名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件は探偵が 声かけ無理矢理やってくる
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!
略奪婚ってマトモじゃないよね。
私は青島全代。妹を殺します。
殺害方法はバスルームの中で毒ガスを発生させるだけ。妹を眠らせた上でね。
さらに自殺に見せかけるわ。妹に自殺用のアルカリ系と塩素系の洗剤を買ってこさせて、そのうえでバスルームの扉の目張り用のガムテープに妹の指紋を付けておく。
ガムテープに指紋を付けさせる方法は、妹にガムテープを切っておく手伝いをさせるだけよ。ちょうど私が引っ越しの準備中だから理由も完璧。
あとはバスルームの扉にガムテープを貼ってから一度力任せにぶち開けるだけ。
こうすることでガムテープがぶち開けられた後みたいに剥がれた状態になるから、一見すると密室になるの。
うん、貼ってて思ったけど・・・ガムテープ何十枚も要るわねこのトリック。
だけどそこは我が妹、これでもか!ってくらいにガムテープを用意してくれたわ。私の予想以上に。引越しの手伝いに不必要なくらい。それこそ窓にも目張りしても余るくらい。バスルームの扉に「サヨナラ」って貼れるくらい。
妹よ・・・いくらなんでもガムテープ切りすぎ。逆にありがたいけど。
そして最後に妹を睡眠薬で眠らせてから洗剤を混ぜて毒ガスを発生させれば、密室で自殺したってことになる・・・
あれ? ガス出ない。この洗剤、どっちも塩素系。駄目じゃん!
妹ぉ、何やってんのよ! 最後のおつかい、買ってくるもの間違えてるじゃないの! ビフォアーフォローがダメだった!
仕方ないわ。別の手段でサクッと殺しておきましょう。ちょっとグロイから描写は割愛。
と、妹を殺した後に突然、玄関に妹の旦那が現れたわ。私の元カレ。
タイミング! ほんと間が悪いわこの男!
玄関の覗き穴から見てたけど、この男全然帰る気配がないし。留守電まで残してくるし。私、いつ突入してくるかともうヒヤヒヤだったわ。
でもどうにか大丈夫。
あとは明日、この男と妹と一緒に沖野ヨーコのライブに行くから、その前に一緒に妹の死体を発見するだけ。
そして当日。
あの男・・・風邪でライブに行けないなんて言い出してドタキャンしてきたの!
アナタ、いい加減にしてよ! アナタには妹の死体を一緒に発見するっていう大事な役目があるのに!
このトリックのために私が苦労してチケットも手に入れたっていうのに! この役立たず!
まさか、風邪なんかのせいで私の計画が狂うなんて。どうしよう、本当にどうしよう。パニックよホント。
「あ、あのぉ。今夜のチケット余ったりします? 沖野ヨーコちゃんのライブのやつ。でしたら一枚安く譲っていただけないでしょうかねぇ?」
私の計画が狂った直後だったわ。ほんと直の後。
ライブのチケットを欲しがってるオジサンが私に声をかけてきてくれたの。しかも車で妹の家まで一緒に行ってくれるっていう、私にとって好都合でしかない奇跡的な提案。
捨てる神あれば拾う神あり、とはまさにこのことね!
まぁそのライブ・・・行けなくなるんだけどね。死体発見するから。
それにしても悪いわ。せっかくヨーコちゃんが縁で気の良いオジサンと娘さんたちと仲良くなれたのに。
ただ少し変わったオジサンね。ファンなのにCDについてくるグッズを知らないみたい。
「彼女のCDは全部本人に貰ってますので、オマケまでは」
えぇ!? 本人からってヨーコちゃんから!? すごい、このオジサン、ヨーコちゃんの知り合いなの!?
すごい出会い。妹殺した次の日に有名人と知り合いの人と知り合えるなんて!
「ええまぁ、ある事件でちょっと」
事件? え?
「あぁ私、毛利小五郎といいまして。探偵なんです」
探偵、いるのかよ! しかも私の隣に! とんだ死神との相乗りよ!
もう駄目。私の心の中もうお通夜。明日、リアルで妹のお通夜の予定だけど。
どうしよう。このまま名探偵と一緒に死体発見? すっごくリスキー。だけど、だからといって今さら予定変更できないし。
腹ぁくくるしかないわね。
ということで家に到着。
自然な演技でバスルーム前で騒ぎを起こして毛利探偵を呼び寄せて、一緒に扉を強行突破するフリをして普通にドアノブを回して入室。
毛利探偵と一緒に死体を発見。妹の死を悲しむ演技スタート。警察到着。
いよいよね。ここからが本番。
一応、状況から妹の自殺ってことで捜査は進んでくれているわ。私の描いたストーリーの通り。妹は洗剤から出るガスで自殺しようとしてドアを目張りしていた。でも洗剤を間違えて別の自殺の方法に変更。という自然な流れ。
ただ1つ不自然な点があるわ。
毛利探偵のところの子供が妹の死体を間近で観察してるの。え? 死体の近くに子供?
刑事さんも叱らないどころか、この子の言う事に耳を傾けているわ。
「ほら見てよこの血。境目でピッタリ途切れてるよ。これって血が飛んだあと、このお姉さんが拭き取ったってことでしょ?」
どれどれ? あぁそこね、妹を殺した時に私がいたから、そこで血が途切れちゃって・・・
え? この子の着眼点・・・まさか。
「手首を切った時、誰か別の人間がそばにいたか。でしょ?」
せ、正解!
まずいわ。毛利探偵がこの一言で自殺説をひっくり返してしまったら・・・
どうにかして誤魔化さないと・・・
!?
そうだ、ガムテープ! 浴槽の底に沈めておいたガムテープに遮られたってことで、辻褄・・・合うかな?
合いました。毛利探偵も自殺説で大満足。
と安心した瞬間、毛利探偵が急にまじめな顔になって私に詰め寄ってきたわ。
「すっかり忘れてた! 全代さん、あなたたしかあの時、こう言いましたよね?」
え? まさか?
「今夜のヨーコちゃんのライブチケット。一枚譲ってくれるって」
杞憂。心配して損した。それにしてもすごい胆力ね毛利探偵。自殺した人の姉にむかって、自殺の件よりライブのほうを優先させるとか。死が軽んじられているわ。
まぁ私が殺したことがバレなきゃそれでいい。
でもあまりにも私の手の上で踊りすぎでしょ毛利探偵。笑いを止めるの苦しい。部屋を移動したら、我慢した分笑っちゃおうかしら。
ハハハハハハ
「ねぇ」
!?
誰もいないと思って高笑いしたら、子供に聞かれてた。うわ、心臓に悪い。
「この段ボール、折り目が付いてるけど一回組み立てた?」
この子、さっきから着眼点が怖いわ。子供への返事だけど、ちょっと慎重になっちゃう私。
「そっか、だからその時妹さんに手伝ってもらったんだね? だってその机の周りベトベトしてるよ。これってガムテープがくっついていた跡でしょ? 誰かにテープを千切って並べて張り付けてもらうと荷造りが楽ちんだもんね」
うん。着眼点がズバリすぎるわ。その通りよ。
でもありがとうねボウヤ。机のテープ跡、立派な証拠だから、拭き取って隠滅しなきゃ。
「ガムテープの跡、拭き取っても無駄だよ。さっき鑑識の人に話したら、触ったり写真撮ったりしてたから」
怖!
え? 無駄? え?
でもよっぽど大丈夫よね? 自殺説、覆らないよね?
でも早めに毛利探偵だけでも退出してほしい。私の心の安心のためにも。
ということでチケットを渡して、毛利探偵にはライブに行ってもらうだけ・・・
「たった今、ピーンときて全て解けたんですよ。この風呂場を密室にした犯人のトリックがね!」
え? 毛利探偵?
「美菜さんは自殺したんじゃない。殺されたんですよ。彼女の姉である全代さん、あなたにね」
嫌な予感、的中。
そしてそこから咲き乱れる毛利探偵の名推理の数々。
決定的な証拠は、私のバンダナについた妹の血。しかも昨日、玄関の覗き穴を覗いた時にドアに付いた血の跡が、バンダナの血痕と一致。
こうして、謎は全て解かれた。
いかがでしたでしょうか? バスルーム密室事件。
敗因は犯行を焦りすぎたことね。洗剤だってそうだし、妹を殺した時の服装もちゃんと綺麗にしておかなきゃいけなかったわ。
それにしても・・・いいかしら?
妹の件。元カレが私と交際している時に妹に惚れちゃって、妹は私のプライドを守るために妹の方からのプロポーズってことにしてくれていた。それが真実。
でもそれにしても、姉の彼氏のプロポーズ受ける? せめて断ってよ!
あと、あの男。言語道断!
殺すべき相手を間違えたかもしれない。みなさんもそう思いませんか?
え? 思わない? さすがに殺しちゃダメ? そんな奴を殺して自分を不幸にしちゃいけない? 姉妹で他の男を見つけて幸せになるべきだった?
そのとおりね! いまさら!