カフェに入り浮気相手を確認。それを無視して、俺はいつも通りにマスターとダベりスタート。
浮気相手が「トイレどこ?」の合図でトイレに行ったら俺もそれとなくGO。
の、前に先に他の客・無精ひげの若い男がIN。若い男が出てきたら、続いて美人もIN。
なかなか俺の出番が来ない。
で、俺の後に店に来たチャラい兄ちゃんが「女なんて、ものにしちまえばこっちのもんよー!」つってゲスく笑い始めた頃にようやく俺の番。
さぁ本番だ。ここからは秒の仕事になるぜ。
・トイレに入ったら、まずは左手の薬指に“突き指の治療”として着けてきた包帯を解く。
・浮気相手が個室から出てきたら、その包帯で首を絞めて気絶させる。
・そうしたらすぐにナイフの付け根に包帯を巻きつける。
・次は心臓をナイフで一突きにして殺害。
・そうしたら強盗犯の仕業に見せかけるために、浮気相手の鞄を漁って中身をばらまいて、財布から現金を抜き取る。
・勿体ないが、盗んだ金をトイレに流す。頂戴したら俺の犯行だとバレるからな。
・個室から出て、トイレのドアの上のスキ間から死体を通して投げ入れる。
・すぐに包帯を引っ張ってナイフを引き抜く。
・そしてナイフから包帯を解いて、俺の指に再び巻きつける。
マジでやることが多い!
なのに、次のトイレ利用客に疑われるとマズイから、自然なトイレ利用時間のうちに済まさなければならない現状。
その間わずか40秒!
そして何食わぬ顔でトイレから退室。
はぁ、本当に忙しかった。もう腕が分身したんじゃないかって気がしたくらい。
水を飲んで一息つきたい。
だが・・・
「うわぁぁぁ!」
俺と交代でトイレに入ったチャラい兄ちゃんの悲鳴が響いた。
強盗犯とかに遭遇したレベルの悲鳴に、客の中で特に巨漢な俺が駆けつけないのは不自然。
行くしかねぇんだよ。息つく暇も無く。
したら案の定、腰を抜かした兄ちゃんの目の前で、トイレの下のスキ間から流れる赤い血。
計算外。
命を奪うトリックに使ったのが上のスキ間なら、犯人の休憩時間を奪うのは下のスキ間!
さらに計算外。
血に怯えることなくトイレに駆け寄るボウヤが店にいた。
しかもそのボウヤ、突然ジャンプしてドアの上のスキ間から個室の中を覗き始めた。
目の錯覚か?
トイレのドア、2mはあるんだけど・・・あのボウヤ、一蹴りで上に届いたように見えたんだが・・・
だがそれがミステイク。ボウヤの奇行と神業に目を奪われているうちに警察到着!
その間、わずか数秒。向かいのケーキ屋から会計を済ませてカフェに来るまでの時間よりも早く、規制線張ってんだよ警察が!
日本の警察、仕事が早ぇよ。
日本の未来は安泰! 日本のフューチャーは光り輝くシャイニング!
そして始まる事情聴取。まぁこのくらいは想定の範囲内。
で、しばらくして俺がトイレに呼ばれると、そこにはトイレ客とボウヤの姿が。
そして予想通りにトイレのドアのスキ間を通れるかの実験が始まった。
いや、この展開・・・つまり強盗犯じゃないことがもうバレたってことだ。
日本警察、優秀すぎるだろ。フューチャーシャイニング。
だが俺はその上を行く。
なんてったって、警官も「あんたはどーせ無理だ」と、俺がスキ間を通れないと決めてかかる始末。
容疑者は若い男と美人さんの2人に絞られた。
にしても、聞いてると美人さんはどうやら弁護士らしく、警察以上に捜査を主導しているようだ。(ついでに現場で遊んでるボウヤを叱りつけてる)
この人、俺の直前にトイレ入ってんだよな・・・ヤバかった。
でもまぁ無事に、若い男が一番怪しいということで、俺の完全犯罪は無事達成♪
となるかと思っていたその矢先!
ボウヤの「あれれ~こんな所に血がついてるよ~」から始まる急展開。
そこからトントンと俺のトリックがバレていく。
「こんな大役が務まるのは、大柄で腕力がありそーな、殿山さん! あなたしかいないわね」
弁護士先生のズバリな宣告に俺は一気に冷や汗。
だが、俺はちゃんと話を聞いていた。
今の所、証拠が一切提示されていないんだ。
そして弁護士先生もまた、この状況で逮捕したとしても証拠不十分。裁判になったら数時間で無罪放免と言ってくれた。
弁護士って、どっちの味方なんだろう・・・
なんて俺が苦笑いしているところに、ボウヤが襲来。
「おじさん、ラグビーで突き指しちゃったんだよねー」
子供らしい無邪気さに、少し心和らぐ。
そうそう、おかげでこうして結婚指輪ができねー
!?
やっちまってた。やることが多くて焦ってたから、包帯を巻き直す指を間違えてた。
そう、わざわざ巻き替えたこの包帯には、浮気相手殺した時に血が付着してんだよ。
こうして、謎は全て解かれた。
ところがどっこい、観念しないのが俺! 往生際が悪い方が長生きできる!
ところがどっこい、弁護士の急な一本背負い! 弁護士は誰の味方なんだ。
こうして、謎は全て解かれた。
いかがでしたでしょうか?
コーヒーショップ殺人事件。
最後の最後で油断したのが痛かった。結婚指輪とか言い出して印象強くしたせいで、包帯を巻く指をボウヤに覚えられちまったのが敗因になって。
そもそも結婚指輪をはめる指が左手の薬指じゃなかったら、勝ってたんだよぉ。
なぁ読者さんよ、この中で一番、結婚相手を大事にする素敵な大人は誰だ?
どうして結婚指輪は左手の薬指にはめるのか知ってるか?
知らないって?
ボーっと生きてんじゃねぇよ!
そんな事も知らずに、やれ『うざったい男を寄せつけない虫よけのために、別居中でも結婚指輪をはめてる』だとか『結婚指輪をはめていないことに気付かない夫とはもう限界』と嘆く日本人のなんと多い事やら。
しかし、トノちゃんは知っています。
結婚指輪を左手の薬指にはめるのは
『そこに愛があるから!』
詳しく教えてくれるのは、【劇場版名探偵コナンの犯人たちの事件簿】の作者である三柱努先生。
舞台は古代ヨーロッパ。
当時、結婚というのは新郎が“新婦のお父さん”から新婦を“買う”という仕組みで、その代金として指輪を“新婦のお父さん”に渡すシステムになっていました。
皆さんも思ったことでしょう。
『そこに愛はあるんか? 信じられる愛はあるんか?』と。
同じことを思った当時の人々の間で、愛の証として結婚指輪を贈りたいと考えた人たちがいました。
そこで彼らは、当時から“愛情”を意味する“左手の薬指”に、指輪をはめて贈ることで、愛のある結婚をしようと始めたのです。
それが現在にも残る『結婚指輪は左手の薬指』という風習となったというわけです。