名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件は雪との対決。トリック最後はいつでもフィジカル。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!
僕は美大学生の板橋一八。
同じ彫刻科の仲間男女4人、朔子と鍛治、麻華の4人でいつもつるんでいる。
この4人、ラブコメ漫画でよくある四角関係。
朔子→鍛治↔麻華←僕
っていう片思いと両想いの交通渋滞。
な? 死人が出そうな形してるだろ?
実際、朔子が鍛治を巡って麻華に大怪我をさせたくらいだからな。
これ、鍛治が朔子を殺す可能性あるよな? あるよ。あるさ。
ということで先を越されないために僕が殺す。
思い立ったらすぐ行動。これは人生の鉄則。
トリックはすぐに用意できた。
朔子を溺死させてから雪だるまにINして、雪だるまを崖の上から転がして、池に沈めてやるのだ。
こうすれば崖から転落して池に落ちた事故死に見せかけることができる。
ということでトリックの準備だ。
まずは雪だるまを用意する口実にするため「卒業制作を雪の彫刻にしたい」という熱意を大学側に伝える。
雪の彫刻でもいいよ、というお墨付きをもらったら、朔子を含めた鍛治、麻華のいつものメンバーを誘って泊まりでスキーに行く。
スキーロッジに行ったら、僕が雪の彫刻の初期構想を担当すると言って、一人で雪だるまを作る。
この時に雪だるまの中を空洞にしておいて、朔子をINできるスペースを確保。彫刻の部分は取り外し可能な氷像にしておく。
雪だるまゴロゴロが終わったら、新しく雪だるまを作って氷像と合体させて元通り。
これで雪だるまを池にドボンさせたというトリックがバレずに済む。
だがこのトリックには最大の問題がある。
それは新しく雪だるまを作らなきゃいけない、っていうこと。
スキーロッジは当然、スキー客のための場所。人の往来が多い。そんな場所で雪だるまを作っているところを見られたら、「なんで雪だるま2回作ってんの?」って変な行動を指摘されてしまう。
なるべくなら客の出入りの無い時間帯・・・そう、例えばみんながスキーに出払ってくれそうな時間をピンポイントで狙う必要がある。でもそんなゴールデンタイムは短い。雪だるま作りは時間との勝負になるのさ。
なのに・・・よりにもよって当日に・・・・
僕の雪だるま彫刻のすぐ隣で、子供たちが雪だるま作ってるんだよ。スキーそっちのけで。スキーしに来たんだよねキミたち?
「黒ずくめの奴らの仲間、ベルモットだろーぜ」
「なっ!?」
「だ、だろうぜ・・・って」
子供たち3人で雪だるま作っていて、手伝ってない子とおじいさんが何かおしゃべりしてサボってるけどさ。
まぁサボってる子たちの話はどうでもいい。問題は子供たちが早く退散してくれないと僕のトリックが実行できないっていうことさ。
でも大丈夫だった。お昼前には吹雪いてきて、子供たちもロッジの中に入ってくれた。
今がチャンス!
まずはあらかじめ池の水を大量に汲んでおく。
自分の部屋の洗面台を池の水で満たしたら準備完了。
朔子を電話で呼び出して、洗面台でサクッと溺死させて、胃の内容物を調べられても池で溺死したと鑑定されるようにしておく。
次に部屋から朔子の死体を運び出す。
朔子の死体を? ロッジの中から? さっきの子供たち、吹雪いてきたからロッジの中に入っていったのに? というか他に客がいるのに?
隠密! ステルスミッション! 運の勝負!
運が良かった。それに尽きる。もう冷汗ダクダク。でもまだ勝負は終わっていない。
次は時間との勝負。
朔子を雪だるまにINして雪で隙間を埋めて、塩をかけて凝固点降下させて雪をしっかり固める。
あとは朔子をINした雪だるまを崖まで運んで、池に落としたら新しい雪だるまを作らなきゃいけない。
崖まで・・・雪だるまを・・・転がす?
吹雪で雪増量中の道を・・・転がしていけば当然・・・
進めば進むほど大きく育っていく雪だるま。
ただでさえ塩撒いて凝固点降下させて固めておいた雪だるま。重さも増しているのに。
それに雪だるまって真っ直ぐ転がしただけだと球体じゃなくて円柱状になっちゃうから、まんべんなく転がさなきゃいけない。だから労力も倍増・・・
さ・・・SASUKE。いや、大相撲出れるわ!
こうしてどうにか崖まで雪だるまを転がした僕。
あとは崖から雪だるまを落として、池まで転がるのを見届けるだけ。
池まで雪だるまが転がって・・・いくのか?
これだけの重量物が10mくらいの崖を落下。いくら斜面があるていど傾斜しているとはいえ・・・
いくのかコレ?
でも今さら。朔子の死体がINした雪だるまがここにあるのが一番の不自然。もう後戻りはできない。やるしかない。
ああ。一世一代の賭けだ。祈るしかない。
ドン!
ゴロゴロゴロ
崖を転がり落ちていく雪だるま。それを眺めて祈る僕。
なんかこう、映画だと主題歌流れてきそう。
「いっっっっっけえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!」
猛スピードで斜面を転がった雪だるまは、池までの数mの平地を勢いよく走り抜け
水面すら滑走しながら徐々にスピードが落ち、最後には制止して池の中央あたりで浮かんでくれた。
これビデオに撮っておけば衝撃映像だったよ。もちろんそんな証拠を残すことなんてできないけど、マジで映画のビジュアル。
なんて余韻に浸ってる暇は無い。急いで雪だるまを作らなきゃ。
雪だるまを・・・作るのか・・・
体力! もう体力ギリギリ! いくら若いからって、美術系の体力には底がある!
ムリな気がする。時間的に元の大きさと同じ雪だるまを用意するとか・・・
!?
その時、僕の目の前に現れたのは雪だるま。
そう、それは僕の隣でずっと子供たちが作っていた雪だるま。
使わせてもらえばいいじゃないか! 子供たちの雪だるまの頭部を!
頭が無くなったら子供たちは不思議がるかもしれないけど、風にあおられて倒れて崩れたとでも思ってくれるはずさ。
こうして感謝と謝罪の雪だるまリサイクルで難をしのいだ僕。
あとは行方不明になった朔子を探すフリをしていればいいだけ。
なんか例の子供たちも一緒に朔子を探してくれて外に出て行った。おいおい外は吹雪いているから遠くが見えなくて危ないよ? それにきっと池に浮いた雪だるまも、この寒さで溶けないから朔子の体なんてきっと雪に隠れたままだって。
と思っていたら普通に雪だるまは溶けていて、子供たちが朔子の死体を見つけました。
この池、たしかに温泉のおかげで少し暖かいってきいていたけど・・・雪溶かすくらいの温度あったのか・・・意外。
まぁあとは普通に警察が来てくれて捜査開始。朔子は崖から落ちて溺れたという事故死だって判断してくれた。
まぁ普通だよな。結論そうなるよな。僕、警察の捜査って見るの初めてだけど。
初めてだから。素人だからかもしれないけど、一つ聞いていい?
例の子供たち。普通に朔子の死体の近くでうろうろしてるんだけど。
第一発見者だから?
でもさ、普通に考えてこういうのって情操教育によくないと思うんだ。
県民性? この地域って子供を死体のそばで遊ばせるの普通なの?
っていう疑問もそこそこに事情聴取から解放された僕ら。あとは大学に帰って報告して、朔子の葬式に参列するだけかな。
なんて思っていたところ、急に刑事さんから話があるって呼び出された。
話があるのは刑事さんじゃなかった。例の子供たちの保護者のおじいさんだった。
「朔子さんが亡くなったのは事故ではなく殺人。しかもどうやら犯人は、その三人の中にいるようだと言っておるんじゃよ!」
え? おじいさん? なんか急に本質突いてきた?
でもこの急展開に刑事さんもさすがに付いていけないから、僕らの代わりに「あれは事故だ」って言っておじいさんに詰め寄ってくれた。すごい剣幕で。
でも剣幕の勢いがつきすぎて転んじゃったのか、刑事さんはそのままおじいさんに体当たり。その時に足でも捻ったのか、雪だるまを背にしゃがみこんでしまった。大丈夫かな?
「いやいや自分に呆れて腰がふにゃり抜けてしまったんだ。こんな単純なトリックに、今この場でやっと気づいたんだからね」
はい?
なんか急に刑事さんまで本質に迫ってきた。しかも子供たちにクイズ形式で語りかけながら、雪だるまにINしたところまで指摘してくる。
「そう。ここでずっとこの雪だるまを作っていた、板橋さん。あなた以外には考えられないんですよ!」
そう。僕以外には考えられません!
でも証拠! 証拠を見せてよ!
ピピピ
その時、僕が拝借した子供たちの雪だるまの頭部、僕が作ったことになっている雪だるまから音が鳴り始めた。
どうやら子供たち、サプライズで友達を驚かすために、中に小型の無線機を入れていたみたいなんだ。
今どきの子供! ボクの子供時代にはなかった発想を遊びに取り入れてくる!
こうして、謎は全て 溶かれた。
いかがでしたでしょうか? 割れない雪だるま。
いや、割れるというか溶けてくれないと困るから、割れなかったけど溶けてくれた雪だるま、なんですけどね。
敗因は単純にシミュレーション不足だと思うよ。
雪だるまのリサイクルなんて、機転を利かせたものが逆に足を引っ張ったわけだし。
最初から体力を鍛えておけばよかったんだ。雪だるまを2個作れるくらいに。
まぁ、そこまで鍛えたらむしろ崖から池まで朔子を投げ飛ばすくらいの力がつきそうな気もするけどね。