名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件は致死的ラーメン 閻魔大王といえばこんにゃく
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!
私は商店街にある理髪店の店長、谷中篤。
ショッピングモールを建てるために商店街の土地を買い占めようとしている地上げ屋の西津を殺そうと思っている。
そしてあわよくば、商店街を盛り上げようとしていない隣のラーメン店『ラーメン小倉』で西津が死ぬようにして、閉店に追い込んでやりたい。
手順は簡単だ。西津の眼鏡に毒を塗って、その毒を触った手でラーメンを食べた西津が死ぬ。
寒い日にラーメン店に入れば眼鏡が結露するから、眼鏡を拭くために必ず毒に触れることになる。
あとは私自身も西津を追ってラーメン店に入って、奴が触った場所に他の客や店員が触って毒に触れてしまうこと防ぐこともできる。
西津には食中毒騒ぎの嫌がらせの前科がある。店の外に放り出す手伝いをすれば、証拠の眼鏡をすり替えることが可能だ。
一番の難関はすり替え用の眼鏡の入手。
ヤツの眼鏡と同じ型で、度が合ってないといけない。
西津の眼鏡の・・・度。
まぁ本人が言ってくれたから良かったんだけどね。コレ1から調べようって思ったらキツかった。普通に売ってる店も教えてもらえた。特注品だったら詰んでた。
これでトリックに問題なし。
と思っていたけど…このトリックを実行できる条件が…
・西津が私の理髪店に来て、次にラーメン店に行く
・西津がラーメン店から追い出されない
・西津の眼鏡に結露が出来るくらい外の気温が寒い
最初のはまだ大丈夫。奴はいつも理髪店に来た後でラーメン店に向かう。
とはいえ確定条件じゃない。気まぐれで他の店に行く可能性だってある。
引き出すしかない。ヤツのラーメン欲を。
ラーメン欲?
いや、発想を変えよう。何だよラーメン欲って。どう刺激するの?
それより確実な欲がある。
それは嫌味欲。私が「たまには店を改装すればもっと繁盛できるのに」と愚痴を言う。
そうすれば西津は勝手に「隣も『ボロっちい店はダメ』と言っていた」と脳内変換して、ラーメン店に言ってやりたくてたまらなくなるはず。
まぁ、本音なんだけど。
次だ。ラーメン店から追い出されないこと。
ヤツはただでさえ、ラーメン店から嫌われている。嫌がらせもしてきている。
トドメに、今ラーメン店でバイトをしている子の父親は、西津の嫌がらせに巻き込まれたせいで死んでいる。
塩まかれて門前払いされてもおかしくない。
人望! 人柄! こればっかりは私の手に負えない。
せめてできるのは、少しでもマイルドになるヘアカットだけ。
そしてある日。全ての条件が揃った。
寒い冬の日。夕飯前の時間帯に西津訪問。
やるなら今日しかない。
私はまず、西津にラーメン店についてぼやき、ラーメン店に誘導。
西津から預かった上着と眼鏡に毒を仕込み。
ヘアカットにまごころを込めて。
奴がラーメン店に入っていったのを確認して私も入店した。
店には行ったら子連れのお客さんがいた。
案の定、西津から割り箸を取ってもらおうとしていたから、私が先んじて割り箸を渡しておいた。
危ない危ない。こういうリスクを予測しておいてよかった。
まぁそのお客さんが西津の態度に怒って胸ぐらをつかんだのは止められなかったけれど。
そして予定通り、西津は毒に倒れた。
あとは眼鏡をすり替えるだけ・・・
「触っちゃダメだ!」
え? お客さんとこの子供? 急に叫ぶよな子供って。理髪店に来る子供もよく急に叫ぶし。
「何も触らずに自分がいた元の場所に戻った方がいいと思うよ。それに、呼ぶのは救急車だけじゃなく警察も。このおじさん、もう死んでると思うから」
なんか・・・語彙力すごい。え? それに死体に物怖じしないの?
何も触らずに、か。もう触っちゃったけどね。もうすり替えちゃったけどね眼鏡。なんかごめんね子供。
その後、警察が到着して捜査開始。
事情聴取と身体検査を受けて、現場を荒らさないように外に追い出された。
寒空の中、探偵ごっこを始めた子供に付き合ってあげながら待機。
しばらくすると警察も西津の自殺、もしくは事故死の線を疑いはじめた。
あと、例のお客さん、名探偵の毛利小五郎だった。
危なっ。私、名探偵の目の前で証拠隠滅を実行してた。
でも雰囲気的に毛利小五郎も私を疑っていないし、見られていなかった様子。
安心安心。
少し気になったのが、子供が性懲りも無く探偵ごっこを続けていたこと。
毛利小五郎について一緒に現場に入ろうとしたり、刑事さんに色々質問したり。
かわいいもんじゃないか。
気分は少年探偵団の小林少年かな?
「いや、小林少年というより、真相を見抜いた明智小五郎の気分だよ」
へぇ、詳しいなこの子。このネタ分かるんだ。
なんて和んでいる間に警察の事情聴取再開。
その時、毛利小五郎が急に糸の切れた操り人形みたいに倒れ込んだ。
「そう操り人形。私は違いますが、西津さんは操られていたんですよ。この店に入った瞬間から、悪魔に魅入られたが如く、それを口に運ぶように。この店内にいた犯人の思惑通りにね」
そこから乱れる毛利小五郎の名推理。
そして推理の情報から自然と私が犯人だと断定され・・・
こうして、謎は全て解かれた。
いかがでしたでしょうか? 死ぬほど美味いラーメン。
いやぁ、敗因は証拠の眼鏡の処分方法を考えていなかったこと。
ちなみに私が事件を起こした日に、隣の米花町の商店街の面々が旅行に行っていたらしいですよ。
仲の良い商店街っていいもんですね。
まぁ、そこでも自殺事件が起きていたらしいですけど。
そうか! 私の事件も西津の自殺を決定的にしておけばよかったんだ。
自殺説をプッシュできる状況を作っておけば。
自殺なら私も容疑者ではなく、その場にいた客として普通に家に帰してもらって、証拠を処分できていればよかったんだ!
詰めが甘かったぁ。
ってか商店街の人、死にすぎじゃないですか?
厄日? 商店街属性の人の厄日?