名探偵コナン&金田一少年の事件簿の犯人たちの事件簿 作:三柱 努
今日の事件はコナンが空気。蹴撃の貴公子登場だ。
たった一つの真実隠す。見た目は平気、中身はドキドキ。それは犯人!
僕は道脇正彦。
1年前に茶髪のチャラチャラした彼女にひどいフラれ方をして、そういう女を見るとハラワタえぐりたくなる大学生さ。
実際、彼女はグサッと殺害。
それでも気は収まらず、似た女をナンパしてはグサッと。
意外とアシがつかないもので、今日4人目をグサッと。
と、グサッとライフに終止符が打たれそうな危機が突然来た。
アベックのイチャコラ中を盗撮しようって不届き者がいたのさ。しかも例のごとく茶髪のチャラい女。こういう奴ってどいつもこいつも、ろくでもねぇな。
ということで、次の標的はツレに黒髪の娘やメガネの子供がいる茶髪女だ。
いつものようにナンパして殺すだけ。なんだが今回は少し勝手が違って撮られた写真を回収しなきゃならない。しかも俺の顔を見られていた場合はナンパどころの騒ぎじゃない。
ここは慎重に・・・時間をかけて・・・
なのに杞憂! 秒でコロッと!
茶髪女って、天使とか女神とかの言葉に弱いったら弱い。
でも良いところで、態度の悪い店員がムードぶち壊し!
いまいちな踏み込み・・・と思いきや、コイツのおかげで女たちの泊まってる旅館が判明!
いい感じ・・・となったところで、ツレの娘の彼氏である探偵に『衝撃的な写真』を見せるってことが判明。
ギリギリ! 昨日の犯行時に撮られてた写真、探偵に見られるところだったわけだ。
あとはその写真を消して、ついでにこの女を殺すだけ。
と、思ったところに態度悪い店員が再乱入! ムード再ぶち壊し。こいつ、俺みたいに茶髪に恨みでもあるのか?
と、思った矢先に死体発見の一報も乱入。茶髪女の警戒心も急上昇。盗んだり殺したりしくくなってきた。
と思いきや、カメラを旅館に置いて夕飯に出かける話に発展して、一転して盗みやすい展開に!
良い展開と悪い展開の入れ替わりが早すぎる。人間万事塞翁が馬。
そして夜、女たちを旅館の前で待たせている間に、窓から部屋に侵入してカメラを回収へ。
なんだけど・・・女たちが泊ってる部屋が分からない・・・
いや、分かる! だって空の部屋は明かりがついていないんだもの!
でもなかった。暗い部屋、いくつかあったわ。
ようやくたどり着いた正解の2階部屋で荷物漁りをし始めたところで、まさかの茶髪女が部屋に戻ってきたんだから驚き。
いや、そっちも驚いたかもしれないけど、こっちも驚いてんだよ。
仕方ない。盗みと殺しの順番が逆になるが、ナイフでグサッと!
ガブッ
痛ぇ! と叫べたらどんなに楽か。揉みあっている最中に噛みついてきやがったんだこの茶髪。どんだけ度胸あるんだ?
でも、力では俺は負けない。
だが、数では俺は勝てない。
ガラッと開いた部屋の戸。ツレの2人が戻ってきたからさぁ大変。仕方なく退散だ。
なんかいつもと違って全然スムーズにいかないな。
えっ? 死神と遭遇してるなら、これでもスムーズなほうだって? 何言ってんの?
だがこの失敗が転じて福となるのが俺。
外食が危険だってことで旅館でとることにした夕食が、“泥棒が出る旅館だ”と言いふらされないようにと無料になり、しかもそれが美味いったら美味い!
んだが、またここに来て悪い展開が。盗んだカメラのフィルムが空で、昼間に既に現像されていたことが判明! 無駄足!
しかも現像された写真はアベックばかりで、やっぱり俺の推理が当たっていたことも判明。例の写真はやっぱり抜き取られていた。
そして翌昼。やっと誘えたレストラン。
茶髪女は昨夜眠れなかったからと車の中でお休みという好都合発生。
ちょうど駐車場も坂道で、他に車が停まっていないことも好都合。エアコンつけっぱなしにしておけば、サイドブレーキかけずにしておいて、氷をタイヤに挟んでおけば、あとは自動でガケ下に真っ逆さま!
となるはずが、ツレの女の子がまさかの怪力キックで車のガラスをぶち壊して、茶髪女を救っちゃってんだから、全然スムーズにいかない。
しかも警察到着。
で、これでもやっぱ“スムーズなほうだ”っていうんだろ?
「では、詳しい話は署で聞かせてください。さぁ車に」
「え?車。あ、あの、今、ちょっと車に乗りたくないんですけど。なんか怖いし」
茶髪女がパトカー拒否してくれたおかげで。
しかも、不審者が僕らの後を尾けてきてくれたおかげで。
なんと、林の中で
二手に分かれて
祝・茶髪女と2人きりになれました!
ハイ拍手!
まぁ、サンダル履きだったから枝を踏んで痛い想いしたけど。
「いやあああ」
泣き叫ぶ茶髪女にマウント取って、ナイフを掲げることに成功!
なんだ、行けたじゃないかここまで。死神とか言って怖がらせやがって。
さぁズブッと。
ん? 敗因は? 何それ。どうしてそんなことを今聞くんだ?
ん? なんか嫌な予感が
なんか、もう俺のピークが過ぎたような・・・
話を戻そう。
僕が突き刺したナイフはズブッと肉に沈み込む感触を手に伝えてきた。幾度も味わってきた皮膚の断続性を断ち、肉を掻きわける間隔。
否。この時は違った。
狙った人体の内臓部分のネットリとした柔らかさではない。刃の側面に吸い付いて捉えてくるような筋肉の感触。
それは茶髪女の腹なんかじゃぁなく、あの態度悪い店員の腕だった。
ドッ
瞬間、僕の顔面に飛んできた店員の強烈なエルボー。一瞬にして視界が奪われ、鼻の折れる痛みが遅れて脳に突き刺さり、そこから伝播する強い衝撃に、僕の体は軽く2メートルは吹き飛ばされた。
「大丈夫ですか?」「だ、大丈夫ってあなたの方が」
店員の心配する声に茶髪女が唖然とする中、僕は近くに落ちていた手ごろな木の棒を振り上げ2人に襲い掛かった。
店員は僕の強襲に気づくことなく、「ああ、これですか」と刺さったままのナイフに視線をやっている。
僕のスイングが、その隙だらけの顔面を捕らえ・・・いや、伝わる感触は固く細い鉄を捕らえただけだ。店員は瞬時に棒をさけ、その眼鏡だけを砕くように避けたのだ。
僕は一心不乱に棒を振り回すが、店員は後ろに飛び退きことごとく避けていく。
刹那。僕の間合いに店員の手が飛び込んできた。着地のバネを利用し、瞬発的に飛び出したのだろう。
その手が俺の頭に掴みかかったかと思うと、次の瞬間には膝蹴りがゴッという音よりも早く僕の顎を捕らえていた。
そしてほぼ同時に・・・同時と錯覚するほどに素早く飛び込んできた店員の回し蹴りがドシッと俺の顎を砕いた。
こうして、意識は全て飛んだ。
いかがでしたでしょうか? アブない夏物語・・・・殺人事件じゃないんだな。
敗因は店員以外にないだろ。
最後の格闘シーン、俺の渾身の車トリックより尺長くないか?
いや、なるほど。ずっと言われていた意味がようやく分かった。
最初から近くにいたっていう死神、コイツのことだったんだな。