名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件は陶芸教室 陶器で凶器を作れそう
たった一つの真実隠す。見た目は平気、胸はドキドキ。その名は犯人!
私は陶芸家の美濃宗之。陶芸家といっても有名なほうじゃないさ。今は細々と陶芸教室を開いている、主に教えるほうが専門だね。
それに娘の自殺に絶望してしまって、その原因になった娘の旦那、義理の息子への殺意しか残っていないよ。
そう、義理の息子の浮気のせいで、娘は死んでしまった。だから娘からの最後の贈り物のネクタイで彼をサクッと殺して、その罪を浮気相手の女性に被せる。それが私のトリック。
トリックは意外とシンプルな物さ。
死体を両開きのロッカーの中に入れて、両方の扉を開けた時にだけ死体が飛び出してくるようにピタゴラするだけ。そして片方の扉を開けた時に布の端が後で飛び出るようにする。
ここで『私がいる時にロッカーに布は出ていなかった』『浮気女が片方の扉を開けた時に死体は出て来なかったし、布の端も無かった』『布の端が飛び出ているのをみんなで目撃して、ロッカーを開けたら死体が出て来た』という流れを作る。
こうすることで私にアリバイがあり、浮気女が最後にそのロッカーを開けた一番の容疑者、という状況を作ることができる。
浮気女にロッカーを片方だけ開けさせるには、私が指を怪我したとでも言えば、救急箱を出すために片方を開けてくれるから問題なし。
布の端はトリックの証拠になってしまうが、私が第一発見者になれば、義理の息子を心配するフリをしながら隙を見て回収してゴミ箱に捨ててしまえば問題なし。
完璧じゃないか? このトリック、完璧じゃないか?
あとは想定外の事態さえ起きなければ問題ない。
そう、名探偵でも現れない限り、な。
さて、ついに来た決行の日。
いつもの日常。今日は新しい生徒さんも入ってくれけど、それもいつもの光景。
とはいえこの新しい生徒さんも殺人事件の騒動に巻き込んでしまうことになるのは心苦しいが。
にしても変わった生徒さんだ。女子高生なんだろが筋がイイ。だがせっかくできた湯飲みに『大バカ推理之介』と書くセンスは・・・理解できない。
あと、この女子高生の弟さんなのか、気になって教室に侵入してきた小学生の子供もいる。
まぁせっかく来てくれたんだから、この子にも陶芸体験をしてもらおう。
少し変わったメンバーだが、平和な日常だな。
さてこの子供。この子も覚えが早い! 小学生なのに、もはや高校生レベル。
どうやらこの子とお姉さんは、あの人間国宝の菊右衛門先生に会ったことがあり、先生のお弟子さんにコツを教えてもらったらしい。
なるほどどうりで。
しかしすごいな、私の業界で最高クラス、人間国宝と知り合いというのは。
とはいえ知り合いというのは彼女のお父さんが、ということらしい。
しかも先生の家で起きた殺人事件を解決したという。
ん?
「実はウチの父、毛利小五郎といって、探偵をやってるんです」
探偵、いるのかよ!
しかも一親等。祖父が探偵という二親等、隔世遺伝でも怖いと聞く探偵業界。
よりにもよって今日。私が殺人する当日の新生徒が探偵の娘とは・・・
だけど断念できない。
何故なら義理息子と浮気女がロッカー室で、私の悪口言ったり、冗談交じりに首を絞めあったり。
殺意と動機のタイミングが最高なんだもの。
ということで義理の息子をサクッと殺害。
トリック装置を用意して。
ロッカー室で皿を壊して、心配して見に来てくれた生徒たちに私のアリバイを証明してもらう。
そして皿のかけらで指を怪我して、浮気女に救急箱を取りにいきロッカーを片方開けてもらうトラップ発動。
その間ずっと私はつきっきりで子供に陶芸を教えるだけ。
あとは最後に生徒みんなで義理息子を探しにロッカーの部屋にGO。
そこで例の布の端を見つけてくれた生徒の言葉で死体発見。
布の端も無事に回収。
そして呼ぶのは救急車! ここでやらかす犯人も多いと聞く。絶対に警察を呼んじゃダメ。
こうして到着した警察の捜査開始。
例の名探偵の娘さんも証人になって、私が思い描いたトリックの通り、私のアリバイが確保されていく。
ついでに私から浮気女にトドメの一撃。捜査担当の刑事さんにヒソヒソと、浮気女に動機があることを告げ口する。
あとは証拠になる例の布の端をハサミで細切れにして隠滅するだけ・・・
でもそのハサミを取りに行った時に、そこで子供に話しかけられた。
「見て! ボクの湯飲み、もうすぐ完成だよ!」
無邪気! 急に話しかけてくる天真爛漫さは私の心臓に悪いけど、その屈託のない笑顔はむしろ修復剤!
「殺されたおじさんみたいな中途半端って嫌いだから、ちゃんと仕上げなくっちゃ!」
ん? 中途半端?
「あれ? 気付かなかった? あの人がまくったシャツの袖、長さが違ってたじゃない! あれじゃーまるで、エプロンをつけてお手伝いの支度をしてる最中に殺されたみたいだよね?」
こ・・・この子、無邪気な顔してなんつう怖い事を。しかもその指摘、警察ですらたどり着いていない私の殺人のタイミングとピッタリ同じじゃないか!
しかもそこから咲き乱れる指摘の数々。
私がピタゴラトリックのために、ロッカーを両開き同時に開いたことや。
ピタゴラトリックのために変に装着させたネクタイのこととか。
怖い。この子の言動怖い。
しかもその無邪気で邪悪な指摘の中でも、湯飲みを完成させてくるこの子のスキルも怖い。
ん? と言ってもまだまだ子供。拙いスキルだからか、湯飲みから心の迷いが感じられるな。
何か大変な隠し事をしているか、重大な決意を決めかねているようだ。
土は嘘をつかないからね。きっと子供ならではの後ろめたい何かを持っているのだろう。
「でもさ、コレ、先生が作ってた湯飲みだよ?」
なんとこの子供、私の製作中の作品を勝手に持ち出して仕上げの作業をしていたらしい。
まぁ勝手にも何も、指導用に作っている最中のものだから価値なんて無いし・・・子供のやる事だから叱るってほどでもないし。
でもモヤモヤ。なんかモヤモヤ。
とはいえ私がモヤモヤしていても捜査は勝手に進む。
浮気女に容疑の目が注がれていき、警察が任意同行してくれる流れになった。
長かった。でもこれで私のトリックが報われる。
「フニャ。ニャララ」
なんか急に生徒の一人が妙な声を出して、犯人連行の邪魔に入った。
それは女子高生の生徒。毛利小五郎の娘さんの友達で、三週間前くらいに入会してくれた生徒さんだった。
「相変わらずダルーイ気分にさせてくれるわね目暮警部」
だるーい、からと刑事さんに変な絡み方をしてくる女子高生。今どきの娘ってこんなんなの?
「犯人はもうあの人っきゃないわよね? 美濃先生! 犯人はあなたよ!」
え? ええええええ?
無警戒の死角から飛んできた弓矢の如く。
そしてそこから咲き乱れる名推理の数々。
こうして、謎は全て解かれた。
いかがでしたでしょうか? 殺意の陶芸教室。
それにしても油断していました。
まさか。一番警戒していた名探偵の娘さんでも。
二番目の警戒していた、あの妙に勘のいい子供でもなく。
ウチの生徒に推理されるなんて。
安息の地がない。この米花町、一般市民が探偵の血筋や気配を差し置いて、背後から犯人を刺してくる。
恐ろしい町で陶芸教室を開いてしまった。それが私の敗因ですね。